元人間な覇竜の滅竜魔導師がオラリオに出戻るのは間違っているだろうか? 作:匿名さん
「---で、何を隠してるんだヘスティア?」
「ドキッ!?」
ベルのステイタス更新から戻ってきたヘスティアに話しかける。
てか口で「ドキッ!?」なんて言うヤツ実在したのか。
「な、なんのことかなアカム君?ボクは何も隠してなんかいないぜ?」
「ベルのステイタスのことだ。ベルに訊いたが上昇率がおかし過ぎる。ベルの話からの推察だが、ベルがダンジョンでミノタウロスに襲われた時に何かしらの成長補正スキルが発現してたんじゃないのか?」
「っほ。……なんだ、そっちのことか(ボソッ」
聴こえてるぞヘスティア。ドラゴンの聴力なめんなよ?
しかもお前他にも隠してることがあるのかよ。
「あえてベルに伝えないのは本人が自覚しない方がいい類のものだからか?それが理由なら納得できる……が。流石にないとはと思うが『私欲』が混じってたりしないよな?」
「……ああそうさ!そうだよ!アカム君の予想通り、ベル君には成長補正のスキルがある!【憧憬一途】っていう、相手を想えば想う程強くなるスキルがね!それも相手はボクじゃなくておそらくあのヴァレン何某氏さ!」
「あー」
『豊饒の女主人』で飛び出してそのままダンジョンに行くくらいだもんな。
ドンマイとしかいいようがない。
「ふぅ……ふぅ……。……勘違いして欲しくないんだけど、勿論ボクが悔しいからだけじゃない。ベル君の持つスキルの特異さを知った他の神々の玩具にされるのを防ぐ為でもあるんだ。同じ神であるボクだから断言できる。間違いなく玩具にされる」
「大抵の神は娯楽を求めて下界に降りてきてるんだったか?確かにソイツらからしたらスキルもベルも弄りがいがあるだろな」
ろくでもないことになるのは目に見える。
最低でも少なくない数の神とファミリアがこの街からいなくなるだろう。
「ベル君はボクの大事な『眷族』だ。ファミリアの主神として、ベル君の『家族』として何がなんでもそれだけは防がなきゃいけないんだ。勿論ベル君だけじゃなくキミもだぜ?アカム君」
……本当、このファミリアに入ってよかった。
「あぁ。……あ、そうだヘスティア。明日からダンジョンにこもるから暫く留守にするな」
『ウキャアァァァァァ!!』
「うるせぇ」
ベルが『怪物祭』で倒したらしい白い大猿のモンスターをぶん殴り黙らせる。
レベル1の冒険者の適正がこの〝12階層〟までらしい。
「【ロキ・ファミリア】が最新で〝51階層〟だったか?とりあえず今回はそこを目標に---お?」
『グルルルル……』
〝怪物祭〟で【ガネーシャ・ファミリア】が調教していたオレンジ色のモンスターが出てきた。
一応これでも分類的には『ドラゴン』らしい。
『グオオオォ---』
---バクンッ!
「……ゴクン。久しぶりのドラゴンだったが可もなく不可もなくだな。……お、ラッキー。ドロップアイテムだ」
回収したドロップアイテムを背負い袋に入れて先に進む。
面倒臭いがウチは貧乏ファミリアだからしっかり回収しないといけない。
「んでここからが〝中層〟っと。……あんまり上層と変わらないな」
パッと見〝上層〟の天井が高くなったのと少し広くなったくらいだ。
ここからモンスターが徒党を組んだり遠距離攻撃をしてくるらしい。
『ガルルルル……』
「早速お出ましか」
黒い子牛サイズの犬型モンスター口から火を漏らしながらこちらを見て唸っていた。
話に聞いた遠距離攻撃するモンスターだろう。
『バウッ!』
「……悪いな。『火』は効かねぇんだ」
燃えてしまわないよう背負い袋をモンスターの上に放り投げて炎の中を突き進む。
溶岩にも身体だ。
このくらいどうってことない。
『ギャンッ!?』
「ほいっとな。残念だったなワンコロ、相手が悪かった」
『『『キュルルル!』』』
すぐさま白や黄色の毛並みに赤い目をしたゴブリンサイズで二足歩行のウサギのモンスターが石斧を持って群れで襲いかかってくる。
白いやつはベルみたいだ。
『『『キュッ!……キュキュウッ!?』』』
「石斧程度じゃ傷つきもしねぇよっと」
砕け散った自分の得物に驚いているベル……じゃなくてモンスターを片っ端から塵へとかえす。
こうも徒党を組んで襲って来られたら適正レベルとはいえレベル2でもキツそうだろうな。
「ま。俺からしたら鴨が葱どころか他の具材に鍋まで背負って来てくれてるもんだけどな」
ベルが襲われたミノタウロス、白い毛をしたライガー、ワーム、コウモリ等のモンスターを鏖殺しながらサクサクとダンジョンを進む。
〝17階層〟には『階層主』と呼ばれるボスモンスターが居るらしいから少し楽しみだ。
1度倒されたら2週間インターバルがあるらしいから会えるかは運次第だけどな。
「さてさて?出て来てくれるかな?」
『---オォォォォォォォォォォッ!!』
〝17階層〟を進んだ先にあった一際広い空間の壁を突き破り『巨人』が現れる。
おそらくあれが『階層主』とやらだろう。
「おーデカイな。これなら少しは楽しめるかもな」
『ガァッ!』
背負い袋を遠くに投げ、巨人の拳をあえて受ける。
……ふむふむ?見た目通りのパワーはあるな。
『オォォォォォォォォォォ!!』
殴られ、蹴られ、踏まれ、何もせずにただ巨人の攻撃を受け続ける。
手も足も出ない弱者をいたぶることが楽しいのか巨人の猛攻は徐々にに苛烈さを増していった。
十分満足したのか、俺を掴み上げた巨人はいい笑顔をしていた。
『オオォ……』
「何だ?これで終わりか?」
『ッ!?……オオォ!!』
怒ったのか地面に投げつけられる。
地面にめり込んだまま巨人を見上げると、大きく開けた口に波なようなものを集めてこちらに向けていた。
「もしかして咆哮か?……面白い!」
『---ガァァァァァァァ!!』
「スゥー……『覇竜の---咆哮』!」
巨人の咆哮と俺のブレスが衝突し、何事も無かったかのようにブレスが咆哮と巨人を消し飛ばす。
少し深呼吸したくらいのブレスだったがそれでも過剰だったようで巨人の背後の壁には大きな穴ができていた。
「んー……。あのハエトリグサもどきの方が強かったかもな」