五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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食堂で昼食を済ませて教室に帰るとスマホが鳴った。

 

風太郎が見当たらなかったので伊達片倉コンビと食べていたが、どこに行っていたのだろう。

伊達くんは焼肉定食だった。焼肉定食の焼肉を意識して見たのは初めてかもしれない。

やたら玉ねぎ入っていたな。安いから仕方ない。

 

 

スマホを見ると風太郎からメールが入っている。

緊急事態と書いてあるが。だったら電話してくれよ。

本文を開くとーーー

 

【三玖からラブレターをもらった】

「はぁ!?!?」

 

「うわっ!びっくりしたー・・・・急にどうしたの?ナギ君」

「ごめんよなか・・・一花さん」

 

 

 

隣にいた一花さんを驚かせてしまった。

そらびっくりするだろう。これは緊急事態だわ。

ついに我が親友にこの世の春が訪れたのか。お兄さん感激。

 

 

「いつもクールな有坂くんがそこまで驚くなんてよっぽどだねー。何があったの?」

「開けてびっくり見てびっくりなメールが入ってただけだよ。川村さん」

「そ?気になるなぁ。見せてー?」

「ダメです。プライバシーの侵害です。

あとこれ俺に関することじゃないから見せたら怒られる。」

「ちぇー」

 

とりあえず詳細を聞こう・・・・

 

 

 

 

 

 

風太郎の話では机の中に手紙が入っていたらしい。

放課後屋上とか。タイマンじゃん。エッチじゃん。うらやましー。

会って2日ってことは一目ぼれかぁ。良いね。男見る目あるよ。キミ。俺も鼻が高い。

 

 

「ねぇねぇ、どんなメールだったの?」

「いやそれは・・・・うーん。」

 

 

一花さんとの授業中のヒソヒソ話ももはや恒例になりつつあった。

今では痛い視線もあまりない。全部話すのはまずいよなぁ。

適当に嘘を混ぜておこう。

 

 

「風太郎がラブレターもらったんだって」

「ホント!?」「中野 一花さーん。授業中はお静かにー」

「はい。ごめんなさい・・・・・」

驚くよなぁ。無理もない。

 

 

「ねね、相手は誰なの?どんな人なの?どこかで告白するの?

返事はどっちなの?決まってるの?」

「そこまで聞いてないよ。明日の昼休みに校舎裏で、らしいけど。」

「明日のお昼に校舎裏ね!わかった!」

 

一体何がわかったというのか。絶対見物にくるだろ。

嘘ついて正解だった。まああれだよね。同じクラスである程度分かってきたけど、

恋バナ好きなタイプだよね。

 

 

そんな内緒話をしている間、一際鋭い視線が俺達を捉えていたのを、

この時点では気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらね!!程度の低いイタズラに乗っかっちまったぜ!」

「そう思ってたんなら俺を呼ばないでくれよ・・・・」

 

 

夕焼けの屋上。風太郎に呼び出された。・・・俺が。一応ついてこいとのことで。

 

 

「本当にラブレターだったらどうするつもりだったんだよ・・・・・完全に俺お邪魔虫じゃん」

 

まあ時間がたって冷静になったら、色々おかしいということに考えに至った。

大方、屋上で待ちぼうけを食らわせて家庭教師を妨害しようと。そう考えたのではないだろうか。

この間は睡眠薬だったし。ただそれにしては一花さんが驚きすぎている気もしたが。

話は姉妹全員で共有されていないのか?

 

 

「全く。こんなものを机の中に忍ばせるとは・・・・お前も見るか?」

「やめてくれ。ラブレターを見せるなんてデリカシーのない・・・・・一応可能性はあるじゃないか。」

「そんなものはない。まあ本当に来られても困「ガチャリ」

 

 

 

ドアが、開く。

 

 

そして・・・・三玖が居た。

 

 

まさか本当に?

 

 

「・・・よかった。手紙見てくれたんだ。食堂で言えたらよかったんだけど

・・・・誰にも聞かれたくなかったから。」

「ストップ!用があるのは風太郎だよね!俺は邪魔だよね!帰るね!お疲れ様!」

「別に良いよ・・・・ナギなら聞いていても」

 

いいの?なんで?

 

「あ・・・そうですか。」

 

 

「・・・・あのね・・・・ずっと・・・言いたかったの。」

 

やっぱ俺居たらダメだろこれ。しかしもう逃げられない。邪魔したくない。

 

「・・・・す・・・」

「・・・す?」

 

「・・・・すえ はるかた!」

 

 

「「・・・陶 晴賢?」」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・よし。言えた。スッキリ・・・・」

「ちょ、ちょっと待った!何の事!?ひねった告白とかじゃないよな?」

「うるさいなぁ・・・・問題の答え・・・だけど。」

「ま、待てって!それを今なんでこのタイミングで!」

「っ!」

 

風太郎が右手を掴んだ瞬間、三玖のスマホが落ちてしまった。

画面に映っているのは・・・・武田家の家紋。

ダイヤのマークを横にした形の図形。それが4つ。

 

「武田菱・・・?それは、武田信玄の」

風太郎がそう呟いた。正式名称があるのか。

 

「・・・見た・・・・?」

「え・・・あ・・はい?」

「・・・・・・戦国武将・・・・好きなの・・・!」

 

 

そう言うと顔を真っ赤にして両手で隠してしまった。

成程ねぇ。全部繋がった、かもしれない。

 

 

 

 

 

 

三玖の自供によると、昔やった戦国武将が主役のゲームから武将が好きになり、

そこから本まで読むようになったという。陶 晴賢を知っているんだから、結構筋金入りだろう。

 

周りの同性に戦国武将好きがおらず、中々言い出せなかったらしい。

「歴女」という言葉もあるが、学生に当てはめるような言葉ではないだろうし。

もっと年上のイメージ。

にしても手紙に陶 晴賢って書けばよかったのに。

 

 

 

「戦国武将、それも武田家がお気に入りかぁ。・・・・・・人は石垣、人は城、人は堀。」

 

「え?急にどうしたんだ凪?」

 

「・・・・・情けは味方、仇は敵なり・・・・でしょ?」

 

「ふふ、良く知ってるね。本当に好きなんだねぇ。」

 

「・・・・これくらいは、当然・・・」

 

「は?なんだお前ら?何かの暗号か?」

 

 

 

胸を張られてしまった。有名だよね。武田信玄の名言。

上杉先生はご存じなかったようだ。謙信公が好きなら良かったのにね。

苗字が同じってだけなんだけど。

 

 

「ナギも好きなの・・・?戦国武将。」

「俺もゲームやってたからねぇ。その辺の人よりは詳しいよ。」

「もしかして・・・・同じゲーム・・・・?」

「あー、多分違うよ。俺がやってたの武将になりきってバッタバッタと敵を倒していくやつだから。戦略性あんまりないやつ。」

「あとで教えて・・・そのゲーム」

「イケメンと美女ばっかだよ?出てくるの」

「・・・むー。」

妙なシンパシーを感じた。

 

 

 

「そういえば前回の日本史、俺満点だったなぁ!」

どうした急に。大声出して。張り合ってきたな。あと前回だけじゃない。

 

「そうなの?」

「俺の授業を受ければ!三玖の知らない武将の話もしてやれるぜ?」

 

「風太郎はいつも満点だからねぇ。」

 

意図はわかった。風太郎なりに活路を見出したらしい。

俺なりに援護射撃してみる。

 

 

 

 

「それって・・・・私より詳しいってこと?」

「え”っ」

 

 

 

「じゃあ問題ね・・・!信長が秀吉をサルって呼んでたのは有名だけど、この逸話は間違いなの!

本当はなんてあだ名だった!?」

 

 

すっごい喋るじゃん。いつもの気怠そうな感じはどこへいった。

にしてもそのあだ名間違いなんだ。初めて知った。あのゲームずっとサル呼びだったし。

 

 

「それ間違いだったんだ。・・・・俺はわかんない。上杉先生は?」

「ハゲ・・・ネズミ?」

「・・・・・・正解」

「マジで!?すげぇ!」

 

さっきの反応を見るに絶対わからないと思ってた。急にどうした。

元々良かった頭がさらに覚醒したのか。

 

 

この回答をきっかけに三玖の口撃、

早口戦国武将トークが始まった。

 

 

 

「謙信が女だったって説があって・・・・!」

「うんうん!それなー!」

 

 

しばらくは俺も聞いていた。

でも絶対聞いてないわこの人。心ここにあらず。さっきのはまぐれだったか。

俺は横で二人をじっと見てる。風太郎がこの子と仲良くならないとダメだから。

 

 

ちょっと面白いけど絶対ついていけない。謙信公、女説は聞いたことある。長尾景虎だっけ。

あれ?違う?こんがらがってきた。どうしよ。俺帰ろうかな。

 

まあでも・・・・珍しく風太郎が他人の心を掴もうと努力してるんだ。

見守っておこう。

 

 

 

 

 

 

・・・・良いな。今のこの瞬間。友達の成長を近くで見て、感じるというのは。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・それでね!」

「あー!そろそろ帰らないと!」

 

何十分経ったかな。結構喋ってたぞ。ちょっと武将に詳しくなってしまった。

島津4兄弟の四男、島津家久は正室の子じゃないそうです。多分テストには出ない。

グラウンドを見ると運動系の部活はぞろぞろと引き上げていた。

 

陸上部・・・・あいつもちゃんと居た。今度顏を出しておこう。

 

 

 

「なんか話したりないなー!そうだ!

次の家庭教師の内容は日本史を中心にしよう!三玖!受けてくれるか?」

「・・・・・そこまで言うなら・・・良いよ。」

 

 

すげぇ。上手く行ったぞ。作戦は成就せり。

良かったね。上杉先生。

 

 

 

 

 

 

 

屋上から出て階段を降りていく。

日は落ち切っていないが、校舎の中は暗いな。何時だろ。今から帰ったら。

 

他愛もないことを考えていたら後ろから音がした。

ピッ ガコン と。自販機で飲み物でも買ったのかな。

振り向けば・・・・三玖がこちらに缶ジュースを2本差し出している。

 

 

 

「これ・・・・友好の印。」

 

 

 

抹茶ソーダって書いてあるけど。罰ゲームですか?飲む人は実在したのか。

 

 

 

「気になるって言ってたじゃん・・・・大丈夫だって。

・・・・鼻水なんて入ってないよ・・・・なんちゃって。」

 

 

鼻水?聞いたことあるかも。なんだったっけなぁ。

まあハゲネズミをクリアした上杉大先生ならわかる・・・・

「・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

わかってない顔だ!絶対に!

まずい・・・・何としても思いださなければ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あれ?この逸話知らないの?・・・・そっか。」

 

 

缶ジュースが1つ、引っ込められる。

まだ知り合って数日だがはっきりとわかる。間違いなく、露骨にガッカリしている。

でも・・・・思い出した。その缶ジュースを見て。

 

 

「・・・・ナギは?」

「・・・・秀吉様の抹茶ソーダ、いただきとうござりまする。」

「!・・・くすくす・・・・・粗茶ですが・・・・どうぞ。」

 

 

戦国武将の喋り方ってこれで合ってるのかな。知らんけど。

でも殿の機嫌は良くなった。ありがたき幸せ。

 

 

 

危なかった。出された飲み物がコレじゃなかったら思い出せなかった。

秀吉の茶会だ。もっともその単語しか思い出せなかった。誰が鼻水飲んだのか思い出せん。

そもそも秀吉だっけ?鼻水垂らしたの。まあいいや。

折角なのでこいつを飲んでみる。

 

 

 

「・・・・相も変わらずまっこと見事なお点前ですなぁ。殿」

「くすくす・・・・・・くるしゅうない」

「そろそろ帰りましょう。殿。謙信公。」

「・・・フータローは良いよ。二人で帰ろう。教わる事なさそうだし・・・・ばいばーい。」

「えっ・・・・・そんなー。風太郎悪い、先帰る。」

 

 

 

許してくれなかった。許されたのは俺だけだった。選ばれたのは有坂でした。

すまん、友よ。今日の所は許せ。いつか塩を送るから。

 

 

 

 

「凄いねこのジュース。ほんとに抹茶のソーダだわ。」

「・・・・そう?私は好きなんだけど・・・」

「千利休もびっくりだよコレ。」

「ふふ・・・・・たしかに。」

 

「あ、戦国武将じゃないけどやっぱり知ってるんだ?」

「もちろん・・・・ゲームには出てこないけど本には沢山でてくる・・・・

秀吉とか細川忠興とか・・・・」

 

「細川忠興・・・・名前は知ってるんだけどどういう武将だっけ?愛が重いやばい武将だった気が・・・」

「・・・・教えてあげる。いーい?細川忠興はね・・・・」

 

そんな調子で三玖をマンションまで送って行った。武将トークは結構楽しかった。

ついていけなくても三玖がその都度教えてくれる。良い解説付きだ。

 

 

 

 

 

しかし・・・・明日が憂鬱だ。風太郎のことだ。

あんな仕打ちを受けたのだ。今から何をするか目に浮かぶ。

 

そして当然、俺もそれに付き合わされるんだろう・・・・






これを書くにあたって三玖はかなり厄介です。
さんみく 三美玖と打って美を消しているので。

変換登録しろって話なんですがね。
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