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4月1日。始業式。初登校日である。
3年に進級初日、クラス発表の日だ。
「おはよう。風太郎」
「よう。凪。」
いつものように風太郎と一緒に登校していた。
「クラス変わっちゃいますねぇ。上杉先生。」
「俺はどこでも構わん。お前が居れば色々便利だがな。」
「またー。ツンデレしちゃってぇ。」
「何とでも言え。」
今日も我らが上杉大先生は平常運転だった。
3年生になっても相変わらずだ。変わらない魅力ってあるよね。
「皆には困らせる事言っちゃったかなー・・・・?」
「お前の稼ぎだけじゃ、やっぱ苦しいのか?」
登校中に一花と合流。一緒に登校する。
今まで一花の給料からアパートの家賃、生活費を払っていたが、
最近、五つ子全員にバイト要請を出した。とりあえず家賃を五等分するらしい。
そのことをちょっと後悔しているようだ。俺もこっそりメールで援護射撃はしていたが。
「ギリギリどうにかなるんだけど・・・・家賃のために確実な仕事しかしてこなかったから。
わたしもやりたいことをやろっかなって。」
「なんにせよ、成績さえ落ちなければ良い。」
「そうだねぇ。」
「ここまできたら、卒業したいよね。・・・これからも頼りにしてるぞ?せーんせ!」
高校生活、最後の1年。
とりあえず、一花はちゃんと学校に居てくれるようだ。
学校の前に紙が張り出されている。
クラスの名簿だろう。早速確認しよう。
「お。相棒。一緒じゃないか。めでてぇ。」
「そうだな。何かあればこき使わせてもらうぞ。」
「こき使うのはキミだけじゃないよ。俺もキミをこき使う。」
「言ってろ。」
思わず肩を組む。
1番 有坂 凪
2番 上杉 風太郎
珍しい。俺が1番だ。大体何人か入るんだが。
相沢とか青柳とか朝倉とか。「あ」から始まる奴は居なかったようだな。
名簿を引き続きチェックしていく。
・・・・前田くんだ。一緒のクラスか。やったね。
伊達くん、片倉くん、川村さん、屋代さんは・・・・うお、すげぇ。別のクラスだが、4人固まってる。いいなー。
そして、なんといっても・・・・・
「凪・・・・」
「うん・・・・」
「こんなことあるのか?」
「調整入ったね。今年一年酷いことになりそうだ。」
俺と風太郎のクラスには、中野姉妹全員が在籍していた。
たしかに上杉先生の今年の運勢は大凶である。疑いようが無かった。
俺もこれから先を考えると少し頭が痛くなった。
「よお!有坂!また同じクラスだな。よろしく頼むぜコラァ!」
「前田くん。久しぶりだな。キミと一緒で嬉しいよ。」
前田くんと手首のスナップを効かせ、手の甲を軽くぶつけあう。
彼がいてくれて助かった。友達0スタートはちょっと辛い所だった。
風太郎は親友なのでノーカン。
「ねえ。そこの貴方。有坂くんね。」
「うん?・・・・キミは?」
グレーの髪色のポニーテールの女生徒に声を掛けられた。
・・・・知らない人だが。女性だよな?背が高い。175は超えている。
「私は毛利。毛利 雫。リンから聞いたの。面白い子が居るって。貴方の事ね。」
「リン・・・?名前だけだと誰の事かわからないな。」
「川村 凛。知ってるでしょ?」
「ああ。川村さんか。名前で呼んだことなかったからピンとこなかった。」
「あなたの噂、リンから聞いたのよ。これから楽しくなりそう。仲よくしてね。」
「ああ。よろしく。」
「俺は前田。よろしく頼むぜ。」
「ええ。」
毛利さんと自己紹介、握手を交わした。
川村さん、俺の事を何と言ったんだ。気になる。どうやら友達だったようだ。
「ホント似てるねー」
「中野さんが五つ子って知ってたけどー」
「実際揃ってるところをみると、すげーな!」
授業前の朝の休み時間。中野姉妹は注目の的だった。
教室のうしろのスペースでクラスメートにもみくちゃにされている。
去年の転校直後の一花を思い出す。
「苗字だとあれだから、名前で呼んでいい?」
「あれやってよあれー!テレパシー!」
「三玖ちゃんかわいいーもっと顔見せてー」
「だ、大人気だな。中野さんたち。」
「5人全員一緒のクラスだからねぇ。」
「見分けるの、大変そうね。」
「所持品で見分けると良いよ。」
教室の後ろでワイワイしている光景を3人で窓際から眺めていた。
あそこに割って入る気はないな。周りのクラスメートも知らない人だらけだし。
そんな人込みの嵐へ我らが家庭教師、上杉風太郎が向かっていった。
「どいてくれ。」
「なぁに?上杉くんも中野さんたちのこと気になる?」
「トイレだ。邪魔だからどいてくれ。」
群衆をかき分けて去っていく風太郎。
やるな。あいつらしい。水を差していった。
「何あれ・・・感じ悪っ。」
「上杉の野郎・・・・なんであんな言い方しか出来ねぇんだ?」
「彼なりの姉妹への気遣いさ。わかってやってくれ。良いね。さりげなくカッコいい事をする。」
「上杉くんも噂は立っているけど、彼、聞くほど悪い人ではないみたいね。」
「親友としては、それをわかってくれると嬉しい。
こちらがちょっと下手になれば、上手くやれるよ。」
「それ、結構難しいのよ?あなたは大人ね。」
常時100点の勉強大魔神だからな。
風太郎の噂があらゆるところで立つのは当然だ。
3年1組、クラス最初の時間。
「今日からお前たちは3年生、最高学年だ。
後輩たちに示しの付くような学校生活を送ってくれ・・・・」
「はーい!」
担任が喋っていたところ、四葉くんが急に手を挙げた。
あの。ちょっと恥ずかしいんですが。友達として。
「このクラスの学級長に立候補します!」
「えぇ・・・まだ誰も聞いてないんだけど。」
「そこを何とか!」
「反対もしてないけど・・・・他にやりたいやつもいないから、いいよ。」
「皆さん!学級委員長の中野 四葉です!
困ったことがあったら何でも聞いてくださいね!」
そのままの流れで四葉くんが学級委員長に就任した。
男子側の学級委員長も決めなければいけないが・・・・
「ついでに、男子の方も決めとくぞ。立候補する奴はいるかー?」
「いますかー?」
「推薦でもいいぞー」
「いいぞー!」
担任のオウム返しと化した四葉くん。どうしてこんなことをしたのか。
ちょっとだけ予想はつくが。
「男子の委員長なんて武田しかいないだろ・・・・」
「期末も学年1位だったしな・・・・」
そんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
武田・・・ああ、テスト結果でいつも風太郎の下にいる。
・・・・学年1位だと?
「毛利さん、武田くんって前回の期末で1位だったの?」
「そうよ。上杉くんが初めて1位以外・・・・
それどころか2桁まで落ちたから、みんな騒いでいたわ。」
「・・・・・知らなかったな。」
前回の3学期末試験。かなり家庭教師が負担になっていたようだな。
次は少し俺の方で頑張ろうか。
「先生!私、学級長に一番ぴったりな人を知っています!」
「ほう。誰だい?」
めっちゃ嫌な予感する。
「上杉風太郎さんです!!」
「・・・・・・・はぁ!?」
やっぱり。
「上杉くんで大丈夫・・・・?」
「武田くんを差し置いて・・・・?」
「よーしじゃあ上杉に決まりなー。次の係を」
「先生、俺はやるとは言ってません!それに、融通の利く適任な人物を知っています!」
めっちゃ嫌な予感する。デジャビュ。
「有坂くんの方が適任だと思います!!」
「なんでよ」
やっぱり。こいつ俺に押し付ける気だ。
「有坂くん・・・?ってだれ?どんな子?」
「お前、知らないのか?有坂は‥‥」
噂話が立つ。ああ内容めっちゃ気になる。もっと大きい声でしゃべってよ。
エゴサーチ有坂。
「だそうだが、有坂、どうだ?」
「いやちょっと・・・・勘弁してください。武田くんか上杉くんで良いんじゃないですか?
自分成績普通ですし、サポートが向いてる立場なんで。」
「誰だ?武田って。そんなやつ知らんぞ。」
「お前さぁ・・・・」
知っとけよ。いつもお前の下にいた名前だよ。
さてはこいつ自習しててクラスのガヤガヤ音聞こえてなかったな?
「私は上杉さんが良いと思います!」
「そうだなー。じゃあやっぱり上杉に頼むわ。」
「クッ・・・・・先生、俺はやるとは・・・」
四葉くんのダメ押しで上杉学級委員長が爆誕した。
とても不安だ、色々手を回してサポートしてやろう。
それなら得意だからな。
「クッソ・・・・四葉の野郎、余計なことを・・・・」
「災難でしたね学級長。まあ色々手伝いますよ。」
休憩時間中に恨み言を呟く風太郎。マジどんまい。
「フータロー。聞きたいことがあるの。」
トイレから出たところで三玖に声を掛けられた。
「ここに魔法のランプがあります。」
「ないが?」
「あるぞ」「あります」
「願いが5つ叶うとしたら、フータローはどうする?」
「心理テストか?そういうのって普通3つじゃないか?」
「・・・・そういうことね。まあ良いじゃないの。」
「ナギ、喋っちゃダメ。」
「すいません」
これは・・・・風太郎の誕生日が近いんだ。5人からのプレゼントかな。
俺は別になんも渡さなくて良いや。風太郎金ないし。お返し用意させるのあれだから。
というか渡したことない。姉妹の邪魔はしちゃだめだな。
「・・・そんなもの、金以外を選ぶ奴はいるのか?」
「お金・・・・あと4つ。」
「体力が上がったらと考えたことはあるが・・・
おかげで疲れが溜まる一方だから疲労回復もアリだな。
最近寝つきが悪いし、それも良くしたい。・・・あと運勢も上げてもらおうか。」
金銭、体力向上、疲労回復、睡眠改善、運気上昇。
この5つらしい。
「わかった。」
「何がわかったんだ?」
「じゃあ、ナギも教えて?」
「なんで答えてくれないの?」
「え?俺もあるの?」
「うん。5つ。」
「うーむ。」
「俺の話聞いて?」
5つ願いが叶うねぇ。いっぱいあるけど。
空を飛んでみたいとか深海を見てみたいとか世界旅行したいとか、色々ある。
こんなん無理だしな。ちょっと言えない。
あと、一番は・・・・・時を超えたい。・・・・・自由自在に過去へ未来へ。
「・・・・・・・いや、俺は遠慮しておくよ。
おかしな願いばかりしか出てこない。実現不可能だ。」
「どんなの?」
「時間を巻き戻せたら とか。」
「流石に無理・・・・」
「でしょ?だから遠慮しとくよ。」
「何の話なんだお前ら・・・・・」
プレゼントのお返し選ぶの面倒だし。
貰っても素直に喜べないんだよな。その後を考えると。
「四葉ちゃーん!先生が呼んでたよ?」
「ん・・・・・・?」
クラスメートが三玖にそう話しかけてきた。早速五つ子の弊害が出ている。
「そいつは四葉じゃないぞ。三女の三玖だ!」
「え?そうなの?」
三玖は頭をブンブンと縦に振る。
「ごめんね!まだ覚えきれなくって・・・・」
「問題ない。慣れてる。」
「あ!四葉ちゃーん!」
「そいつは五月だ!」
まだ顔と名前が一致しないらしい。仕方ない事だ。
同じ苗字が5人だからな。顔立ちもそっくりだし。
「良いか!面倒なら身に着けているアイテムだけで覚えろ!
このセンスのかけらもない星のヘアピンを付けているのが五女の五月だ!」
「いきなり出てきて失礼なことを言いますね・・・・」
たまたまその辺にいた五月がご立腹。
そらそうだ。歩いていたらいきなりパイを投げつけられたようなものだ。
アメリカ流ドッキリ。
「四葉はあの悪目立ちのリボンだ!とりあえずはそれだけ覚えておけ!」
悪目立ちってどうなん?目立つリボンって言い方で良くない?
「・・・・・・上杉くん凄いね!」
「ありがとー!さすが学級長だね!5人の事もっと教えて!」
「え・・・ちょ・・・おい!」
「ほら!あそこに四葉ちゃんが!」
「あれは二乃だ!」
上杉学級長はクラスメートに連れていかれてしまった。
・・・人気の中野姉妹を通じてクラスになじむ上杉風太郎。
うん。アリだな。下手に俺に何かする必要はない。直接的なアシスト不要。
学級委員長にもなったんだ。ここで人付き合いを勉強してもらおう。
「あの女生徒・・・・フータローにベタベタと・・・・・」
後ろで三玖が燃えていた。完全なる嫉妬の黒炎である。
うんうん、妬ましいよな。わかる、わかるよ。でもそう思うならキミもベタベタしなさい。
最後の創作キャラクター、毛利の登場です。3年1組、同じクラスの所属です。
創作キャラクターに関しては覚えなくていいと度々発言していますが、
彼女は強烈なキャラ付けをしてしまったため、覚えたくなくても覚えてしまうかもしれません。
あと平山と浅井という名前が後ほど出てきますが、名前の登場だけです。
キャラクターとしては全く出てきません。忘れていいです。