五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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陸上をやっていた方には多量なご都合主義を含んでいます。
本来であればインターハイは真夏です。




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「凪センパイ、もっと強く押してくださいよー。

それじゃ伸びませんよー。」

 

「ああ?このくらいか?」

 

「あ~そのくらいです~」

 

「先輩方は本当に仲が良いですね!」

 

「有坂さん!こっちもお願いしても良いですか?」

 

「ダメっす!これは自分のっす!」

 

「これって言うな」

 

 

夏休みの学校、陸上部。茜の様子を見に来ていた。

インターハイはまだ遠い。学園祭の後くらいかな。

 

いつも真夏に開催されるんだが、今回は10月後半。

気温のコンディション的にはそちらの方が良いだろう。風が強そうだが。

理由としてはどっかの地区ブロック大会の開催が遅れたからだそうだ。

 

 

調整は順調に進んでいる・・・らしい。陸上部の後輩談。

最近はそこまで俺もこっちに手を出してはいない。

 

「あれ?センパイちょっと日焼けしてません?」

 

「この間は海とプールがあったからな。

日焼け止めは塗っていたが、さすがに少し貫通した。」

 

「海とプール!?ずるいっす!なんで自分も呼んでくれないんですか!」

 

「呼ぶわけがないだろう。クラスの連中と行ったんだぞ。

何故一年下のお前が来る。」

 

「え~?どうせ中野さんたちと行ったんでしょう?」

 

「プールはそうだな。海の時は居なかった。

まあ、あの子たちもクラスメートだし間違った表現ではない。あと風太郎もいたぞ。」

 

 

「ずるいっす!じゃあ今から自分とどっか行きますよ!」

 

「ええ?別に良いけど。もう夕方じゃん。飯でも食いに行くのか?」

 

 

「今日は近くの通りで夏祭りがあるんですよ!

二人でデートしてきたらどうですか!」

 

「いいっすね!ありがとうございます!ほらセンパイ行きますよ!」

 

「この格好で行くのか・・・・・」

 

両者ジャージなんだけど。

名前を見せびらかしながら夏祭りに行くことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな近くで夏祭りなんかやってたんですねー」

「ああ。俺も初めて知った。」

 

陸上部の後輩に言われた通り、茜と夏祭りに来ていた。学校のすぐ近くの通りだ。

この通りは影が薄い。しかし、祭りは結構盛況だった。

知り合いは先ほどから見かけていない。俺とこいつだけだろうな。

 

「じゃあセンパイ行きますよ!射的やりましょう射的!」

「はーい・・・・」

 

 

 

 

 

射的をやりに来た。

こいつじゃなくて俺がやりてぇ。やっぱ銃って良いよね。男のロマン。

 

「いらっしゃーい。5発で300円でーす」

「センパイおかねー」

「はいはい・・・・」

 

 

当然のように財布は俺。

まあ最近のこいつは頑張ってるし良いか。

 

 

「腕が鳴りますねー!」

「なに狙うんだ。」

「まずはウォームアップですよ!あの小さいお菓子から行きます!」

「照準調整か。」

 

・・・・ん?ウォームアップ?

5発で終わんないの?俺の財布持つかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぬぬ・・・・もう1発・・・・」

「茜くん?何発撃つんだい?後ろで小さい子が見てるよ?」

 

18発くらい撃った。

最初の5発で小さいお菓子と中くらいのテディベアを落として調子に乗った。

折り畳み財布のようなものを狙いドツボにハマっている。もう1200円ですよ。致死量ですよ。

 

 

「もーすこし近づいた方が・・・・わ!」

「少し離れろ。机が動いてる。」

 

体を前に前に出そうとしたため一回こちらに抱き寄せて引き剥がした。

あんま体重かけると机がばったーん行くから。

ここより前に出るなというライン引きの意味合いで、机が設置されている。

 

「あ、ありがとうございます。」

「後ろ並んでるしその2発で終わりだぞ。

2発で他のを落とすかあいつを仕留めるか選べ。」

 

「もちろんあの財布です!」

「無謀なことを・・・・そもそもアレ女物じゃないだろう。」

「センパイが使えばいいじゃないですか!」

「俺は長財布しか使わん。」

「えー!!早く言ってくださいよ!!」

「まあくれるなら貰って使うけど。」

 

カードとかいろいろ詰めるから大容量の長財布じゃないと使う気がしねぇのよ。

自分の事に関しては面倒くさがりだからな、俺は。

レシートとかバンバン貯めるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

 

射的は結局ダメ。

後ろで小学生が待ちわびていたので交代した。

今は型抜きをしている。茜の性には合わないと思ったのだが、凄い集中している。

それをいつものスタートで活かせや。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

向こうが一切喋らないのでこっちも邪魔をしたくない。

必然的に無言。茜の隣に座っている子供が興味深そうにのぞき込んでいる。

俺は茜の対面にいる。

 

もうすぐ削り切れそうなので流石の子供も固唾をのんで見守っている。

針を駆使して開始から20分近く。ちなみにそれを削り切れたら1000円。800円の儲けだ。

時給2400円だな。中々良いバイトかもしれん。検討に値する。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」パキ

「あ”ぁーーーーー!!!」

「うるせぇ。静かにしろ。」

「びっくりしたー!」

 

やってしまったようだ。周りにも型抜きしてる人がいるんだぞ。

型抜き屋ではお静かに。せっかくもうすぐ傘の形が抜けそうだったのに。

覆水は盆に返らず。

 

「おねーちゃん型抜きうまいねー!」

「あ、ありがとっす」

「俺にも教えて!」

「へ?じゃ、じゃあこの形を・・・・」

「こっちは魚のかたちー!」

 

ちびっこのヒーローになってしまった茜。

良かったな。ファンが出来たぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「センパイあれ買って下さい!」

「ん?・・・・・あの店はやめた方が良い。さっき見たあっちの店だな。」

 

型抜きを終えて道すがら。

茜がチョコバナナをねだってきた。

俺も結構好きだが、これに関しては少しこだわりがある。特にこの真夏の季節はな。

 

 

「え?あっちの店っすか?こっちの方が50円安いっすよ?」

「値段はそうだな。しかし向こうは50円以上の価値がある。

あの屋台の方が祭りをよくわかっている。こっちの屋台は素人だ。」

「そ、そうなんですか?」

 

 

 

 

 

よくわかっている方の屋台に来た。

・・・・うむ。やはりそうだな。間違いない。

 

「いらっしゃいませー。」

「なにが良いんだ。」

「ストロベリーで!」

「じゃあストロベリー2つ。」

「500円でーす。」

 

500円を渡しチョコバナナ2本を受け取る。

チョコにこのつぶつぶがついてるのが良いよね。正式名称知らないけど。

スプレーなんとかだっけ。

 

「いったい向こうの屋台と何が違うっすか?」

「食ってみろ。食えばわかる。」

 

「・・・・いただきまーす。・・・・・うん。普通にチョコバナナっす。」

「だろ。そういうことだ。」

 

俺も食ったが、普通に冷たいチョコバナナ。

うんうん。こうでなくてはな。アイシーでフレッシュ。そしてスイート。

真夏の冷たい清涼剤。バナナアイス。

 

 

「・・・・・いや、わかんないっす。」

「何だわからんのか。全く。お前は今まで随分と恵まれてきたようだな。」

 

「何の話っすか?」

「言っただろう。食えばわかる。案ずるより産むが易し。体験して来い。

ほれ。これで向こうのチョコバナナを買いに行ってこい。俺の分はいらん。」

 

 

 

 

 

「買ってきましたよー。」

「よし。食え。」

 

「いただきます。・・・・・・う。」

「・・・・わかっただろ。」

 

 

「・・・・・ぬるいっす。」

「そう。向こうは素早く提供するためかチョコバナナをある程度あらかじめ店頭に並べている。

しかしチョコバナナってのはそう何本も素早く売れるわけではない。並べてからちょっと時間が経つ。

 

こちらは直前までクーラーボックスに入っている。だから冷たい。シャリシャリしたチョコバナナが食える。

そして、冷たさはこっちの想像以上だった。保冷剤をケチっていない証拠だ。」

 

今は真夏。バナナは冷やさないとぬるっと来る。

この感覚は意外と不快になる人もいる。少なくとも俺はそうだね。

 

 

 

「・・・屋台って奥が深いんですね。」

「まあ、実物を店頭に置いておけば、視覚的な集客効果はあるから、一石二鳥ではある。

ただ、客としての実利は薄い。よくわかったかね。茜くん。」

 

「センパイ、ちょっとカッコいいっすね。」

「今更気づいたのか?・・・まあ屋台はよくバイトしているからな。」

 

ちょっとかよ。結構カッコよかったろ。70点くらいあったろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏祭りを二人で満喫していた。

道路近くのガードレールに寄りかかり、二人でフランクフルトをかじっている。

 

 

「えへへ。楽しいっすね!」

「そうだな。思えば、高校になってからお前とこうして遊んでいることはあまりなかったな。

というか友達いるだろ。そいつらと行けばいいのに。」

 

中学校は部活帰りに色々連れまわされた。

こいつが離してくれなかった。

 

 

「・・・自分、友達すくな「馬鹿言うな。既に1年坊に信頼されているお前が

友達いないわけがないだろう。つーか中学校の時は人気だったろ。」

「バレました?」

「当たり前だ。変な嘘をつきおって。」

 

 

「たまにはいいじゃないですか。部活上の付き合いだなんて寂しいっす。都合のいい女っす。」

「その表現には語弊が多量に含まれている。」

 

「部活終わったら姿を消してポーイじゃないですか!それと何が違うんですかー!」

「そもそも俺は陸上部所属じゃないだろう・・・・・見に来るだけ感謝しろ。」

 

 

 

 

 

「・・・ホントに、なんで陸上辞めちゃったんすか?」

「喋っただろ。何度も言わせるなよ。バイトだって。」

 

「前聞いたのは充分納得できる理由ですけど、まだ何か隠してるでしょ?」

「なにを。・・・・なんもねえよ。そう勘繰るな。

まあ、陸上がつまらないと感じるようにはなったがな。」

 

 

戦略性が薄い。途中からそう感じた。

純粋なる肉体勝負だと考えるようになったからだ。

それでも中距離は多少なりとも駆け引きがあって好きだったんだが。

 

戦術や工夫で相手を逆転するというのが、スポーツの醍醐味だと思う。

しかし陸上競技はその要素が薄い。中学校の時に、そう考えるようになった。

 

 

「自分の走りを見ててもそう思いますか?」

「お前は別だ。関わり過ぎてるからな。

言った通り、お前の活躍は自分の事のように嬉しい。」

 

インターハイに出れる選手だからな。俺とはスケールが違う。

そんな奴が身近に居るんだ。それなら見てて楽しくもなるさ。

 

 

「・・・なら、インターハイも見に来てくださいね。」

「平日だろ。俺は学校。後で動画で見るさ。」

「ダメっす。マネージャー枠でついてきてもらうっす。」

「んなもんが通るわけねぇだろ。」

「通ったっすよ?夏休み終わったら先生に確認してください。」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

通ったのかよ。どーなってんだうちの学校は。

 

 

「そんな訳で凪センパイは学校サボれるっす。良かったですね!」

「・・・・10月後半だろ。受験シーズンなんですけど。」

 

「後輩の一世一代の晴れ舞台と受験、どっちが大切なんですか!」

「受験・・・・」

「もー!!やっぱ自分は都合のいい女っす!」

 

「いや当たり前だろ。もうスポーツ推薦が確定してるような天才のお前と一緒にするな。

こちとら普通の凡人だぞ。」

「天才にしてくれたのはセンパイじゃないですかー!!」

「そう怒るな。ほら、たこ焼き奢ってやるから。」

 

 

 

そのまま茜と一日、夏祭りを過ごした。

インターハイの日は誘拐されるらしい。覚えておこう。

 

 

 

夏休みがこうして終わると思ったのだが・・・・・

ある一つの急な連絡を受けた。

 

 

 

 

中野 一花が、自主退学をするとのことだった。

 

 

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