ムルナイトスラングみてーな名前の女   作:効果音

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思い付いたので触りだけでも書いておこう的な。


プロローグ・決壊戦線崩壊

「引きこもりガッデムブラック!? そんな罵詈雑言の塊みたいな名前なことある!?」

「全部違うわ!! 私もそこまでの罵詈雑言を浴びせられたことは初めてだわ! 耳腐ってんのか!?」

 

 親の紹介で出会ったのがテラコマリ・ガンデスブラッドとスウェアの出会いだった。

 出会い頭のとんでもない聞き間違いがきっかけで彼女から数日口を利いて貰えなかったが、それももう三年前のこと。

 

「テラ子ー、起きろ。起きないとお前のアレを勝手に賞に応募するぞ」

「鬼か! というかお前それ一回やっただろ!」

「吸血鬼だからな」

 

 三年後、スウェアは諸事情で本当に引きこもりになってしまったテラコマリの部屋に上がり込み、蓑虫のように彼女を巻き付けている毛布を引き剥がす。

 その諸事情が発生した時にスウェアがテラコマリの味方をしていたこともあって、話し相手としてほぼ毎日彼女の部屋に来るように、テラコマリの父のアルマンに言われたため続いているのが今の関係性である。

 朝イチのやり取りも三年の間に数え切れないほど交わしたやり取りだ。

 

「鬼でも悪魔でも何でも良いが、お前にお客様らしいぞ」

「は? 私にお前と家族以外に会いに来るヤツなんているのか?」

 

 誰かに訪ねられる心当たりがない。

 家から一歩も出ずに社会との関わりを断ち切っていたのに、誰が一体訪ねてくるというのか?

 

「私です」

 

 スウェアとテラコマリの間に無から生えてくるような挙動で青い髪の表情筋が死んでいるのかと思う程に無表情なメイドが現れた。

 

「そう、この美人のメイドさん」

「誰だよ!?」

「……お名前聞きましたっけ? 部屋に来るまでテラ子のことについて十分ほど語ってたけど名前聞いてなかったな」

「ちょっと待て」

 

 テラコマリのほぼ唯一の友達とも言える男が知らない女と知らない時間で自分の話で盛り上がっている。

 それだけでも彼女の胸の奥がチクりとするのに、見ず知らずの人間を人の部屋に通したということの方が重大でツッコミを入れずには居られなかった。

 

「いえ、自己紹介がまだでしたね……。

 ヴィルヘイズと申します。階級は準三位特別中尉、本日付けでテラコマリ様の専属メイドとして着任いたしました」

「誘拐犯……?」

「違います。私をどこぞの左遷男と同じにしてもらっては困ります。

 私は正式な手続きを得てテラコマリ様を宮廷に誘拐する役目を仰せつかったのです」

 

 恐怖。会話は出来ているのに意思の疎通がまるで上手くいかないことに対しての恐怖がテラコマリを支配した。

 彼女は少しズレてヴィルヘイズの横に立っていたスウェアを掴んで引っ張り自身の盾にした。

 

「おい、お父さんを呼べ。その間に私は逃げる」

「いや、そのテラ子の親父さんが呼んだらしいんだが……というかなぁ! お前いい加減にしろよ!」

「……え?」

 

 スウェアがテラコマリの掴む腕を振り払って手首を掴み返して大声を上げる。

 彼と軽い口喧嘩をしたこともあるが、その時ですら聞かなかったような大声にテラコマリは肩をビクっと震わせて顔が青ざめていく。

 気心知れた仲であっても男の怒声というのはそれだけで恐怖に値する。

 

「その、ごめ──」

「こんなメイドさんがご奉仕してくれるのに、ワガママ言ってんじゃねぇ! 俺だって……! 俺だってこんな肩と背中バックリ露出した巨乳の美人メイドさんにご奉仕されてぇよ! ついでに美少女幼馴染みと良い感じに仲睦まじくなって甘酸っぱい恋とかしてぇよ!!」

「あっぶねぇ!! 危うく謝りかけて損しそうになったわ! ほぼほぼスウェアの変態妄想願望じゃねぇか!」

 

 男と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見る『クーデレ露出強巨乳美人メイド』それが今スウェアの目の前にはあった。

 本当に妬ましい。羨ましい。代わってほしい。

 一、二位を争えるほどに醜い嫉妬の感情がテラコマリに向けられていた。

 血涙を流しながら嫉妬をしているスウェアを気持ち悪いとも思う一方、その気持ちに理解が出来なくはないテラコマリは渋い表情を作った。

 

「というか……私は違うのか……」

「そりゃお前は──」

 

 自分とスウェアはもう一つの願望の美少女幼馴染みの判定ではないことに寂しさを覚える。

 

「テラコマリ様、戯れている時間はありません。宮廷に出発しましょう」

 

 何かを言いかけたスウェアを遮ったヴィルヘイズがテラコマリをお姫様抱っこで部屋を出ようとする。

 

「や、やめろー! アレだ! おしっこを漏らすぞ!」

 

 誰であろうと尿など掛けられたくあるまい。

 多少の動揺を誘って逃げ出そうとしようとするテラコマリだったが、今回ばかりは相手が悪かった。

 ヴィルヘイズは動揺するどころか瞳をキラキラさせていた。

 

「朝イチ番をいただけるのであれば……! 何卒……!」

「へ、変態じゃねぇか! なんだこの空間! 気持ち悪いヤツしか居ねぇぞ!」

 

 本当にそればっかりはそうだし、誰が見ても可哀想な状況である。

 説明もしてもらえなければ誰一人味方が居ない。何か悪いことでもしたのかと自分の行いを振り返るが、そもそも引きこもりをやっている時点で悪いことはしているとテラコマリは考えた瞬間に考えるのを止めた。

 

「問題ありません! 私は構いません! 覚悟はしています! ですから、何卒……! 何卒!」

「構えよ! それに男も居るんだぞ! 見せられるかぁ!」

「じゃあ俺は帰るから……」

「待てぇい! せめて私をこの変態から奪ってトイレにだけは行かせてから帰れ! 限界近いから……! 本当に!」

 

 涙目で今にも泣きそうなテラコマリに助けを求められ、流石にスウェアもそれは無視出来ない。

 最悪の場合を考えつつもスウェアは構えを取ったが、それも杞憂に終わった。

 

「そこまでにしてあげなさい、二人共」

 

 部屋の扉を開けて入ってきた黒いマントで身を包んだ長身の男、アルマン・ガンデスブラッドが二人を制止する。

 スウェアもヴィルヘイズもお互いに害そうとした訳でもないため、すぐに構えを解く。

 

「ぶぐっ……あっ」

 

 結果としてヴィルヘイズの腕から叩き落とされたテラコマリは盛大に床と激突する羽目になり、直後、黄金の湖がテラコマリの部屋に広がったことは、その場に居た者達のみの秘密となった。

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