先代巫女の死-10
故郷焼き討ち-10
神櫻様炎上-20
幼馴染の裏切り-5
集団レイプ-15
100→40
この世界は主人公に厳しい世界です。
―――コンコンコン。
「サクラ、僕だ。……入るよ」
ショウは扉を開け、中に入る。今日はようやくサクラが自分の元へ帰ってくる日だ。逸る気を抑え、ベッドの上のサクラに声を掛ける。
「サクラ……」
「……」
領主の屋敷の一室。このひと月、散々犯し抜かれたであろう筈が、冒してはならぬ聖域の様に未だにその肌は白く綺麗だった。
―――奇跡を行使する巫女。本来必要な呪文も触媒も詠唱も介さず相手の傷を癒やす、特別な才能を生まれ持った奇跡の子。その奇跡の力を以て、痛めつけられる度に自身の傷を癒やしていたのだろう。
強い光を放っていたその目は、今は何も映しておらず。反抗するたびに痛めつけられたのか、こうして近くまで寄っても反応の一つも示さない。
「サクラ、お待たせ。やっと二人で暮らせるね」
右手を頬に添えると、一瞬ピクリと体を震わせるもののそれだけで、サクラはされるがままだった。都合がいい。痛めつけられる度、傷は癒やせても反抗心は少しずつ剥がされ、こうして従順になって行ったのだろう。
「―――」
「ん?なんだいサクラ」
サクラの口元が僅かに動くのが見えたショウは聞き返す。すると、弱々しいながらも聞こえる声で返ってきた。
「……これが……おまえのなりたかった……騎士なのかよ……これが……」
「サクラ……」
肩口で切り揃えたその桜色の髪を撫でつける。ショウは確かに夢を、希望を持って外の世界へ出た。しかし、外の世界は綺麗事だけで生きてはいけない。かつて守ると誓った男の子にさえ、こうして傷つけることしか出来ない。でも、それは彼を守る為だった。仕方が無かったんだ。
「―――サクラッ!」
心に溜まる泥を振り払うように衝動のまま無抵抗のサクラを押し倒す。しかし、サクラの濁った眼は"どうせおまえも他の男とおなじなんだろ?"と語っているようだった。
「違う僕はっ」
「―――隊長、少しお時間よろしいですか?」
「おい、僕は入って来て良いとは一言も言ってないぞ」
横槍を入れて来た兵士を睨みつけると、慌てて敬礼する。
「す、すみません!何度呼んでも返事が無かったものでっ」
「……それで、その用は今すぐ必要なものか?」
「は、はい!団長が隊長を呼んで来いと」
ショウは舌打ちするとサクラの額にキスを落とす。
「ごめんね、サクラ。すぐ戻ってくるから」
そう言うと、ショウは兵士と共に足早に出て行った。
「……」
サクラはそれを見送ると、ゆっくりと起き上がる。開け放たれたままの扉。サクラはそれを見つめると、近くのテーブルに置いてあった装飾過多なナイフを手に取り、部屋から飛び出した。迷いは無かった。
数十分後、戻ってきたショウは空になった部屋を見て驚く。
「―――サクラッ!!」
降りしきる雨の中、山を駆け抜けるサクラ。
彼は諦めていたわけでは無かった。心を殺し、息を潜めてずっと脱出の機会を窺っていたのだ。
「はぁ……!はぁ……!―――あぅっ!」
山道で躓き転んでしまう。すぐに起き上がらないと、追手が来てしまう。
「……痛っ」
足の裏を見ると皮がめくれ血が出ていた。裸足で走っていたから当然だ。巫女装束はずっと着ていたが、すぐ逃げられないようにするためか履物の類は取り上げられていた。まさか向こうも裸足のまま逃げ出すとは思っていなかったのだろう。大して舗装されていない山道を走れば短時間でこうなる事くらい、誰でも思い付くからだ。それにも関わらずサクラは逃げた。一刻も早くあの場から離れたくて。
「……ははっ、前に来た時はもっと距離が短かった気がしたんだけど」
いや、初めて見た外の世界でテンションが上がり、時間を忘れていただけだろう。そんなことにも頭が回らないほど、今のサクラは追い詰められていた。それでも―――。
「―――それでも、かえらなくちゃ」
痛みを堪えて、一歩足を踏み出す。今は雨が降っていてその上、夜。視界は最悪だ。だからこそだろう。
「―――え?」
彼が足を踏み外し、崖から転落してしまったのは。
サクラが目を覚ます。落ちた時、木がクッションになったんだろう。体も服もボロボロだが、生きている。
全身に激痛が走る。もしかしたらどこか折れてるかもしれない。それでも激痛に耐え、起き上がる。どれぐらい眠っていたのだろう。まだ周りは暗く、雨も降っている。落ちてからまだそう経っていないはずだ。周りを見渡せば、森の中だった。
夜の森は危険だ。徘徊している魔物に遭えばひとたまりも無いだろう。しかし、危険を承知してでも帰らなければ。
「きっと、みんなまってるから……」
痛む体を押さえ、木を支えにしながら町へ向かう。
幸い、魔物に遭遇することなく町へたどり着くことが出来た。だが……。
「―――ふっ、あはは!わかってた、帰ったところでだれもいないことなんて……それでも」
「それでも、今までのは全部夢だって、全部悪い夢だったんだって誰かに言って欲しかった!」
周囲の民家は焼け落ち、かつては町全体を覆うほどの威容を誇った神櫻様は見る影もない。
「うぅ、ああぁあぁあああっ!オレがっオレたちが一体何をしたって言うんだ!!どうして、どうしてこんなことに……ああああああああああああああっ!!!!」
体が痛むことなどお構いなしにその場で蹲り泣き叫ぶ。
「うっ……!うっ……!」
「―――この辺りを探せッ!必ず町のどこかに居るはずだッ!」
「―――っ!?」
聞こえてきた声に咄嗟に物陰に隠れる。暗くてよく見えないが、わかる―――追手だ。
こんなに早く、と思ったが気絶していたせいでその分距離が縮まったのだろう。捕まれば、またあの屋敷に逆戻りだ。だが、もう逃げる場所なんて無い。戦うのか?しかし、こんなナイフで鎧を着た兵士と斬り結ぶなんて、到底できっこない。精々が自決くらいだろう。
鞘からナイフをスラリと抜く。今、ここで死ねば、楽になれる。ごくりと唾が鳴る。
―――本当に?
ナイフの刃に自分の顔が反射している。この世に絶望してる男の顔だ。今にもナイフを胸に突き立てんばかりだ。
―――本当にそれでいいの?
―――相手に背を向けて逃げ続けて。
―――その果てに自決することが正しい事なの?
―――町に火を放って、神櫻様を焼いた。
―――奴らはその報いをまだ受けていない。
―――まだ。
「―――まだ、死ねない……!」
死ぬのはいつでも出来る。それは奴らに一矢報いてからでも遅くは無いはずだ。ナイフには目に意志を宿した男の顔が映っていた。
サクラは静かにナイフを鞘に納めると、その場から移動する。
(もしかしたら、神社に奴らに何か対抗できるものがあるかもしれない!)
そうしてサクラは物陰や民家の屋根を伝い、追手の兵士に見つからぬよう神社まで来ることが出来た。
「何か……何か無いのか……!」
追手はもうすぐそこまで迫っている。ここが見つかるのも時間の問題だろう。しかし、兵士に対抗できそうなものは見つからなかった。
(やっぱり、もう自決するしか……)
あるいは玉砕覚悟でナイフを兵士に突き立てに行くか。そんな思考に陥っていた時だった。
「……あれ?ここの床、他と違って色が違うような……っ!?床板が外れた!?」
床の下には階段があり、下に続いていた。
先代巫女の言いつけであまり入って無かった倉庫だが、まさかこんな仕掛けがあったなんて。
最早、他に選択肢は無かった。サクラは警戒しながら、階段を下りていく。長い時間をかけて下りていくと、ようやく終わりが見えてきた。階段の段数からしても相当深いトコロにあるのは分かる。階段を下り切ると、そこは広い空洞で真ん中にポツンと祠が置いてあった。
なんとなく、サクラはその祠に近づいていく。上から差し込む光が、丁度祠を照らしてるお陰で、難なく近づくことが出来た。
祠に近づいたことで、その全容が明らかになった。祠自体はすごく小さなもので、中に丸い玉のようなものが見える。そして祠の戸にはお札が貼ってあった。
「これって……」
色々疑問はあるが、とりあえずお札に手を伸ばしてみる。パチッと一瞬桜色の光が出て弾かれたような気がする。長い間放置されてて静電気が溜まっていたのだろうか。次にお札に触れた時には何も起こらなかった。
お札の端を摘まみめくろうとしたところで、追手が来てしまった。ガシャガシャと鎧を鳴らし、兵士たちが下りてくる。
「―――サクラッ!!」
「……ショウ」
その先頭に居るのは幼馴染のショウだった。祠の札に手を掛けているサクラの姿を見たショウは、焦った様子でサクラに呼びかける。
「サクラ、ほら帰ろう。その祠のお札は絶対に剥がしちゃいけない」
「帰る?……ここがオレの家だよ。帰る場所なんだ。お前達の方こそ出て行けよ」
ショウの様子にサクラは何かあると思ったのか、強気で交渉に出る。
「サクラッ……!これは昔やってた遊びじゃないんだ!その祠に封印されてるものは本当に危険なんだ!頼むからお札から手を離してそこから離れてくれ!!」
危険?神櫻様を焼いてまで葬りたかったものという事。つまり、奴らにとって封印を解かれるのは都合が悪いのか。だったら……!
「……遊びじゃない?そうだよ、遊びじゃないんだ。だから……オレがこの場所を守る為には、こうするしかないんだッ!!」
「ッ!?ま―――」
サクラは勢いよくお札を剥がす。お札は剥がした途端に桜色の粒子になって消えてしまった。その瞬間―――。
―――バンッ!!と祠の戸が勢いよく開き、中から大量の桜の花びらが吹き出す。
足元には巨大な桜色の魔法陣が浮かび上がり、その中心に光が集まり徐々に人の形を成していく。
「まずいッ!?くっ―――間に合えっ。《浄化の火よ!槍となりて敵を貫け!フレイム・ランス!》」
ショウは懐から魔法の触媒を取り出し、呪文を唱え光に向かって炎の槍を撃ち出す。それは、あの日神櫻様を焼いた火の矢にそっくりだった。
炎の槍は真っ直ぐに光に向かい、しかし光の中から腕が出てきて槍を掴んだかと思うとそのまま炎の槍を砕いた。
「―――ククッ、随分と派手な目覚ましだな」
「バカな……!?中級呪文を素手で!?」
光の中から出てきたのは、小さな女の子だった。しかし、その姿は異様で側頭部からは角が生え、背中には大きな蝙蝠みたいな羽が生えている。
「これが魔神ゼシード=テレウィスタリアの力か……!」
「ほう……?」
「今は手持ちの魔石が少ない……くっ撤退だ!」
「おいおい、もう行くのか?もう少し我の準備運動に付き合ってくれ!」
「―――ぐっ!?」
銀髪赤目の魔神は嗤いながら、その拳をショウへ叩きつける。何とか剣で防御したが衝撃で壁まで飛ばされ叩きつけられた。
「隊長っ!」
「僕に構うなっ!さっさと撤退しろ!これは命令だ!」
「くっ、ご武運を!」
ショウは撤退する部下を後ろに庇い、魔神に立ち向かう。
「―――ふむ、やはり幾分か力は落ちてるか。今の一撃で肉片に変えてやるつもりだったのだがな」
当の魔神は手をグーパーしながら手応えを確かめていた。ショウからすれば笑い事じゃない言葉が聞こえたが。
「さて、勇敢な者よ。一撃で葬り去って欲しいか、それとも嬲り殺しにされたいか。選ぶといい」
魔神はその手に黒い球体を生み出すと、それを指先で弄ぶ。
「……ッ!」
万事休すか、そう思われた時魔神の前にサクラが立ち塞がる。
「ま、待ってください神櫻様!」
「―――む」
「サクラ!?」
なにやら聞き捨てならない勘違いの言葉が聞こえた気がするが、言葉を飲み込んで魔神はサクラに尋ねる。
「分かっているのか?ソイツは貴様の故郷と大切な神櫻様を焼いたのだぞ。貴様がそうなったのはそこの木偶のせいだろう?」
「……分かってる、つもりです。例え甘いと言われても、一度だけでいいので見逃して上げられませんか。こんなのでも、一応は幼馴染なんです」
「サクラ……」
「コイツを生かせば貴様の故郷を焼いた時みたいなことが、何度でも起きるとしてもか?」
「……承知の上です」
「だが面倒だ、今ここでコイツを殺すと言ったら?」
魔神は圧を放ちながら言う。それを聞くとサクラはナイフを鞘から解き放つと、自身の首筋に添える。
「オレもここで自害します」
「サクラッ!?」
数十秒の睨み合い。その時間は何十分にも感じられ、それは魔神からの圧が霧散したことにより終わりを告げた。
「―――クッ、好きにするがいい。おい、そこの木偶聞いただろう。我の気が変わらぬうちにとっとと消え失せろ」
助かると思ってなかったショウはしばし呆然としていたが、すぐに我に返りサクラに駆け寄る。
「サクラ!」
「……これでホントにお別れだね」
「サクラ、一緒に……」
サクラは静かに首を振る。
「オレはあくまで幼馴染のショウを助けただけ、次は止めるつもりは無いから」
そう言い真っ直ぐショウを見つめる瞳に、微塵も迷いは無かった。よく見れば、その姿はボロボロで、服も体も破れたり血が出たりして、こんなにボロボロなのにその美貌に全く翳りが無く、でもそうなった一端はショウ自身にある事を理解していて。
「……っ、わかった」
サクラに伸ばし掛けたその手を戻す。
「必ず、迎えに行くから!」
そう言って、駆け出し階段を登っていくショウをサクラは見送った。
「……さよなら、ショウ」
かつての幼き日に別れを告げて、一筋の涙を流した……。
「―――クククッ!麗しき幼馴染愛だな。相手に一片も伝わってない辺りが喜劇としてよく出来てる」
「神櫻様……」
「おいお前、なぜ自分の命を差し出した?我がお前の命などどうでも良いと切り捨てれば、お前は晴れて犬死だ。―――何故、我がお前の命を選ぶと分かったのだ?」
あの場面、魔神は本当にショウを殺す気だった。だが、そうはならなかった。サクラはまるでショウを殺す方を選ばないと分かっていたかのように自分の命を差し出した。サクラも、もし万が一ショウが殺されれば本気で自害する気だった。
「あれは……」
言うか言うまいか迷い、意を決して口を開く。
「だって神櫻様、オレの為に怒ってくださいましたよね?」
「あぁ」
「だからです」
「……それだけか?」
「ええっと、はい」
「―――ふ、くくく、ハハハハハハハハッ!!」
目を見れば分かる、コイツ本気でそう言ってると。自分の為に怒ってくれたから、なんて理由でこいつは自分の命を差し出したのか。
「おい、顔が見たい少しかがめ」
「えっ」
白衣の衿を掴むと無理矢理屈ませる。至近距離でマジマジとサクラの顔を観察する魔神。
「くく、そういうことか」
「?」
魔神の圧を受けても怯まぬ胆力といい、コイツの魂といい、随分と愉快なことになってるでは無いか。あぁ―――これほど堕としがいのある人間は久しぶりだ。
「おいお前、名は」
「サ、サクラです。御国サクラ」
「サクラ、いい名だ。我は魔神ゼシード。サクラお前が差し出した命、我が預かる。お前の髪の毛の先から足の爪先、魂の一片に至るまで我の物だ。だがその対価があの木偶一人では釣り合わんな。サクラよ、もう一つだけ願いを言う事を許す。何でも言え」
「願い……」
たくさんある、数えきれないほどたくさん。それでも今、その中から選ぶとしたら……。ぎゅっと両手を握り、巫女は魔神に願う。
「この町を前みたいに活気のあるやさしい町にもどしたい。そして、それを取り戻すための力が欲しい」
「クハハハハハハハハハッ―――!!サクラ、お前は我を笑い死にさせるつもりか!?」
「え!?そ、そんなつもりは」
それはどのように、どういう結果に結びつけば果たされるのかが曖昧な願いだった。サクラが是とするものでなければ、願いが果たされたとは言えないだろう。事実上、魔神をサクラに永遠に縛り付ける呪いだ。
「終わりの無い理想を掲げるか、くくっ確かにそれぐらいでなければお前の命に釣り合わんか」
「え、えっと……やっぱり別の願いにした方が良いですか?」
「構わぬ、何でも言えと言ったのは我だ。安心しろ、お前が願いが叶ったと思えるまで共にいてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
その願いが魔神を永遠に縛るものだと、サクラも理解しているはずだ。それでも、魔神が願いを拒否しないのは、願いは問題無く叶えられるという自信があるからだ。
(お前の願いは叶うとも。それが最初に抱いた願いから歪み、形が変わったものだったとしてもなぁ。クククッ)
人間の心は脆く、状況に流されやすい。どんな願いだろうと、捩れて歪めばそれが真実となる。願いは変わらなくとも、願った人間は如何様にも変化する。
(言っただろう?サクラよ、お前の命その魂の一片に至るまで我の物だと。ならば、お前の心も我に染め上げてやろう)
サクラに願いを叶えられると伝えないのは、その方がサクラがゼシードに罪悪感を覚え心のスキを突きやすくなるからだ。
(自身の身勝手な願いで相手を拘束するのは、さぞ心が痛むだろうなぁ?)
ゼシードにしてみれば封印されていた数万年に比べれば、たかだか数十年人間の願いに付き合うなんて暇潰しの娯楽扱いだ。それに加え、名作間違いなしの喜劇が間近で見られるのだ。これほど心が躍る願いはそう無いだろう。
(紛れも無くサクラは貴様の意思と魂を受け継いでいるぞ、なぁ―――初代)
思い出すは数万年前、自身を封印した最初の神櫻の巫女。そんな初代と瓜二つなサクラにゼシードは熱いモノを感じざるを得なかった。
今からサクラの淫れる姿が楽しみだ―――。
解説(いつもの)
サクラの謎フィジカル
体中傷だらけだし、骨も折れてるけど元気です(白目)。説明すると大体神櫻様スゲーで終わる。
魔神
普通に世界滅ぼそうとしてるめっちゃ悪い人。
初代
全盛期の魔神を封印したやべーやつ。
ショウくん
何か隠してる。
フレイム・ランス
炎系中級呪文。炎の槍を投げる。だけ。