日の出祭1日目、14時。
風太郎の呼び出し時刻である15時には中途半端な時間。
何をしようかな。適当にぶらついてみることにした。
俺も学園祭を楽しむ側にならないとな。
食堂の中。
五月がいた。机に向かって・・・勉強をしている。
マジ?学園祭中ですけど。
「五月。勉強中かい?」
「ナギ君・・・さっき、見ていました。その・・・凄かったです。」
「ありがとう。一花から聞いたんだね。ヒミツだったのに。」
ライブ中は一花と五月がセットで見ていた。
・・・・あ。そうだ社長もいた。後で動画消せって言っておこう。
肖像権の侵害です。
「五月。ありがとう。」
「・・・何がですか?」
「あの子を俺に引き合わせてくれたのは、君達なんだろう?」
「・・・・どう、でしたか。」
「・・・・俺は、多分変われたよ。
近いうちに、俺も答えを出すから。待っていてくれるかい。」
「はい。待っています。・・・でも、私はちょっと怪しいのですが・・・」
怪しい?どういう意味だろう。まあ、今は置いておくか。
俺もあのステージの後だ、少し落ち着いておきたい。
「勉強は?どうだい。」
「この問題集が終われば、今日は終わりです。」
「もうちょっとだね。・・・とりあえず、俺は大丈夫そうだね。」
「はい。ナギ君は私にかまわず、学園祭を楽しんでください。」
「了解だ。」
言われた通りにしよう。
また、辺りをぶらつくことにする。
「おっと、失礼。」
「あ、すいません。」
白髭をはやしたスキンヘッドの男性とぶつかってしまった。
わたあめ食ってたな。甘い匂いがした。ちょっと買いに行こうかな。
食堂から出て学校の前をうろついていた。
「あ!有坂くんじゃない!」
「あれ?江場部長じゃないですか。お久しぶりです。」
わたあめは売り切れだったので、屋台のとうもろこしをつまんでいたところ、
卒業生で元陸上部の江場部長を見つけた。
あの衝突も、今となっては笑い話だな。
「中野さんの舞台をさっきまで見ていたんだよ。」
「舞台?今度は何の助っ人をしているんですか?」
「演劇部よ。見る?カメラで撮ってたの。」
カメラのデータを見せてもらう。
演劇部・・・一花と一緒で芝居でもしてるんだろうか。
それともステージの装飾でも作ってるんだろうか。
小学校の学芸会じゃあるまいし木の役や石の役なんてないっしょ。
ウサギの役なら納得だが。
『ここまでよ!勇者一行!あんたたちをここで死なすのは惜しいわ!
・・・・私の配下につきなさい!』
チャイナドレスのようなものを着て、両サイドに角を生やした四葉が映っている。
女王エメラルド と呼ばれているようだ。
・・・・ん?なに?勇者と魔王ってこと?
ファンタジーの演劇?攻めるねー。さっきの俺が歌った曲みたいだ。
「このエメラルドですか?」
「そう!凄くない!?」
「そうですね。上手いですね。・・・意外だなぁ。」
四葉はカメラの中で立派に演技をしていた。
一花が女優だからな。血筋かな。五月と並んで苦手だと思ったんだが。
・・・・いや、よく考えたら旅館の時の四葉は中々見事だったな。
問い詰めてボロを出してはくれたが。
「ナギ!ちょっとこっち来なさい!」
「んー。なんだい二乃。」
江場部長と別れ、また学園祭を満喫していたが、
林の中から出てきた二乃に呼び出される。
・・・そうか。レッドちゃんはすっかり人気者だからな。
隠れないといけないか。
「はいはい・・・・あれ?・・・・・なんだ。一花じゃないか。」
「・・・え?もうバレちゃったの?変装してるんだけど、
色んな人に声かけられちゃって。二乃って何かしちゃったの?」
「うん。今は全校生徒から愛されているよ。」
「あ、あははは。二乃が?あんまり想像できないなー・・・」
二乃と思ったら二乃の変装をした一花だった。
よく見たら服装いつもの服じゃないか。二乃はさっきまでステージ衣装を着ていたからな。
「ステージ、見たよ!3日目のアンコールライブもやるんでしょ?」
「まだ決まってませんよ。」
「絶対ナギ君達だよ!また行くから!」
「社長はもう呼ばないでください。」
社長は出禁です。つまみ出してください。
というか仕事ヒマなのかよ。
「一花。俺をあの子と引き合わせたのは、キミたちだね?ありがとう。」
「なんのことかなー?」
「隠さなくていい。キミと五月が風太郎に何か相談していたのは知っているよ。」
「あちゃー。・・・・で、どうだった?」
「・・・変化には、さっきのライブも手伝ったね。
近いうちに、俺の気持ちを喋らせてもらうよ。待っていてくれるかい。」
「うん。待ってる。・・・・もうすぐ15時だよ?
ナギ君もフータロー君に呼ばれてるんでしょ?一緒に行こ!」
「そうだね。」
教室。
風太郎の呼び出し時刻である15時を少し過ぎていた。
一花と並び、教室のドアを開ける。
「来たか。凪、一花。」
「お待たせ。」
「や。フータロー君。」
「おっそいわね、遅刻よ!」
「よく騒ぎにならなかったね。」
「一花!来てたの?」
「・・・・・・・・・」
風太郎、姉妹4人もいた。俺たち二人が一番最後らしい。
「いいか。
・・・・俺は、お前達、5人が好きだ。」
「「「「「!」」」」」
「あはは、いきなりだね。」
「・・・・っ」
「フータロー・・・」
「う、上杉さん?」
「どういう、意味ですか?」
風太郎の告白が始まった。
・・・・・・・
「お前達5人と、ずっとこのままの関係でいたかった。
・・・・だが、答えを出さないといけないと思う。」
「・・・・・」
「凪。当然お前は例外だぞ。今更離れてはやらん。」
「知ってる。・・・そうそう。風太郎。ありがとね。」
「お前の時間は戻ったか?」
「なにそれ。風太郎らしくないおしゃれな表現だ。」
「お前が言ってたことだからな。」
そんなこと言ったっけ。
「それに、言ったはずだぞ。学園祭の間は心の準備をしておけとな。」
「・・・言ってたねぇ。これは一本取られた。」
こっちの意味かよ。お前と姉妹に関する何かと思ってたよ。
まさかお前にしてやられる日が来るなんてな。ナギお兄ちゃんもびっくりだ。
「・・・・とはいえ、こんな祭りの最中に言うほど、俺も野暮じゃない。
最終日。3日目まで、時間をくれ。」
「・・・もう!何よそれ!拍子抜けだわ!」
二乃姉御、キレる。
肩透かしを食らったからな。二日間寝かせるのでもうちょっと待ってね。
「凪。お前は何か、言う事はないのか。」
「そうだね・・・・」
「まず・・・・ありがとう。あの子に会わせてくれて。
心の底が、救われたような、そんな気分だったよ。」
「「?」」
二乃と四葉、2名ほどわからないらしい。
関わっているのは、風太郎、一花、三玖、五月のみ。らしい。
あと片倉くん達。
「お礼をしないといけないね。
3日目のアンコールライブ、ぜひ見に来てくれ。また最高の舞台をお見せしよう。」
「え!?有坂さん、ライブステージに出てたんですか?」
「そうなの?ナギ・・・」
「そうです。多分アンコールするから来てね。」
三玖と四葉はステージの事を知らなかったようだ。
まあ、そっちの方が良いかも。
「俺も、キミたち5人が好きだ。
これから先、何があろうとも、きっと永遠に友達だ。」
「・・・・だが。そうだね。もう少しはっきりしよう。
キミたち5人の中で、特別に好きな子が、2人いる。」
「一花」
「うん」
「五月」
「はい」
「キミたち二人には、特別な答えを出さなくてはいけない。
そう思っている。」
「「・・・・」」
「だが、今日色々ありすぎた。一度、整理する時間が欲しい。
自分の気持ちがまだわからない。
俺は風太郎のようにスパッと決められないんだ。学園祭最終日には間に合わない。
2学期中に答えを出すから。それまで、待っていてくれるかい。」
「うん、もちろんだよ。」
「私も、構いません。」
「ありがとう。・・・やはり、姉妹だね。
キミたちは優しい。とてもよく似ている。」
「風太郎。俺からは以上だ。」
「わかった。」
「じゃあ、気を取り直して、乾杯しますか!」
「そうだね。」
「それじゃ、学園祭初日、無事終了を祝して」
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
7人でジュースのグラスを掲げた。
6人と別れ、俺は俺の仕事をする。裏方の出番。
17時。屋台の安全点検の時間だ。
パンケーキサイドから回る。
「おーっすお疲れっす。」
「有坂くんおつかれー。完売だよー。」
「マジ?調子いいね。じゃあ点検事項もそんなにないな。」
「明日もまたおねがいねー。」
「はーい」
点検も早々に終える。ガスの元栓閉まってるかとかそのへん。
たこ焼き屋の方へ向かう。
ん?なんか変わった匂いがするな。生地でも変えたのか?
そもそもこの匂いはたこ焼きの・・・・・・・・・・・・・・・・・
!?
「クソ!どうしてこんなことに・・・・」
「も、燃え広がらなくて良かった・・・・」
「なんだこれは。何があったんだ。・・・前田くん。」
「有坂。・・・・わりぃ。やらかした。」
たこ焼き屋の方角から、黒煙が出ているのが見えた。
走って接近したが、もう解決したようだ。
恐らくは、火事。
「午前中においてくれたバケツのおかげでとりあえずは無事だ。」
「火元は何だい。」
「コ、コンロがいきなり、飛んで。」
「なんだって?よくわからないな。見せてくれ。」
コンロを見せてもらう。ある程度火に包まれたのだろう。
側が焦げていて、よくわからない。
・・・・・高火力に改造したと言っていた。
コンロの内部を確認しよう。裏蓋を開けて、可能な限り分解する。
・・・・ガスホースと思われるものが、1本途切れている。
「中のホースが破裂してるぞ。これだ。」
「・・・そうか。これで吹き飛んで、新聞紙に引火したんだ。」
近くに置いてあった新聞紙に、鉄板の面が接触。
そうして燃えたらしい。
鉄板が接触してから新聞紙が燃えるまでは時間があると思うが、コンロが吹き飛んだのだ。
パニックになって、状況判断が出来なかったのだろう。ガスボンベの元栓を閉めているだけマシ。
「このコンロはもう使えない。やはり、改造品を使うべきではなかったね。」
「・・・クソ!!この日の為に作ってきたっつーのに!!」
「おい!ここから火が出ていると聞いたぞ!」
「先生。・・・・そうです。ただ、もう消化しました。」
「お、おい、有坂、何とかうまく」
「無理だよ。この焦げ痕はちょっと広すぎる。今からは隠せない。」
通行人から通報が行っていた。
明らかな黒煙が上がっていたからな。バレる。
「そうか。大事に至らなくて良かったが・・・・周辺がかなり焦げているな。
明日からの屋台運営、少し考えさせてくれ。」
「なっ、何ィ!」
その後、教職員の間で話しあいが行われ、
たこ焼き屋の出店停止が決まった。