五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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昼食を取り終えて飯処を出る。

さて。気になるのは五月。こちらが飯を食ってまだここに現れていない。

探さなくてはならないだろう。

 

「俺は五月を探そうかな。一花はみんなと合流しなよ。」

 

「わたしも一緒に探すよ?」

 

「それは良いんだけど。二手に分かれよう。四ツ辻から左右に分岐しているから

別の道から行った可能性がある。頂上でみんなと合流して、反対側のルートから降りてくれ。」

 

「・・・いいよ。ナギ君のお願いだもん。今はナギ君を五月ちゃんに譲ってあげる。」

 

「・・・・じゃあ、俺は来た道を戻るから。」

 

「またね。」

 

ナギ君のお願いだもん 五月ちゃんに譲ってあげる だとさ。

・・・・そんな言葉をキミから聞きたくはなかったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしもし。五月?』

 

『ナ、ナギくん。その・・・・迷ってしまって。』

 

別れたと言ってもスキーのような遭難疑惑ではない。

別に連絡が取れないわけではないので遠慮なく電話をかける。

予想通り迷子。連絡してよかった。

 

 

『今どこに・・・いや、何が見える?』

 

『小さな滝みたいなものが二つあります・・・・』

 

『滝・・・・わかった。そこを動かないでね。』

 

 

清滝。

地図にはそう記載があったはずだ。

先ほど、昼食を食べた奉拝所にはまた分岐がある。

右は頂上へのルート。左はこの清滝へのルート。

 

……ということは奉拝所を通過していたらしい。気づかなかったな。

 

 

 

 

 

 

「迎えに来たよ、五月。」

 

「ナギくん。ありがとうございます・・・・」

 

五月を発見。危なかった。これ以上道をそれると別の寺に出てしまうぞ。

 

 

「みんなは頂上に向かっているよ。こっちはルートから外れる。

戻ろうか。」

 

「はい。・・・・その、はぐれないように手を繋いでもらえませんか。」

 

「花火の時ほど人は居ないけど・・・・まあ、いいよ。俺達は友達だからね。」

 

五月と手を繋ぐ。・・・まあ、友達だし。

今までも散々つないだし。

 

 

ただ、勘違いしないでほしい。

手を繋ごうが、団子を食べさせられようが、そんな事に意味なんてない。

 

……期待などしない方が良かったかな。

・・・・・・まあ、今年度一杯。卒業まではキミたちに付き合ってあげよう。

良い区切りだ。

 

 

 

 

「奉拝所まではたどり着いていたんだね。気づかなかったよ。」

 

 

五月と手を繋ぎ、頂上、一ノ峰を目指している。

・・・五月と手を繋ぐのは別に初めてではない。何度もある。別にドキドキなんてしていない。

一花は・・・フォークダンス以来か?あれもつないだとカウントしていいものか。

ああいや、この間のデートでつないだか。

 

 

「左のルートと聞いたので・・・・・・」

 

「あー。」

 

確かに四ツ辻ではそういったけど。

延々左に曲がれとは言ってませんよ。

 

「その・・・・一花と一緒にお昼を食べているところを見てしまって。」

 

「え。」

 

 

見られてたのか。全く気付かなかった。

タイミングによってはマズくないか。あーんのくだりとか。

 

 

「居てもたってもいられなくなって・・・この道を走っていたんです。」

 

「そう。それは・・・変なところを見せたね。申し訳ない。」

 

「べ、別に謝らなくても。仲が良いのは良い事です。」

 

 

五月からは、はっきり俺が好き とまだ聞いていないんだよな。

一花はグイグイ来てるけど。こっちは別にそんなことないんじゃないだろうか。

単純に世話になった俺へのお礼という事で。うん。全然ある。

尊敬と羨望の念。それはそれで恥ずかしいが。

 

 

「一花はやっぱり・・・・ナギくんの事が好きなのですか?」

 

「・・・・らしいよ。さっき直接言われてしまった。

何を考えているんだか。こっちはその気はないと言ったのに。」

 

「いえ・・・ナギくんは間違っています。」

 

「そう思うかい?」

 

 

「昔の失敗を引きずっているのはわかります。・・・とても、辛かったでしょう。

でも、あなたは去年、私に言ってくれました・・・・きっと変われると。

私も同じ気持ちです。あなたは変われる。変わってほしいんです。

ずっとそのままじゃ、寂しすぎます。」

 

 

「そうだね。いつかは変わらないといけないかもしれないね。

でも、今の俺はそんな気持ちにはなれないんだよ。

何回も何回も間違えてしまい、その度にあの事を思い出すんだ。

もっと、完璧な男にならないといけないね。」

 

 

「いつか。ではありません。この高校生活最後の1年間で、あなたを変えて見せます。」

 

「・・・・頑張って。そう簡単にはいかないと思うし、すぐに変わろうとも思ってない。

根深いからね。・・・・・・疲れたら、諦めることをお勧めするよ。

・・・・折角だ。ここは景色が良い。五月、写真を撮ってあげよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頂上。一ノ峰に到着。

みんな居る。うちの班と姉妹達・・・・いや、メンツがおかしい。まばらだ。

風太郎、二乃、三玖、四葉が居ない。

 

「どうしたんだ。何人かいないけど。」

 

「あ、有坂か。その・・・上杉がちょっとトラブっちまって。」

 

「ナギ君。実は、二乃と三玖がケンカを始めちゃって。

仲裁に入った四葉が、口を滑らせちゃったの。」

 

「口を滑らせた?いったい何を。」

 

「・・・・・三玖が、修学旅行中にフータロー君への告白を考えてたみたいなの。

それ、たまたまトイレから出てきたフータロー君に聞かれちゃって・・・・」

 

 

一花が耳打ちしてくる。

なるほど。まだ三玖から風太郎へはっきりと伝えてなかったからな。

それを聞かれてしまったと。タイミングを見計らっていたのだろう。

この前のテストで1位のくだりを考えると・・・・あのパンかな。

 

 

「・・・・3人は三玖を追いかけに行ったわけか。」

 

「うん。」

 

ライバルの二乃でさえ不安になって追いかけるほどだ。

結構なダメージだったのだろう。

 

 

 

「どうする。武田班長。風太郎は大丈夫だと思うけど。」

 

「ホテルに戻ろうか。初日だし、時間に余裕がないからね。」

 

「そうね。良い判断だわ。行きましょう有坂くん。」

 

「そうだね毛利さん。ちなみにどうして俺と手を繋ぐんだい。」

 

「あら。ケチケチしないで。さっきまでは見せつけていたじゃない。」

 

「見せてたわけではないんですが・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風太郎。戻ってきていたのかい。話は聞いたよ。」

 

「凪か。すまんな。三玖も含めてとりあえず全員ホテルには居る。」

 

「そう。良かったよ。とりあえずメシにしよう。」

 

ホテルに到着。

既に全員戻ってはいるようだ。

早めの夕飯にして、それから色々考えることにする。

 

 

 

 

 

「・・・・・なぁ。有坂。」

 

「うん?」

 

「写真、やっぱお前も手伝ってくれ。さっきから上手く行かねぇ。」

 

「ああ。心配しなくていい。既に何枚か撮っているよ。そっちもやれるだけやってくれ。」

 

「そうか。恩に着るぜ。ちっと楽になったわ。トイレ行って、ついでに何枚か撮ってくる。」

 

前田くんはあまりうまくいっていないらしい。

俺も何枚かは撮っている。こちらはスマホを使用しており、音が出ないので、結構楽。

家のプリンターで上手いこと印刷する。

 

ただ、5人全員がそろっている写真が欲しい。四ツ辻の時に一枚だけは取ったが、

まだ何枚かあってもいいだろう。

 

 

「有坂くん。私も手伝おうかしら。」

 

「毛利さんは目立つんじゃないの?」

 

「そうでもないみたいよ。現にあなたにはあの事が気づかれてないもの。」

 

「俺の知らない間に何をしたんだ・・・・・」

 

ホントやめてそれ。幽霊かよ。

 

 

 

 

「そうだ、凪。お前3日目の選択コースは何にするんだ。」

 

「あーあれね。・・・・・Cの予定だよ。風太郎はEだっけ。」

 

「なら、別れることになるな・・・・ん?武田、前田はどうした。」

 

「長いトイレだよ。上杉くん。」

 

 

「じゃあ俺も行ってくる。」

「という事は、僕もだね?」

「ついてくんな・・・」

 

 

結局、風太郎と凸凹コンビは3人してトイレに行ってしまった。

俺は毛利さんと二人きり。

・・・風太郎にはCコースと嘘をついておいた。

 

 

「毛利さんはなんでそんなに俺に入れ込んでいるんだい。」

 

「林間学校のキャンプファイヤー。見てたわ。あれを見てから私は貴方のファンよ。」

 

「ああ。あれね。お楽しみいただけたようで良かったよ。

バイトでああいうパフォーマンスはそれなりにやってるからね。」

 

「エンターテイナーになれる素質があるわ。私にプロデュースされてくれないかしら。」

 

「いやー。裏方が性に合うんで。勘弁してください。」

 

「いつも気配りの出来る裏方だからこそ、主役の司会進行が似合うのよ。

ありとあらゆる事柄が計算されてて、素晴らしかったわ。

リンと友達と聞いてびっくりしたんだから。」

 

「川村さんとはいつからの知り合いなんだい。」

 

「中学校からね。あの子もあなたに少し似てるわ。気まぐれだけど、気配りの出来る子ね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・何をしてるんだい前田くん。」

 

「有坂・・・・ワリィ。ミスった。」

 

晩飯を終えて部屋に戻っているころ、

廊下ですっ転んでいる前田くんを発見。他二人はどこへ行ったんだ。

 

 

「中野さんたちにバレちまってな・・・・盗撮魔だと思われちまった。」

 

「ちょっと時間をおかないとダメそうだね。俺も明日からは正面切って撮らない方が良いな。

・・・・ま、やってることは完全に盗撮だから間違ってない。」

 

「俺センスねぇのか・・・・」

 

「ないみたいだね。まあ、明日は気にせずに、松井さんといちゃついてなよ。」

 

「い、イチャ・・・わーったよ、ったく。」

 

「武田くんと毛利さんにも手伝ってもらおうかな・・・

・・・ん。風太郎だ。五月に何を話してるんだろう。」

 

「中野さん・・・・三玖さんの様子でも伺ってるんじゃねぇの?」

 

 

 

明日の撮影はこちらが主導で行うことにした。

姉妹が分かれないか不安だが。あちこち行かなきゃならないな。

三玖のフォローは姉妹たちと風太郎に任せよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。修学旅行2日目。複数選択からの団体行動である。

 

「凪。今日は目的の場所があるか。」

 

「いや、特に決めてない。どこでも構わないよ。」

 

「そうか。なら俺に付いてきてくれ。あいつらを追って、清水寺へ行く。」

 

「あいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清水寺。

風太郎にとっては思い出の場所だろう。

ここであの写真の女の子と過ごし、今の風太郎が創り上げられた。

五月の話では四葉という事らしいが・・・・

 

「駅まで見えますー!」

 

「落ちたらどうしましょう・・・・」

 

四葉と五月が居た。うーむ。他は居ないようだ。

集合写真をもう何枚か、早いとこ取りたかったんだが。ワンペアで我慢しとこう。

 

「久々に見ると高く感じるな。・・・お前らしかいないのか。」

「お疲れ様。」

 

「ナギくんと上杉くん!」

「お友達と一緒じゃないんですかー?」

 

「三玖に用があってきたんだが・・・・」

 

「三玖はまだ体調が優れなくて・・・ホテルで休んでいます。」

 

「一花と二乃は二人とも、二年の友達と見て回るそうです。

なので、ここは私たち二人だけですよ。」

 

「半分以下とは寂しいな。」

 

 

一花と二乃は他の友達と行動しているのか。

これは難しい。姉妹へのアルバムなら、出来れば姉妹以外の人物を写真に入れたくない。

ちょっと無理だな今日は。

 

そして、三玖は今日来れていないと。かなりメンタルにきているようだ。

これは明日のサポートが必要か。

団体行動ではあるが、仮病でも使って早めにホテルに帰ることにしよう。

困った時の頭痛持ち。こういう時に便利だな。

 

 

「たまにはいいじゃないですか!ほら、折角の清水寺ですよ!

上杉くんもこの景色をみてください!絶景ですよ!」

 

「い、五月?」

 

「引っ張るなよ!あぶねぇって!」

 

今の発言は五月である。四葉ではない。

急にどうした。お前俺の事好きだったんちゃうんけ。まだはっきりしてないけど。

 

 

「こんなのが怖いんですか?男の子なのに?」

 

「はぁ!?全然怖くないんですけど?」

 

「そ、そうだ!ツーショット写真を撮りましょう!四葉!お願いします!」

 

「いいけど・・・・」

 

 

あー。そういう事か。風太郎に四葉の事を思い出してもらおうと。

小6の修学旅行で出会ったのは四葉だよーと。

でもそれキミが一緒に取るんじゃ意味ないだろ。

アシストしてやろう。

 

 

「はい、チーズ。これでいい?」

 

「折角だ。四葉も風太郎とツーショットで撮ろう。」

 

「私もですか?」

 

「うん。折角だし。」

 

「じゃあ有坂さん、お願いしますね。」

 

「はーい。・・・・そういえば風太郎。小学校の時は清水寺に来たんだっけ。」

 

「そうだな。ここは久しぶりだ。」

 

「誰と来たんだっけ。竹林さんたちだっけ。」

 

「いや、ここにはあの子と来た。」

 

「ああ。あの女の子ね。・・・よし、行くよ。チーズ。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

アシストをして写真を撮ったが四葉は無反応。

風太郎はあの事をはっきりと覚えてるぞというメッセージにはなっただろう。

それでも動かないという事は、そういう事だ。

五月と内緒話をする。

 

 

「五月、ダメだよ。意味ないや。

風太郎の方は間違いなく覚えてるからね。

あとは四葉が言い出さない限り無理。」

 

 

「うーん・・・・どうして四葉はあの事を伏せているのでしょう・・・・」

 

「わからないけど、本人から風太郎に言い出さないとダメだ。証明にもならないし。」

 

「三玖が居ないなら、俺はもう行くぞ。凪、こいつらは任せた。」

 

「あい」

 

風太郎はどこかへと向かった。恐らくは二乃へアプローチするのではないだろうか。

昨日、三玖を追ったのは二乃も同じだからな。

 

 

 

 

 

 

 

清水寺を四葉、五月とぶらついていた。

しばらくしたらホテルへ戻って、三玖の様子を見に行こう。

 

「有坂さんにプレゼントです!」

 

「ああ。ありがとう・・・・ん?二つ?」

 

「頭痛守と恋愛守です!」

 

「頭痛の方は貰っておこう。ありがとう。・・・恋愛は、キミの方が必要だろう。」

 

「わ、私は大丈夫ですよ~?」

 

「昔、風太郎と出会ったの、キミなんだろ。話さなくて良いのか。」

 

「・・・・・・・・・そこまで、知っているんですか?」

 

「有坂くんは千里眼と地獄耳なのです。そして占い師でもある。

 

・・・・キミ、食堂で出会った最初から知っていたんだろう。風太郎の事。

テストの答案を見て、名前を知っているんだから。

何か言えない理由があるんだろう?」

 

 

「はい・・・・・それはまだ……言えません。」

 

「無理に聞き出すつもりはないよ。こっちの予想は当たっていたから、これで満足だ。

・・・・ほら、これを持っていたまえ。その顔を見る限り、キミにはまだ必要なものだ。」

 

「いえ。これは・・・・三玖にあげます。」

 

「そうか。キミがそう言うのであれば良い。

じゃあ、俺も今日の所は別の場所へ行くよ。」

 

 

前回の一件で俺に隠し事は出来ないと判断したんだろう。口を割ってくれた。

これ以上はわからない。こちらの予想の答え合わせをしただけだったな。

しかしやはり、食堂の対面の時点で風太郎には気づいていたようだ。

 

 

俺も清水寺の恋愛守を一つ買って、離れた。

 

これが必要になる日が……きっと来るだろう。

 

 

 

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