平日の学校、昼休み。
「上杉くんから呼び出しがありました。四葉が・・・・強化合宿に参加すると。」
「えぇ・・・・・・テスト期間中に何考えてるんだ江場部長・・・・・」
「さすがにやり過ぎっす。」
五月からそう報告を受けた。
茜の勉強を見ていたところだ。
「陸上部の人もほとんどついていけてないっす。多分センパイ、もう戻れますよ。」
「うーん。しかし江場さん部長だからな。あの人がいる間はちょっと。
3学期末でもうすぐいなくなるし。そうなってからだな。」
「じゃあ、もうちょっとこのままっすね。」
「お前は早く戻れよ・・・・・」
「センパイここはー?」
「誤魔化すな・・・・・」
「五月。今日はちょっとそっちに付き合えないんだ。放課後は風太郎と上手くやってくれ。」
「わかりました。」
「江場部長は中々強敵だ。風太郎がキレないようにコントロールしてほしい。実際俺はキレてる。」
「あまり自信はありませんが・・・わかりました。」
さらに翌日の土曜日。
風太郎から連絡が入る。何とかして四葉を止めるぞ と。
昨日は上手く行かなかったらしいな。
三玖から作戦があると言われ、二乃のホテルに来ている。
ラウンジで待っているが、中々来ない。
あ、来た。一花に三玖に・・・・ん?二乃?
あのリボン・・・・間違いない、二乃だ。
長い髪をバッサリと切り落して、短くなっている。
わーい。短髪の子が増えた。綺麗な首が見やすくなったぞ。
「待たせたわね。行くわよ。」
「ああ。どこへ行くんだい?」
「陸上部は駅に向かっているらしいわ。ナギ、あんたは顔が効くんでしょ。手伝いなさい。」
「もちろんだ。」
「見つけた。あれだね。作戦はどうするんだい。」
「これよ。」
懐から無地の緑色のリボンを取り出した。
なりきり四葉くんグッズである。
「・・・・OK。理解したよ。
ただ・・・・誰かいないか、あそこ。リボンをつけた誰かが。」
「あれは・・・・五月。」
「・・・・五月なのかい。あれ。」
「そうだね。あの後ろ姿は五月ちゃん。でも・・・・髪型がちょっと四葉と違うみたい。
バレてると思う。あの子、変装ヘタだし。」
一花と三玖は確信があるようだ。
バレてるなら悩まなくていい。
「バレてるなら問題はないね。行こう。」
「ええ。サポートしなさい。」
「うん・・・似てるけど違うよ。だって髪の長さが違うもん。」
現場到着。やっぱり普通にバレてる。
近づけば俺でもわかる。
「お待たせしましたー!皆さん、ご迷惑をおかけしました!」
「お連れしましたよ。江場部長。」
「中野さん!有坂くん!キミも協力してくれる気になったんだね!」
「まあ、彼女の意志がそうですからね。俺も四葉くんを応援しますよ。」
「いやードッキリですよ!ドッキリ!五つ子ジョーク!」
「なーんだ!冗談だったんだね!笑えないからやめてよ~!」
上手いなぁ変装。
全然わからない。日陰による暗所というのも変装に手伝っている。
何処で仕掛けるんだろう。
「まあ、私が辞めたいのは本当ですけど!」
あ、来た。
「!?・・・・な、中野さん・・・・!?・・・・なんで!?」
「なんでって、そもそも試験前に合宿するなんてありえませんよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ、あり得ないから。」
「・・・あ・・う・・・・・・・は、・・・はいぃぃ・・・・」
江場さんは腰が抜けて倒れてしまった。
怖いな。今の緩急俺も怖かった。やはり顔にドスが効いている。
「そういうことです。江場部長。言ってましたよね。
彼女の意志を尊重すると。四葉くんは貰っていきますよ。」
「・・・・・・・・・・」
放心している。俺の声聞いてるのかな。
「江場部長、ちゃんと周りを見てください。
もう陸上部の殆どが俺の味方です。茜から聞きました。
連覇がかかっているとはいえ、練習してるのが駅伝組だけ。
それ以外はみんな勉強してます。状況を理解してください。
夢中になるのは良い事ですが、巻き込んではいけませんし、暴走も良くない。
部長なんですから、その辺、宜しくお願いしますよ。
リーダーは部員の様子をちゃんとチェックしてください。」
「・・・・は、はい・・・・」
「では、失礼します。五月も行こうか。」
「は、はい。ナギくん・・・・」
江場部長はしりもちをついたままだ。相当ショックだったらしい。
まあ四葉くんからあんなこと言われたらそうなるよね。
「ナギ、やっぱりあんた、やり方がぬるいわね。上杉の言うとおりだわ。
もっとボコボコに言った方が良いのに。」
「理詰めが得意でね。あの人はちゃんと話聞く人だから、あのやり方で間違ってないさ。
それに見てよあれ。かなりショックを受けてる。迫真の演技だったね。俺も怖かった。」
「誉め言葉として受け取っておくわ。あたしも女優やれるかしら。」
2階にいた風太郎たちと合流する。
最初は風太郎と五月で何とかしようとしたようだ。
本物の四葉くんもいた。
「ドッペルゲンガーだー!死にたくありませーん!!」
「ドペゲンという事は・・・・そうか!」
「はぁ・・・間に合ったみたいだね。」
「一花!助かったぜ!三玖を呼んできてくれたんだな!」
「・・・わたしは何もしてない。」
「?・・・・・・・・・・????
五、四、一、三・・・・?・・・・・二乃!?」
上杉コンピュータは困惑気味。
髪がね。短いからね。切ったのついさっきらしいし。
「詳しくはわからないけど・・・・・気持ちの変化があったんだね。二乃?
そんなにさっぱり行くなんて、もしかして失恋ですか~?」
「一花・・・・・・ま、そんなとこよ。・・・・言っとくけど、あんたの事じゃないから!」
「お、おう・・・。」
二乃が風太郎に指を差した。
ダメです姉御。それ答え合わせです。
グッバイ金太郎。
「四葉。あたしは言われた通りやったけど、あんたはどうするの。
こんなことしなくても、本音で話しあえば、きっとわかってくれるわ。
・・・・アンタも変わりなさい。辛いけど、良い事もきっとあるわ。」
「・・・・うん。行ってくる。」
「ついてこっか?」
「一花。・・・ううん。・・・一人で大丈夫だよ。」
四葉くんは駅伝組の方へ向かっていった。
まあ、大丈夫だろう。江場部長も流石に反省してるはず。
二乃が五月と向き合う。仲直りの時間か。
「・・・二乃、先日は」
「待って!・・・謝らないで。あんたは間違ってない。・・・悪いのは、あたし。」
「二乃・・・」
「あんたが間違ってるとすれば・・・・力加減よ。結構痛かったわ。」
「そうだね。俺も誰かさんのせいで痛かった。お陰で口内炎が再発したよ。」
「もう!なによ!この間謝ったじゃない!」
「ふふ。ごめんごめん。冗談だ。」
「ぅう・・・・二、二乃~~!
そ、そうです!この前のお詫びに、これを渡したかったんです!
この前見たがっていた、映画の前売り券です。今度、一緒に行きましょう。」
「・・・・・全く。なんなのよ。思い通りにいかないんだから。」
二乃も・・・・手に映画のチケットを持っていた。
・・・・・・やはり彼女たちは、正真正銘の五つ子である。
「この度はご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ありませんでしたぁ!」
中野家に戻ってきた。四葉くんの土下座で出迎えられる。
キミと一緒に帰ってきたんだけどね。
「陸上部の皆さんとはお話をして、大会だけ協力することになりました。」
「あぁ?いつまでそんなこと気にしてんだ。早く入れ。時間ないぞ。」
風太郎が言う。
「それとお二人さん。おかえり。」
「「た、ただいま・・・・」」
二乃と五月も、中野家に戻ってきた。
中野家マンションのリビングでラストスパートを行う。
「問題集は全部終わったけど・・・・」
「私達、ちゃんとレベルアップしてるのかな?」
「心配するな。秘策がある。・・・・カンニングペーパーだ!!」
「見損なったぞ相棒」
いきなり何を言い出すんだこいつ。
お前、消しゴムにマジックで書いてケースで隠したりするのか?
それなら俺やったことあるぞ。
でもカンニングペーパーで答えかくとさ、その答え意識して覚えちゃうんだよね。
結果意味なし。
「あ、あなたはそんなことしないと思ってたのに!」
「そんなことして点数取っても意味ないですよー!」
「じゃあもっと勉強するんだな!こんなもの使わなくていいように、
最後の二日間で叩き込む!覚悟しろ!
と、言うように進めさせていただきますがー・・・いかがでしょう・・・」
二乃には下手にでる風太郎。
まあここまでやってまた喧嘩は困るが。
「・・・何それ!今まで散々好き勝手やってきたくせに!
・・・ちゃんとやるわよ。・・・・よろしく。
始めるわよ!用意しましょう!」
「「「「はーい!」」」」
5人全員が自ら仲良く勉強に取り組む光景。
・・・・感慨深い。ついに、この光景を見ることが出来た。
「長かったな。風太郎。」
「そうだな・・・・いや、まだ、ここからだ。」
「ああ。」
テスト前に姉妹の絆は修復され・・・・期末テスト当日を迎えた。