実は事情を把握してるモブ二人、サウナでの会話記録 作:ばしお
「なぁ、俺たち……二人そろって推薦来たもんだからふざけたノリでこの学校に進路決めたけど、本当によかったんかね?」
「いや今更かよ。それに僕はふざけてこの学校選んだ訳じゃないし。」
目の前に佇む高度育成高等学校…その校門………より五百メートル前から俺たちはそんな会話をする。
先にいる周りの新入生はぞろぞろと歩いて学校へと向かっている、これから同じクラスメイトとして生活するであろう生徒達を眺めて俺たちはそんな会話をしている。
「いや、なんかここに来る前は楽しそうだなとか思ってたよ?でも………なんか……明らかに雰囲気がさ……普通じゃない感じなんだよ……」
「……それはあれか?いつものお前の直感からきてる感じのやつ?」
「まぁ……そんな所」
「やめてくれよ、華々しい高校生活の最初のスタートなんだぞ?…お前の直感いつも当たるから怖いんだよ…」
「俺だってビビってるよ、しょうがないだろ」
「じゃあちなみに、今見えてる生徒で特にヤバいって感じる奴はいるか?」
「えぇ……?」
聞かれて遠くにいる生徒たちを見てみる。
そんなすぐに聞かれて答えられるもんでもないんだけどな……。
今見える範囲ではいない…と答えようとした矢先、全身の鳥肌が立つような感覚を感じて、変な汗がどばっと全身から出てきた。
圧倒的な異質感を放つ人物は、バスから降りてその身を露わにした。
「今バスから降りたやつ……あの男、ヤバい、今まで生きてきた中のどんな奴よりも」
「流石に大袈裟すぎないか?全然普通の人みたいに見えるし、流石にないと思うんだが」
「いや、まじ……正直近づきたくないとすら思えてしまった」
「いやいやそれは失礼だろ……って思ったけど、その様子だと本当みたいだな」
「ああ」
「わかった。一応僕も気を付けとくよ。」
「まぁ……こっちから殴りがかったり刺激したりしない分は多分大丈夫だと思うけどな…」
「そんな世紀末みたいな展開あるとは思えないけど……。取り合えずお前はハンカチでその汗拭いとけよ?今凄い事になってるから。せっかくの高校生活デビューが台無しになるぞ?」
「あ、ああ…というかさっきからやけに高校デビュー気にしてるのな?」
「当たり前だ。僕はこの高校で初彼女を作るんだからな」
「ははは……」
「その乾いた笑いやめろ。ほらそろそろ行こう、遅刻してしまう。」
「あ、ああ……」
俺たち二人は、中学時代に同じ趣味から繋がった友達だ。
この学校に来た理由は俺と友達二人同時に推薦がきたから。
もう半分はこの学校を卒業すればその後の進学が自由に選べるといった情報があったから選んだ。が、正直ひねくれ要素をもっている俺としては、その情報の信憑性をいまだに疑っている。
相方にはこの進学・就職率100%という情報についてどう思っているのか聞いていないが、おそらく同じ感想を抱いているか、もしかしたらもう少し詳しく事情を調べているかもしれないな。
校門を抜けてそのまま目的地まで歩く。
どれも新しい設備ばかりで、新鮮さがあったと同時にやはり言語化できない不安感がある。
せめて友達と同じクラスになればよかったんだがな……
「そういえば、歩いてる途中で分かったけど、やっぱりこの学校、
その言葉は鶴の一声にも似た僥倖だった。それまでもネガティブだった考えが霧散するように消えていった。
「勝ったな」
「まだ早いよ」
確かにまだ高校生活はまだ始まったばかり、だが俺の最大の懸念点が解消されたことによって、これからの学校生活に大きく期待が持てるようになった。
「じゃあ僕はAクラスだからここで……お前は確かCクラスだったよな?」
「ああ、じゃあまた、集合場所は
「含みのある言い方やめろ。……ああ、またな」
友は苦笑いを浮かべながら自身の教室へと向かった。
俺も自分の教室へ向かうとするか。
今後、何事もありませんように。
俺は心の中でそう祈った。