有坂政宗は映画村をぶらついていた。
絶対浮いてると思う。だってこんな格好してるの俺だけだもん。
陣羽織着てるしなんか下のボトムスはちょっと格好良くて、
現代的ファッション混じってるし。申し訳程度の政宗要素に兜と眼帯。
というかさっき全身甲冑姿の本物の政宗がいたぞ。
俺ニセモノじゃないか。影武者。
こんなんを着てどうやって二人を陰から見守るというのだ。
目立ちに目立ちまくる。明らかにすれ違う人々に見られている。
「あの、すいません!」
「はい?なんでしょう。」
「一緒に写真撮ってもらえませんか?」
「・・・・・・・ええ。わかりました、お嬢様。」
「キャー!ねえ、撮って撮って!」
「私も後で撮ってよ?」
知らない女性から声を掛けられた。スタッフの一人と勘違いされているらしい。俺は客です。
もう仕方ないので今日一日スタッフを演じることにした。
バイトとやることそんなに変わらないからな。金くれ金。
なんで1万円取られて仕事してるんだよ俺は。
「四葉。二人は順調かい?」
「はい!・・・うわぁ!あ、有坂さんですか?」
「そうだよ。そんなに驚かないでくれよ。」
「いきなりそんな恰好で後ろから話しかけられたら驚きますよ!」
「そうだよね。俺もそう思う。」
四葉を見つけたので声を掛けたらこのありさまである。
後ろを振り向いたら隻眼の有坂さん。そら普通は驚く。
「上杉さんと三玖は二人で色々回ってますよ!
今は二人で一緒に手裏剣を投げてます!」
四葉の視線の先には二人で和気あいあいとしている、風太郎と三玖がいた。
上手く投げることができずに、二人して笑っている。
あそこまで仲良くやれていれば、もう心配しなくても良いだろう。
「そう。お膳立ての甲斐があったね。良かったよ。」
「有坂さんも一花と五月と一緒に回ってきてくださいよ!」
「えー。俺は今この格好だよ。」
「だからこそじゃないですかー!」
「はぁ・・・・わかったよ。二人を探してくる。」
四葉に怒られたので二人を探すことにした。
一応は修学旅行だし。二人も心配ないし。各々映画村を満喫してるんだろう。
「あの!中野一花さんですよね!写真撮らせてもらっても良いですか!」
「中野って・・・だれ?」
「ほら見ただろ!呪いのリプライ!あの映画に出てた人!」
「え!?もしかしてあの・・・最初に死んじゃった人!?すごーい!」
「あ、あははは・・・あ、ありがとー。」
女優さんは江戸の町中で絶賛身バレ中だった。
おかげで人だかりが出来ており見つけるのには苦労しなかったが。
頭の手拭い脱ぐからそんなことになっちゃうんだよ。
「今日はこの後撮影があるんですか!?映画村ですもんね!」
「マジー!?一度見てみたかったんだー!撮影現場!」
「皆々様。姫が困っておいでです。そこまでにしていただきましょう。」
「あ!スタッフさんですか!す、すいません・・・」
人だかりに割って入る。今の俺の格好なら大丈夫。
勝手に勘違いしてくれる。
「本日この後、映画村で撮影の予定は入っていません。
すなわち、姫は正真正銘のプライベート・・・・お忍びで来ておられます。
どうかご理解とご協力をお願いいただきたい。
聞けないのであれば・・・・失礼ながら、我が得物、抜かざるを得ません。」
「は、はい!・・・・すいません!政宗様!出過ぎた真似を致しました!」
「あの!政宗様!一緒に写真を撮ってもらってもよろしいでしょうか!」
「政宗公たるそれがしで宜しいのであれば、喜んで。」
「やったー!」
「得物を抜いたほうが宜しいですかな?」
「はいぃ!あ、中野さん!写真を撮ってもらえませんか!」
「あ、えっと・・・はい。」
なんかもう手慣れてきた。人だかりの一人一人と写真を撮っていく。
一花がカメラマンになってるのが面白い。
主役俺になっちゃった。まあいいか。バイトで慣れてるし。
君も映画村で僕と握手。ちなみにパチモンです。
だってさっき甲冑姿のホンモノいたもん。けど服装的に俺の方が受けが良いっぽい。
「あ、あの。ありがとうございました。」
「一花?・・・・俺だよ俺。気づいてなかったのかい。」
「え?あ、・・・・・ナ、ナギ君!?」
「そうでーすナギくんでーす。」
全員はけた後に一花からなんか感謝をされた。
俺と気づいていなかったらしい。
「ど、どうしたのその恰好。」
「なりきりセット。キミの町娘と同じだよ。
なんか特別らしいけど。お陰でさっきからこうしてスタッフと間違われちゃってる。
今回はプラスに働いたけどね。」
「・・・ふふふ。ありがと。助かっちゃった。」
「どーいたしまして。」
「やっぱりナギくん、演技の才能あるよ。
背筋ピンとしてて雰囲気出てたし、喋り方も堂々としてたし。
今から社長に掛け合ってみよっか?」
「いやホント勘弁・・・・・動画やテレビなど動く記録媒体に残さないでください。」
「ね。一緒に回ろ?」
「良いけど、この格好だからね。アトラクションとかは入れないよ。
ボディーガードにはなれるけど。」
「うん。守ってね。」
そのまま、一花を連れて江戸の町を練り歩き、満足したところで別れた。
一花と別れて数分後、たまたま風太郎と三玖の二人とすれ違った。
良い感じだな。この格好、意外と悪くないかもしれない。
眼帯とメイクで俺だと気づかれていないようだ。
ただ、あまり接近したままだとダメだな。目立ちはする。
尾行されてると思われたら「フ、フータロー!」
「わかった。あの、すいません!」
ん?風太郎が話しかけてきた。
・・・ああ、バレたのか。流石だな相棒。お前にはわかってしまったか。
しかしわざわざ声を掛けてこなくてもいいだろうに。
そういうとこだぞ。二人きりの時間を楽しまないと。
「すいません。一緒に写真、取ってもらえませんか?」
「・・・・・・・・・・・・それがしで宜しかったでしょうか?」
「はい、お願いします。」
違った。バレてなかった。
こいつこの至近距離で俺に気づいてない。
マジかよ。1mも離れてないぞ。お互いの顔をじっと見てるんだぞ。
気づかれないなら気づかれないで俺は寂しいよ。ちょっとショック。
気づけよ。何年の付き合いだと思ってんだよ。
俺はすぐにわかったぞ?金太郎の事。まあお前はメイクも眼帯もしてなかったけどさ。
仕方ない。少し声を低くしよう。
「三玖、隣に並べ。撮ってやるから。」
「ありがと・・・・後でフータローも撮るね。」
「得物は・・・・抜きましょうか?」
「い、いいんですか!」
「勿論でございます。姫。・・・・この構えで、如何でしょうか。」
「そ、そのままお願いします!」
三玖さんテンション爆上がり。
キミの好みは覚えてるぞ。林間学校でやらされたからな。
顏と同じ高さ、顔の真横に刀を持ってくる構え方、コレだろ。
正式名称は知らないけどな。俺もゲームで見たことはある。雰囲気は出せる。
「撮りまーす!はい、チーズ!」
三玖と写真を撮った。
風太郎も俺と撮るらしい。
ふむ。撮るのは良いんだが、どうしようかな。
風太郎にネタ晴らしをするか否か。
・・・・いや。ちょっと面白いイタズラをしてやろう。
「失礼ながら、お二人一緒に撮るというのは如何でしょうか。」
「ふ、二人でですか?でも撮ってくれる人が・・・」
「もし、そこのお方、宜しいですかな。」
「え?わ、私ですか?な、なんでしょう。」
折角なのでツーショット写真を撮る。その辺のスタッフに声を掛けた。
さっきから気になっていたんだが、三玖は風太郎の衣装の裾を掴んでるんだよな。
手を繋げ、手を。離すなって言っただろ。繋がざるを得ない様にしてやる。
俺からのサービスだ。
「あの町娘に写真を撮って頂きましょう。ではご両人、お手を繋いで頂けますかな。」
「え!?て、手をですか?」
「手を・・・・」
「ええ。良き謀り事を思いつきました。
それがしの言うとおりにしていただけますかな。」
三玖さん顔真っ赤です。悪いけどそこは頑張ってくれ。
これ以上はお膳立て出来ない。
「・・・・!掴むぞ、三玖!」
「え、あ!」
風太郎が決意して三玖の手を強引に掴んだ。
よし。覚悟決めたな。それでいいぞ。お前は出来る男だ。
「はい。ではそのままの態勢で。
それがしが後ろに回って得物を抜かせていただきます。
無論、我が刀で傷をつけるわけではつけません。ご安心を。」
二人の後ろに回って刀を抜いて、手を繋いでいる二人の前に構える。
今からこの繋いだ手を切ろうかと言わんばかりの構え。
「では、この態勢で撮りましょう。そのまま、お願いいたしますぞ。」
「撮りまーす。はい、チーズ。」
スタッフに3人の写真を撮ってもらった。
「・・・かたじけない。二人の絆は、
我が愛刀でも、切ることが出来なかったようですな。
どうか、その絆がこれからも末永く続くよう、
それがしも太平の世を長続きさせるための鍛錬に励むとしましょう。」
「あ、ありがとうございました!失礼します!」
「ありがとう・・・ございました。」
二人とも若干困惑気味だった。今のセリフは流石に変だったかな。
まあいいか。二人は手を繋いだままどっか行ったし、仕事はした。
おめでとうらいはちゃん。風太郎お兄ちゃんは敵軍総大将の心を討ち取りました。
彼が一番槍でした。一緒に勝どきを上げましょう。
一応撮影してくれた町娘のスタッフに礼を言っておこう。
「すいませーん。ありがとうございました。」
「いえいえー。武将役って大変なんですねー。目立ちますもんねー。」
「へ?・・・・いや俺、スタッフじゃなくて客ですよ?」
「え?」
あんたも気づいてなかったのか・・・・
「ふいー。」
この格好をしたままだと一部のアトラクションや一部飲食が出来ないため、
一旦元に戻った。兜が原因らしい。
先程は一花とぞろぞろ歩いていたが、五月は見なかった。
という事はアトラクションブースかなんか食べてるかのどちらかだろう。
周辺を歩き回る。
「アアアアアア!!!武田ァ!どこにいったんだぁ!!」
「本当にここにいるのかーい!!上杉くーん!!!」
なんか聞こえてきた。
「あれ。二乃。」
「ナギじゃない。何してんのよ。」
その辺を歩いていたら二乃と遭遇した。
「武田くんと前田くんは?」
「お化け屋敷に叩き込んできたわ。しばらく出てこれないわね。」
やっぱり。立体迷路を考えていた俺よりも残酷だった。
容赦がなさすぎる。看板に史上最恐のお化け屋敷って書いてあるもん。
「五月を探してるんだけど知らない?」
「五月ならあそこよ。さっき一緒に昼食を食べて、
デザートを食べに行くって言っていたわ。」
「りょーかい。ちょっと行ってきます。」
「フー君と三玖の事ばかり気にかけてないで、
あんたも少しは自分の事を大事にしなさい。」
「・・・・手厳しいね。頭に入れておくよ。」
姉御からのアツい激励を受けてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・あの、五月さん?」
「・・・・あ。ナギくん。ちょうどよかったです。これ、一緒に食べませんか?」
江戸時代よりもちょっと進んだ時代のような外観の喫茶店。可否茶館に五月がいた。
恐らくは明治時代とかだな。レトロな雰囲気と呼ぶにふさわしい時代の店だ。
そして五月は神妙な面持ちでメニュー表にガンを飛ばしている。
何を食べるか迷っていたようだが。
・・・スイーツメニュー。なんか一つだけとんでもないものがあった。
「これ?・・・・大きくない?」
「はい。だから悩んでいたのです。ナギくんが居るなら大丈夫ですね。」
忍者パフェって書いてある。2500円。この写真、バケツに入ってるぞ。あふれてるぞ。
カッコ書きで3~4人分のボリュームですと書いてある。
・・・・さっき昼飯を食べたんだよな?二乃はそう言っていたよな?
ここの店の前には『喫茶・軽食』と看板があったぞ?これ軽食か?
軽くないだろ?持ち運ぶには両手だろ?
「・・・・はい。」
「では注文しますね。」
注文したくてたまらないご様子だったので注文。
金は俺が出すんですか?こういう時。
「ナギくんのおかげで上杉くんと三玖は上手く行っています。
あとで一緒に様子を見に行きましょう。」
「そうだね。そろそろ現状調査をしよう。」
「昨日は離れ離れでしたが、最終日は5人みんなが一緒の場所にいて、嬉しいです。」
「良い事だ。やはり、キミたちには一緒にいて欲しいね。」
「・・・なくなったお母さんも、同じことを言っていました。」
「なくなった・・・・いや、ごめん。」
「気にしないでください。・・・私はお母さんのようになりたくもあり、
ナギくん。あなたにも憧れています。・・・二人とも、優しくて、強くて。」
「・・・いや。面と向かって言われると照れるね。
俺を目指すのはやめた方が良いと思うけど。」
「ふふふ。そういう所も、本当にそっくりです。」
素直で真っ直ぐな瞳に覗き込まれる。
流石に俺も照れる。こんなやつの何が良いんだか。
「お待たせしましたー忍者パフェでーす」
「でっか」
「来ましたね。」
ステンレスっぽい銀のバケツにバニラアイスがたんまり。
チョコソースがかかっておりさらにホイップクリーム、サクランボ。
トドメと言わんばかりにアイスクリームのコーンがさかさまに。ポッキーまで何本か刺さっている。
これのどこが忍者なのか。絶対こいつ隠密行動できないよ。
そして五月の貫禄である。
うろたえている俺とは違う。どっしりと構えている。動かざること山の如し。
本当にコレ食べるんですか?
「いただきます。ほら、ナギくんも食べてください。」
「いただきます・・・・あ、写真撮ります。」
スプーンを持ってバニラアイスに手を付ける。
うん。普通にバニラ。つーか隣に置いてあるこのスコップ何?
「ナギくんのご飯は食べたことはありますが・・・・
こういったスイーツを作ったことはないんですか?」
「1回だけあるね。昔、母さんの誕生日にチーズケーキを作った。
ただ・・・・もういいかな。あれは。」
「どうしてですか?」
「うーん。今は言わない方が良いね。理由はいつか言おう。
ただ、もう自分用で作ることはないかな。」
自分て作ってみるとわかるのだが、これでもかと言わんばかりに砂糖やバターを投入するため、
作ってる途中に絶対これ体に悪いなぁと思うはめになる。
その後食べる時には純粋に味わえなくなるのだ。
なので絶賛スイーツを食っている今は言わないことにした。
決して作っている工程を見てはいけない。
コンビニ弁当みたいなものだ。あれは実際見たことなくて話しか聞いたことないが。
弁当のバイトをしている人はコンビニ弁当を食えなくなると聞いた。
夢だけ見ていればいい。現実と言う裏側を見てはいけない。夢が消える。
有坂くんはこんな時でも夢はみません。
「私にも作ってくれますか?」
「いいけど・・・そんな旨いもんじゃなかったよ。普通に食えはしたけど。」
「それでも食べてみたいです。」
「そう。じゃあ準備をしておくよ。
・・・・二乃はバイトしてるし、家でも作ってるんじゃ?」
「今のアパートに来てからは、あまり作りませんね。」
「あーそっか。金かかるもんなぁ。・・・うお。下はどーなってるんだコレ。」
バケツの下の方どうやって食べれば・・・・ああ。そのためのスコップか。
スコップで下の部分をすくって皿に移す。
厄介な客が来たら、スコップを使うことに賛否両論あるかもしれないな。
洗ってあって綺麗なら別にいいじゃん。俺はなんにも気にならない。
「「ごちそうさまでした。」」
案外食えた。よく考えたら俺昼飯食ってなかったし。
スイーツは高カロリーだからな。メシ抜きでバランスを取ろう。
「さあ。行こうか。風太郎と三玖は上手く行っているかな。」
「告白・・・・するんですよね。」
「らしいよ。あ。そういえばあのパンは持ってきているんだろうか。」
「四葉が持ってきてます。お昼ももうすぐ終わりますし、早く行きましょう。」
「そうだね。」