ムルナイトスラングみてーな名前の女   作:効果音

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仕事やら諸々の都合でちょっとしか書けませんでした……申し訳ないです。


宣言前日・彼女達の場合

 スウェアからの呼び出しの前日、ヴィルヘイズは日課のストーキング行為に精を出していた。

 

(毎朝六時に起床。同三十分、朝食を摂る。特に変わりないですね……)

 

 彼の住んでいる住居の近くの建物の屋根の上から双眼鏡を使って、いつもと変わらない行動パターンを観測している。

 テラコマリがサクナとの関係を憂いていたため、最悪の場合朝チュンまでかましているかと思えば、そんなこともなかった。

 

(そういう関係になって一週間も経たずに手を出せるほど猿だとは思っていませんが……逆にいつも通り過ぎる)

 

 それから何事もなく、ムルナイト宮殿に出勤するスウェアを尾行し、その後の勤務も見守り続ける。

 出勤後のサクナとの会話も見ている限りでは、特におかしな点もなく、直接話を聞かないと情報も出てきそうにないと判断したヴィルヘイズは一度第七部隊の執務室へ戻った。

 

「終わんない……なんで今日に限ってこんなに書類溜まってるんだよぉ……!」

 

 執務室の机に大量に置かれた書類に囲まれたテラコマリが頭を抱えて喚く。

 スウェアに話を聞く時間が欲しいというのに、通常業務に加えて今日が期日の書類が多く、後回しにすることも出来ない。

 もっとも、その仕事を押し付けるために七紅府に押し掛けてきたカレンがニヤニヤしていた辺り、誰かしらがテラコマリを仕事に縛り付けたいという意図を持って動いているのだろう。誰とは言わないが。

 

「頑張ってくださいコマリ様。終わったらふわっふわなパンケーキを作ってあげますから」

「本当!? わーい!」

 

 パンケーキごときでやる気を出してくれる主人のチョロいところに宇宙一の可愛さを感じながら、ヴィルヘイズは自分で淹れた紅茶を啜りながら、どうやってスウェアのことを探るかを思案する。

 

(どうにか血液を飲ませますか……直接飲めと言っても飲まないでしょう)

 

 ヴィルヘイズの烈核解放・パンドラポイズンは、自身の血液を摂取した者の未来を視ることが出来る。

 遠い未来まではハッキリとは分からないが、数日以内であればほぼ確定した未来を視ることも難しくない。

 そうなると、問題はどうやって血を飲ませるかになってくる。

 以前にカジュアルに直飲みを誘ってみた際には、自分を大事にしろと断られてしまった。

 

「なぁ、ヴィル」

「コマリ様。また交流を装った軍曹との密会兼サボりはご遠慮ください。隊の猿達も勘づくのも時間の問題です」

 

 テラコマリはいつも働きたくない引きこもりたいなどと発言してはいるものの、職場に来てしまえば職務放棄することは一度もない。

 理由は色々あるだろうが、今までと違って前向きになれたのだから、良い変化でもある。

 

「違うわ! って、そうじゃなくて……いや、そういうことでもあるんだけど……」

「恋する乙女は大変ですね」

 

 もう一つ、今のテラコマリの変わったところと言えば、以前のように自覚のない恋心のせいで会えなくて寂しそうにしているというよりは、自覚してしまったから無理に抑えようとして目に見えて落ち着かない様子が続いていることだろう。

 隊員の前では七紅天らしく振る舞ってはいるのだが、ヴィルヘイズと二人きりになりがちな執務室では、その調子のことが多い。

 

「……それは、ヴィルもそうなんじゃないのか?」

「私のことはどうでも良いではありませんか」

「良くない! ヴィルは……ヴィルも私の大切な人だし……」

 

 仕事の手を止めたテラコマリがヴィルヘイズの方を向いて真剣に悩んでいるような表情をしている。

 テラコマリは自分より昔にスウェアとヴィルヘイズが出会っていることを知っていて、それで気不味さを抱えながらも彼に会いたい気持ちを抑えきれない自分に、少しだけ嫌気が差している。

 ヴィルヘイズはスウェアとテラコマリの三年間があることを知っていて、自分が覚えられていないことと、彼自身の気持ちの問題もあって半ば諦めている。

 

「なんか……お前はそういうとこ。自分がそうって決めたら何でも受け入れそうなとこ、スウェアと似てて、たまに怖いんだよ…」

 

 乗り越えたといっても、あの日、自分を庇ってミリセントに刺されて血塗れになったスウェアのことをテラコマリが忘れられることはなかった。

 そういう風に、カレンに、誰かに、そうであれと役割を求められてしまったら、それを死んでもその役割を演じてしまいそうで、今回の件で、再びああなってしまうのは二度とごめんだった。

 

「……コマリ様」

「まぁ、ヴィルに関しては好きで変態やってそうなとこあるし、あんまり心配してないけど……て、そろそろ再開しないと……」

 

 若干照れ隠しも入っているが、話を切り上げたテラコマリは机に山に向き直り、真面目に仕事を再開した。

 

(……そういうコマリ様だから、間に割って入るわけにはいかなくなるのです)

 

 自身に手を伸ばしてくれた二人だからこそ、テラコマリという光に焼かれたという共通点があるヴィルヘイズだからこそ、結ばれてほしいと願っている。

 それが例え、彼女が望まないことで、自身の恋が叶わないとしても、そう願っている。

 




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