元人間な覇竜の滅竜魔導師がオラリオに出戻るのは間違っているだろうか? 作:匿名さん
「一一一お〜。えらい賑わってんね〜!」
数週間かけ、かつての〝大穴〟。現在は〝迷宮都市オラリオ〟に辿り着いた。
当時は大穴から絶え間なく出てこようとするモンスターとの死闘の毎日で殺伐としたり緊張感があったが、今は街の住人達の笑顔などで明るい雰囲気に満ち溢れている。
道中話には聞いていたが、まさかあの大穴の上にここまで立派な都市ができてたとはね。
「うんうん平和でなにより。……さて。とりあえずは〝換金〟だな」
昔と同じでモンスターの魔石に価値があるのはよかった。
塵も積もればなんとやら。小ぶりだがここまでの道中多くののモンスターが襲いかかって来てくれたお陰で魔石はたんまりとある。
レートは分からないが数日くらいは大丈夫だろう。
「てなわけで〝ギルド〟とやらに向かってレッツラゴー!」
一一数十分後
「……う〜ん。どうしたもんかね?」
バベル1階に置いてある共用の椅子に座る俺は腕を組んで唸っていた。
意気揚々と換金しに来たはいいもの、どうやらギルドに登録した〝冒険者〟とやらじゃないと基本的に換金ができないらしい。
しかもその冒険者になるには地上に降りてきた神の作る〝ファミリア〟と呼ばれる組織に所属していなければいけないとのことだ。
「裏でワケあり相手にそういう商売をしてる奴はいるだろうけどツテも何もないからな〜。かといって昔みたいにそこら辺のやつをテキトーにカツアゲするわけにもいかないし……」
「一一一あの、突然話しかけちゃってすみません。何かお困りですか?」
「いや〜!ホントさっきは助かったよ『ベル』!ここは俺の奢りだ!ほら!若いんだから遠慮せずドンドン食え!」
「い、いえ。困った時はお互い様ですから『アカム』さん」
隣に遠慮そうに座る白髪赤目の少年、『ベル・クラネル』の背中をバシバシとたたき、ジョッキになみなみと注がれたエールをあおる。
あの後、話しかけてきたベルに冒険者じゃないから魔石が換金できなくて困っていることを話してみると、『それじゃあ僕が代わりにしてきますよ!』っとやってきてくれた。
最初はお礼に何割か渡そうとしたが頑なに受け取ってくれず、じゃあと晩飯を奢るという形で現在にいたる。
「しっかしここは飯も酒も本当に美味いな!いい店知ってんじゃねーかベル!」
「あ。実は僕もこのお店に来るのは初めてなんです」
「お?そうだったのか。じゃああれか?前々から目を付けてた店だったとか?」
「あ、いえ。実は今日街を歩いている時にそこの『シル』さんが僕の落とした魔石を拾ってくれたんです。そしたらこのお店で働いているとの事だったのでお礼を兼ねて来る予定だったんです」
「ほーん?落とした魔石を……ねぇ?」
チラッと件の従業員に目を向けるといい表情でニコニコと笑っている。
多分この従業員の仕組んだ客引きの一環だったんだろう。
コイツ、お人好し過ぎて前世なら騙されて借金の連帯保証人とかになってそうだな。
それはそうとこの従業員、何かは分からないがただの人間ってわけじゃなさそうだ。
「まあいいか。……あ、そうだベル。重ね重ねですまないんだけどお前、どこかのファミリアに何かツテとかな一一一」
「ミア母ちゃん来たで〜!今日はよろしくな〜!!」
「ご予約していたお客様のご来店ニャ!」
「ッ!?」
「あん?」
男か女か分からない残念な胸をしたエセ関西弁赤髪を筆頭にゾロゾロと店内に人が入る。
それを見る周りの客がやけにザワついているが有名な【ファミリア】なのか?
てか関西弁なんて転生してから初めて聞いたな。
「なぁベル。【ロキ・ファミリア】ってのはオラリオじゃ有名な【ファミリア】なのか?」
「えぇ!?アカムさん!【ロキ・ファミリア】を知らないんですか!?」
「知らん」
この街に来たのは今日だって店に来るまでに言ったはずなんだけどなぁ?
「【ロキ・ファミリア】は【フレイヤ・ファミリア】と並ぶオラリオで1.2を争う最大派閥の一つで凄いファミリアなんです!」
「ふーん?最大派閥…ねぇ?」
横目で一通り視てみる。
確かにそれなりの実力はあるみたいだ。1500年前でもまぁまぁ戦えるレベルだろう。
「で?お前はなんでさっきからあの金髪をチラチラ見てるんだろうな〜?え〜?ベルゥ〜?」
このこの〜。青春か〜?このやろ〜?
「い、いや!あ、『アイズ』さんはそんな……」
照れて真っ赤になるベルをからかいながらせっかくなので【ロキ・ファミリア】について色々話を聞く。
今のオラリオでも上から2番目のレベルで数少ないらしいレベル6の冒険者、【勇者(ブレイバー)】、【九魔姫(ナイン・ヘル)】、【重傑(エルガルム)】。レベル5の【剣姫】、【怒蛇(ヨルムンガンド)】、【大切断(アマゾン)】、【凶狼(ヴァナルガンド)】が凄いとかなんとか。
そんな感じにベルの話をツマミにメシと酒を楽しんでいたわけだが一一一
『一一一よっしゃあ!アイズ、そろそろあの例の話を皆に披露してやろいうぜぇ!?』
『あの話?』
『あれだってぇ!帰る途中で何匹か逃したミノタウロスゥ。最後の1匹ぃ。お前が5階層で始末したろう?そんでほれ。そん時いたトマト野郎の!』
「ッ!?」
「…ベル?」
『いかにも駆け出しのヒョロくせぇガキが、逃げたミノタウロスに追い詰められてよぉ。ソイツ、アイズが細切れにしたクッセェ牛の血を浴びてぇ、真っ赤なトマトみてぇになっちまったんだよぉ!』
『『あはははは』』
酔っ払った【ロキ・ファミリア】の狼人の話が進むにつれてベルが俯き両手を握り締めていた。
……成程。あの話にでできた『トマト野郎』はベルのことらしいな。
『いい加減にしろ、ベート。そもそも17階層でミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。恥を知れ』
『あぁん!?ゴミをゴミと言って何が悪い!?』
「……っ」
「……」
『アイズ、お前はどう思うよ?例えばだ!俺とあのトマト野郎ならどっちを選ぶってんだァ?』
『ベート、キミ酔ってるねぇ〜』
『お前はもしも、あのガキに言い寄られたら受け入れるのかァ?そんな訳ねぇよなぁ!?自分より弱い軟弱な雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありゃしねぇ。他ならぬお前自身がそれを認めねぇ!!』
……肯定はしないが否定もしない、か。
『雑魚じゃ釣り合わねぇんだ。〝アイズ・ヴァレンシュタイン〟にはなぁ』
「ッ!!」
「ベルさんッ!?」
勢いよく席から立ち上がったベルがそのまま店の外へと飛び出して行くのをそのまま見送る。
最後の一言が効いたんだろな。
「……貴方は彼を追わなくていいのですか?」
「ん?もちろん追うよ?……だが、その前にだ」
飲み干したジョッキの代わりに水の入ったコップを持ち、話しかけてきたエルフの従業員に多めに金を渡し席を立つ。
「躾のなってないワンコロにちょいとばかし躾をしてからな」
個人的ダンまちss被害者ナンバーワンなベートきゅん。