青く透き通ったソラに、導きの星を   作:新人しくじり先生

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「R.A.V.E.Nが生まれた日」

 

 

失踪直前に連邦生徒会長が外の世界から招聘した「先生」が連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)へと赴任して数日後。

 

B().L().A().C().K()……ですか?」

 

連邦矯正局を脱走した七囚人の1人、狐坂ワカモを中心人物として発生した「D.U.騒乱」。騒動の鎮圧とその最中に行われた新たに着任した先生のシャーレオフィスへの護送依頼の完遂に携わった独立傭兵「R.A.V.E.N(レイヴン)」、いくらヘイローや神秘によって強化されているとはいえ人の身では過ぎた銃火器をその四肢に機巧を纏うことで担ぐだけでなく単独での飛行さえも可能としたその少女について、着任早々かなり多忙な書類作業など仕事の合間に色々と調べていた先生が辿り着いたのは「B.L.A.C.K(ブラック)」と言う単語であった。

 

「失礼ながら先生、一体その単語を何処で?」

“レイヴンって生徒を調べていたら偶然、それにシャーレの設備の中にも幾つかブラックのロゴが付いているものもあったから”

 

そして丁度サンクトゥムタワーの復旧により通常業務を再開した連邦生徒会と、ようやく始動したシャーレとの連絡事項の通達や書類のやり取りのため直接シャーレのオフィスを訪れていたリンに対し、先生は先日の件もあってレイヴンとは少々ただならぬ関係にありそうなブラックについて訊ねる。

ブラックについて聞かれたリンは少し驚いた顔で「何処でそれを?」と逆に問い返すが、それに「偶然見つけた」と先生に返され少し頭が痛そうにする彼女。

 

「──……ええ、もちろん。よく知っています」

 

しばしの逡巡の後、ブラックとは何たるかを知っていると認めたリンはひとまずその手に持っていた書類を近くの卓上に置くとポケットから取り出した液晶端末(タブレット)を徐に操作する。

 

「連邦生徒会長直属特殊作戦部隊B.L.A.C.K、別名「青薔薇部隊」はS.C.H.A.L.E設立以前に存在()()連邦生徒会・会長直属の超法規的執行部隊です」

 

そして彼女が手にした端末から投影されたホログラムには「機密」と赤字で書かれたブラック──連邦生徒会長直属特殊作戦部隊B.L.A.C.Kについての情報がスライドで表示されていた。

 

「業務内容としては「常に攻性であること」を理念(モットー)に、各学区の垣根を越えて連邦生徒会長の手足として犯罪の芽を事前に探し出しこれを除去する。そのためには法に縛られない超法規的な活動と暴力装置の行使が連邦生徒会の名の下に認められていました」

 

解説と共に進められるスライド、連邦生徒会制作かつ機密でありながら写真を含めて差し障りのない表面上の内容しか書かれていないあたり、本当に表向きには「存在しない」非公開組織であったことが分かる。

 

「つまり」

“なるほど、つまりある意味でこの連邦捜査部シャーレの前身となった組織。そう考えれば良いのかな?”

「そうなります」

 

連邦生徒会長の手足として少数精鋭、機工の鎧(アームギア)を身に纏いキヴォトス全域で犯罪の芽を事前に探し出し自己判断で動きこれを除去するブラック。

先生を顧問としてキヴォトスで暮らすあらゆる生徒の相談に応じ、同時に所属や学籍によらず不特定多数の生徒の協力を仰ぐことのできるシャーレ。

共通点は連邦生徒会長によって付与された権限の下に、連邦生徒会からも独立して各自治区さえも越えてあらゆる規約や法律による規制や罰則を免れる超法規的機関であることといえる。

 

“でも「存在した」ってことはどうしてブラックは解散したの?”

「それは……」

 

ある種、シャーレのための実験部隊だったとも取れるブラック。とはいえそれほどの強権を持ち治安維持に深く関わる部隊がシャーレ始動前に解体されていることに疑念を持っさた先生がその理由を尋ねるとリンはその返答に詰まった。

 

“あれ?もしかして聞いちゃまずかったかな?”

 

かなり連邦生徒会……というよりもリンにとって神経質(デリケート)な話らしいブラック関係の話にやや尋ねたことに後悔した先生だったが、そんな先生に対しリンは意を決したように話し出した。

 

「いえ、先生が悪い訳ではありません。これは……私たち連邦生徒会の罪です」

 

彼女はシャーレのオフィスから見える、あの日と同じキヴォトスでは珍しく澄み切ったその青過ぎる空を瞳に映す。

 

 

 

 

少女の青い瞳に映る、青過ぎる空。

その空を自由に飛ぶ一対の黒い翼に視線を奪われた少女は、かつて仲間だった友を想いつつその黒い鳥(レイヴン)が生まれた経緯を話し出した。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「……失礼、私の聞き間違いですか?SRT特殊学園の閉校提案に続けて特殊部隊B.L.A.C.Kの予算審議凍結?何の冗談ですか?」

 

キヴォトス最高責任者たる連邦生徒会長が失踪してしばらくして行われた連邦行政委員会定例会合にて、失踪によるサンクトゥムタワーの機能停止によって会長の承認を必要とする重要業務だけでなく日々の通常業務さえ滞り始めた連邦生徒会において、急遽行政委員会から()()で提出された議題── SRT特殊学園の閉校提案と特殊部隊B.L.A.C.Kの予算審議凍結決議案の審議が行われていた。

 

「馬鹿なっ⁈連邦生徒会長不在の今、犯罪発生率は依然右肩上がり。それでも首都圏の治安維持戦闘において小康状態を保てているのは重大犯罪を未然に防止するB.L.A.C.Kと発生後の即時鎮圧を行うSRTのFOX・RABBIT両小隊による抑止力と尽力があってこそ!」

「正気ですとも、七神主席行政官──いえ今は「生徒会長代行」とお呼びすべきですか。そのブラックとSRT、どちらの部隊も今の連邦生徒会には手に余る存在だと申しているのです」

 

会議開始と同時に開口一番で告げられたB.L.A.C.KとSRT解体提案に前回の会合にて連邦生徒会長代行に任命されたリンは、思わず発案者である()()()()へとそう叫んでいた。

 

「SRTは連邦生徒会長直轄部隊、連邦生徒会長の権限・命令を以ってあらゆる自治区への介入権限を有しており生徒の装備もキヴォトスではトップクラス。それ故に彼女たちは基本連邦生徒会長の指示がなければ部隊として動くことはなく、現状その活動の結果に関して責任を負う立場の人間が居ない状況です」

「それはブラックに関しても同様……いや、むしろ独断専行(独立攻性)のきらいがあるブラックは連邦生徒会を脅かす脅威ともなりかねない」

 

感情的になりかけるリンに対し、提案者側の室長たちは冷静にいっそ冷酷にSRTとブラックを解体する理由を説明する。彼女たちの隠す気もない、そんなリンに向けられた悪意と冷笑的な笑みにリンは内心で歯噛みする。

 

「私としても反対ですね」

 

膠着状態、というには明らかにリンを含む反対派に不利な状況で会議室内に響いたその声は嫌に透き通って彼女たちの耳に届いた。

 

「不知火防衛室長……っ!」

 

そしてそんな中で、高らかに反対を宣言したのはこのキヴォトス全域の治安維持を担当する防衛室の長、不知火カヤだった。

 

「七神主席行政官の言う通り、現段階でブラック・SRTの解体はまず間違いなく悪手でしょう。どちらの部隊とも唯一キヴォトスで公的に各自治区間の紛争介入の権限を有した超法規的執行部隊、また「総合力こそ力」とする我が防衛室直下のヴァルキューレと比べて「量より質」を至上とする特殊部隊の解体は連邦生徒会常備保有戦力の大幅な低下も意味することはお分かりでしょう?」

「しかし」

「仮に、ブラックとSRTの暴走を心配しているのだとしてその辺りは規則改正でどうとでもなりますよ。非公開組織であるブラックはともかく、元々SRTは連邦生徒会直下の法執行の最高学府。閉鎖するには現状ヴァルキューレ単体での対応力に不安がある以上戦力としても惜しい、防衛室を取り仕切る立場から言わせていただければヴァルキューレはSRTを受け入れる用意があります」

 

会議参加者全員の視線を独り占めにしたカヤは高らかにブラックとSRT解体への反対、特にヴァルキューレの上位互換ともいえるSRTの解体に対し反対を表明する。連邦全体の行政を担う主席行政官かつ生徒会長代行ではあるものの軍事には疎いリンではなく、キヴォトスの治安維持や軍事を司る防衛室長に強く反対されてはいくら財務室長であっても強くは出ることができない。

 

「……分かりました、SRTに関しては閉校ではなくヴァルキューレとの一部統合と再編で納得しましょう。しかしブラックに関しては別です」

 

SRTの廃校については諦めた財務室長らであったが、どうしてもブラックだけは潰したいらしい。

 

「連邦生徒会からは完全に独立した指揮系統、ヴァルキューレ警備局所有全部隊と同額予算」

「部隊メンバーは各自治区生徒の引抜きや推薦で採用され自薦は基本不可、階級無しの実力主義。組織のトップは連邦生徒会長のみ」

「アビドス介入、ミレニアム領内の遺跡探索、トリニティおよびゲヘナへの強制監査……挙げればキリがない」

「連邦生徒会長が居ない今、これ以上ブラックの横暴は無視できません。あの部隊は連邦生徒会の品位を傷付けるだけです」

 

財務室長だけでなく調停室長や交通室長を筆頭に次々と挙げられるブラックに対する不平不満。連邦生徒会長の信用も厚く好き勝手できるだけの権限や莫大な予算を持ち、しかもその権限や予算を使用するだけ相応の成果を毎度毎度持って帰ってくるブラックはキヴォトス全域を監督する行政委員会のメンバーでありながらその後始末とおこぼれに預かるだけの()()()()()らからはまさに「目の上のたんこぶ(嫉妬の的)」、それは千に勝る学園都市群の頂点に立つ連邦生徒会役員の彼女たちのその自負と自尊心を傷付けるが故に非常に受けが悪かった。

 

「採決を取ります、まずSRT特殊学園の再編について投票して下さい」

 

そして遂に訪れた評決の時。会議開始以降碌に発言もなく影自体は薄かったものの、持ち回りにて本会合において議長を務める人材資源室長の一声で第一の議題「SRT特殊学園閉校提案」もとい「SRT特殊学園のヴァルキューレ警察学校との再編」について投票が行われた。

 

●統括室

行政官・賛成

●行政委員会

防衛室・賛成

調停室・賛成

交通室・賛成

財務室・賛成

体育室・賛成

文化室・賛成

保健室・賛成

環境室・賛成

法務室・賛成

経済室・賛成

人材資源室・賛成

 

 

「全会一致でSRT特殊学園の再編成は可決されました」

 

投票結果は全会一致のSRT特殊学園の再編成への賛成。具体的な内容は今後統括室や防衛室・財務室・法務室・人材資源室の協議によってこれから詰めていくこととなるだろうが、概ねSRT特殊学園自体はその筆頭戦力であるFOXとRABBIT小隊の特殊部隊を残した上で規模を縮小しつつヴァルキューレ警察学校の一部かその上位組織として警察大学校へと将来的には再編成されることとなるだろう。

 

「では次に連邦生徒会長直属特殊作戦部隊ブラックの次期予算審議についてですが……」

 

続いて第二の議題「特殊部隊B.L.A.C.Kの予算審議凍結決議案」の投票が行われる。タワーの機能停止により本来なら手元の端末の操作のみであっという間に終わるはずが、わざわざ個々が書いた紙切れを集め集計する手間を掛けてまで行われたそれは、第一議題と比べてもやや時間を掛けた上で結果が公表された。

 

 

●統括室

行政官・反対

●行政委員会

防衛室・反対

調停室・賛成

交通室・賛成

財務室・賛成

体育室・賛成

文化室・賛成

保健室・反対

環境室・反対

法務室・反対

経済室・賛成

人材資源室・反対

 

「……賛成反対が同数、よってブラックの次期予算審議は凍結となります」

 

出された結果は賛成票と反対票の数が6対6の同数、連邦生徒会規則により投票が同数であった場合は予算審議の場合に限り審議が()()()()される規則によりリンやカヤたちの反対虚しくブラックの予算審議は凍結されてしまっていた。

 

「そんな……」

「……」

 

部隊予算審議の一時凍結、完全凍結でない分マシにも感じられるかも知れないが一度でも凍結された予算の再審議には失踪した連邦生徒会長の会長決裁が必要なのである。またブラックはその保有権限や任務の性質上、装備を最新かつ極めて高価な兵器で統一しており次期予算が降りないともなれば完全に部隊の活動は停止してしまう。そうともなれば任務の果たせなくなったブラックの部隊解散は時間の問題、そして重大犯罪を未然に防止する強力な常備戦力の半減(抑止力の片割れの喪失)は後々首都圏の治安維持や連邦生徒会に多大な悪影響を及ぼすこと間違いなしである。

 

「ブラックの予算審議凍結により浮いた余剰予算、使い道に悩みますねぇ」

「全くです、あの生意気な小娘の部隊……金食い虫が潰せて清々します」

 

「っ!」

「……堪えて下さい、七神代行」

 

どう考えても悪手でしかない結果に愕然としたリンの耳に届いたその悪意に、思わず立ち上がろうとした彼女を隣に座ったカヤの静かな、しかし力強いその言葉に制止させられ彼女は机の下で拳を強く握り締める。

 

「……これが民主主義、これが連邦生徒会長なき()()連邦生徒会の現実です」

 

これが民主主義、これが連邦生徒会。強力なリーダーシップを発揮する超人と称するに相応しい生徒会長を失い、不断の努力により維持されるべき組織としての高潔さや民主主義を腐敗と派閥争いによって統制を欠き私物化されつつあるこの姿こそが、今リンが生徒会長捜索と共に死に物狂いで維持している連邦生徒会のその姿(成れの果て)であった。

 

「先輩!大変です!」

「アオイ?何事です?」

 

余りの不甲斐なさに唇を噛み締めるリンだったが、そんな会議室に突如飛び込んできた1人の連邦生徒会役員──財務室副室長の扇喜アオイであった。

 

「ブラックが、部隊の解散を宣言しました!」

 

 

「は?」

「え?」

 

 

そして息を切らせて飛び込んできた彼女が告げたその内容はリンやカヤ、更にはブラックの次期予算凍結を喜んでいたはずの幾人かの室長らさえも驚かせる内容であった。

 

「先程頂いた審議結果から修正した次期予算レポートを掲載し送信した直後に部隊解散の申告が!申告の真偽を確認しようにもブラックに繋がりません!」

 

騒然とする会議室内、だが会議室を訪れた来訪者はアオイだけではなかった。

 

「どうも、連邦生徒会の皆さん」

「貴様は⁉︎ここは連邦生徒会会議室だぞ!」

 

アオイの背後から何人もの制帽と統一された薄い青の制服に防弾ベストを身に纏った生徒を引き連れ、何やら紙の束を手に薄い金髪で頭頂部に一対のケモ耳を生やした黒いジャケットを羽織った生徒が現れる。

 

「公安局局長尾刃カンナ!」

 

その名を呼ばれた薄い金髪の生徒── ヴァルキューレ警察学校公安局局長の尾刃カンナは部下の制帽を被った生徒に会議室入り口と幾人かの室長──財務室長や交通室長を含む4人──の近くを固めさせると、一度会議室内を見渡した上でその鋭い瞳をその室長らに向ける。

 

「これを見てもそんな態度でいられますか?」

 

確かな嫌悪の眼差しと共に、その手に持っていた紙の束──号外らしき新聞記事を彼女たちが席についている会議室の円卓へと放り投げる。

 

「こ、これは……っ⁈」

 

 

『腐敗の温床連邦生徒会⁉︎財務室長カイザーグループとの癒着!』

『交通室長、首都圏地下鉄再開発事業でアナハイムエレクトロニクス社との談合疑惑発覚!』

『前晄輪大祭に汚職事件?調停室長とキヴォトス各地のスポンサー企業との間に複数の賄賂発覚、総額は少なくとも1億以上!』

『某インテリ系不良生徒グループと経済室長の黒いウワサ‼︎連邦中央銀行連邦債務取引計画漏洩か』

 

 

紙面を飾るのはS()R()T()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()財務室長や交通室長たち4人の汚職を報じたクロノススクールの報道部発行の号外記事。

 

「バカな……こんなゴシップ如きで貴様は動くのか!」

「不知火防衛室長!これはどういうことですか⁈彼女は貴女の部下でしょう⁉︎」

「残念ですが公安局にはこの記事の基となったであろう資料が届いていましてね、ゴシップではありませんよ」

「なっ……⁈」

 

目の前に曝け出された汚職の事実に目に見えて取り乱す室長たち、その中の1人の室長が新聞の内容をゴシップと扱き下ろし反論するもカンナは彼女たちを見つめる瞳に更なる嫌悪感を募らせつつも「証拠はある」と告げ黙らせる。

 

「そうですねぇ……カンナ局長」

「……なんでしょう?」

「その情報、()()からですか?」

 

途中、貴女の部下なんだからどうにかしろと言外に言われたカヤがカンナへと問うたのは何故連邦生徒会行政委員会重役相手こんな強硬手段に出たのか……ではなく誰から提供されたのか。

 

「……()()()()ですが、それが何か?」

 

いつもは糸目のカヤが薄らと瞼を開きつつ尋ねたその問いに、カンナは何処か緊張した面持ちで一拍の間の後に「匿名(誰かは分からない)」と答える。会議室内に走った一瞬の緊張、しかしそんな張り詰めた空気もまたいつも通り糸目に戻ったカヤ自身によって破られる。

 

「いいえ?結構です。このキヴォトスの治安維持を担う防衛室の長として、貴女方公安局の行動に異を唱えることはありません」

「何だと⁈不知火キサマっ⁉︎」

「……終わりだ」

「各々言い訳は結構、それほど話したいことがお有りならば話は公安局の部室で私が直接聞かせて頂きます。お連れしろ」

「「「はっ!」」」

 

今度は逮捕の許可(ゴーサイン)を出したカヤに噛みつこうとした財務室長に向かいカンナは一瞬彼女に付けられた「狂犬」、その仇名の通り殺気を隠すこともなく力強い言葉と共に(力強く吼え噛み付くと)部下に拘束の指示を出す。

 

「……貴女が七神リン主席行政官、いや生徒会長代行ですね?」

「え?あ、はい。そうですが……」

 

目の前で行われた前代未聞の連邦生徒会役員の逮捕劇に呆気に取られていたリンたち無関係の役員たちであったが、財務室長たちが手錠を掛けられ会議室から連行されたのを見届けて突然素面に戻って話しかけて来たカンナの行動にリンは困惑する。

 

「推薦状を預かっています……あとブラック元隊長、()()()()()の辞職届も」

「辞職⁉︎」

 

懐から取り出された幾通かの封筒と、その内の一通に「辞表」とデカデカと書かれた封筒を手渡されたリンはそこに書かれた辞表の文字とその言葉に目を剥いた。

 

「一体何故貴女が?そもそもどうして彼女が辞職なんて……」

 

手渡された封筒とカンナを交互に見つめるリン、そんな彼女の様子にカンナは少し気まず気に頬を掻きつつ背を向けながら答えた。

 

「……同期なんですよ、プラナとは。辞める理由は私にも教えてくれませんでした」

「そんな……」

「これからは自由にやる、と……今度は傭兵でもやってみようか、だそうです」

 

ブラックの元隊長プラナとは同期だと言うカンナ、そして「折角連邦生徒会を抜けるなら古巣のヴァルキューレに戻って来いと言ったが断られましたよ」と困ったような呆れたような、しかし何処かアイツらしいと納得した声色で答える彼女にリンは自分の知らないプラナの過去を感じ──ほんの少しだけ嫉妬した。

 

「独立傭兵「R.A.V.E.N(レイヴン)」、それがプラナの──彼女の新しい名前だそうです」

 

リンを始め、その場にいた彼女たちは示し合わせた訳でもないのに揃って会議室のガラス張りの窓から外を眺める。

 

 

 

その日の空は、キヴォトスでも珍しく澄み切った空。嫌というほど青過ぎる、そんな青空だった。

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