「名残惜しいが・・・ライブをするのは私達だけではないのでね!次の曲が最後だ!」
観客からえー と声が上がった。
あ、そう。そんな楽しんでくれてる?うれしいね。
「Y!次はキミからスタートだ!」
「もっちろん!任せといて!
じゃあみんな!行くよー!」
♪~~~~~
シンセサイザーの音から2曲目が始まった。
とても壮大な曲。ここに観客の手拍子などが入る余地はない。
好きにやらせてもらおう。今回の主役は完全に俺たちだ。
『この古めかしい舞台 ・・・・一体何のために存在しているのか』
『・・・・失われた場所 元々がなんであったか 知っている者がいる』
『お前達に何がわかる? 誰のせいでこうなったのかも 知らない癖に』
洋楽ってのはとてもストレートな時もあれば、
お洒落な表現をするものもある。とても面白い。
邦楽もそうだとは思う。しかし、一見何を言っているのかわからないのが良い。
大声を出してノリノリで歌っているのに歌詞の内容は失恋してめっちゃかなしいわ
とかいう曲もある。邦楽も同じだとは思うが・・・調べないとわからない という所が良い。
『来たか・・・勇者よ また同じことを繰り返すのか』
『冒険などという綺麗事は 一方的な 大量虐殺の裏返し』
『それでも 俺は立ちはだからなければならない』
『観客は俺が成敗される様を 期待しているのだ』
サビだ。バックコーラスをサンライズの面々がしてくれるといっていたな。
チェックしておこう。2番から特に必要になる。
『この物語は まだ続く!』
『終わらせては ならない!』
よし。ちゃんとステージ裏のサンライズと伊達くん川村さんのコーラスが入ってきている。
2番のサビ最初、俺は歌わないので頼らせてもらおう。
ただし今は、コーラスに負けないように。
『この体が 朽ち果てることになっても』
『例え心が 砕け散っても』
『それでも俺は ・・・まだ、諦めない』
素晴らしい曲だ。
歌っていて、つくづくそう思う。
これほど格好よく、気持ちのいい曲はそうない。
燃え尽きるのに最適な曲。
『また 強敵だね 疲れるけど・・・望むところだ』
『心を失い 足が折れ 立ち上がれなくとも』
『まだ 諦めない』
『君達に何がわかる これが僕の生きる意味なんだ』
『何が立ちはだかろうとも 冒険は続ける』
2番に差し掛かったので、ステージを広く使う。
ダンスはいらない。この曲はポーズをとっていればいい。
大げさに、しかしゆっくりと、腕を大きく伸ばす。
まるでミュージカル、舞台演劇のように。見せつける。
孤独な歌詞だ。それでも人は、この歌に惹かれる。
孤独ではないな。・・・・孤高と言うべきだろうか。
『大丈夫 ここはまだ 通過点』
『僕はどこまでも 強くなれる』
『もうすぐ 変わるはずなんだ』
『周りは 倒れこむ僕の姿を見て心配しているけれど』
『これは 君たちをあっと驚かせるための 進化の予兆』
2番のサビに入る。ここはダンスを仕込む。大回転。
滑りやすい革靴を活かし、渾身の力で回る。
そして、サビに入るドラムの音と同時に止まる。
思いっきり猫背になった状態から、上体を起こしながら両手を大きく横に開く。
顔は真上を向いた状態でストップ。
ここは歌わずにバックコーラスに完全に任せる。
『この舞台を 止めるな!』
『終わらせては ならない!』
回転に全力。
終着点は完全にランダムだったため、体は客席から見て後ろ……
バンドメンバーの方を向いていた。
まあ、中途半端に横を向くよりはいいだろう。
バックコーラスに頼っている間に、体制を整える。
『この体が 朽ち果てることになっても』
『例え心が 砕け散っても』
『それでも僕の余裕は ・・・まだ、崩れない』
さあ、一番大事な場所だ。
変化の時。
喉を潰さんばかりの勢いで。声量で。
俺はこれから・・・・飛ぶんだ。あの日の三玖のように。
『あの日以来 私の心は溶岩の様に煮えたぎり 深海の様に落ち着いてもいる』
俺は変わる。
『疑う余地のない傑作だ きっとこの舞台が語りつがれる日が来るはずだ』
さあ。クライマックスだ。よく見ておけ。
これが俺の全力だ。
両手でマイクを掴み、天を仰ぐ。
体を限界まで反らす。
全身全霊を込めて、叫ぶ。
『私は まだ、変われる!!!!!!』
『・・・・そうだろう? 友よ!!!!』
歌のないほんのわずかな休憩時間にターン。
両足を少し開き、右手で握りこぶしを作り、ギターとドラムの音と共に高くつき上げる。
決まった。
『舞台を止めるな!』
『終わらせるな!』
『ある時は 稀代の勇者のように!!』
『ある時は 闇の支配者のように!!』
『私は・・・・・・変幻自在なんだ!!!!』
『他の出る幕はない!』
『この私が 主役だ!』
『文句は受け付けない!』
『見せつけてやる この私の意志と魂を!!』
『この舞台は・・・・私が終わらせない!!!』
『この舞台は・・・・・
まだ・・・終わらないんだ・・・・・!』
~~~~~♪
ステージに両膝をつき、マイクを両手で握りしめる。
祈るような恰好で歌い終えた。
大歓声が上がった。喉がもう持たない。
もう無理っす。
アンコールの声が聞こえるけど無視。うちらの後ろにまだ他のバンドいるし。
「・・・皆様!最高のライブをありがとう!
私達はここまでだ!次のバンドを楽しみに待っていてくれたまえ!」
強引に切り上げ、我先にとステージ袖に戻る。
メンバーも戻ってきた。
「ナギっちー!!最高だったよー!!」
「わふ」
屋代さんが抱き着いてきた。
「最高だったな!有坂ー!」
「伊達くん。キミも最高だったよ。」
伊達くんと互いの肘をクロスさせる。
「有坂くん・・・・その・・・ありがとう!」
「川村さん、こちらこそだよ」
川村さんと握手をする。
「有坂。やはりお前に頼んで正解だった。最高の男だ。」
「片倉くん、そっくりお返しするよ。」
片倉くんとハグを交わす。
「有坂くん。この調子だと3日目のアンコールライブはあなたたちよ。
準備してね。」
「そうなのかい?」
「ええ。定期的にステージを見に来ていたけれど、ここまで人が集まった事はないわ。
まず間違いなく、あなた達。」
「まだ舞台は終わらないわけだ。良いね。」
「そうね。まあ、当然かしら。」
毛利さんから報告を受けた。
「二乃、ありがとう。最高だったよ。」
「・・・・損したわ。アンタのステージ、アタシも客席から見たかったわ。
アンコールライブは手伝わないから。」
「そだねー」
「予想を遥かに超えてた」
「次は観客として見せて」
「有坂くん、またやり過ぎたねー」
「アンコールライブがあるかどうかわからんよ。」
「何バカなこといってんのよ。終わった今ですらアンコール受けてるじゃない。
こんなの、あたしたちのオープニングでもなかったわよ。」
「あれは開会式みたいなもんだろう・・・・」
サンライズの面々に色々言われた。
誉め言葉として受け取っておこう。
「・・・・ふー。」
ライブステージから完全に離れ、さっき自分と四葉で作った噴水の休憩所で一人ぼっちで休んでいた。
「さっきのバンド凄かったぞ!?」
「あんな奴がうちの生徒にいるのかよ?」
「アンコールライブ楽しみだな!」
「マジで?そんなヤバいの?さっき見逃したわー。」
・・・確かに準備しておかなければいけないらしい。
人通りが少ない。これはライブステージに人が集まっていた証拠だろう。
仮面をつけておいてよかった。
さっきの歌で、俺の気持ちも吹っ切れた。
心はまた、空を飛んでいる。
見ていてくれたかい。君の言う通りだ。
きっと俺も、変われたよ。やっていることは昔と変わらないさ。
一見は・・・何も変わっていないように見えるね。
だが・・・あの時よりも、より多くの人を。大衆を。
笑顔にさせる事が出来ているよ。
知らない間に、俺もまた変わっていたのかもしれないね。
一花。
五月。
もう少しだけ、待っていてくれるかい。