元人間な覇竜の滅竜魔導師がオラリオに出戻るのは間違っているだろうか? 作:匿名さん
「一一一盛り上がってるところ悪いが、ちょいといいか?」
「あぁん?なんだテm一一一!?」
「「ッ!?」」
こっちを見上げる狼人の頭の上で水の入ったコップを逆さにする。
さっきまで騒がしかった店内が静まり返った。
「……テメェ。何のマネだ?」
「ん?酔っ払ってアホなことを抜かしてやがったから頭を冷やしてやろうと思ってな。なに、礼はいらねぇよ」
「アホなことだァ?」
コイツらがモンスターを逃がして他の冒険者に迷惑をかけたことはどうでもいい。
命をかけて自らの意思で〝大穴〟……ダンジョンに挑む以上、「そんな事が起こるなんて予想してなかった」は通用しないからな。
それでも納得しないなら後はお互いのファミリアでの問題だ。……だが、
「ああ。自分達のミスを笑い話にする分には勝手だが、それをダシに他の冒険者を。ましてやそれが世話になったダチとなると話は別だ」
「ダチだぁ?……あぁ!さっき店から飛び出して行ったのはトマト野郎だったのか!はっ!雑魚を雑魚扱いして何が悪い!」
「ん?……ああ、違う違う。俺がムカついてるのはベルを雑魚扱いしたことじゃない。まだ冒険者になって間もないらしいし事実だからな」
「あぁ?ンじゃあテメェは何にムカついたってんだよ?」
「分からないか?……ダチを『ゴミ扱い』したことだよ、駄犬」
知り合って間もないとはいえ自分を助けてくれた恩人をゴミ扱いなんてされりゃあ誰だってムカつく。
「ッハ!何を言うかと思えば!さっきそこのババアにも言ったけどよぉ!ゴミをゴミと言って何が悪一一一」
「「ベート!?」」
悪びれもなくまだベルをゴミ呼ばわりする馬鹿を座っている椅子越しに蹴り上げる。
昔はよくこうしてムカついた奴を床や天井から生えさせたもんだ。
冒険者ってのは頑丈らしいし手加減……いや、この場合は『足加減』もしたから死にゃあしないだろ。
「さっきのじゃ足りなさそうだし換金した分全部置いていくか」
「……おい兄ちゃん。ウチの【眷属(こ)】に手ェ出しときながらどこ行くつもりや?」
「そりゃあ今頃ダンジョンで馬鹿やってるだろうバカを迎えにダンジョンにだが?……それがどうかしたか?」
「『それがどうかしたか?』、やと?どうしたもこうしたもあるかい!大ありや!そっちのツレを馬鹿にしたベートが悪いンは分かっとる!やとしても先に手ェだされて『はいそーですか』で納得できるかい!」
大事な眷属をやられた怒りとメンツがあっての理由だろうが……面倒臭ぇな。
コイツも天井から生やしてやろうか?
「そこまでだよロキ。今回の件はあの少年を馬鹿にしたベートが悪いしそれを止められなかった僕らの責任でもある。彼が手を出したのもベートがあの少年を馬鹿にし続けたからだしね」
「フィン……」
そんなことを考えていると金髪ショタがロキを諭すように前に出てきた。
さっきベルが言ってた【ロキ・ファミリア】の『フィン』とかいう団長だ。
「【ロキ・ファミリア】の団長として謝罪させてもらうよ。団員と主神が迷惑をかけて申し訳なかった。言い訳になってしまうけど、長期の遠征後の宴で羽目を外しすぎてしまったようだ」
「『酒はのんでものまれるな』、だ。ちなみに俺は謝らないぞ?そこで天井から生えてる奴が言うに『雑魚は雑魚扱いしても悪くない』。だそうだからな」
「ははは。うん、そうだね。キミが謝る必要はないね。……あそうそう。今回の件について後日改めて謝罪したいんだけど、あの少年とキミの名前。それと所属してるファミリアを教えてもらってもいいかな?」
「あの白いのは『ベル・クラネル』。で所属は…そういやきいてなかったな」
そこら辺の話はメシでも食いながらと思ってたしな。
「?キミは彼と同じファミリアに所属してるんじゃないのかい?」
「数時間前に知り合ったばかりの関係だな。ちなみに俺は今日この街に来たばかりでどこのファミリアにも属してない」
「今日この街に来たばかりだって?……これは驚いたな。まさか、オラリオ外に本調子じゃなかったとはいえレベル5のベートを一蹴できる冒険者が居たなんてね」
冒険者でもないんだが……。
訂正するのも面倒臭いしそういうことにしておくか。
「まあ最悪ギルドにでも確認すればいいんじゃないか?んじゃ俺はぼちぼちベルの奴を迎えに行くから」
「知り合って間もないのに、キミは彼がどこに行ったのか分かるのかい?」
「店を飛び出すくらい自分の『弱さ』に耐えられない冒険者が行く場所なんて一つしかないだろ?」
「ふーん?これが今のダンジョンか〜」
1500年前と全然違ったダンジョン内に新鮮味を覚えながらベルを探してサクサク進む。
壁や天井からわいたモンスター共が襲ってくるが雑魚ばかりで話にもならない。
「流石にそんな深くまでは行ってないとは思うが……お?」
「一一一ハァッ!」
ザシュッ
「一一一ふっ!」
ギンッ
暫く歩いていると俺にも襲いかかってきたモンスターに囲まれながらもナイフを振るって戦うベルを発見する。
無傷とまでは言わないがパッと見たいしたケガもしてなさそうだ。
「……懐かしいな」
弱かった頃に今のベルみたいにモンスターに囲まれながらも戦いに明け暮れた日々を思い出す。
まだその時は『滅竜魔法』も開発途中でそこまでの威力もなく、一日でも早く実戦で使えるよう死に物狂いで戦いまくった。
てか普通に何度も死にかけた。
「あ、食われた」
カエルみたいなモンスターの舌に捕まって上半身をパクッといかれたベルだったが、体内から脳天にナイフを突き刺して無事脱出する。
「見た目通りの兎みたいに軽やかだな。……っと次がお出ましか」
休む間もなくベルの頭上の天井や周囲の壁に次々と亀裂が入り、そこから大量に現れた人型の影のようなモンスターがベルへと襲いかかった。
致命傷はなんとか避けてはいるものの、捌ききれなかったモンスターの鋭い爪に皮膚を裂かれ出血が目立つようになってきた。
「うんうん良い目だ」
痛みや目に見える負傷はそれだけで死への恐怖を駆り立てる。
それが集中力をさき、身体の動きを鈍らせる。
だがベルの目には恐怖の一欠片もなく、むしろやる気に満ち溢れていた。
「限界を越えて戦え、ベル。その先にお前が求める『強さ』が待っている」
ちょくちょくこっちにも沸くモンスターを片手間に片付けながらベルの戦いを見守り続けた。
「一一一あぁぁぁ!!」
あれから数十分。雄叫びをあげながら振るったベルの渾身の一振が最後の一体を塵へとかえした。
全てを出し尽くしたであろうベルは周りに転がる魔石に一切めを向けず、フラフラとした足取りで俺の方に向かって歩いてきた。
「よぉベル。お疲れさん」
「……あ。アカ……ム、さん……?どう……して、ここ……に?」
「お前ならダンジョンに向かうと思ってな。それに、知り合ったばかりでその日の内に死なれたら目覚めも悪いしな」
「は、ははっ……。それは……ご心配、おかけ……しま一一一」
「っと」
つまづいて前に倒れかかったベルを受け止める。
ダンジョンの外まではとは思っていたが、この様子だとファミリアまで付き添った方がいいな。
「帰りにカツアゲにでもあったら大変だし送ってやるよ」
「それ、じゃあ。……お言葉に、甘えて……」
ボロボロのベルを背負い、教えてもらったベルが所属する【ヘスティア・ファミリア】の拠点がある廃教会へ向かってダンジョンを歩く。
勿論。ベルが倒したモンスターの魔石もしっかりと回収してな。
「Zzz...」
「起こさないようにしなきゃな。……ん?」
出口までもう少しといったところでダンジョンの壁に亀裂が入り数匹のゴブリンが現れる。
しかもベルを背負う俺を見てチャンスとばかりにニヤニヤと笑っていやがった。
「……はぁ。一一一失せろ」
「「ッ!?……サラサラサラ」」
「魔石も残らない、か」
気を失うだけじゃすまなかった(-∧-)合掌・・・