「フータロー!写真撮って!引っ込んじゃうよ!」
「わかったわかった。ったく、しゃーねーな。」
映画村の中、三玖と風太郎を見つけた。
港町の池からたまに出てくる恐竜っぽいものを見て、
三玖が風太郎の手を引きながら指をさしている。かわいい。
あの恐竜は出てきたり出てこなかったりする。
全く持って時代に合っていない映画村の遊び心である。
「大丈夫そうですね・・・・」
「ああ。もうすっかりいいカップルだ。」
「・・・・・っ!」
「あれ、二乃。どうした。」
五月と二乃と一緒に二人を見ていたが、二乃が急に走り出した。
走り出して・・・・あ。風太郎にタックル。
風太郎の前には三玖。三玖を突き飛ばして池に沈めてしまった。
浅い池だから溺れるとかの心配はなし。
嫉妬か?妬ましくなったか?わかるわかる。滅んで欲しい時ってあるよね。
風太郎を突き飛ばした二乃がこちらに帰ってきた。
「どしたの急に。」
「・・・あの二人を見てたら足が勝手に動いたのよ!」
「はいはい。頑張った頑張った。
今までよく我慢しました。えらいえらい。二乃くんは出来るオンナだねぇ。」
「あやすなぁ!」
二乃くんの頭を撫でてやる。大丈夫ですよー。
寂しくなったらナギお兄ちゃんに甘えていいですからねー。
「あららー。三玖、下着・・・・どうするんだろ。」
「また濡れちゃいましたね・・・・」
「おや、一花と四葉。」
「し、下着なら、私が持っています。」
「・・・なんで?」
一花と四葉が合流。4人集合した。五月が変えの下着を持っているらしい。
謎。こんなこともあろうかと とはならんでしょ。
まさかこの映画村でふんどしでも買ったんじゃないだろうな。
売ってるかどうか知らないけど。
三玖が池に落ちてしまったので二人は場所を移した。
着替えのためだ。先ほどの変身体験の建屋に来ている。
「ホント助かったよー!五月が下着を持ってきてて!」
「でも・・・なんで下着なんか?」
「なにか!あると!いけないと!おもったんですー!!!」
「何で顔が真っ赤なんだい?」
ずぶ濡れになった三玖が着替えているので、
五月がバレずに下着を運搬。五月容疑者は上記のように供述しております。
あ。三玖が出てきた。
・・・・・・向こうも顔が真っ赤だぞ。
三玖がカーディガンの下の裾引っ張って下半身隠してるし。
ちゃんとストッキングもスカートも履いてるのに。
一体どんな下着を渡したんだ。渡したのはキミなんだろう五月。
聞きたい。しかし聞けない。解くことの出来ないミステリー。クレームめっちゃ来るよ。
主に有坂って苗字の人から。
「あいつら見つかんねぇーな・・・・ん、どうした三玖。」
「つ、疲れちゃった。その辺に座ろう。」
二人は休憩するようだ。よし。このタイミング。
お膳立てをしてやろう。
「・・・・これで良し。と。」
「こっちもOK。」
「息ぴったりだね?」
関係者以外立ち入り禁止の看板を各所にセット。
有坂及び一花による周辺封鎖。
これでこの辺りには誰も来れまい。永遠に二人きりだぞ。喜べ。
三玖、告白するまでここから帰さねぇからな。告白しないと出られない映画村。
「これからどうしましょう・・・・・」
「パンを持ってきてるんだろ?それしかない。」
風太郎と三玖は番傘の下で座って休んでいる。
すぐ近くに建物があり、そこに5人で潜伏中。
俺達と二人は1mも離れていない。壁一枚を挟んだ至近距離だ。
「大丈夫です!ちゃんと持ってきました!」
「よーしえらいぞ四葉。そうだな。町娘さんに渡してもらおうか。」
「いいよ。これを三玖に渡せばいいんだね?」
「一花。その紙袋だよ。よろしくね。」
四葉がちゃんと忘れずに持ってきたパン。それを一花がこっそりと届けに行った。
待合茶屋のような団子ではないが、我慢してもらおう。
忍者パフェもあるんだ。忍者パンがあったっていいだろ。
あいつなら何食っても喜ぶけどな。コロッケ以外なら。
「目まぐるしくて・・・あっという間の3日間だったね。」
「だな。」
「私は実質2日間だったけど・・・・でも、いいんだ。
最後にフータローと過ごせた。それだけで。」
「三玖・・・
?・・・・なんだ?それ。」
「!?・・・・・・なんで私のパンがこんなところに?」
「お前が作ったのか?・・・・・腹減ったし、1個貰うぞ。」
「あ!それはもう・・・・」
「あむあむ・・・・・・・・・・旨い。」
食い意地はってんなこいつ。
しかしおかげで助かった。100点だ相棒。
「俺は味音痴らしくてな・・・・ロクな感想も言えないし、自信もないんだが。
ただ、お前の努力はわかる。・・・・旨かった。頑張ったんだな。」
「!・・・・・うん!
・・・・わたし・・・・頑張ったんだよ・・・・!」
ようやく三玖の思いが伝わった。
長かった。今日一日。いや、昨日から根回しをした甲斐があった。
風太郎の口の中に会心の出来のパンが入った。
初日に食わしてやりたかったな・・・・
「届けてきたよ。」
「お疲れ様。良い仕事だ。」
「ふふ。ありがと。」
「二乃、ごめん。・・・・わたし、みんなに幸せになってほしくて。
消極的な三玖を応援してた。けど、二乃も・・・・上杉さんが好きなんだよね。」
四葉の独白。
二乃ではなく、三玖に肩入れをしてたのはそういう事か。
「・・・・いいのよ。あいつはああでもしないと思いを伝えられないんだから。
あんたが三玖を応援したところで、あたしは負けないわ。
あたしの方がフー君が好き。その自信、あるから。」
気高いツンデレ二乃姉御。パネェっす。
一生ついていくっす。
風太郎がパンを食べ終え、口を開いた。
「おふくろが昔・・・パンを焼いてくれたんだ。6歳のころに、毎日。
何故か今、それを思い出した。」
「フータローのお母さん・・・・」
「小さな個人喫茶で出す手作りパン。
俺も、親父も大好きだった。・・・・いや、こんな話はどうでもいいか。」
「ううん!もっと知りたい!フータローの事、全部!
そして、私の事も、全部知って欲しい!」
好きな人の事は、なんでも知りたくなる。
そして、好きな人に自分を知って欲しい。認識してほしい。
当然・・・と言えるかもしれない。知らないことを減らすのは、お互いのギャップの解消。
隠し事は少なければ少ないほど、恋人関係になった時に上手く行く確率が高くなるだろう。
・・・・林間学校の時の五月を。
あのリフトに乗っていた時、もっと知りたいと言った五月を。
・・・・あのデートの帰り道。河川敷を歩いてた時の一花を。
俺の事を知れてうれしかったと言った、一花を。
思わず、思い出した。
いつか来るかな。俺も変われる時が。
・・・来て欲しい、ものだ。
「私が好きなのは・・・あれ!お奉行所として知られてる名スポット!」
「知ってる。時代劇だろ?」
お奉行所を指さして喋る三玖。
うなずく風太郎。
「さっき渡った大きな橋も!」
「知ってる。ドラマだろ。」
「あれも、これも、それも・・・全部好き!」
「・・・・・多すぎるだろ。まあ、全部知ってるけどな。」
三玖が、風太郎を指さし、
「・・・・・・・好き。」
「・・・・!」
そう言った。
・・・・・・ついに。
「三玖・・・・ごめんね・・・・」
「今更謝っちゃだめだ。四葉。キミもまた、確かにトラブルはあったけれど、
この作戦に協力してくれた。そして、今回は成功した。
・・・それでいいじゃないか。」
「四葉、ナギくんの言うとおりだよ。もう気にしちゃダメ。」
「そうね。解決したんだもの。大したことじゃないわ。」
「大丈夫ですよ。四葉。」
「ああ。よく知ってるぞ・・・・だが・・・・」
「・・・・やっぱり私は、家族のみんなが好き。」
三玖は風太郎を差していた指を少し上げ・・・・・
こちらが潜伏中の建物を指さし、そう言った。
「え!?」
あ。二乃が飛び出た。
「え”!?」
驚く風太郎。
そっか。俺と三玖しかいないと思ってたんだもんな。
「やっぱり。みんな居るんでしょ?」
「ナギくんもいまーす。」
「くすくす。ついでにナギも好きだよ。」
「やったー。」
俺はオマケだそうです。まあいいや。
三玖だし。
「ちょ、ちょっと待て・・・・せ、整理しよう・・・・
さっきの好きってのは・・・・・」
「そこに隠れていたみんなを指さしてだけど・・・・
もしかして、自意識過剰くん?」
「・・・・・・バ、バカにしやがって!帰るぞ、凪!」
「はいはい。先に行ってなさい先生。」
自意識過剰くんは怒って何処かへ行ってしまいました。
まあ、流石に気付いただろ。
「ナギ、ありがと。お陰で、言えた。ちゃんと飛べたよ。」
「よかったねぇ。まあ、みんなのおかげだよ。」
「そうよ!感謝しなさい!」
「ありがと。二乃。Eコース、導いてくれたんでしょ。」
「・・・・・わ、わかってるなら良いわ!」
「一花。パン、届けてくれたんでしょ。ありがと。」
「あちゃー。バレてた。」
「五月。その、下着・・・・ありがとう。」
「す、すみません・・・・・」
どんなの持ってきたんだよ。
見たいんだが。後学のために。
「四葉。」
「ごめん、三玖。私のせいで・・・・」
「ううん。むしろ、ありがとう。四葉は修学旅行の前から、応援してくれた。
あれがなかったら、パンは作れなかったんだよ。」
「三玖・・・・」
三玖が四葉を抱きしめた。
5人揃った。良い雰囲気だ。
バレないように写真を撮っておく。もちろん忘れてはいない。
久しぶりに集結したんだ。
姉妹だけにしておこう。
ゆっくりと、その場を離れた。
「ナギ君!」
「ん?一花。」
映画村を眺めながら帰路についていたら、後ろから一花がやってきた。
「その。今日はありがと。」
「・・・ああ。あれね。」
「今日だけじゃない。一昨日も。」
「あれはまあ別に何にもしてないし・・・」
「それに・・・みんな、また仲良くなれたのも、ナギ君のおかげ。」
「みんな頑張ったからね。」
「だから・・・・これは、そのお礼。」
「え?」
一花が近づいてきて。肩を掴まれ、
頬に、キスをされた。
「なっ・・・!?」
「ふふ。どう?ドキドキした?」
「・・・・初めての経験だからね。・・・・びっくりは、したよ。」
「ふふふ。良かった!先に行ってるね!」
「うん。」
突然の事だったので、唇の感触をよく覚えていない。
・・・・・・勿体ない事をしたかもな。
夕方で周りに人もいない。その辺も問題ないだろう。
またキミに、一杯食わされた。
ただ・・・・そんなことをされてもな・・・・
・・・・困るだけだよ。
「有坂。そっちはどうだ。」
「ほぼ完璧。風太郎、使え。」
「ふぃー。助かったぜ。俺は微妙だ。」
「悪いな、二人とも。」
「おかげで盗撮犯扱いだ・・・・俺とはバレなかったけど、もうやらねぇからな!」
「ははは。大丈夫だよ。写真集渡せばあの子たちもわかってくれるさ。」
「上杉くん、アルバムを作るんだって?僕に任せてくれよ。」
「あら、洒落たものを作るのね。装飾は私がやるわよ。」
「武田、毛利。・・・助かる。」
「風太郎、五つ子は後ろでぐっすりだ。1枚とってこいよ。」
「そうだな。行ってくる。」
バス後方で5人してお疲れモードだった。
バレるわけがないので風太郎にやってもらう。
「はい。チーズ」
こうして、修学旅行は終わった。
1学期も終わり。夏休みに入る。
中間試験?期末試験?そんなものは、もう問題ではない。
あの5人を見くびってもらっちゃ困る。
統一模試の一件以来、学力と成績の方は問題なく向上していた。
「上杉くん。アルバム、出来たわよ。確認して頂戴。」
「おお。毛利。・・・・良い出来だな。」
「有坂くんもどうぞ。」
「・・・ん?なにこれ。」
「あなたの写真を集めたアルバムよ。私の自信作。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いったいいつ撮ったんだい?映画村の写真まであるんですけど。
今後の展開に備え、R-15タグを追加しました。恐らく問題ないと思いますが、
イマイチ線引きがよくわからなかったため、保険の意味を込めています。
今話では必要のないものと考えています。
今後においても行為の擬音などは全く出てきません。