五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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夏休みに突入。

俺は受験勉強もそこそこに、バイトに精を出していた。

 

 

「有坂。明日はまた撮影スタジオからの仕事だ。

お前をご指名だぞ。評判良いみたいだな。」

 

「北条さん。了解です。」

 

「ふふ。有坂くん、モテモテだね。」

 

「嬉しい悲鳴ですね。知り合いが居なければいいんですが。」

 

「芸能関係に知り合いがいるのか?」

 

「知らないの?五つ子の中野一花ちゃん。女優やってるのよ。」

 

「マジかよ。そんなに有名だったのか。知らんぞ。」

 

「じゃあ行ってきまーす。」

 

北条さんはもうちょっとテレビと映画見ましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、ナギ君!」

「有坂くん!またキミか!今回は逃がさないからね。」

 

 

外ロケという事で色々機材を運び終えたところだ。

とある大学のキャンパス内。公園のような広場にいる。

 

現場に来たら普通に一花と社長が居た。

なんでこんなに被るんだ。確かに地元なんだけどさ。

 

 

「じゃあ、自分帰りますんで・・・・」

「待ちたまえ!折角だ、勉強していきなさい。」

「何の勉強ですか・・・・・・」

「まあまあナギ君。こういう所見れる機会、なかなかないんだよ?」

「3回目なんだけどなぁ・・・・」

 

 

当然のように撮影を見学していくこととなった。

今度は逃がしてくれないらしい。エキストラが足りることを願おう。

 

 

 

 

 

 

「わたし、あなたとは付き合えない。だって・・・・」

 

 

ドラマかな。これは。服装とロケーションを見る限りは、大学生の役なんだろう。

一花が誰かに告白をされている。断る流れのようだ。

メインヒロインなのかその他の咬ませ犬なのかはわからない。

 

 

「・・・・・他に、好きな人がいるから。ごめんなさい」

 

「く・・・・・支倉さん・・・・わかり、ました。」

 

「カット!よし、良い!今のでばっちぐー!次のシーン行こうか!」

 

「ありがとうございます。監督!」

 

良い演技だったようだ。さすが大女優様。

俺には良しあしが全くわからないが。やる方は得意だが審査は出来んな。

 

 

 

 

 

「織田ちゃん、次のシーンなんだけど、一人足りないんだよねぇ・・・・」

「・・・・・・・・おつかれっした」

 

「どこへ行くんだい?出番が来たよ。キミのデビュー作になるね。」

「どうしていつも人が足りないんですか?3回目ですよこれで。」

 

 

織田社長に肩を掴まれてしまい、流石に逃げられなかった。

もう出ないといけない流れになっているようだ。

 

「なに!?もう出演済みだったのか!デビュー作はどれだ!教えてくれたまえ!」

「もう覚えてません。で、何やりゃいいんですか。言っておきますが、高くつきますからね。」

 

仕方なく出る。出るからには貰うもんは貰わないと。

後で出演料をせびっておこう。

 

 

「この役だ。主人公の男とベンチで会話するだけだ。セリフも一行だけ。」

「ちょっと待ってくださいよ。セリフがあるじゃないですか。

コレのどこがエキストラなんですか。ちゃんとした出演者じゃないですか。」

 

まさかのセリフ付き。前回より酷い。

エキストラじゃなかったのかよ。

 

 

「最近のテレビ局は金がなくてねぇ。そういうレベルでもエキストラ扱いさ。」

「もう。わかりましたよ。これだけですよね。他にないですよね。」

 

「ああ、ない!これだけ撮ったらお帰り頂いて構わないよ!」

「はぁ・・・・台本ください。」

「随分手慣れてないかい?その子。」

「ウチの看板男優ですから。」

「ちげーよ。」

 

 

セリフは・・・・『おい、長澤。支倉がこっち見てるぜ。お前に用があるんじゃないか』

声を掛けるタイミングで一瞬主人公を見やり、正面方向にいる一花に向き直る。

 

支倉・・・・さっきの一花の役だった。長澤が主人公という事か。

 

台本の奥をチラ見したが、メインのヒロインは別にいるようだ。一花はただの当て馬か。

まだ長編の主役を張れるほどではないという事かね。

 

 

「・・・・はい。良いですよ。着替えあるんですか。」

 

「監督、この格好どうですか?」

 

「あー。いいと思うよ。不自然ではない。」

 

「社長!ナギ君出るんですか?」

 

「ああ。エキストラが足りなくなったんだよ。

次のシーンに入ってもらう。うちの看板男優と看板女優の共演だ。

気合入れてね。一花ちゃん!」

 

「ふふ。わかりました。期待してるね?」

 

「このドラマは絶対見れないなぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくよー!シーン39・・・・アクション!」

 

 

「それでよー、また中島の野郎がさ、」

 

「おい、長澤。支倉がこっち見てるぞ。お前に・・・・用があるんじゃないか?」

 

「え?」

 

正面にいる支倉。一花と向き合う。

一瞬変な間を作ってしまったが、良いんだろうか。

 

「長澤くん・・・・・わたしはっ・・・・貴方が・・・・」

 

 

 

「カット!良いね!OK!」

 

 

OKだったようだ。

よし。とっとと引き上げよう。

 

「これで良いですね。もうないですよね。」

「よかったよ有坂くん。やはり君には才能がある。この回の放送時間は」

「聞かなくて良いです。絶対見ないんで。」

 

見れるわけがない。見たら死ぬ。ドラマの題名すら知りたくない。

 

 

「ふふ。ナギ君、お疲れ様!一発OKだったね。」

「ちょっと間が開いたんだけどなぁ。案外許してくれるもんだね。」

 

 

「そう?あれ、良いアクセントになったと思うよ?」

「なら良かったよ。じゃあ、俺帰るんで頑張ってね。」

 

 

「あれ?帰っちゃうの?折角だから最後まで見て欲しかったなー?」

「あ、そうかい?なら居ようか。」

「嬉しい。前の役みたいに恥ずかしくはないから。もっと見て行って欲しいな。」

 

前の役・・・・たま子ちゃんかな。やっぱりあれは仕方なく受けた役のようだ。

他の姉妹がバイトをまだしていなかった時期だからな。

 

 

「ただし、もうエキストラはやりませんからね。」

「大丈夫だよ。もうないはずだから。」

 

 

その日は結局、大学でのロケを全部見ていった。

ちなみにこの時のギャラは結局貰っていない。社長?話が違いますよ?

 

ロケ中の一花は・・・とても楽しそうで、輝いた眼をしていた。

女優という仕事に誇りを持っているのだろう。

 

 

 

 

 

 

後日、毛利さんからメールが来た。

 

『ドラマ 見たわ 素晴らしかった』

 

この事は誰にも話してないんだけど。どうやって知ったのか。

つーか俺じゃなくて一花にメールをしてくれ。メインはそっちだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休み前半のある日。

また、陸上競技場に来ていた。

茜の地区ブロック大会の日である。

 

6位以内に入れば、最後のメインであるインターハイへの出場が可能になる。

11秒8台を出せれば充分可能だろう。

 

 

しかし・・・・この地区ブロック、とんでもなく速い選手が1人いる。

11.6秒前半をコンスタントに出し、パーソナルベストは11秒55。

 

全国的にも有名な浅井選手。インターハイでも優勝候補とされている。

100mと200mの二冠選手だ。この人に勝つのはちょっと厳しいだろう。

 

 

 

「センパイ!準決勝抜けましたよ!」

「順調だな。インターハイ取ってこい。

一人バケモンがいるが、とりあえず気にしなくていい。」

「はい!」

 

「周りは見なくていい。陸上の短距離は戦術も駆け引きもほぼない。

自分がどれだけ素早く走れるか。それだけだ。」

「わかりました!・・・・行ってきます!」

「行ってこい!」

 

 

100m決勝。

各選手がスタート地点でウォームアップをしている。

バケモンはあれかぁ。本物初めて見た。背たけぇ。

 

「2レーン・・・・」

 

カメラマンが正面についての選手紹介が始まった。

浅井ちゃんは愛嬌もあるな。あれは人気出るわ。美人だし。

人気って、プロスポーツ選手においては結構大事だと思うんだよな。

スポーツで長く仕事を続けたいのならば。人望は大事だと思う。

 

ライバルは2レーン。茜は7レーン。

インターハイは充分に狙える。あれは気にするな。

 

 

「On Your Mark.」

 

 

 

 

お前はここで終わる奴じゃないだろう。

 

 

 

 

「Set.」

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

 

 

やはりスタートは悪い。一番後ろ。

2レーンは絶好のスタート。周りも大概速いが、

それでも後ろからじわじわと茜が差を詰めていく。

 

 

今回も70m時点では2番手にいた。しかしライバルとの差が全く詰まらない。

 

・・・・惜しい。差が詰まらないという事はスピードはほぼ同じなのだ。

離されてはいない。いや・・・・・・むしろほんのわずかに詰めているようにさえ見える。

 

スタートが良ければなぁ。そう思わずにはいられない。

茜は2位でゴールした。11秒84くらいじゃないだろうか。

あいつなりに時計を詰めているんだが。

 

 

まあ、インターハイは確実だ。あのバケモンは3年で来年は居ない。

そう気に病む必要はない。

 

 

 

「ふぅ・・・・ふぅ・・・センパイ!やりましたよ!」

「よし。それでいいぞ。よくやった。」

「朝倉先輩凄いです!インターハイですよ!」

 

「さあ。次だ。やれることをやるぞ。」

「はい!クールダウンですね!」

「うむ。わかっているな。始めるぞ。」

 

 

茜と柔軟を始める。

もう向こうから進んでやるようになった。進歩の表れだな。

 

 

「センパイ。」

「なんだ。」

 

「もし、自分がインターハイで優勝したら、嬉しいですか?」

「当たり前だろう。自分の事のように嬉しい。一応コーチっぽいことしてるしな。」

 

「・・・そうですよね!自分が頑張れば、センパイも認められるんですよね!」

「いや・・・俺はオマケだし。自分の事を気にしろ。」

「はーい」

 

 

どうしていっつもセンパイセンパイなんだか。

ほぼなんもしてないんだけど。

いい加減そろそろセンパイ離れしてほしい。

まあ、卒業で強制的に離れることになるから、別に良いんだが。

 

 

 

 

 

 

 

「センパイこれー。」

「はいはい。何でも好きなもんを選べ。」

 

 

帰り。茜と一緒にうどん屋に来ていた。

当然ながら俺のおごり。よく食うなこいつ。天ぷらいくつ頼むんだ。

 

 

「センパイはどこの大学に行くんですか?」

「東京のどっか。」

 

「どっかでどこですか?」

「・・・・そんなもん聞いてどうする。」

 

「決まってるじゃないですか。そこに行くんですよ。」

「・・・・・・・だから言わない。んなことされても迷惑だ。

もうお前は遊んでられるような人間じゃない。前回言っただろ。

遊びの範疇はとうに超えてるんだ。」

 

 

「・・・・・・」

「前も言った通り、お前の走りは欠かさずチェックする。連絡もする。

それで我慢してくれ。こんなところで燻っている場合じゃない。

 

俺はお前が大変に誇らしい。お前の活躍を一番に願ってる。

・・・・だから、場所は言わない。

ちゃんとした大学に行くなり選手団に入るなりしてくれ。」

 

 

「わかりました。でも、大学に行っても定期的に会いに行きますからね。」

「なんでやねん」

「だって寂しいじゃないですかー!」

 

 

卒業したところでこいつから完全に離れることは出来ないらしい。

やっぱり憑かれている。これ、大学で済まないんじゃないだろうな。

 





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