五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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ちなみに私は陸上競技をやったことがありません。
パーソナルベストタイム = 大会等、公式の場でのベストタイム
という認識です。




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週末。とある競技場に来ていた。

陸上部の見学・・・・・今日は県大会。

茜の様子を見に来ている。

 

 

スタンドからトラックを見る。

今は、ハードル走の決勝が行われている。

県大会にしてはレベルが高いと思う。100mは現時点で12.07秒が1位。

茜は4位。予選と準決勝を見ていたが、明らかに手を抜いていた。

別に真面目にやれとは言わない。決勝だけ決めてくれれば構わない。

 

 

今日、陸上部にはまだ顏を出していない。

この時期は顔を出しづらい。新1年生が入って間もないからだ。

部員でもない俺が我が物顔で居座っているといい気はしないだろう。

例え先輩と言えど。

 

 

なので時間をかけて訪問頻度を増やしちょっとづつ顔を出していく。

機材の手伝いも積極的に。

まだ大会会場に顔を出すほど、信頼を得られていないと思っているので、スタンドから見ている。

 

1年生に3年生が気を遣うのも情けないが、俺はそういうやり方を好む。

後輩なんだから先輩の為に我慢しろ という考えは好きじゃない。

主役は俺じゃない。陸上部の面々なんだから。

 

 

 

100m決勝の準備が始まっている。

茜も出てきた・・・・うわ。こちらに気づいたようだ。

ブンブンと手を振っている。やめろや恥ずかしい。

お前だけだぞ。声まで出しやがって。隣の選手びっくりしてるじゃないか。

 

 

控えめに手だけ振って返した。あとで顔を出さざるを得なくなってしまった。

こっそり見る予定だったのに。

 

 

選手紹介が始まる。ライバルは予選1位だろう。

パーソナルベストタイムに12秒切りはいなかった。

特に全国的に有名な選手はいないはずだ。

 

が、これからあいつがその選手になるだろう。

 

 

「・・・・6レーン、朝倉 茜。旭高校2年・・・・」

 

選手紹介と同時に片手をあげ、お辞儀をし、こちらに手を振ってくる茜。

さっきやっただろ。目の前にいるカメラマンをガン無視じゃねぇか。パフォーマンスしてやれよ。

一応振り返す。

 

 

 

全員が選手紹介を終え、クラウチングスタートの態勢がとられる。

 

 

「On Your Mark.」

 

 

 

 

11秒9、切ってこい。

 

 

 

 

「Set.」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー炸裂音が響きわたった。

スタートは・・・相変わらずだ。一番後ろから。

誰も注目していないだろう。俺を除いては。

 

予選1位の選手がばっちりとスタートを決めて先頭をキープしているが・・・・

 

 

 

 

来た。

後ろから凄まじい速さで茜が迫っていく。

60mの時点で並び、前に出た。突き放す。

 

 

絶望する瞬間だろう。なにせ隣のレーン。

 

予選1位だったのに。ベストタイムもトップだったのに。

 

スタートを決めて先頭に立っていたのに。何が起こっているんだ。

 

そう思っているに違いない。

 

 

 

 

そのままゴールイン。記録は、・・・・11秒87。

 

見事、11秒9を切る。パーソナルベストが初めて11秒台に更新となった。

 

 

「なんだあれ!一番後ろだったよな?」

「そ、そうだったか?」

 

 

スタンドから困惑した歓声と拍手が上がる。

インパクトのある素晴らしいパフォーマンスだった。これは知名度が上がるだろう。

 

 

茜は優勝のインタビューを受けていたが・・・・

 

「この感謝を誰に伝えたいですか?」

「スタンドにいる凪センパイです!」

 

「凪センパイ・・・・彼氏ですか!?」

「いえ、師匠です!」

 

 

 

帰りたくなった。とても恥ずかしかった。

あいつ許さねぇ。

 

 

 

 

 

 

「センパーイ!やりましたよ!」

「素晴らしいぞ茜。よくやった。しかしインタビューで俺の名前を出すな。」

「あ”ぁ”~~~~」

 

よくやったと褒めてやりたかったが余計なことをしたので

両サイドからグリグリを食らわせる。何してくれとんねん。

 

 

「次は地区ブロックか。頑張れよ。」

「何言ってるんですか!センパイも頑張って付き合ってくださいよ!」

「はいはい。いい加減スタート何とかならないのか?また一番後ろからじゃないか。」

「何ともなりません!」

「・・・・・・・・そうか。」

 

どうにかして矯正したいが。

矯正すれば一気に11秒6が見えるだろう。スピードは間違いなくトップクラスだからな。

 

「あ、茜さん?誰なんですかその人?」

「この人は自分のセンパイです!師匠っす!」

「し、師匠ですか。お疲れ様です。」

 

「お疲れ様です。申し訳ないんだけどこれから定期的に陸上部に見に来ます。」

「はい。3年生ですよね。茜さんの師匠ならもちろんです。わたしにも教えてください。」

「ダメっす!この人は自分のっす!」

「すいません・・・・」

 

流れで1年生連中に挨拶することとなった。

まあいいか。これである程度の信頼度を稼いだ。

後はコツコツ時間をかけていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お金、体力向上、疲労回復、睡眠改善、運勢向上・・・・」

「どれが良いかな・・・・・」

「難しいね。」

 

 

とある日の学校の日常。三玖の相談に乗っていた。

風太郎の誕生日に何を上げるのかと言う話である。

 

ランプに願ったのは上記の5つ。現在五つ子は家出中でアパート住まい。

金をあまりかけられないという所を考えると、悩ましい。

最初の希望が金だもん。まずここは無理。

 

 

 

「うーん・・・・どれかな・・・」

「金はとりあえずナシで。ここは一花のポジションだと思う。」

「うん。」

「残りの4つねぇ。・・・・どれが良い?それで決めよう。」

「フータローも私も・・・体力がない。」

「たしかに。」

 

二人の共通点。

ここにヒントがありそうだ。

 

「体力かぁ・・・一緒にバッティングセンターでも行けば?」

「野球・・・・やったことない。サッカーならあるけど・・・・」

「だよね。違う物か・・・・」

 

サッカー経験あるんだ。意外。

でも野球より疲れると思う。風太郎は無理。たぶん10分持たないよ。

ゴールキーパーでもフルタイムは無理だと思う。

 

 

「・・・・ジムのチケットは?」

「ジム・・・・ああ。確かに。良いね。その発想はなかった。」

 

ジムのチケット。ペアチケットなら一緒に運動出来る。最適だ。

 

「場所と物は俺が選んでおこう。

決まったらいくつか教えるから、最終判断は任せたよ。」

「うん。おねがい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どれがいいかしら?」

「キミもかぁ・・・・・」

 

 

今度は二乃から相談を受ける。

一花と三玖のポジションが埋まったので、その3つ以外。

 

 

「疲労回復、睡眠改善、運気向上・・・」

「他にもあったでしょ?」

「いや、埋まってる。さっき体力向上は取られた。三玖からも相談貰ってる。」

「へぇ・・・・あいつは何にしたのよ?」

「スポーツジムの……チケット。」

 

 

ペアチケット という事を伏せた。

ここ大事です。じゃないとこの後の物の選び方が面倒になる。

あいつがペアチケットなら私も一緒に居られるものを選ぶわ 絶対こうなる。

ニ乃の姉御は負けず嫌いだなあ。

 

 

「疲労回復でマッサージとか?キミそういうのイケるでしょ。」

「フー君に逃げられそう・・・・この間の温泉がアレよ?

とぼけられたら怒ってられない自信ないわ。

リラックスで疲労回復・・・・アロマの加湿器なんてどう?」

 

「加湿器・・・・上杉家の家庭事情を考えて、

電気代やランニングコストがかかるのは良くないな。

使い切りでもキャンドルの方が良い。」

「キャンドル・・・・何の香りが好みかしら。」

 

「何でもいいと思うよ。夜にキャンドル炊いて勉強してる光景が浮かぶ。

安いタイプで色んな種類を沢山買っていけばいい。」

「そうね・・・そうするわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何がいいでしょうか?」

「そうね・・・・」

 

今度は四葉くん。有坂お悩み相談室である。

キミが相談してくるとは思わなかった。

 

「残ってるのは睡眠と運気だけです。」

「睡眠と運気・・・・・どっちも難しいです。」

「そう?キミの場合は簡単だと思うけど。」

「そうなんですか?」

「四葉のクローバー。運気向上。完璧。」

「あーー!」

 

ぴったり。

四葉くんのイメージを考えても100点満点だろう。

四葉くんは四葉だなあ。

 

 

「じゃあ探してきます!」

「普通にクローバーを渡すのはちょっとつまらない。だから、それでしおりを作ろう。

あいつの分厚い参考書の友になるはずだ。」

「わかりました!」

 

ラミネートフィルムを用意して、そこに四葉のクローバーを押し花で仕込み、しおりの完成。

良い発想だ。さすが俺。天才すぎる。今日調子ええわ。

右下に平仮名でよつばって書いておこう。漢字じゃなくてひらがな。これが大事。

 

 

 

 

「有坂さんは何か欲しいものないんですか?」

「え?俺?」

「はい!」

 

他二人とは違う反応が来た。

 

「いやー。コレ風太郎の誕生日プレゼントでしょ?

で、俺の誕生日プレゼントってことだよね?お返しが面倒だからいいよ。」

 

「そ、それじゃ私が困るんです!」

「いや渡されても俺が困る・・・・」

 

「せめて2つ!2つ何か教えてください!」

「2つか・・・・うーん・・・・」

 

 

比較的金のかからないもので選んでみる。

 

 

「最近目が疲れて・・・新しい目薬が欲しいかな。あとは・・・美味しいもんでも食べたい。」

「わかりました!ありがとうございます!」

 

 

目薬はぱっと浮かんだ。しかし他は浮かばなかったので食べ物にした。

なんで2つだったんだろう。5つも浮かばなかったから助かったけど。

 

・・・・風太郎のプレゼントの方はあと二人残っているが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が良いでしょうか・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

案の定来た。五月である。

もう一択しか残ってない。

 

 

「睡眠しか残っておりません。お金は一花担当でしょう。」

「睡眠・・・安眠グッズですね。」

 

適当に検索をかけてみる。

あ。良いの発見。

 

 

「耳栓で良いんじゃない?上杉家はみんな同じ部屋で寝るし、

風太郎はその部屋で夜勉強してるから、勉強のサポートにもなる。」

「いいですね。値段と相談して選んでみます。」

 

 

上杉父とかいびきはどうなんだろう。そこまで知らない。

前回泊まった時は・・・・記憶がないから、特にいびきは無いのかもしれないが。

 

良かったな風太郎。プレゼント貰えて。

でも考えたの殆ど俺だからそこんとこよろしく。プロデュースバイ有坂。

流石にセンスの塊である一花おねーさんは自分で決められるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「おっはー。ナギ君。」

「おはー。」

 

登校時に一花と遭遇。

今日はちょっと遅れたので風太郎が一緒ではない。

最近、登校時は一花と良く出会う。この前もそうだった。

例のコーヒーショップの前にいる。キミここ好きだねぇ。

 

 

「ナギ君。これ、差し入れ。飲んでいいよ?」

「ありがとう。・・・・うお。ブラックか。」

 

「あ、あれ?苦手だった?」

「コーヒーはよく飲むけどね。砂糖とミルクは入れる。

まあ飲めないわけじゃないから、ありがたく頂くよ。」

 

「こっちと交換する?」

「フラペチーノ飲んだことないからいいや。

あとキミが好きなやつでしょ。それ。遠慮しとこう。」

「え!知ってたの?」

「そらね。」

 

だって毎回飲んでるじゃん。覚えちゃうよ。

 

 

 

 

 

 

「ナギ君、フータロー君へのプレゼントを考えてるんだけど、どれがいいかな?」

「え?俺に聞く?・・・一花は自分で決められると思ったけど。」

 

 

通学中、まさかの一花からも相談を受ける。キミは稼ぎ頭だから金一択。

しかしこのままだとプレゼント考えた人が全部俺になってしまうんだが。

これダメじゃない?でももうここまで来たらやるしかないか。

 

 

「女優さんはお金持ちなので金一択です。フータロー君に貢いでください。」

「み、貢ぐって・・・」

「商品券かカタログギフトでいいでしょ。金を直接渡すのはちょっと生々しい。

あいつは絶対喜ぶけど。他の姉妹から何か言われそうだ。」

「あー・・・確かに。そうする。」

 

ふと気付いたが、一花は見慣れないメガネをかけていた。

太めのフレームの黒ぶちメガネだ。

 

「そのメガネは?どうしたの。」

「これ・・・・この間の完成試写会、結構プロモーションに力が入ってて。

色んなニュースで宣伝されたの。」

「Oh。身バレ対策ってわけだね。」

 

 

そんなに反響があったのか。社長、話が違うぞ。良い事だが。

ただ、一花は割と最初に呪われて死亡し、早々に退場すると聞いた。

それともやはり呪いのリプライではなく別の映画だろうか。

後でチケットもらお。

 

まあ、序盤のインパクトにはなる。

それに割と早く死ぬ人って、後半の伏線回収でダイジェストシーンみたいなのがあるか。

サスペンスドラマとかそういう傾向がよくある。

 

 

「しかし、最近は一人で登校するね。その身バレ対策も兼ねてる感じ?」

「え・・・・うん。そうなの。」

「流石おねーさん。気が利くね。」

 

 

自分の姉妹に迷惑をかけないためか。納得。

ただ、そのオーラですからね女優さん。メガネだけじゃ隠せないな。

この女、ただ者ではない。

 

 

 

 

 

 

「あれ。みんなが前にいるじゃないか。風太郎も。」

「え?・・・・ホントだ。」

「変装してるなら一緒に行けたんじゃない?」

 

 

前方に風太郎と中野姉妹4人が居た。

好かれてんなー。真ん中に風太郎いてハーレムじゃん。

ちょっとだけ滅ばねぇかな。ちょっとだけで許してやるから。

 

 

遠いが、わかりやすいな。あれは。

誰が誰だかもわかる。やはりこの姉妹は目立つんだ。キミみたいに。

 

 

 

「・・・・後姿はわかるんだけどな。左から、五月、三玖、風太郎、四葉、二乃。」

「ふふ。正解だよ?」

「今は髪の長さも違うからね。ただ・・・・」

 

 

 

 

 

 

「姿が一緒になっちゃうと・・・・五月しか、わからないからなぁ。俺は。

キミも、他の3人と一緒に、」

 

パシッ

 

・・・・?

一花に後ろから手を掴まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナ、ナギ君!」

 

「うん?どうしたの。」

 

「今日・・・学校サボっちゃおうよ。」

 

一花に手を掴まれ、そう言われている。

 

 

 

うん?なんで?通学中じゃん。学校行くんでしょ?

荷物もお互い持ってるし。

 

 

「急にどしたの。」

 

「あ・・・えっと、ね。ナギ君、学校休んだことないでしょ?

たまには、気分転換したいんじゃないかなって。」

 

「そうだね。今のところ3年に上がってから休んだことはないけど。

気晴らしに休むってのはどうなのさ。

女優の仕事をドタキャンするみたいなもんよ?」

 

「そ、そうかもしれないけど。」

 

「それに、一花は仕事で学校に行けない日もある。

出席日数は稼いでおいた方が良いよ。」

 

「う、うん・・・・」

 

 

何か一花の様子がおかしい。

休まなければいけない理由があるのだろうか。

俺を巻き込むという点がわからないが。

 

 

 

「・・・・なんか、訳アリみたいだね?」

 

「・・・・・・」

 

 

沈黙。・・・・何かしらの理由がある。

そんな雰囲気だな。探ってみるか。

 

 

「別に良いよ。休んでも。一花も休むのかい?」

 

「!・・・うん。一緒に、どこかに行こ?」

 

 

 

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