魔神の巫女~神櫻は穢れ堕つ~ 廉価版   作:アウロラの魔王

3 / 3
前回のサクラのメンタル変動
長期間に及ぶ凌辱-30(一日ごとに-1)
滅んだ町を見る-5
追い詰められ自殺を図る-1
一矢報いることを決意+1
魔神と邂逅+1
魔神に救われる+5
幼馴染と訣別-1
40→10

幼馴染との別れに余りダメージ受けてないって?そりゃ、故郷滅ぼして自分犯した相手に改めて絶縁状叩きつけただけなので…。幼馴染くん気付いてないけど。


願いの代償

 

「さて、さり気なく願いを二つ言われたがお前の命の対価は一つ目で十分釣り合ってしまったからなぁ」

 

 魔神ゼシードはワザとらしく困ったフリをする。それに慌てたのはサクラだ。今サクラが頼れるのはゼシードだけだ。それ故ゼシードの機嫌を損ねて離れられたらと不安になる。無論、サクラの不安は杞憂だ。ゼシードは離れるつもりなんて無いし、なんだったら慌てるサクラを見て反応を楽しんですらいる。

 

「で、では二つ目の願いは取り下げます!」

 

「却下だ。願いの返品は受け付けておらん」

 

「えぇ!?」

 

「ククッ、一つ目の願いといい力を望むことといいその強欲さ、お前はつくづく我好みだな」

 

「えっと、ありがとうございます?」

 

 何のことか分かって無いのだろうサクラは、可愛らしく小首を傾げながらお礼を言う。

 

「二つ目の対価は後ほど貰おうか。それより、そろそろここから出ても良い頃合いだろう」

 

 あの兵士の部隊も町から撤退しているはずだ。

 

「っと、その前に」

 

 ゼシードは祠の中に手を入れると、そこに供えてあった丸い水晶のような玉を取り出す。

 

「この宝玉は神櫻の力を高める増幅器だ。お前が持っていけ」

 

 もう片方の手に魔力で杖を精製すると、杖に宝玉を嵌めサクラに渡す。

 

「それって勝手に持って行って神櫻様は大丈夫なんでしょうか?」

 

「我が良いと言っている」

 

「あ、いえ大樹の方の」

 

「ここに置かれてたのは封印強化の為だけだ。封印が解けた今ここに置いていても仕方なかろう」

 

「そうなんですね……その、神櫻様ごめんなさいオレ知らない事ばかりで」

 

 先程から質問してばかりで無知を晒して申し訳ない気持ちになったのか、しゅんっと落ち込むサクラ。

 

「サクラ、こっちへ来い」

 

「?はい」

 

 ゼシードはサクラを手招きし近くまで来させると、手を翳す。ゼシードの手からは赫黒い魔力の波動が放たれ、それを浴びせ掛けられたサクラは反射的に目を閉じ身を固くする。

 

「―――え、傷が、それに服も」

 

 痛みが消えて行く感覚を疑問に思い目を開けると、体の傷が塞がっており、所々穴が開き破れていた巫女装束も元々破れていなかったかのように元通りになっていた。

 

「すごい……神櫻様こんなすごい魔法を使えたんですね!」

 

「サクラよ、確かに無知は罪だ。知る機会がありながらも知らぬままでいいとするのはただの愚者だ。だが、お前は違うだろう?知らない事に対し、知りたい、知ろうと貪欲になれる。そういう者は有史以来こう呼ばれた、賢者とな」

 

「神櫻様、ありがとうございます!慰めてくれたんですよね?」

 

「ククッ、当然だろう。お前はもう我の物なのだから。我が他人を気遣うなど滅多に無いからな、光栄に思え」

 

「神櫻様……はい!」

 

 ぶっきらぼうながらも相手を気遣う姿にサクラは町の人達を思い出し、会ってからそんなに時間が経っていないにもかかわらず、心を開いて行っていた。

 

「あぁ、それと……」

 

 ゼシードがサクラの頭を撫でつけると、急にサクラの頭が重くなる。訳も分からず戸惑っていると、頭からハラリと髪の毛が落ちてくる。思わず反射的に引っ張ると、頭が引っ張られ「痛っ」と声を出す。

 ―――はて、オレの髪はこんなに長かったか?

 

「え?え?なんですかこれ、わっ髪が!」

 

 気が付くと、サクラの桃髪が地面に届かんとばかりに伸びている。急激に伸びたにもかかわらず、その髪はサクラが毎日手入れをしているサラサラとした髪そのものだ。伸びた髪はサクラの膝裏当たりで止まった。

 

「こ、これは一体?」

 

 お手入れ大変そう。等と困惑しながらもそんなこと考える当たり、心に余裕が出来てきた証左だろうか。

 

「見たら分かるだろう?髪を長くしてやった」

 

 ゼシードはシンプルにそう答える。だが、長すぎる。普通に邪魔くさいとさえサクラは思っている。

 

「長すぎませんか?さすがに動き辛いというか」

 

「ふむ、嫌だったか?」

 

「え、嫌というか、その……」

 

 嫌と言ったらゼシードの機嫌を損ねるのではないかと思い、サクラは二の句が継げなくなる。当然、ゼシードはそんな心の動きなどお見通しで。

 

「クハハハハハハッ!意地悪な質問だったな。髪を長くしたのは、短いよりも長い方が我の好みだからだ。だから我に気に入られたいならそのまま長くしておくがいい。それでも短くしたいというなら、我は止めんがな。どうする?」

 

「……は、はい…………じ、じゃあこのままで……」

 

(神櫻様に見捨てられたら、オレはもう行くところが……。長いとお手入れは面倒だけどそれだけだし、このままで神櫻様が喜んでくださるなら……)

 

「ククッ、そうかそうか」

 

 長いままにするか、切って短くするか。選択肢を与えているようで、その実一択しかない。だが、あえて選択肢を作りサクラ本人にどうするかを選ばせることによって、サクラ自身がその選択をしたと思い込ませる為だ。そうした積み重ねは、いつしか選ばされているという事に気付かず、全て自分が選択した結果なのだと思うようになっていく。

 サクラはまだ、自分が選ばされていると自覚している。だからこそ―――自身が既に選ばされていることなど気付きもしない。

 数万年を生きる魔神だ。言葉巧みに人の心を転がすなど造作もない。今はまだ、ほんの少し相手を縛るくらいだが、時間が経てば経つほど縛る力は強くなり、やがてサクラの全てを絡めとる。

 

(―――命を差し出すとはそういうことだ。なぁサクラ、お前は選んだのか?それとも選ばされたのか?)

 

 魔神はほくそ笑む。いつか来るその日が待ち遠しいと。

 

「では上へ戻ろうか」

 

「は、はい!」

 

 

 

 階段を登りながら、サクラはふと疑問に思った事をゼシードに問う。

 

「神櫻様、その、先程魔神だと仰られましたけど、魔神って何ですか?」

 

「フッ、それが普通の反応なのだろうな」

 

「はい?」

 

「いや、なんでもない。それより何故我を神櫻と呼ぶ?」

 

「え?そ、それはその……ダメですか……?」

 

 サクラにとって、神櫻は信仰の対象であり、縋る相手そのものだ。最初は勘違いで神櫻と呼んだものの、妙に親近感が湧くというかそうするのが自然と感じ、サクラの中ではゼシードの事を『神櫻様』と呼ぶのが一番しっくりきた。

 しかし、その妙な感覚を上手く言語化できず、サクラは困ったように唸る。

 

「ククッ、まぁよい。お前がそう呼びたいなら、好きにするがいい」

 

「あ……はい!神櫻様!」

 

 ゼシードはサクラの感覚の正体に気付いていた。それは魔神ゼシードが神櫻に封印されていた事、そしてサクラが神櫻の巫女な事を考えれば自ずと答えに辿り着く。面白いから当然黙っているが。

 

「さて、話を戻そうか。魔神についてだったな。読んで字の如く、魔の神だ」

 

「魔の神、ですか?それって魔法の神様とか?」

 

「クハハッ!なるほどそうなるか!だが発想は悪くない」

 

 サクラは自分の怪我を治したすごい魔法が使えるから、という単純な理由からだが魔神にしてみれば当たらずとも遠からずといったところ。

 

「サクラ、我の角と翼を見てどう思う?」

 

「え?えっと、かっこいいなって」

 

「ハハハッ!そうかかっこいいか!ならお前も付けてみるか?」

 

「え!?その、え、遠慮します……オレには似合わないだろうし」

 

 かっこいいと言われ気を良くしたのか、ゼシードはサクラの頭を乱暴に撫でる。サクラは付けてみるかと言われ、一瞬迷い断る。サクラとて男の子だ、かっこいい角は付けてみたいが今の見た目にそぐわぬことは本人が一番自覚している。

 

「そんなことは無いと思うがな。まぁ見ての通り我は魔族、人間ではない」

 

 魔族と言えば悪魔などが一般的ではあるが、この世界では人間以外の知能を持った人型を指す。エルフもドワーフもこの世界では魔族に括られる。

 

「……あれ?魔族ってずっと昔に滅んだはず」

 

「ここにいるではないか。なら、何故滅んだなどと嘯いたのだろうな?くくく、それを伝えたのは誰だ?誰が証明した?そうすることで得するのは誰だ?」

 

「そ、それは……」

 

「理解できぬものを避け、見たいものしか見ず、真実を歪め、捻じ曲げ、自分達の都合の良い筋書きを作るのはお前達人間の十八番だろう?」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「なにサクラが謝る必要はない、悪いのは人間だからな」

 

「そ、そうですよね。オレは悪くない、昔の人達が勝手にしたことですから」

 

 サクラは悪くない。言ってないのに、あたかもそう言ってるかのような絶妙な言い回しだ。細かな会話で魔神は巫女に楔を打ち込み、種を蒔く。今はまだ分からなくとも、いずれそれは芽吹く。

 

 話を戻そう。

 

「つまり魔族、魔物、魔法、あらゆる魔に属するモノの頂点、それが魔神だ」

 

「頂点……それって魔王みたいなかんじですか?」

 

「魔王より偉い」

 

「神櫻様ってすごいんですね……」

 

「ククッ、そうだろう?」

 

 無邪気に尊敬の念を送るサクラに、ゼシードはほくそ笑む。今この魔神は意図的に一番重要な情報を隠した。単に魔の頂点ならサクラの言うように呼ばれるのは魔王の称号だ。しかしゼシードは魔神である、そう呼ばれるに足る特殊な力を持つ。

 しかし、サクラには分からない。この時代では魔族は滅んだとされるため、文献としても残っていないだろう。前提となる知識を持たぬ以上気付けるはずもない。

 

 ようやく階段の終わりが見えてきた。せめてもの抵抗か、出口を兵士達が置いてった瓦礫が塞いでいたが片手で持ち上げ取り除く。

 

「やっと出られましたね」

 

「あぁ、我とてあんなジメジメして陰気臭い所で過ごすのは、勘弁願いたいところだったからな」

 

 雨はもう止んでいた。空には雲の隙間から星々が覗いている。ゼシードはようやく羽を広げられて嬉しいのかパタパタと翼で扇いでいた。

 普通の人は空を見上げれば星が綺麗だ、などと思うのだろうか。しかし、サクラは見上げた先に焼け落ちた神櫻が目に入り悲しみで顔を伏せる。それに気づいたゼシードがサクラに構うのは必然と言えよう。

 

「どうした、サクラ」

 

「あ、いえ……やはり神櫻様が燃えてしまったのは夢では無いんだと思いまして……ああ!いえ!いま一緒にいらっしゃる神櫻様に不満があると言うわけでは無く!」

 

「理解かっている、我はそこまで狭量ではない。ふむ……しかし、結界が無いのも不便か」

 

 ゼシードは一寸考え込むも、すぐに結論を出す。

 

「サクラ、我の手を掴め」

 

「え、あっはい―――ひゃああああっ!?」

 

 ゼシードはサクラが手を握ったのを確認すると、翼を広げ高く飛び立つ。急に空中遊覧へと連れ出されたサクラは驚きの余り悲鳴を上げ、ぎゅっとゼシードの腕へしがみ付く。自分より小さな女の子にしがみ付くなんて、と思ったが命には代えられない。そもそも、その小さな女の子に縋っている時点でサクラの男のプライドは粉々だ。

 

 飛び上がったゼシードの行き先は神櫻樹の根元。手を伸ばせばその太い幹に触れられるほど近い場所に降り立つ。

 

「お、大きい……神櫻様ってこんなに大きかったんですね」

 

 神櫻樹から一番近い所に建っている神社からでもそれなりに距離があるため、ここまで近くに寄った事は初めてだった。近くに飛び出てる根っこですら自分の何十倍何百倍という大きさを誇っているのに、本体の神櫻樹はさらにその何千倍も大きい。

 

「昔はこーんな小さな苗だったのだがな。随分と成長したではないか」

 

 ゼシードは昔の神櫻樹は自分の足元から膝くらいまでしかなかったと、手を使って表現している。しかし、サクラに疑問なのは何故ゼシードがここに来たかだ。

 

「あの、神櫻様。どうしてここに?」

 

「分からんか?お前の神櫻様を復活させに来たのだ」

 

「え!?そ、そんなことが出来るのですか!?」

 

「もちろん、お前との約束は守る。我は嘘は吐かん。お前の願いはかつての町に戻す事だろう?ならば、そこにこの神櫻様も必要なはずだ」

 

「あ―――はい!」

 

 このやさしい魔神はサクラの荒唐無稽な願いを本気で叶えようとしてくれている。その事実はサクラの胸に温かいものを溢れさせる。

 

「でも、どうやって復活させるのですか?あ!また神櫻様のすごい魔法で回復できるのですか!」

 

「いや、復活させるのは我ではない―――お前だ、サクラ」

 

「え」

 

 ゼシードの言葉に呆気に取られるサクラ。

 

「いやいやいや!?神櫻様、オレの力なんて神櫻様の足元にも及ばないんですよ!?出来るのは精々かすり傷を治したり、ギックリ腰を治すくらいで。それより、神櫻様のすごい魔法でバーン!っと治せないんですか!?」

 

「無理、だって我死なんから蘇生魔法必要無いもん」

 

「えぇ!?」

 

 もしかして信じる相手を間違えたのでは?サクラは思わずそう思ってしまう。そんなサクラを見てゼシードはニヤリと口を歪める。

 

「サクラよ、まだ我を信じておらぬな?」

 

「だ、だって」

 

「ククッ、サクラよ何故蘇生魔法が禁忌とされていると思う?」

 

「え、なぜって……便利だからですか?」

 

「クハハッ!まぁ、そういう話もあるかもしれんな。だが、違う。正解は、代償が見合わぬからだ」

 

「代償?」

 

「そう、そもそも魔法とは対価を支払い現象を起こす力だ。その対価の肩代わりとして魔力を捧げる。お前の幼馴染が持っていた魔石もそうだ。魔石は魔力が結晶化した物だからな。簡単な魔法であればその代償も小さくなる。では、蘇生魔法ならどうなるのか?蘇生魔法の代償は人一人当たり数万人程度の魔力を必要とされる」

 

「す、数万!?」

 

「先ほども言ったが魔力はあくまで対価の肩代わりだ。当然、魔力が足りなければ次に支払われるのは―――命だ。万単位で命を消費しておきながら、生き返らせられるのはたった一人だけ。だから、禁忌とされるのだ」

 

「そ、そんな……」

 

 魔法にそんな代償があるなんて知らなかった。サクラは簡単に魔法を使ってくれと言った自分を恥じた。落ち込むサクラに、ゼシードは言う。

 

「だが、一切の代償を必要とせず魔法を使う奇跡の担い手が―――お前だ、神櫻の巫女」

 

「え?それってどういう」

 

「ククッ、説明するよりも体験した方が分かりやすいだろう。神櫻樹に手を突いていつもみたいに力を使ってみろ」

 

「は、はい」

 

 半信半疑ながらもサクラは神櫻に手を突き力を使った。すると、手に持った杖の宝珠が輝きいつもよりも癒しの光が強くなる。しかし足りない。これだけでは神櫻を蘇らせるほどの力は無い。

 

「大丈夫だ、そのまま神櫻樹に触れていろ」

 

「神櫻様……!」

 

 諦めかけたサクラの背中をゼシードはそっと支える。無論、目的は支える事じゃない。

 

「これから一時的にお前の潜在能力を引き出す。お前の体の負担が強いが耐えて見せろ」

 

「は、はい!―――ぐぅぅぅぅぅっ!?」

 

 そう言ってゼシードは先程サクラの体を治した時よりも強い魔力をサクラの体に流す。自分の物とは違う力に体の内側を蹂躙され、悲鳴が漏れそうになるがなんとか耐えて目の前の神櫻樹に力を注ぎこむ。

 ゼシードが魔力を流し込んだのは目的がある。それは、サクラの下腹部にある桜のアザだ。これはただのアザではない。神櫻が繋いだ霊的なパスだ。それを魔神の力で刺激し、パスを一時的に最大限に拡張させる。拡張されたパスはそこへ一気に力が雪崩れ込み、サクラの持つ力を一気に増幅させた。

 

「こ、これって……!きゃあっ!?」

 

「サクラ!我も手伝ってやる!集中を切らすな!」

 

「は、はいぃ!」

 

 サクラから溢れ出た力が桜色の光となって周囲を照らす。ゼシードはサクラがコントロールできていない力に指向性を持たせ神櫻樹に注いでいく。

 

「お願い……神櫻様……生き返って!」

 

 桜色の光がやがて神櫻樹の全てを包み込んだかと思うと、焼け爛れたはずの神櫻樹が元通りになっていき、燃え尽きたはずの桜の花を付けていく。全ての枝に花を付けると、桜色の光が周囲へ広がっていく。神櫻が蘇った事により、神櫻の結界が復活したのだ。

 

「あぁ……あぁ……!神櫻様……神櫻様ぁ……よかった、ホントによかったぁ……!うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 その喜びを表すように、サクラは涙を流しながら全身を使って神櫻樹に抱き着く。しかし、神櫻樹が大きすぎてカブトムシみたいだとゼシードが思っていたのは秘密だ。

 当のゼシードは、サクラに触れていた手を見つめていた。そこには焼けた鉄でも押し付けられたように焼け爛れた手だった。治すのは造作も無いことなのだが……。

 

(……聞いていたよりも強い力だったな。漏れた力だけでこれか。まさか、本当に我を殺せるほどの力を持っているとはな)

 

 きっと、別の世界の魔神は成長し強くなった巫女と対峙したのだろう。だが、この世界ではそうはならない。

 

(ククッ!益々未来が楽しみになったではないか!)

 

 ふと気が付くとサクラの泣き声が聞こえなくなっている。よく見ると、神櫻樹に抱き着いたまま泣き疲れて眠っていた。あれだけの事があった上に、神櫻の回復で大幅に体力を消耗させたのだから当たり前だ。

 

「フッ、仕方のない奴だ」

 

 ゼシードはサクラをお姫様抱っこすると神社の方へ引き返す。

 

 

 

「う、うーん……はっ!神櫻様!」

 

 目覚めたサクラはガバっと起きると、自分が布団に居る事に気が付いた。

 

「起きたか、サクラ。随分と寝坊助だな」

 

 そう声を掛けたのは、縁側で柱に背中を預けながら盃を傾けているゼシードだった。

 

「あ、神櫻様!神櫻様は!?」

 

「ククッ、傍から聞けば混乱しそうだな。気になるなら自分の目で確かめるがいい」

 

 確かに自分の目で確かめた方が良いとサクラは這うように進み外を見る。

 そこには夜闇の中、淡い光を放つ桜の花を付けた神櫻の姿。風で揺れる度花びらが舞い、光の雨が降り注ぐ。その光景は、長年サクラが見続けた当たり前の、しかし失われたと思った幻想的な景色だった。

 

「あぁ、よかった。今度も夢じゃないんですよね?感謝します、神櫻様」

 

 流れるように手を合わせ神櫻に祈るサクラに、ゼシードはカラカラと笑う。

 

「どちらに祈っているのだ?」

 

「もちろん両方です!」

 

「クハハハハハッ!」

 

 間髪入れずに返したことにより、ゼシードはさらに大笑いする。そこでふとサクラはあれからどれぐらい時間が経ったのか気になった。

 

(さっき神櫻様は寝坊助だって言ってたけど)

 

 見たところ、それほど時間は経って無さそうである。

 

「あの、神櫻様。オレって何時間ぐらい寝てました?」

 

「クククッ、何時間か―――丸一日だと言ったらどうする?」

 

「え!?じょ、冗談ですよね?」

 

「冗談であればここまで面白くは無かったろうな。あれから、全く起きぬので町の中や神社を物色させて貰った。この酒はその戦利品だ」

 

 確かに、ゼシードの持っているのは神社に奉納されているお酒だ。続けざまに町の中に兵士は残っていない、という情報を聞かされ信じるほかなかった。

 

「ご、ごめんなさい!神櫻様をほっぽってずっと寝こけてたなんて!」

 

 慌てて土下座するもゼシードは構わん構わんと手を振るだけだった。

 

「それだけ疲れていたのだろう。余程酷い目に遭わされたと見える」

 

「あ……はい、その、はい……」

 

 思い出したくも無いのだろう。サクラの顔に影が落ちる。その記憶を振り払うように、サクラはゼシードに問い掛ける。

 

「あの、何かお礼をさせてくださいませんか?神櫻様がいなければ、神櫻様を復活できなかったと思うので!」

 

「ふむ、礼か……」

 

「はい!オレに出来ることならなんなりと!」

 

 サクラの言葉を聞いてパッと思い付いたゼシードは、それを口にする。

 

「では、これからは『オレ』ではなく『私』と言って貰おうか」

 

「え、ええぇぇえええっ!?」

 

 いきなり自身のアイデンティティが失われそうになるサクラは慌てる。

 

「あああの、それ以外で何とかならないでしょうか……」

 

「ずっと気になっていたのだ。この機会に変えれば良かろう?」

 

「いえ、あの、あ!神櫻様!オレこんな見た目ですけど男なんです!」

 

「知ってる。我の目が節穴と思ったか?」

 

 サクラは自分の性別を知らないからだと思ったが、どうやら違うらしい。

 

「あのあの!この口調は先代巫女に何度もお願いして残したものなんです!どうかご容赦を!」

 

「ならん。それとも神櫻の巫女は恩を仇で返すのか?それは知らなかったなぁ、そうかそうか巫女は恩を受けたら仇で返せと教育されてきたのだなぁ。それが神櫻の教育かぁ」

 

「うぅぅぅぅぅっ……!わ、わかりました……これからは私って言います……」

 

「ククッ、最初から素直にそう言うがいい」

 

「うぅ、わ、私だって今まで一人称は必死に死守してきたのにぃ……」

 

 さめざめと泣くサクラ。そんなサクラの顎を持ち上げる。

 

「ふむ、やはりお前はそちらのほうが可愛いぞ」

 

「えあっ!?か、かわいい!?お、男にかわいいって言っても喜ぶわけないでしょう!」

 

「ククッ、顔を真っ赤にして言っても説得力は無いがな」

 

「こ、これは怒ってるから赤くなってるんですっ!」

 

 赤くなって唸るサクラを見て、ゼシードは持っている盃の中身を一気に口に含むと、そのままサクラを押し倒しその唇を奪う。

 

「―――んんっ!?」

 

 サクラに酒を口移ししながら、舌を伸ばしサクラの口内を味わう。

 

「んぷはぁっ!な、何するんですか神櫻様!?」

 

「ふむ、酒で酔わせてやろうと思ったが、存外強いな?」

 

「あ、当たり前です!町の神事で飲むことだってあるんです、というか神櫻様が飲んでるお酒がそうですからね!?ってそうではなく!」

 

「なるほど、良い酒だと思ったらお神酒だったのか」

 

「もー!無視しないでください!……って、あれ」

 

 急に体が熱くなり、体が上手く動かせなくなるサクラ。それを見てニヤリと嗤う魔神。

 

「な、なにこれ……体が……」

 

「ようやく効いて来たか。ククッ、思ったよりも遅かったな、巫女だからか?」

 

「な、何を言って……まさか毒を!?」

 

「いやいや、そんなもの入れておらぬよ。だがまぁ、人間にはある意味では毒かもなぁ?」

 

 そう言ってべっと舌を出すゼシード。

 

「お前がそうなってるのは、我の体液だ」

 

「た、体液?」

 

「あぁ、魔神の体液には媚薬作用があってな。何故そんな効果があるか分かるか?」

 

「それはな―――自分好みのメスを堕とす為だ」

 

「は、はぁ!?」

 

「め、メスってオレは男ですよ!?」

 

「ククッ―――キスだけでこんなに乳首を勃たせておいてか?」

 

「え?う、嘘っ!?」

 

 まるで生娘の様に顔を赤らめ胸を隠す。内股で座り、自身を守るように胸を掻き抱いて、頬を上気させ目を潤ませながら、ゼシードを上目遣いで見つめるその様は到底オスと呼べるものでは無かろう。

 

「ど、どうしてこんなことを……」

 

「お前が言ったのだろう?『力が欲しい』とこれはその対価だ」

 

「確かに言いましたけど、ほ、他の方法は無いんですか!?」

 

「無い。これはお前に力をやる儀式でもあるのだぞ?分かったら大人しく股を開け」

 

「そ、そんな……」

 

 袴を押さえて抵抗するサクラを無理矢理押さえつけて、ゼシードは自身のスカートの内側から男性器を取り出す。

 

「……え?なにそれ、ちん―――うぷ、おぇ、げほっごほっ!」

 

「我のチンポを見て吐くとは失礼な奴だ」

 

 男たちから受けた凌辱の記憶がフラッシュバックしたのか、サクラは空っぽの胃から胃液を吐き出す。

 

「ふーっふーっ。し、神櫻様男だったんですか!?」

 

「いやいや、よく見ろ。下にちゃんと女性器も付いてるだろう。我は両性具有、ふたなりなんだ」

 

「ふ、ふたなり……?」

 

「見たのは初めてか?なに、両性の魔神など珍しくも無い」

 

「そ、それをどうするつもりですか」

 

「クハハッ!分かり切った事を!決まってるだろう?―――お前のケツにぶち込む」

 

「ヒィッ!?い、いやぁっ!?」

 

 よたよたと四つん這いで逃げようとするサクラを、ゼシードはサクラの腰を掴んで止める。

 

「やだぁ!もう痛いのやだぁ!」

 

 子供のように泣いてぐずるサクラに、魔神はやさしく声を掛ける。

 

「安心しろ、人間どものような事はせん。ちゃんとお前も気持ち良くさせてやる」

 

 そう言ってゼシードはサクラへ覆い被さる―――。

 

 

 

 

 酒瓶を傾け盃を満たすと、ゼシードはそれを一気に呷る。

 

「―――ふぅ、やることやったあとの一杯はいいな。それに、夜桜を見ながらというのも、乙なもんだ」

 

 縁側に腰掛けながら神社の蔵から拝借したお酒を飲むゼシード。日本酒に似た辛みのあるそれが気に入ったのか、盃が空になるともう一杯と注ぐ。

 

 チラッと後ろで気絶したサクラを見る。乱れた巫女服には色んな液体が染みついており、投げ出されたその肢体の至る所に白濁した液体がへばりついている。異様なのは、彼の周りに沢山の卵がある事だろうか。十に及ぶその卵たちは、全てサクラが産んだものだ。

 

「回数分より多く産ませてしまったが、まぁ別に構わんだろ。我も三万年ぶりの外であるからなはしゃいでしまった、許せよ」

 

 サクラの産んだ魔物の卵たちは、かなり成長が早く夜明け前には孵るだろう。何が孵るかはまだ分からないが、強力な魔物であるのは違いない。

 

「これほど早く神櫻が復活したのは向こうも想定外だろう。さて、どう出るかな。なぁ―――」

 

 

「―――『幼馴染』くん?」

 

 




先代巫女
サクラが初めて会った時からおばあちゃんだった。サクラに巫女教育を施した人であり、女の子の仕草や作法諸々を仕込んだ人物。現代日本から転生してきたサクラが信心深くなったのはこの人の手腕。え?洗脳?…しっ!

ホーリーライト
世界を照らす聖なる祈り。あるルートにて《神櫻の巫女 サクラ》から強化された《覚醒の巫女 サクラ》の持つ最終技にして、サクラを代表する最強技の一つ。メンタルを20消費してマップ全体に完全回復・完全蘇生・全ステータス+50%をバラ撒く。メンタルを消費するが、この技でメンタルも完全回復する為、実質消費無し。初期地点で毎ターンこれ撃ってるだけのお仕事です。

『神櫻の巫女~どこまでも堕ちていく私のカラダ~』
架空の原作。18禁でジャンルは調教SRPG。日常パート、調教パート、会話パート、戦闘パートの四つを繰り返しストーリーを進めていく。共通ルートの分岐で三つのエンディングに分かれ、更に各ヒロインとの個別エンドが用意されている。戦闘パートの調整は大味で、上記のような最強技を覚えるまで戦闘がかなりキツイが、覚えた途端にヌルゲーと化す。余談ではあるがこのゲーム、主人公の寝室とスチルが半分を占めている。

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