五等分の花嫁 ~家庭教師の助手~   作:I-Ris

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日の出祭2日目の朝。

 

昨日の風太郎の告白を受け、あいつに日の出祭を満喫させるべく、

朝早くから業務をスティールしていた。

 

「有坂さん!おはようございます!」

「あれ。四葉。おはよう。」

 

 

段ボール運んでいる四葉を発見。

まだ開場2時間前なんだが。いつから来てるんだ。

 

「風太郎があんなことを言い出したからね。

あいつを今日1日はフリーにさせてやろうと思って。」

「そうですね・・・私も、びっくりしました。

二乃と三玖、どっちなんでしょう。」

 

 

「・・・キミ自身が頭数に入ってないな。3人だよ。二乃、三玖、四葉。」

「わ、私ですか?そ、そんな事はあり得ませんよぅ・・・」

 

 

「どうして。」

「だって、私は、上杉さんの事を何とも・・・」

 

 

「それは今、関係ない。問題なのは、風太郎は誰の事が一番好きなのかという事だ。

そこにキミの気持ちは関係ない。」

「あ、ありますよ!」

 

 

「なんでさ。」

「だ、だって、私は、上杉さんの事、き、きらいですもん」

 

 

「・・・・・・・・そう。」

「そうです。」

 

 

「告白なんてされても、困るんです・・・・」

 

……明らかに顔が暗い。

ここにきてそんなアホみたいな嘘を言ってのけるとは。

そんなに認めたくないか。俺が無理やり意識させてはいるが。

 

 

 

「じゃあ、真正面から断ればいいさ。告白されたときは。」

「・・・・・そう、します。」

「では、俺は別の仕事があるので。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有坂くーん、それが終わったら休んでいいよー」

「あいよー」

 

 

仕事は順調に来ている。風太郎の分は無事に消化。

追加でいくつか引き受けたが、このパンフレットを貼り終わればOKとの事。

 

 

「よく働くねー 助かったよー」

「性に合ってるからね。悪いんだけど、うちの上杉学級長休ませてやってもいいかい。」

「そうだねー 上杉君昨日はめちゃ頑張ってたし、いいよー」

「ありがとう。」

 

実行委員からのお墨付きをもらった。任務完了だ。

 

 

「あ、ナギっちー。」

「どうしたんだい屋代っち」

「そう呼ばれたの初めてかもー」

 

 

屋代さんが声をかけてきた。彼女も手伝いをしていたらしい。

学級委員長って柄ではないだろ。だって屋代っちだもん。

 

 

「アンコールライブ、うちらに決まったよ!」

「おお。やっぱりやるんだね。」

「とーぜん!ちゃんと予定空けて準備しといてね!」

「はーい」

 

明日のアンコールライブが確定した。

昨日は確定前に来てねと6人に言ってしまったからな。

これでアンコールがなかったらちょっと格好悪いところになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目の日の出祭が開幕。

仕事がなくなった風太郎はその辺をほっつき歩いていた。

冷やかしてるようだ。

 

・・・しまったな。あいつ金ないんだった。忘れてた。

じゃあこれ渡すか。

 

 

「そこのかっこいいお兄さん、こいつを差し上げよう。」

「なんだ、凪・・・・無料券?」

 

 

焼きそば屋台の手伝いの際に片倉くんからもらったものを渡す。

 

「良いのか。」

「良いよ。俺しばらく焼きそば見たくないから。」

「・・・職業病だな。ありがたく使わせてもらう。」

 

 

「今日1日は、思うがままにゆっくりすると良い。

俺と四葉でキミの分の仕事は片づけた。」

「やはりお前達か。・・・余計な事を。

どうせ金が無いんだ。暇になっても困る。」

「すいません」

 

 

素直じゃねぇなあ。明日の告白どうなるんだろ。

 

お前の事はそんなに好きじゃねぇけど頭の出来が悪すぎるから、

全国3位のこの俺が特別に付き合ってやる

とか言いそうじゃない?

 

「では、良い学園祭を。」

「ああ、すまんな。凪。」

 

 

・・・・いや、さすがに大丈夫か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パンケーキいかがですかー!・・・あら、ナギじゃない。」

「やあ、二乃、順調かい。」

「昨日より人が多いみたいよ。」

 

うちの屋台のプラカードを持って宣伝しているレッドちゃんがいた。今日は制服だけど。

たこ焼き派リーダーであったが、あんなことになったので、

切り替えてこっちに協力しているようだ。

 

そもそもリーダー同士は大して気にしていないのだが。

相変わらずパンケーキ屋台に男子はいない。どこで何をしてるんだろう。

 

 

「あんた、五月がどこ行ったか知らない?」

「いやー。見てないな。」

 

「さっきまで一緒にいたんだけど、他の屋台を見てくるって言ったきり戻ってこないのよ。」

「探しておこう。」

 

五月がその辺にいるらしい。今日は勉強を休みにしたようだ。

それでいいと思う。遊ぶときはしっかり遊ぼう。リフレッシュは大事。

まあ、何か食べ歩きでもしてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どこにもいないぞ。」

 

五月を探しているんだが、見つからない。ある程度は探し回った。

 

中野姉妹は目立つ。すぐ見つからないという事は、

どこか特別な場所にいる可能性が高い。捜索範囲を広げる。

 

 

花火大会の時は三玖がさらわれたと勘違いをしたな。

・・・・あんなことにならないと良いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎裏。

人気のない場所に五月がいた。誰かと話を・・・・

 

 

 

 

!?

いきなり、対面にいた人物が五月に土下座をした。

 

 

・・・どういう状況だ。まだ遠くて会話も聞こえない。

誘拐ではなさそうだが。

 

近づいてみる。

 

 

 

・・・昨日ぶつかった、スキンヘッドの男性じゃないか。

五月と知り合いだったのか。

 

 

 

 

「五月」

「ナ、ナギ君」

 

「その人は?」

「君は・・・どなたかな?」

 

「俺は有坂と言います。彼女の家庭教師であり、友達です。」

「有坂くんというのだね。私は無堂。

これまで五月ちゃんの面倒を見てくれたのは、君か。ありがとう。感謝するよ。」

 

 

こちらを向いた男性は無堂と名乗った。

・・・額から血を流している。先程の土下座によるものか。

 

 

「五月と何を話していたんですか?」

「一言で言えば、進路指導だね。」

 

「進路指導・・・」

「私はいち教師でね。先日、塾で特別講義を開催し、五月ちゃんは生徒としてきたのだよ。

・・・・運命だと感じたね。五月ちゃんは・・・私の娘だ。

血のつながった実父なのだよ。」

 

 

・・・現在の中野父は、姉妹と血のつながりがない。

 

亡くなってしまった母親の夫が、この無堂という人物という事のようだ。

 

ただ、母親が一人で五つ子を育てたと聞いているが。

 

 

 

 

 

「実の父は五月達を見捨てて逃げてしまったと聞いていますが。」

「・・・その通りだ。全くもって、申し訳ない事をしてしまった。

だからこうして、罪滅ぼしにきたのだよ。」

 

 

……こういうタイプは少し厄介だ。簡単に崩せない。

 

 

 

「進路指導というのは?」

「五月ちゃんは母親と同じ教師の道を歩もうとしている。

・・・妻は言っていたはずだ。私のようにならないでください と。

 

亡くなった母親の影を追いかけ、間違った道を歩もうとしている!

父として、それを見過ごすことは出来ないのだよ!」

 

 

中野母はそんなことを言っていたのか。

隣にいる五月が何も言わないという事は、本当らしい。

 

 

 

「・・・この間、五月が塾講師をして中学生に教えている所を見まして。

特に問題があるとは思いませんでした。俺はいい先生になれると思っていますが。」

 

 

「有坂くん。キミはまだ高校生、生徒の立場だ。悪いけど、見立てが甘いと言わざるを得ない。

確かに、五月ちゃんは優秀だったかもしれない。

だが、それはたった一日の数時間、一時的に教師をしただけだろう?

 

その時だけ上手くいっても、今後何十年も継続するんだ。当てにはならないよ。

わかるんだ。私も、長い事教師をしているからね。」

 

 

・・・その辺の実事情や経験則を引き合いに出されると俺は反論できない。

ポイントを押さえている。やっぱり厄介だ。

遠回しだが、何も知らない若造は黙ってろ そう言われているんだ。

 

 

 

「一つお聞きしますが。このタイミングで姉妹の前に姿を現したのは何故ですか?」

 

「先程話した通りだよ。五月ちゃんが生徒として特別講義に来たんだ。」

 

「いえ、今まで身を隠していたあなたが、どうして今向き合うことにしたのか という話です。

すっとぼけて無視する事もできたでしょう。」

 

 

 

「・・・・愛だよ!

 

講師の下田先生から、五月ちゃんが教師の道を歩もうとしている事を聞いた。

 

それを聞いて僕は・・・いてもたってもいられなくなった!

 

血のつながった実の父親としての愛が、娘の過ちを正そうと、僕を突き動かしたんだ!!」

 

「そうですか……」

 

 

 

そっけなく答える。たぶん違うと思う。

 

だが反論できない。愛の証明なんてどうやってすればいい。

そしてこの男の真意はなんだ?五月の信頼を得て、何を?

 

 

 

 

・・・・一花かな。

 

 

 

・・・・五月から姉妹を切り崩して、父親として復帰 という所か。

 

・・・・一花は今や大女優。この人も知っているだろう。

そんな娘の父に復帰できれば、今後において金の心配はいらない そんなところだろうか。

姉妹から逃げ出した理由は恐らく、5つ子を育てるという金銭面的な不安。

ピッタリと当てはまる。

 

 

 

「わかってくれたかい。有坂くん。」

「そうですね。ひとまずは・・・反論できる材料がなくなりました。

信頼して良いようですね。」

「それはよかった。」

 

 

握手を求められた。・・・答えておくか。今は。

 

真っ向から対立する必要はない。寝首を掻くならこっちの方が良いだろう。

気分は明智光秀。敵は白髭ハゲ頭にあり。

 

 

 

「五月ちゃん、今日はこれで失礼するよ。

僕の助けが必要になったら、いつでも連絡をしてくれ。」

「・・・・はい・・・・・」

 

無堂は去っていった。

 

 

 

こいつの言うことを真に受けていないだろうな。

・・・いや、受けるか。キミは真面目だからな。

 

だが、この反応。五月にも少し心当たりがあるらしい。

無堂の言葉は嘘八百の適当な発言という訳ではないようだな。

 

 

 

 

 

「五月?・・・まさかあんな世迷いごとを信じているのかい。」

 

「最近・・・考えていました。本当に私に教師が務まるのかと・・・・」

 

「やれるでしょ。立派だったよ。」

 

「でも・・・あの人の言う通りかもしれません。

それに、お母さんは言っていました。私のようには絶対にならないでください と。」

 

「・・・・・」

 

「私は・・・お母さんの幻に捕らわれているだけなんでしょうか・・?」

 

 

そう言い残し、五月は走って何処かへ行ってしまった。

 

とりあえず・・・・・一人にしてあげよう。

もし俺が同じ立場だったら、一度一人で考えたい。

 

じっくり考えるといい。間違っても良いから、自分なりの結論を出すことが大事だ。

間違っているのなら、後から正せばいい。心配はいらない。

いくらでも軌道修正は出来る。そのために俺がいるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正午近く。

新しい仕事が入り、各クラス屋台の安全点検をしようと現地に向かっていた。

 

向かっていた道中で、四葉を見かけた。

誰かと喋っているようだ。相手は・・・黒い髪のきれいな女性。

思い当たるフシはないな。この学校の人間には見えないが。

 

 

・・・・! 四葉が、急に地に伏して倒れこんだ。

 

なんだ?・・・何が起こった!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした!四葉!」

「あ・・・あ、有坂くん!?」

 

「俺の名前を知ってるのかい?」

「ほら!私だよ!竹林!小学校の時の!」

「え」

 

綺麗な女性から声を掛けられたと思ったら、竹林さんだった。

 

竹林さんかあ。小学6年の時、一緒に風太郎に勉強を教えていた。

懐かしいな。・・・しかしそれどころではない。

 

 

「話をしてたんだけど、急に倒れちゃったの。」

「脈は・・・大丈夫。呼吸もしてる。体に傷もない。とりあえず大丈夫そうだ。

竹林さん、学校の前に救急車呼んでくれる?そこまで四葉を運ぶから。」

「わかったよ!一応AEDも持ってくる!」

 

そうか。確かに。……さすが竹林さん。冷静だな。

AEDは使用の必要があるかないか自動的に判定してくれるはずだ。

装着して確認しよう。素人の目測を頼りにしない方が良い。

 

 

学園祭で救急車を呼ぶなどというあまり空気を壊すことはしたくないが。

万が一があるからな。

 

・・・四葉も結構な仕事を抱えていたはずだ。

体を預けたら、リカバリーに回らなくては。

各所に連絡をしよう。

 

 

 

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