修学旅行当日。
行先は京都。移動により、今は新幹線の中だった。
みんな楽しそうだ。俺は色々気になることがある。
もちろん、彼女たちの動向だ。
「有坂くん?ぼーっとして、どうしたんだい?」
「いや、ちょっと眠くてね。楽しみ過ぎて眠れなかったよ。」
「上手な嘘をつくのね。」
「なんでノータイムでわかるんだい毛利さん。」
「貴方の事は何でも知ってるもの。」
「それ怖いからやめて」
怖すぎる。なんなんだこの人。
全知全能かよ。手も足も出ねぇ。この人にだけはいたずら出来そうにない。
一体俺の事をどこまで知っているというんだ。
「初日の行先はどうするの?」
「やっぱあそこだろ。ほら、鳥居がめっちゃあるとこ。」
「伏見稲荷大社か。そうだな。」
伏見稲荷大社。前田くんお気に入りっぽい。
千本鳥居とおもかる石はとても有名だ。小学校の時に行ったが、まあいいだろう。
姉妹の様子でも伺ってみる。
「はいフルハウス~」
「負けた・・・」
「・・・・ツーペア。」
トランプしてた。三玖が眠そうだ。
となりに茶色い紙袋が置いてある。あれはパンだろう。用意してきたのか。
二乃の方は・・・ちょっと見えないな。バッグの中か?
形がくずれるパンと違って弁当だからな。
一花と五月は・・・わからないな。
四葉はいつも通り。
「大きい荷物はこちらでホテルに持っていく。貴重品は持っておけ。では、解散。」
京都駅に到着。先生からの説明を終える。
初日は移動日を兼ねているので、そこまで時間的余裕がない。
今から伏見稲荷大社に向かう訳だが。
今のところ、姉妹からのアプローチはない。一緒に行こうでもいいと思う。
しかしそれを何故しないのか。気になる。
パシャ
「前田くん。ちゃんとフラッシュの部分を手で隠せ。バレる。」
「っとワリィ!うっかりしてたぜ。」
「とりあえずは大丈夫だけどね。昼間はかくして良い。」
前田くんの五つ子撮影も開始。
上手くサポートしよう。最悪俺も撮る。脇役の出番だ。
「凪、前田。行くぞ。」
「おう」
「行こう。」
伏見稲荷大社。
「おー!すげぇなぁ!」
「相変わらず綺麗ね。ここは。」
「あれ。来たことあるの毛利さん。」
「ええ。あの石、軽かったわよ。どう?登る?」
今は本殿にいる。ここはかなり広い。
稲荷山を登って頂上、一ノ峰まで行くことが出来る。
しかし、それだけで結構な時間がかかる。下りも含めれば2.3時間は必要だ。
そのため、本殿と千本鳥居とおもかる石で満足して帰る人は多い。
お守りとかもここで買えるし。
「上杉くん?僕と一緒に頂上まで行こうじゃないか。」
「なんでお前と・・・まあ、行くが。」
「うーし。伏見稲荷満喫コースね。」
「毛利、体力あんのか?」
「私は大丈夫よ。上杉くんは心配だけど。」
班のメンバーは登ることに乗り気。付き合うことにしよう。
姉妹の姿を探しているが・・・・居た。5人揃ってついてきている。
どういうアクションを起こすのかな。不安と楽しみが入り混じる。
とりあえずは二乃、三玖に風太郎を引き合わせねばならないが、まだ昼食時には早い。
登りつつという所か。
「ハァ…ハァ・・・・・凪。お前は来たことあるのか・・・・」
「ここまで来たことはないよ。前回は本殿で帰ったね。」
「初体験という事ね。結構疲れるわよ。」
「俺よりこの人が疲れてる。」
登っている途中だが、やっぱり風太郎は死にかけていた。
慣れないことするから。一応登山だぞこれ。
「上杉くん?僕が背負ってあげようか?」
「いらん心配だ・・・・」
「あんま無理すんなよコラァ」
休憩地点。
四ツ辻。頂上、一ノ峰への分岐ポイントでもある。
道は左と右に分かれている。風太郎は無事ガス欠。
「大丈夫かい。少し休んでこう。」
「そ、そうだな・・・」
「有坂、次は分岐だぞコラァ。どうする。」
「二手に分かれても良いけど・・・・毛利さん。どっちがおススメとかあるかい。」
「どちらでもいいわ。片方から登ってもう片方で降りて来ればいいもの。」
「確かに。そりゃそうだ。」
「上杉くん大丈夫かい?甘酒だよ。これはアルコールがないから僕達でも飲める。」
「た、助かる武田。」
「ルートは・・・・・任せる。俺はしばらくここで休憩していくよ。
みんな先に昇っててくれ。」
俺は四ツ辻に残って五つ子を待つことにしよう。
分岐の案内をしなければならない。
「そう。なら、二人で休憩しましょうか。」
「いや、毛利さんも登ってください。」
「あら。お邪魔虫だったかしら。あなたの頼みなら仕方ないわね。
じゃあみんな。左のルートから行きましょう。そちらならお昼御飯が食べられるわ。」
「昼飯か。たらふく食わしてもらうぜ。」
「どちらが多く食べられるか勝負だね?上杉くん。」
「もう胃もたれは勘弁してくれ・・・・コロッケだけは食わねぇぞ・・・」
一人残って姉妹を待つことにした。ついてきているだろう。
この先の分岐を間違えると面倒だからな。
しかし昼を食うといったか。間に合えばいいが。
「ふう、ふう・・・あ!ナギ君!」
「やあ。待っていたよ。はい、チーズ。」パシャ
「ナギ!他の連中・・・フー君は?」
四ツ辻で待機中。
五つ子達が合流した。用途がバレなければ真正面から撮っても問題ないだろう。
撮りすぎは注意。怪しまれてはいけない。
「既に登っていった。左のルートで奉拝所経由で頂上に向かっているよ。
昼飯を食うと言っていた。急いだ方が良い。」
「やば・・・ありがと!」
二乃は走って向かっていった。
三玖は・・・・
「はぁ・・・・・はぁ・・・・・」
「三玖、だいじょうぶ・・・・?」
「一度休みましょう。」
やはりこちらも満身創痍。ダメだな。二乃の方が早い。
何とかしなければ。二乃に嘘でもつけばよかった。けど後が怖い。
可能であれば同時に食べて欲しい。料理対決で白黒つけてもらいたい。
折角二人の考えがシンクロして作ったんだから。
「三玖、気合を入れろ。少しなら手伝ってあげよう。」
「え・・・?わ!」
「四葉、パンと荷物持ってついてきて。」
「りょーかいです!」
三玖をお姫様抱っこしていくことに。調子乗ったけどいつまで持つかなこれ。
「ぜぇ・・・・ぜぇ・・・・もう無理・・・・あとは頑張ってくれ・・・・・」
「う、うん。ナギ。ありがと。」
「急いでくれ・・・・二乃が風太郎に弁当を食わせてる・・・」
「!・・・同じことを。」
「行こう!三玖!」
道の途中で限界が来たのでここからは頑張ってもらう。
調子乗るんじゃなかった。頭が痛い。酸素が足りねぇ。
休もう。
しかし。ここからでも充分景色が良いな。
頂上の一ノ峰には行ったことが無いが、そんなに変わるんだろうか。
ピト
「なぁ!?・・・・一花か。驚かせないでくれよ・・・・」
「ふふ。お疲れ様!」
「あれ。五月は?」
「下で色々食べてから来るみたい。」
「・・・・五月らしい。」
一花からキンキンに冷えた缶ジュースによる攻撃を喰らう。
二乃、三玖、四葉が先に行っており、ここには一花がいる。
これだと四ツ辻に五月がひとりぼっちじゃないか。迷ってたりしないだろうな。
「休憩終わったんでしょ?一緒に行こっか。」
「ああ。・・・・・なんだいその手は。」
「手、つなご?ここは人居ないから大丈夫でしょ?」
「・・・・まあ、いいよ。俺達は友達、だからね。」
一花と手を繋いで歩き出した。
別に良いさ、これくらい。今までもあったからな。
「三玖は間に合いそう?」
「多分遅いなぁ。ちょっと厳しいかも。」
「ナギ君は二乃と三玖、どっちを応援してるの?」
「どっちも。中立だよ。三玖の方が風太郎の事を早く好きになってたと思うけど。
そんなものに順番は関係ないからね。」
「ねえ。ナギ君・・・3日目の選択コース、どれを選ぶの?」
「選択コース・・・・ああ。」
3日目、5つの種類から1つを選ぶ選択コースがある。
映画村とか茶道体験とかがあった。
宇治周辺散策のAで平等院鳳凰堂を見に行こうかと思っていたが。
「決めてはいるが、秘密にしておこうか。」
「・・・そお?」
「風太郎とは別の物を選ぶから、聞いても意味ないよ。」
「いいよ。今度はわたしが当ててあげる。当たったら、一緒に行こ?」
「ああ、良いけど・・・・・キミたちは、姉妹で仲良く一緒にいて欲しいな。
俺の事は気にせず。」
ちょっと対立があったようだからな。
今日の姉妹の様子を見ている限りは、不穏な空気がなく安心しているが。
「そうも言っていられないよ・・・だって、好きな人が被ったんだもん。」
「まあ、二乃と三玖はそうだね。けど、今までだって衝突しながらも上手くやれてたじゃないか。」
「二人もそうだけど・・・・わたしと、五月ちゃんが だよ。」
「・・・・・・・・」
おいおい。これは。・・・・参ったね。噂話ではなかったようだ。
キミが真正面から言ってくるとはな。今まで聞いたことはなかった。
俺への好意を隠していたものと思っていたんだが。
・・・俺のあの発言で、はっきりと心境の変化を生んでしまったかな。
「五月ちゃんは実際わからないけど、わたしは、ナギ君のこと、好きだよ。
だから・・・あきらめない。あれは噂話なんかじゃないの。」
「・・・俺のスタンスは伝えたはずだけど。」
「もちろん、覚えてるよ?好きになってもらうために、色々する。
今も、こうして手を繋いでる。」
「・・・・なんでだ?どうしてこんなやつにそこまでするんだい。
報われないかもしれないのに。全く意味のない事なのに。割に合わないよ。」
「だって、好きなんだもん。仕方ないでしょ?」
「・・・・・そう。本当に物好きだ。」
そのまま、手を繋いで歩いた。
奉拝所、左ルートの休憩地点に到着。
「もう一歩も動けねぇ・・・・・」
「俺も・・・・・」
「二人とも子供ね。」
「なにしてるんだキミたち。」
「・・・・・・・あはは。おっきいお腹。」
「フー君、だいじょぶ・・・?」
「フ、フータロー・・・・」
「う、上杉さん、大丈夫ですか?」
一花から手を放して飯処に向かうと、前田くんと風太郎が寝転がっていた。
食いすぎのようだ。風太郎はまあわかるが、どうして前田くんまで。
三玖の手元にはまだ紙袋がある。・・・普通の昼食と二乃の弁当を食って、
限界が来たようだ。
二乃の姉御の弁当は容赦がなかった。お重が見えている。差し入れってレベルではなかった。
愛って重いですね。俺はアレを見ただけで胸がいっぱいです。ごちそうさま。
「歩け・・・・ないな。二人とも。まだ頂上の一ノ峰は先だぞ。」
「仕方ないね。上杉くんを背負ってあげよう。」
「武田くん結構力あるんだな。じゃあ俺は前田くん・・・・ぬお」
「あ、有坂コラァ。ふらついてんぞ。落とすなよ?」
「有坂くん。疲れてるんでしょ?私に任せて頂戴。」
「毛利さん。大丈夫なのかい。」
「力がなかったらバレーボール部の主将は務まらないわ。」
そう言いながら前田くんを軽々背負いあげる毛利さん。
イケメンかよ。そらファンクラブも出来るわ。
「わ、ワリィ。毛利。」
「あの子に見られたら、諦めなさいね。
有坂くん。お昼まだでしょ?食べていったら?」
「そうだね。また先に行っててくれるかい。」
「ええ。一ノ峰で会いましょう。」
飯処でざるそばを注文。
・・・・一花も一緒である。まあ、飯を食っていないのは二人ともだし。
向こうは三食団子。あんまり腹減っていないのだろうか。それとも女優的ダイエットか。
「ナギ君とお昼、久しぶりだね。」
「そう・・・だっけ。キミとデートした時に食べたじゃないか。」
「ふふ。あれはわたしたちのアパートだったでしょ。
外で食べるのは久しぶり。進路相談以来かな。」
進路相談・・・あれも学食だったが。
「おまちどーさまでーす」
お。来た来た。案外早いな。
ざるそばと三食団子。ざるそば良いんだよ。安いから。
ここは神社の休憩所でグルメスポットではないからな。なんでも良し。
しかし貴重な自由昼食の機会。ちゃんとした店で何か特別なものを食べたかったな。
「いただきまーす」
「ナギ君。」
「はい?」
「あーん」
「・・・・・・・」
三食団子をこちらに差し出している。
食えと?
「1本くれるの?じゃあ貰おうか」
「口開けて?」
「・・・・・・・」
棒ごと頂こうとしたが失敗。
「一花くん?周りに人がいるだろう?」
「いないよ?お昼すぎちゃったもん。」
「・・・・・」
・・・・・・確かにいなかった。
逃げ道なくなったかも。
「・・・いや、店員がいるから。」
「ついさっきメガネをつけたから。大丈夫だよ?」
「・・・・・」
・・・ホントだ。いつの間に。手を繋いでいるときはつけてなかっただろ。
「しかしだね・・・・」
「食べて、くれないの・・・?」
「はいすいません」
「ふふふ。どお?美味しい?」
泣きそうな顔と声になったので思わず反射的に食べてしまった。
クソ。しまった。絶対演技だわ今の。
女狐め。恐ろしい子。食べさせた後の顏がめっちゃにこーってしてるもん。四葉みたい。
んだよこの団子。味しねぇぞ。観光客向けだからって手を抜くな。
「じゃあこっちからもお願い。食べてるところ、こいつで写真撮らせて。」
「ふふ。撮ってくれるんだ。嬉しい。専属カメラマンだね。」
三食団子を満喫している一花の写真を撮る。
用途さえ言わなければとりあえずいいか。後で前田くんが撮った奴とセットにしよう。