青く透き通ったソラに、導きの星を 作:新人しくじり先生
彼──もとい「先生」が連邦生徒会ロビーにて目覚めてすぐ、七神リンと名乗る少女に案内されレセプションルームにて合流した4人の少女たち──リン曰く「各学園を代表する、立派で暇そうな方々」 ──を強引に引き連れて、今彼ら彼女らがいるのは市街地戦のど真ん中であった。
「まったく!どうして私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには
「ええ、なのでそのために
「それは聞いたけど……!って、まだなのその護衛って奴⁈私これでも、うちの学校では
「事前に出していた護衛依頼と実際の状況が大きく食い違いました。まさかこんな乱痴気騒ぎになるなんて……合流まではしばらく掛かります、それまで耐えて下さい!」
遮蔽物に身を隠しつつ、手にした
「私語はそこまで、今は先生が一緒なので先生を守ることが最優先。建物の奪還はその次、増援との合流後です」
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので……私たちとは違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を!」
「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください! 私たちが戦っている間は、この盾の裏の安全な場所にいてくださいね!」
とはいえいつまでも駄弁って片手間な対応をしてもいられない。故に私語は慎むようにと言う後衛の羽川ハスミ、そんな彼女が片膝で構えた小銃から放たれた正確無比な銃弾がとにかく銃弾をばら撒いていた不良生徒のヘルメットを撃ち抜き昏倒させる。
“いや、微力ながら私もやれることをやろう。今から私の指示に従って欲しい”
「え、ええっ?戦術指揮をされるんですか?」
“うん、昔から目と頭の速さだけは悪くないんだ。良いかな?”
弾雨をかき分けての強行軍、確かにリンが巻き込むことを決めただけあって4人とも一騎当千の戦力だがいかんせん連携が成っていない。
「まあ……先生ですし、分かったわ」
「承知しました、これより先生の指揮に従います」
「生徒は先生に従うもの、ですものね。分かりました」
「お任せします、先生」
そこで碌に戦えないながらもその広い視野を活かして指揮官役に立候補した先生に、4人は一度表情を見合わせてると間を置かず先生の判断に同意した。
“まずは相手の後衛を崩そう。ユウカとスズミは相手の前衛を撹乱して、チナツとリン代行はその援護を。ハスミは彼女たちの撹乱で敵の目が前衛に集中しているうちに相手の後衛……特に偉そうな娘や当たったら痛そうな物を持っている娘を最優先で”
「分かったわ、相手を引きつければ良いのよね?」
「はい、ご命令通りに」
先生の指示を受け動き出した5人、指揮を受ける以前の個々での応戦とは異なり互いに不足を補う確かな連携を持っての戦闘行動は個人ではなく部隊としての効果的な迎撃活動に様変わりしていた。
しかし彼女たちの活躍がどれほど一騎当千、一騎当万の活躍となれど数とは偉大である。
「ちょっ、まだなの⁈その護衛って奴は⁉︎」
多数の不良生徒群と互角以上の戦いを見せる5人だったが多勢に無勢、体力だけでなく弾薬もまた有限であり
「まもなく来ます!大体、本来こんな大混乱の中を護送する予定ではっ!……ッ、伏せて下さい!先生!」
盾を構えていたリンによって先生は勢いよく押し倒される。その頭上をつい先程までそこら中を飛び交っていた弾丸とはひと回りもふた回りも大きな弾丸――砲弾の流星群が飛び抜けていった。
「来たっ!巡航戦車!」
「それだけじゃないMT*1も来るよ!」
「あれは……BAWS製の四脚MT⁉︎流石に私たちの携行兵装じゃ軽戦車や普通のMTの装甲はともかく、四脚の装甲はキツいわよ⁈」
既に銃撃戦によって立ち昇る火災と黒煙によって視界が汚染された市街地だったが、それでも大通りを堂々と侵攻する巡航戦車1両と四脚の重MT2機の姿は嫌でも目立つ。一応対抗策として貫通弾を装填できるハスミの小銃があるものの超重装甲相手には力不足感も否めず、多少の距離があれどそれらが保有する重火砲が揃って彼女たちに向けられている時点で、守るべき
──そう、
「なっ、何⁈」
「これは⁈巡航戦車だけでなく重MTが一撃で⁉︎」
突如として大地に降り注いだ2条の赤い閃光と1条の青い閃光。それらは破壊の雨として赤い閃光が1発ずつ重MTの急所となる直上の天板を、青の閃光は見事巡航戦車でも増加装甲が1枚も張られていなかった天板を貫通し溶断する。
「あれは……」
遅れてやってきた彼ら彼女らの頭上より降り注いだ巨大な発砲音と大気を劈く轟音に、揃って先生と彼女たちはその空を見た。
立ち昇る黒煙を貫くようにしてキヴォトスの上空を行く白いヒトガタ。
右手に人の身には過ぎた大きさの突撃銃を、左手に何らかの発振器、右肩には2本の小型誘導弾発射筒を装備し、左肩には大口径
「はぁ……時間通りですが、遅れ過ぎです」
「嘘……アレは
そんな機影を見て衝撃と共に驚きの声をユウカたちがあげた一方、安堵と共に少々不満気な顔をしたのはリンの方だった。
“レイヴン?”
「はい、ACを駆る傭兵「
彼女の反応から空を飛ぶ機影の正体こそが彼女が言っていた護衛なのだろうと思った先生が確認を取るとリンは何故か何処か誇らしく、しかしその一方で寂しさや後悔を滲ませた声色でそれを肯定する。
「先生、レイヴンから連絡が。《シャーレ周辺の敵性反応は全て鎮圧した、このまま周辺警戒に移る》とのことです」
その声色から何やら訳アリらしい香りを嗅ぎつけた先生だったが、尋ねるより先にそれも件の独立傭兵からの通信によって妨害される。
“レイヴン……レイヴン、か”
「先生……?」
黒煙に塗れた空を飛ぶ機影。戦火に汚されてなお、その先の空は美しいのだと宣うが如く自由に飛ぶその翼に、まだ見ぬ傭兵の正体について思いを馳せる先生だった。