五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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・・・・・・・・・・・遅い。

あのカードは小さいが、リビング以外の場所には立ち入っていない。

すぐ見つかるはずだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『単語帳を忘れた。取りに行ってくる』

 

 

帰り際、風太郎がそう言いだしたので1階のエレベーター前で待っているのだが、

もう10分は経った。いい加減様子を見に行こう。

 

 

「あれ?ナギ君、また帰ってなかったの?」

「一花さん、おかえり。」

バイト帰りの一花さんが来た。

 

 

「ちょうど帰るところだったけど、風太郎が忘れ物をしてね。

待ってるんだけど、中々来ないんだよ。」

「一緒に見に行く?」

「お願いしよう。」

 

 

 

「勉強、はかどった?」

「あんまり。だけど、少しずつ進んでいるよ。一花さんのバイトは?調子良いのかい?」

「・・・・ナギ君。ナギ君はどうして一花『さん』なの?」

「え?」

「二乃と三玖は呼び捨て。四葉と五月はちゃん付け。けど私は一花『さん』」

「五月ちゃんも今はさんづけだよ。それに・・・・事の成り行き上?かな?」

「ふふ。なにそれ。」

 

 

そんな会話をしながら、部屋のドアを開ける。

 

リビングに入ると正座させられている風太郎。ソファに座っている二乃、三玖、五月がいた。

 

・・・・今度は何をやったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一花裁判長。」

「はい!原告の二乃くん!」

 

「この男は・・・一度マンションから出たと見せかけて、私のお風呂上りを待っていました。

悪質極まりない犯行に、こいつらの出入り禁止を要求します!」

「『こいつら』って、俺もかい・・・・・」

 

 

 

家庭内裁判が行われている。被告である上杉 風太郎が中野家に不法侵入し、

原告、中野 二乃の風呂上がりを目撃、盗撮を試みた。

犯行は失敗し、原告と被告の行動の結果押し倒すことになった。ということらしい。

突っ込みどころしかない。

 

 

「一花!俺は忘れ物をとりに・・・「つーん」・・・・・裁判長、これは冤罪です・・・」

言い直したよ。一花さんの顔が「にぱー」っと笑った。今まで見たことないくらい良い顔してる。

 

 

 

 

「異議あり・・・・まず不法侵入じゃない・・・・インターホンで私が通した。

録音もある。不慮の事故。」

 

「あんたまだ庇うつもり!?こいつははっきり言ったの!「撮りに」って!」

 

「忘れ物を・・・・「取りに」きたんでしょ。」

 

「裁判長!三玖は個人的感情から被告をかばってまーす。」

 

「・・・・そんなんじゃ・・・・・ない・・・」

 

 

顏を赤くされながら言われても。説得力皆無。

って、あれ。三玖は風太郎のことが好きなのか?やっぱり。あのラブレターはマジだったのか?

からかわれたから赤くなってるだけか?わからん。

 

 

「今は姉妹で争っている場合ではありません!」

「五月は黙ってて。」「ていうかあんたもその写真消しなさいよ!」

 

 

「さ、さいばんちょ~~・・・・」

「よーしよしよし、怖かったね五月ちゃん」

末っ子に飛び火。なんか収集つかなくなってきた。

 

 

「あーもう。ちょっと冷静になりなよ。風太郎だよ?

勉強一筋6,7年、高校1年から100点以外を取ったことがない単語帳が恋人のがり勉だよ?

そんな頭のキレる男がこんなヘマするわけないって。やるにしたって別の方法でやるよ。」

 

 

「凪・・・・失礼なことを言われた気がするが許す!最早信じてくれるのはお前だけだ!」

「写真があるんでしょ?見せてよ。何か変な点があるはずだよ。」

 

 

 

「はいこれ。」 「あぁ・・・・・・・」  

「ため息ついてんじゃねぇ!やっぱり許さねぇ!」

 

 

「有罪・・・・やっぱ切腹。」

「三玖さん!?」

 

 

想像以上の写真だった。確かにやってるかもしれない。

バスタオル姿の二乃が完全に倒れてるもん。隣に風太郎いるもん。

手を地面についてるもん。押し倒してるようにみえるもん。ダメだよこれ。

 

「これね裁判長。・・・・被告やってます。」

「フータロー君もけしからんですなぁ。」

「凪ィ!貴様ァ!」

 

 

 

「いったん冗談は置いといて、変な点があるとすれば1つ。

・・・・足元に本が散らばっている。」

「・・・・本?」

「そう。二乃がバスタオルの格好で何冊かの本を持ち歩くとは考えにくい。紙も濡れるし。

風太郎はほぼ手ぶらで来たからこの本は風太郎の物じゃない。

そしてさっきまでリビングにこんな本はなかった。

なら、この本はどこから現れたのか?」

「その本は・・・・その棚の中にあった本だ。」

 

 

「棚から落ちた本から・・・・・二乃を守った?」

「五月さん?」

 

「よく見ればそのようにも見えますが・・・・違いますか?」

「そ、その通りだ!ありがとう!ありがとな!五月!」

「べ、別にお礼を言われることではありません。」

「まぁーフータロー君にそんな度胸はないよね・・・」

 

実のところそれが一番大きいよね。

日頃からのイメージって大事。

 

 

 

「ちょっと!なに解決した感じ出してんの!こっちはまだ納得してないわよ!」

「二乃・・・・・しつこい。」 「・・・・アンタねぇ!」

「まぁ、そうカッカしないで?私達、昔は仲良し5姉妹だったじゃん?」

 

 

「昔は?」

気になったので思わず口に出てしまった。

今は?・・・・までは出さずに済んだが。

 

 

「っ!おい二乃!」

二乃が走って部屋から出てしまった。何か呟いていたように見えたが、

少し距離が遠いせいか聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

まずい。どう見てもNGワードだった。やってしまった・・・・・

 

 

「ごめん・・・余計なこと言った。」

「ナギのせいじゃない・・・・・大丈夫。放っておけば良い・・・」

 

三玖はそう言っているが・・・・二乃と相性の良くない三玖の発言だ。

信用しきれない部分がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと家に帰って勉強できる・・・・・・・」

「そう・・・・」

 

エレベータの中、風太郎はお疲れムードだった。

切り替えが早いようでうらやましい。引き金を引いてしまったので、

俺は正直罪悪感が残っている。またやってしまった。どうして俺はいつも。

ピロリン

 

 

「・・・メールかい?」

「ああ。・・・・今日はカレーうどんだそうだ。」

「・・・・らいはちゃんね。」

「今日の夕飯は女子の作る俺の好物のカレーうどんだ。」

「・・・・・うらやましいよ。」

 

 

慣れないことを。風太郎が気をまぎらわそうとしてくれているのがわかる。

すまないね。そんなにわかりやすかったかい。

 

 

「あいつも明日には忘れてる。心配いらん。」

「・・・・そうだといいな。」

 

 

向こうに関してはそう願いたい。

だが、やってしまった側の俺はそう簡単には忘れない。引きずる性格だ。

困ったね。色々と・・・・支障が出ないように、しっかりしなくては。

 

 

 

「二乃?」

「!」

マンションの玄関前に二乃が座り込んでいた。

こちらを見た途端、エレベータに向かって走り出したが。

「・・・っ!」

 

 

中に入る前に自動ドアが閉まってしまった。

鍵を持っていなかったのか。あんなことがあった後だ。自分の方から姉妹には声を掛けにくい。

ということだろうか。

 

 

「ホント使えないわね!」

「・・・ごめん。」

 

謝るしかない。こうなったのは俺に責任がある。

お前達は仲が悪いのか?5姉妹なのに?そう発言したのに等しい。

 

 

 

「・・・・何よ。あんた達の顔なんてもう見たくないわ!」

「そうか。悪かったな。行くぞ、凪。」

「・・・・ああ。」

 

時間が解決してほしい。少なくとも今は・・・ちょっと無理だ。

早く帰って、寝たい。一人になる時間が欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎に連れられてマンションから立ち去ろうとした時、

俺のスマホが鳴った。着信?・・・・・知らない番号だ。

 

出るかどうか迷うが・・・・いや、今はこの気持ちを変える何かが欲しい。

間違い電話でも迷惑電話でもいい。俺の頭を他のモノで埋めてほしい。

出てみよう。

 

「風太郎、悪い。先に帰っててくれ。」

「そうか?」

「心配いらないよ。一人で帰るだけだぞ。何も起こりようがない。」

「・・・わかった。」

 

 

マンションの裏手に回りながらスマホの受話ボタンを押す。

助けを求めるように、「もしもし」と呟いた。

 

 






一花からの呼び名を修正しました。
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