ユニット名は勝手に決めました。出てこなかったものと記憶しています。
日の出祭、1日目の朝。
風太郎からメールが届いた。
『学園祭初日15時に 教室に来てくれ
あいつら5人も呼び出してある』
「いよいよ始まります。第29回!旭高校、日の出祭!
まずは、我が校の誇る、女子生徒ユニットによるオープニングアクトです!」
学園祭の開幕。体育館に生徒全員が集められた。
この時点で来ている保護者等もいる。
「チェックOK。行きますよー!」
俺はステージ横で裏方をやっていた。ステージにいる5人にサインを送る。
向こうからは突き上げられた親指。返答が来た。ステージの幕を上げて、曲を流す。
「3.2.1・・・・」
♬~~~~~
日の出祭の為に結成された一時的なアイドルユニット。
日の出祭。ユニット名はサンライズ。
そのサンライズのセンターを務めているのは・・・・・・・・・二乃。
『ラブ・バケーション!恋に休み、なんてもの、なーいのーよ!』
「かっこいい!」
「よく参加したな・・・・・・・」
四葉と風太郎もステージ脇からダンスを眺めている。
センターに二乃、サイドに二人ずつ。サイドの生徒は知らない。
二乃は赤い服とミニスカートを着てダンスをしている。
観客からレッドと呼ばれていた。大人気である。
他にはブルー、イエロー、グリーン、パープルが居るが、歌っているのはレッドだけ。
他はサイドでダンスをしているのみ。戦隊ものではなくアイドルユニットなので、全員女性。
観客諸君、君たちはわかっていないぞ。あれは茨。無暗に近づいてはならぬ。
禁じられた遊び。触れれば棘でケガをしてしまうぞ。
そのまま夢を見ておけ。現実を見るな。俺は日頃から夢を見ない男だから大丈夫だが。
あれを処理できるのはフー君だけだ。流石全国3位は格が違った。
このセンターの役、本当は四葉の予定だったらしいが、多忙を見かねた二乃が変わってくれたとの事。
・・・・・間違いなく、何かほかに理由があるだろう。なんだろうか。
俺はフー君にみんなから愛されているところを見せつけて、
独占欲を刺激したかったとかそんなんじゃないかと考えている。
このまえ言っていた作戦は押してダメなら引いてみろと俺が発言したことだった。成功したらしい。
『恋の~!バケ~ション!!』
絶対無理してると思う。
~~~~~♬
「おつかれー。」
「うう~!なんであたしがこんなことを・・・・・」
「レッドちゃんよかったっすよ。」
「うるっさいわね!その舌引っこ抜くわよ!」
「ごめんなさい」
結構な巻き舌で怒られた。相当恥ずかしかったようだ。
ステージ裏に引き上げてきたエンマ大王、もとい茨のトゲは出演したことを後悔していた。
純粋に四葉の手伝いだったのだろうか。他意はなく。
「ナギは?あんたライブステージ出るんでしょ?」
「ああ。出るよ。一花から聞いたのかい。」
「一花?いや、毛利さんから聞いたわよ。」
「そっちか。」
毛利さんには二乃であろうと頭が上がらないらしい。
この旭高校でも本当に異質な存在である。
ちなみに俺は毛利ファンクラブのブラックリストに入れられているらしい。
ほんとアイドル復帰しろって。
「今まで隠しておくなんて水臭いわね。手伝いに行くから、覚悟しておきなさい。」
「嬉しいねぇ。キミらが居てくれれば百人力だよ。」
「あたしがこんなことするなんて中々無いのよ!もっと感謝しなさい!」
「あざっす姉御。マジリスペクトっす。」
さっきの一件で開き直ってくれたらしい。思い切りのいい女は好きですよ。
協力者は二乃を入れて5人。・・・・確定かなぁ。
「よし、凪。屋台の安全点検を頼む。これがチェックリストだ。」
「了解」
「2つの屋台に対して顔が効くのはお前しかいない。頼んだ。」
「そんなことないと思うけどなぁ。」
風太郎から点検容紙を受け取ってウチのクラスの点検に回る。
たこ焼きとパンケーキ、両方行う。
「有坂さん!わたしが代わりにやっておきますよ!」
「いや、四葉。キミは特に仕事量が多い。遠慮しておく。」
「でも、私も今は手持無沙汰なんです!」
「・・・なら、キミも一緒に来るといい。回るだけだ。」
「ちーっす、点検でーす。」
「有坂くん!おつかれさまー!」
「ナギ、四葉・・・・・・食べる?」
「そうだね。一つ貰おうか。」
まずはパンケーキサイドから。三玖が店番をしていた。
各所チェックしていく。・・・・特に問題はなさそうだ。
「よし。問題なし。その調子で頼むよ。屋台の調子はどう?」
「結構人が来てくれてるよ!他に同じ屋台ないし、やっぱパンケーキで正解だよ!」
「そう。何か要望ある?」
「ボンベの位置・・・・動かしたい。」
「ボンベ・・・了解。お客が全員処理出来たら、移動しよう。」
「やっぱうちらだと力がねー。有坂くんがこっちでよかったよー。」
「ははは。これが終わったらあっちも見に行くさ。
四葉、先にたこ焼きのチェックをしていてくれるかい。」
「りょーかいしました!」
客がはけたタイミングでガスボンベを所定の位置に移動。
倒さないよう慎重に。
「ここで良いかい。」
「うん。ありがとう。・・・はい、出来たよ。」
「どーも。」
三玖からパンケーキを受け取る。
ふわふわだ。焼いた人が焼いた人なのでちょっと怖いが。後で四葉と食べよう。
ブルーベリーのジャムがかかっている。
さあ、次はたこ焼き側。
「うっす。点検です。」
「有坂コラァ。パンケーキの調子、どうだったよ。」
「結構良さそう。他にやってるところなくて独占だからね。それが大きい。」
「そーか、なら負けてらんねぇな。」
「四葉、パンケーキ貰ってきたよ。食べよう。」
「これ、三玖が焼いたんですか?美味しそうです!」
四葉と一緒にパンケーキを食べる。
・・・・おお。美味いぞ。これはイケる。
なんという事でしょう。これが専門学校生のお味。
バイト先のこむぎやはパンケーキも守備範囲に入ってるんだろうか。
これ風太郎に食わせりゃ専門学校進学も納得してくれるだろうな。
と思ったけどあいつなら何食わせても一緒だわ。
「ああ!?それが例のパンケーキか!逃がさねぇぞ。うちのたこ焼きも食ってけ!」
たこ焼きも渡されるらしい。
「点検はどうだい。」
「特に問題はないですよ!この紙片くらいですかね!」
「紙片?」
鉄板の近くに紙屑のようなものがある。
段差があるから、問題はないと思うが、少し危ない。
「この紙屑なんだい。武田くん。」
「キッチンペーパーだね。後で片付けておくよ。」
「・・・・いや。後回しではダメだ。今俺が片付ける。」
ダメとわかっているのであれば、任せるのではなく、自分でやるべき。
正直、その辺の仕事は屋台運営者の仕事であるが、
必要と判断したら、実行委員の手を入れさせてもらう。
俺の仕事は増える。だが、こういう事をためらってはいけない。
その仕事は俺の仕事じゃないから任せるべき?きっちり線引きしろって?
それは違う。この程度の誰でも出来る雑用なら気づいた奴がやるべきだ。人任せは良くない。
助け合いとはそういう事。理論武装するのは良いが、
その理論を全てとするのは、融通が利かないと俺は思う。
それはいつか、自分と他人の首を絞め合うことになりかねない。
「鉄板は段差があるから、紙が上に乗ることはないと思うけど、念のためだ。
火器のすぐ近くに燃えやすいものをおかないでくれよ。」
「わーったわーった。ほら、出来たぞ。」
「どーも。」
たこ焼きを渡されたので四葉と一緒に食べる。
「うま!」
「あたりめぇよ!ふわふわにするために牛乳を入れてる!」
「へー。そんなコツがあるとは知らんかった。」
「後はこのコンロだな!高火力に改造してカリカリに出来るんだぜ!
おかげでガスの消費が激しい。有坂、追加のガスボンベ頼むわ!」
「あい、わかった・・・・・待った。今何と言った。」
「え?」
「今なんて言った。コンロがどうしたって?」
「高火力仕様だぜ?」
「改造したと言ったよね。その改造、誰がやったんだ。」
「自己流だ。」
「高火力の市販品を使っていないのかい?」
「あれはたけぇからな。それに実際に使うと満足いかない事も多い。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・それ、大丈夫なんだろうね。
屋台のバイトしてるけど事故を起こした店舗はいくつか知ってる。」
「試運転は散々やったぜ?問題ねぇよ。」
「そう。・・・・・・・一応、消火器と水を入れたバケツを用意しておこう。
必要ならためらいなく使ってくれよ。四葉、バケツに水入れて持ってきて。」
「わかりました!」
「心配しすぎだって!あんま馬鹿にすんなよな!」
「いや、屋台決めの時と同じだ。俺はこういう時、最悪のケースを想定して動く。
何もなければ、それでいいんだ。安全管理、頼んだよ。」
「おう!任しとけ!」
ガスボンベと消火器、バケツを用意した。
不安だな。女子連中は比較的穏やかだが、こちらは血気盛んだ。
しっかりとこちらで管理した方が良い。今は二乃もいないし。
「風太郎、終わったぞ・・・・・・次は?」
「ぜぇ・・・・ぜぇ・・・・終わったか・・・・・次は・・・・」
相棒はまたもや死にかけていた。
イスを持ってどこかに運んでいたようだ。
「力仕事俺がやるって。これ何処よ。」
「・・・・ふ、噴水・・・・」
「はいはい。ちょっと休憩して、別の仕事してな。四葉、もう少し頑張ろうか。」
「任せてください!」
噴水周りに椅子を運んでいく。
手違いがあったのかまだ休憩所が出来ていなかったらしい。
事前に喋っておいたんだが。
「それにしても有坂さんは慣れてますね?」
「やってることバイトと同じだもん。いつもの業務。」
「椅子運びもやるんですか?」
「うん。イベント会場の設営で1000脚くらい並べたり。」
「ひえー・・・・」
ひたすらパイプ椅子を並べる仕事。途中から無になる。あれは。
足が痛くなるだけだ。
「四葉は、今のところ大丈夫かい。かなり忙しそうだけど。」
「私は大丈夫です!有坂さんもこれが終わったらお祭りを楽しんでください!」
「そうだね。お言葉に甘えようかな。」
四葉の仕事をスティールしたかったが、中々隙を見せてくれない。
なんか演劇部の助っ人もあるらしいし。
ライブステージもあるので、一旦離脱しよう。
「・・・・お前らなあ。チョコバナナは冷たくしとけとあれほど・・・・・」
「じゃがバターは・・・・危険だな。」
ぶつぶつ言いながら一人で屋台のストリートを歩いていた。
バイトの経験がチラついてダメ出しをしたくてたまらない。完全なる職業病である。
ちなみにじゃがバターは以前、じゃがいもの芽を取っていなかったせいで
翌日寝込んだ客が大勢いたフェスを知っている。
みんな好きだと思うけど、気を付けた方がいい。
特にこういう学園祭、調理しているのが素人である可能性が高い。
かなりハイリスクである。
「有坂!丁度いい所にいた。私達の屋台、手伝ってくれないか。」
「片倉くん。構わないよ。」
片倉くんが声を掛けてきた。
バンドメンバー4人は一つのクラスに固まっているのである。
「屋台は?」
「焼きそばだ。」
「得意ですよ。向かうね。」
「あー!ナギっちー!丁度いい所に!焼いてー!」
「鉄板焼きのナギっちに任せてもらおうか。」
「私達はちょっと買い出しに行ってこないとなの。思ったよりもお客さん多くて。」
「ああ。良いよ。」
「具材の下準備はこっちでやるからなー!ばんばん焼いてくれ!」
「よし。伊達くん任せた。」
そういう事らしい。こっちも盛況だな。
焼きそばは・・・・多分独占だ。他はたこ焼きとチョコバナナ、焼き鳥が多い。
焼き鳥ってどうなん?ワンカップの日本酒置かないといけないだろ。ここは高校だぞ。
川村さんと屋代さんは買い出しに出かけていった。
この屋台は良いね。人気出るよ。鉄板を比較的前に出しているのが良い。
アツアツな視覚的効果とソースの匂いで人が寄ってくる。
さすがは俺の知り合いのクラスだ。
「いらっしゃいませー。」
「来たわ。有坂くん。」
「ぬお。毛利さん。」
「一つ頂けるかしら。」
俺がポジションについて即、毛利さんが来た。
狙っていたんじゃないだろうな。
「はいこれ出来ました。」
「ありがとう。頂くわ。有坂くん、これを付けてくれる?」
「これ・・・あとで付けるピエロの仮面じゃないか。どうして。」
「今のうちから宣伝をするのよ。ちゃんと一人称とセリフ回しも変えてね。」
「はぁ。」
「では、そのままよろしくね。」
そういう訳でライブの時の仮面をつけることになった。
まあ支障はそこまでないが。ここまでせんでも。
お客はまばらだ。まあ、もうちょっとで昼。
これから忙しくなるだろう。一組のカップルがこちらにーーーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何?
・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・ここに・・・・・・・・
「上杉。有坂が配置に付いた。」
「ご苦労。片倉。」
「マスクを被ってもらったわ。あれでよかったかしら。」
「問題ないぞ。毛利。」
「じゃあ、わたしが誘導するね。」
「嘘は得意だろ。期待してるぜ、一花。」
「不安です・・・・大丈夫でしょうか。ナギくんが目の前にした時に動揺しないか。」
「心配いらん、五月。あいつなら、上手くやれる。」
「今度は、ナギが飛ぶ番だね。」
「ん?何の話だ、三玖。」
「買い出しは終わったけど・・・・まだ、戻らない方が良いみたいだね?」
「クーラーボックスを探してくれ。川村。」
「あれがナギっちの運命の人?写真撮っちゃおー!」
「屋代・・・・今はやめてやれ。」
「えー!」
「凪。世話になったな。誕生日プレゼントの礼だ。返すのが遅れて悪かった。
時間を巻き戻したい、だったな。ランプに願ったのは。
凪。
・・・・・・・お前の時間を、俺達が戻してやる。」