元人間な覇竜の滅竜魔導師がオラリオに出戻るのは間違っているだろうか? 作:匿名さん
「---っほ!やぁ!」
闘技場で【ガネーシャ・ファミリア】の調教師が暴れるモンスターに跨り大人しくさせようとする。
まるで馬の調教みたいだ。
「同じ調教には違いないか。……ん?」
ガネーシャが慌てた様子の団員達と話している。
あの慌てようからして緊急の何かが起きたのかもしれない。
「まさかモンスターが脱走したとかじゃないよな?……お、あれは」
向かい側の客席に同じようにガネーシャを見ている『豊饒の女主人』でみかけた【ロキ・ファミリア】の少女達を見つける。
顔を合わせ何やら話した後、そのまま観客席から離れていった。
「……これは益々きな臭いな」
「いや〜まさか本当にモンスターが脱走したとはな」
闘技場の通路を独り歩き呟く。
【ガネーシャ・ファミリア】の団員と【ロキ・ファミリア】の少女達の会話を盗み聞きしたところ檻の中に居たモンスターが数体脱走してしまったらしく、それも闘技場内に見当たらないことから街中に逃げた可能性が高いとのことだ。
「逃がした犯人は見つけ次第ぶち飛ばすとして、被害が出る前に片付けなきゃな。……ん?あれは」
街の方を見るとベルの想い人の『アイズ・ヴァレンシュタイン』が風をまといながら次々にモンスターを倒していた。
その姿に『天空の滅竜魔導士』ウェンディを思い浮かべる。
少ししてさっきの少女達も街中に到着し、地中から現れた緑の蛇みたいなモンスターと戦闘を始めた。
「あの分なら俺の出番はなさそ…ってわけにはいかなさそうだな」
「なっ!?」
「コイツ!『蛇』じゃなくて『花』!?」
蛇の頭部と思われていた場所が花開きモンスターが本来の姿を見せる。
それはハエトリグサの中心に更に口があるモンスターだった。
『キシャァァァァァッ!』
「何これ邪魔!」
「レフィーヤ起きて!起きなさい!!」
地中から不意に受けた攻撃で動けずにいるレフィーヤを助けに行こうとするティオネとティオナの2人だったが、モンスターから生える触手に邪魔をされて身動きが取れずにいた。
(……嫌。嫌だ!また……私は……)
身動きがとれず命の危機に瀕したレフィーヤの脳裏に浮かんだのは、同じファミリアの一員であり憧れの人物であるアイズの姿だった。
「「レフィーヤァァァ!!」」
(きっとまた……。あの人に守られる……)
また自分はアイズに助けられてしまうのだろう。そう思ったレフィーヤであったが---
----グシャアァッ!!
「……え?」
「……間一髪だったな」
彼女をモンスターの魔の手から救ったのは思い浮かべた輝く黄金の髪を持つ憧れの少女でなく、かつてこの世界において『災厄』と称された『黒き神』だった。
「おい。ここから動け……そうにもないな。ほら、ポーションだ。飲め」
前にミアハから貰ったポーションを助けたエルフに飲ませる。
今度店に行ったらお礼に何か買わないとな。
「お、来たか」
「レフィーヤ!っ!貴方はあの時の---」
「「アイズ!」」
『『『キシャァァァァァッ!』』』
「っちょ、またぁ!?」
「3匹!?」
終わったかと思いきや地面を突き破って追加で3体同じモンスターが現れた。
1つの株に複数セットのモンスターとかだったんだろうな。
「ハァッ!……っ!?」
新しく増えたモンスターにアイズが突きを放つが彼女の魔法に武器が耐えられなかったのか粉々に砕けてしまった。
「アイズ!ソイツは魔法に反応してるわ!風を解きなさい!」
「武器がなくても1人1匹相手にすればなんとかなるって!」
魔法、つまり『魔力』に反応するのか。
だからさっきモンスターは戦っていたあの2人じゃなくてこのエルフの少女を優先したのか。
「アカムさん!」
「エイナか。このエルフは俺が見ておくからお前はあそこの屋台の裏側に逃げ遅れている民間人を頼んだ」
「分かりました!すぐに【ガネーシャ・ファミリア】の救援も来ます!」
1度は魔法を解いたアイズが何でまた風を纏ったのかと思えば、屋台の裏に震えながらうずくまっている獣人の女の子がいた。
大方、魔法を使うことでモンスター共の意識を自分に向けたんだろう。
「---ッ」
「アイズ、さん……クッ!」
「……それでいいのか?」
「え?」
苦戦しながらモンスターと戦うアイズ達から顔を背けたエルフに話しかける。
逃げるのは簡単だ。だけどそれじゃあ何者にもなれない。
「何で冒険者になった?お前は誰のファミリアに入った?……お前は誰だ?」
「私は……私はレフィーヤ・ウィリディス。『ウィーシェの森』のエルフ。神・ロキと契りを交わした、このオラリオで最も強く。誇り高い偉大なファミリアの一員!逃げ出すわけには、いかない!!」
「ならば戦え!仲間の為に!自分自身の為に!!」
立ち上がったエルフ、『レフィーヤ』を鼓舞する。
若者が殻を破る瞬間は何度見てもいいものだ。
【ウィーシェの名のもとに願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ---】
『『『ッ!?キシャァァァァァッ!』』』
さっきと同じようにモンスター共がレフィーヤの魔力に反応して襲いかかろうとする。……が、
「ハァッ!」
「やぁ!」
「フッ!」
さっきの二の舞いにはとばかりにアイズ達がそれを阻止する。
ここで俺が手を出すのは野暮ってもんだ。
【---我が名はアールヴ!『ウィン・フィンブルヴェトル』!!】
『『『------ッ!?』』』
レフィーヤの魔法をくらったモンスター達が一瞬の内に凍りつき砕け散った。
草タイプには氷技。こうかは ばつぐんだ!
「ありがとうレフィーヤ!助かったよ!!」
「凄い魔法だったわよ」
「うん。リヴェリアみたいだった。ありがとう、レフィーヤ」
「そ、そんなぁ」
「みんなぁ〜ごっくろーさぁ〜ん!」
「……俺もベルと合流でもするか」
しかしあのモンスターはなんだったんだ?
『極彩色の魔石』なんてもの、1500年前のあの時代にさえ俺は見たことがない。