今話は旭高校の部活動の規模や強さがわからなかったため、自己解釈をしました。
「陸上部の助っ人を引き受けたってぇ!!今の状況わかってんのか!?」
「うぅ~~~~す、すみませぇん・・・・」
「バレちゃった」
「バレちゃったっす」
放課後。四葉くんは駅伝の事がバレて風太郎にこってりと絞られていた。
そのリボン、どういう仕組みなんだい。時々ひとりでに動くけど。
今日は茜の面倒を見る日なので、茜が一緒にいる。
「凪!お前からも何か言え!陸上部には顔が利くだろう!」
「もう言ったんだよなぁ。お陰で有坂くんは出禁です。」
「自分もです!センパイ仲間ですね!」
「お前は正確には違うだろ・・・・」
「で、出禁?そこまでやりあったのか。」
「うん。まともな人かと思ってたけど、中々とんでもない人だ。江場さんは。
おかげで俺も熱くなってしまったよ。」
「有坂さん・・・・すみません。私のせいで・・・・」
「いや、いいんだよ。あの時はごめんね。失礼なことを言ってしまった。」
頼みの綱の有坂くんも使えません。
頑張ったんだけどな。流石にこれ以上は無理。
「一度は断ったんですけど・・・・このままじゃ、駅伝に出られないと言われて。」
「得意のお人よしが出たか・・・・今すぐ、辞めろ。これ以上問題を増やさないでくれ。」
「センパイが代わりに出ればいいっす!得意の中距離じゃないっすか!」
「こちとら男やぞ。出るならお前が出てくれよ。というか茜。陸上部には何か言われてないのか?
引き止められてたりとか。」
「別に?なーんもないっす。」
俺が女子の駅伝に出れるわけないだろ。今から・・・・・いや、何でもない。
この発言は絶対怒られる。
「内緒にしててすみません・・・・でも、家ではもらった問題集を頑張ってますから!」
「厳しいと思うけどなぁ・・・・」
「中野さーん!練習再開するよ!・・・・茜くん!」
江場さんが声を掛けてきた。
「上杉さん、私、頑張りますから!」
「な・・・ま、待て!話は終わってねぇぞ!逃がすか!」
風太郎は四葉くんを追いかけていった。
キミが追いつけるわけないだろ。あとで回収してやろう。
俺も足やってるし。ちょっと追えない。
「茜くん・・・・戻ってきてくれないの?みんな心配してる。リレーの練習だってあるんだよ。」
「・・・・茜。さっきと話が違うぞ。やっぱり言われてるじゃないか。戻れよ。」
「ダメです。言ったじゃないですか。凪センパイが居ないなら行きません。」
「なんでだよ・・・・」
なんでそこを譲らない。一番どうでもいいところだろ。
俺を慕ってくれているのは嬉しいが、自分の選手生命どうする。
「・・・・まあ、自主練をして、大会にはきちんと出てくれればいいの。期待しているよ。」
「凪センパイなら大丈夫です!中学校の時は早かったんですよ!いつもごぼう抜きでした!」
「・・・・そうなのかい?初めて聞いたね。結構できるみたいだね。有坂くん。」
「昔は、結構俺もやるもんだったんですよ。」
「でも・・・それなら、私たちの言うこともわかってくれると思ってたんだけど。」
「残念ながら・・・全くわかりません。言ったでしょう。江場さん。俺は夢を見ないんです。
あくまでも現実と向き合う。」
「あなたも聞いたことはあるでしょう?
どこかの大会で指を骨折しながらもサッカーボールを蹴った高校生、
疲労骨折を抱えながらも走り切った高校生。そんな話を。
・・・・以前自己紹介した通り、俺は夢を見ず、現実を考えます。
いつも考えてしまうんですよ。彼らはその後どうなったんだろう と。」
「・・・・・」
「高校生。まだ人生の道長ば。4分の1も終わっていない。
選手生命を燃やし、得られた栄光はあるでしょう。・・・ですが、その後は?
彼らは本当にプロになったのか?スポンサーが付き、生涯の仕事として活躍できたのか?
その後の人生はどうなったのか?
老い先短いベテランが、短い今後を犠牲にし、
散り際に花を咲かせる。それなら別に文句は言いません。
選手生命、最後のともしび。まさに勇退。大団円でしょう。しかし・・・・高校生はそうじゃない。
スポーツ医学には詳しくありませんが・・・・そんな状態で無理をしたんだ。
恐らく、ケガ、後遺症による能力の低下は避けられない。
きっと何人かは、選手生命が終わってしまっているかもしれないのではないか。
俺はあくまで打算的に、リスクリターンを考えます。それが、現実を見るという事。
プロスポーツ選手になれたかもしれないのに、
それが原因でなれなかったんじゃないか、俺はそう考えてしまうんです。」
「四葉くんも・・・もしかしたら同じかもしれません。いや、先ほどよりもむしろタチが悪い。
彼女は自分の学業を犠牲に、誰かを助けている。
彼女が陸上に専念しているのなら良いんです。
将来、陸上選手として活躍するのであれば。何も言いません。むしろ応援します。
しかし、前回はバスケ部の助っ人で・・・今回は陸上部ときた。
助けたところで・・・・・一体自分に何のメリットがあるのか?
バスケ部も陸上部も全国一を狙うようなところじゃない。
なら、活躍したところで大したリターンがない。
ただただ、自分の身を削っているだけだ。人を助け、自らの学業を犠牲にして、
進級が出来なくなり、留年する。
これが、今回のリスク。・・・・・・全く持って、割に合わない。
そんなもので、この1年を無駄にしてしまうのか。
留年すれば、進路や就職にも支障が出る。
感謝の言葉?助っ人優勝の金メダル?
そんなもので将来の進路を、今後の人生を約束なんてできない。
俺はそう思うんです。だから・・・・・あなたたちの言うことは、全く理解できません。」
「・・・・キミの考えはよくわかったよ。たが、私達にも譲れないものがあるの。
私も最後の年で、駅伝は連覇がかかってるから。
それに、四葉くんは私たちに協力してくれる。それを、尊重させてもらうよ。」
「・・・そうですね。四葉くんの意志が一番重要です。
やっぱり・・・・しばらく陸上部に顔は出せないようですね。茜、俺は行くよ。」
「何言ってるんですか!もちろんついていきますよ!センパイ!」
再トライはしてみたんだが、やはりダメだった。
・・・無理だな。俺では。
「江場さんはおかしいっす」
「・・・そうかもな」
「陸上部がテスト期間中に練習してるのあの人のせいっすよ?」
「そんなタイプだったな。でもまあ、良い事だ。あそこまで夢中になれるものがあるのは。」
「テスト期間中に出てこない人もいるっす。そういう人たちを味方につけましょう!」
「そうか。その辺のことは任せる。」
「ハァ・・・・ハァ・・・ゼェ・・・・・逃がした・・・・ゲホッ・・・・」
「やっぱり」
「やっぱりっす」
風太郎は案の定学校の前で死にかけていた。
そらそうよ。四葉くんは助っ人に呼ばれるくらいだぞ。
メンバー主力も良いとこ。
「・・・ハァ・・・・・ん?二乃!」
丁度二乃が通りがかった。
「学校来てたのか!この前の事は俺も凪も気にしてないから、帰ろう!
あいつらとも仲良くできるって!昔みたいに!」
「わかったわ・・・・帰るわ。」
案外素直。まあどこに行くかなんとなくわかる。
「って昨日のホテルじゃねぇか!」
「だよなぁ」
「だよなっす」
当然のように二乃は宿泊先のホテルに帰った。
試験なんて受かったからなんだって言うの 無駄よ
そう言って去っていった。風太郎はホテルの警備員に止められて諦めたようだ。
一旦いろいろと諦めて、公園で作戦会議をしている。
「試験まで4日・・・・・どうすればあいつらがまとまってくれるんだ・・・・・・」
「・・・・まあ、五月は俺の家で勉強見てるから。とりあえず気にしなくていいよ。
そっちは二乃だけ頼む。あと三玖のケアも。」
「一花も任せていいか・・・・・四葉は引き受ける・・・・」
「わかったが・・・・仕事はどうにもならないかもなぁ。四葉くんは俺も手伝うよ。」
上杉先生担当、二乃、三玖。
有坂担当、一花、五月。
共同担当、四葉くん
となった。
「ここで俺が溺れたら・・・・・あいつら心配してきてくれるかな・・・・・」
「風太郎、その考えはマズいぞ。いつしかの俺と一緒だ。ちょっと休め。」
公園の池を見つめてそんなことを呟きだした。
俺が立ち直ったと思ったら今度は風太郎がヤバそう。
そうなったら完全に勉強どころではなくなる。最後の砦だ。
「五月さんはセンパイのおうちに泊まってるんですか!ずるいっす!自分も行きます!」
「もうベッドねぇよ」
「センパイと寝るからいいです!」
「よくねぇよ ほら、行くぞ。」
「あ”~~~~」
茜を引きずってその場から離れた。
風太郎は・・・・ちょっと前の俺のようにちょっとメンタルが来ている。
誰かに愚痴を聞いてもらいたいタイプもいるが。とりあえず一人にさせとこう。
俺がお前の立場なら、一人でじっくり考えたいからな。
俺以外の相談相手でもいればいいんだが。
「いてて・・・・センパイキツイっす。」
「もうちょい頑張れ。ちゃんとストレッチはしろと言っているだろう。」
「う~~・・・・」
勉強もそこそこに、茜の準備運動を手伝う。
体固いんだよなこいつ。こんなんでよくあんなスピードが出るよ。
「走る前から痛いっすよー」
「なら少し休んでも良いから。柔軟な筋肉がスピードの元であり、ケガを防ぐ。」
「はーい センパイも走りませんか?」
「足首をやってる。今は無理だな。」
「おだいじにー」
「ナギくん。これは・・・」
「これね。このタイプは・・・・・この問題集のここ。
この解説がとても分かりやすい。ちょっと見てくれるかい。
その解説で分からないところがあれば、改めて言ってくれ。」
「はい。」
帰宅して五月に勉強を教える。
問題のレベルが少し上がっており、時々俺が怪しい所が出てくる。とりあえずまだ問題ないが。
参ったな。まあその分テストでは期待させてもらおう。
「ナギくん。」
「はい」
「ナギくんは・・・・いつも、家ではこうして一人なんですか。」
「そうだね。忙しいからね。うちは。」
「寂しくは・・・・ならないんですか。」
「ならないね。俺は一人孤独が好きなタイプだから。
家にいる時は充電期間だ。外で人と接するためのエネルギーを回復させる。
言った通り、人付き合いはとても疲れるから。」
「・・・ごめんなさい。私が」
「いや、キミなら大丈夫だ。苦にはならない。もう気を遣わない友達だからね。
ちょっと、飯作ってくるよ。」
「お疲れ様。その辺でやめよう。」
「つ、疲れました・・・・」
「えらいえらい。夕飯はお得意の回鍋肉でーす。」
「本当ですか!?」
「たーんとおあがり。」
目を輝かせる五月。こういう所が母親ではなく妹に見える所以である。
時々子供・・・末っ子になるんだ。
回鍋肉は・・・黒さを出すのに苦労した。最初は茶色かった。本格的な黒色を出したかった。
あと、キャベツをシャキッとさせるのには油が肝心。しかし入れすぎると脂質でギトギト。
バランス調整が難しい。
「おかわりありますか?」
「つくってありますよー」
「お願いします!」
初日のアレをみて多めに作ってよかった。
なんだかもう我が家の日常として馴染んでいる五月がそこにいた。
明日は・・・・平日だが、中野家で勉強を見る日だったな。
一花も来ると聞いている。ちょっと集中して一花を見よう。