視える人 作:mk
「アンタねえ、私達はそんなことの為に来たわけじゃないでしょ!」
「じゃあ何しに来たんだよ」
「何って、そんなの決まって……あれ?」
「いや待ておかしい……俺達は何でここに居るんだ……?」
「フクキタル先輩は憶えていますか?」
「占ってみましょう……ムムム、来ましたーッ! ラッキーアイテムはマスクです!!」
「「いやそれは聞いてないです」」
「て、鉄球専門店!?」
「鉄球専門店ってなんだよ。ボールベアリングでも売ってんのか」
「流石東京、なんでもあるな」
鉄球専門店を見た学友達がカルチャーショックを受けている。
自分も育成シナリオで初めて鉄球専門店の文字列を見た時は困惑したよ。しかもまだ高級鉄球専門店が控えてるんだよな。なんで鉄球専門店が複数あんだよ。分からない。文化が違う。
「首都圏の人口規模があれば何所に需要があるのか理解に苦しむニッチ市場でも採算が取れるだけの顧客を確保してビジネスが成立し得るのか。結局、多様性とは数の上にしか成り立たない。過疎が進んだ田舎は寂れ方すら画一的に滅んでいくんだ……」
「鉄球専門店を見ただけでダメージ負ってる人初めて見た」
「鉄球専門店自体初見だって」
周囲を見渡した学友が街の一角を指差す。
「ほら見ろストリートピアノまでありやがる。これが文化だ!」
「ピアノくらいウチの学校にも置いてあるよ?」
「ピアノが珍しいんじゃなくて、市民が文化施設へアクセスできる公共性の話をしているんだ……」
学友がヒートアップしておられる。
我らがクソ田舎には歴史どころかちくわすら残ってねえからな。
ふむ、ピアノか……
「おい待て、何する気だ」
ここで弾かねば不作法というもの。
俺は前世でキーマニを触ったことがあるから鍵盤が弾けるんだ!(音ゲー万能理論)
~ピアノ演奏中~
「<(╹ヮ╹)>*1」
やりきったぜ(運命浄化)。
一曲弾き終えると周囲から疎らな拍手が湧く。
「お前ピアノ弾けたのか」
「異能バトルアニメのOP?」
「知らない曲だけど良い曲だった」
北海の新鮮な魚介類を思い浮かべながら弾きました。
「脈絡が無さ過ぎる」
「もしかしてお腹減ってる?」
「築地まで海鮮丼食べに行く?」
ち、違うんだ。人前で色恋沙汰を歌うのを躊躇って別の曲を鮭の産卵をイメージして弾いただけなんだ……不甲斐ない俺を笑ってくれ……
「お前は何を言ってるんだ?」
演奏後、まだ椅子に座ったまま天を仰ぎ自嘲していると誰かが声を上げる。
「Le ninja de tout à l'heure !?」
自分に向かって機敏な動きで人混みを縫って近づいてきたそいつの名は――
【ヴェニュスパーク】
「Qui êtes-vous ? Comment avez-vous exécuté les mouvements que vous avez faits dans la tour ? Où as-tu été formé ? Avez-vous un maître ?」
対面の会話でここまで何も情報が得られないことある?
ハイテンションで矢継ぎ早に質問されてるっぽいけどフランス語だと何言ってるか分かんねえよ……まあ、たぶん曲名とか誰の曲かとか聞かれてんだろ。
「Power Of Nature(無駄に良い発音)」
「Le pouvoir de la nature……Voulez-vous dire quelque chose comme le mana ou l'énergie vitale ?」
質問を重ねてくるのを止めろぉ!
とりあえず無言で意味深な顔をしておく。
「Est-ce là le mystique du Japon……」
すまねぇ、フランス語はさっぱりなんだ。
レース関係者、感覚麻痺してるのかもしれないけど、トレセンの連中は普通に多言語話せる上流階級とか海外遠征に当たってレースと学業の片手間に追加でフランス語習得するような知的エリートの集まりだからな?
世間一般の水準はアニメ一期のスペシャルウィーク並なんだ。悔しいけど仕方ないんだ……
「Ne disparaissez pas soudainement !」
ここで更に新手のフランス人がエントリーしてきた。
うっわ、ネームプレートが増えた。ブッダよ寝ておられるのですか。
咎めるような声色と共に現れたウマ娘の名は――
【モンジュー】
――姿が分からないウマ娘、日本語の通じないフランス人、役に立たないギャラリー。俺は……何から対処すればいい!!?
「Maître, cet être humain est un ninja !」
「……Comédien japonais ?」
「Non !」
「Oui, oui, d'accord, allons à l'académie de formation」
「Oh, non ……」
ネームプレートが連なって離れていく。
見えないけど引き摺られて連行されたっぽいのは分かるぞ。ちょっと親近感湧くな。
学友達の方を見るとなにやら絶句している。
「モ、モンジュー……」
「凄え……凱旋門賞ウマ娘だ……本当に実在するんだ……」
「流石国際都市TOKYO……」
そりゃ実在してるだろ。お前は何を言ってるんだ。
「そうだけどそうじゃないんだ」
「田舎に住んでると都会の煌びやかなカフェの宣伝とかみても絶対に行けないから自分に向けられた情報として受け取れないじゃない? 情報として知ってはいてもメキシコで麻薬カルテルが警察とドンパチしてるくらい非現実的な距離感でしか受容できてないんだよ」
「要するに自分達の生きる世界と地続きだと実感が持てなかったって話だ」
なるほどな~。修学旅行、田舎民の悲哀を暴き出す恐ろしい行事だぜ。
とても教育効果が高いと思いました。(感想文)
音ゲーマーはね、やる事全部がめちゃくちゃでなきゃいけないの。
読者がストイックに時間と労力をかけて読んできたものをグチャグチャに崩壊させるんだ!! これはもうX(旧twitter)以上の快楽だッ(ただのガバチャー)
ヴェニュスパーク:ほんとだもん! ほんとに忍者いたんだもん! うそじゃないもん!
モンジュー:貴方は何を言ってるんですか?
ハッピーミーク:ゲームでURAシナリオをやってると勝負をしかけてくる。
・パワー勝負をすることになったハッピーミーク一同
「おいこれ勝負にかこつけてアタシを始末する気だろ!」
「そのような意図はございませんわ。
「カイチョー、なんでボク達も巻き添えにならないといけないの?」
「いいかいテイオー、時には勝負の相手は選べないことがあるものだよ」
「ミーク! 頑張ってくださいね!(無邪気)」
⏱
「……ぶい」
「うわぁああああ!!! ジェンティルがパワー勝負で負けたぁああああ!????」
「そんな……
「な、なにがおきてるのカイチョー!?」
「我々はとんでもない化け物を産み出してしまったのかもしれない」
「面白い娘ね」
ハッピーミークのレースの真髄・力のヒントLvが上がった。
鉄球を握りつぶす相手だろうとパワー勝負で勝つ。それがハッピーミークさんだ!
次回、『クソ音ゲーマーにはカレンチャンのカワイイが通じない(先行ブロック)』へ続かない。