QA1 水月 寺生まれの巫女と増殖する女神(叔母)   作:無体寿限無

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Prologue

 

 

 名付けられた物事には始まりと終わりがある。

 始点を定めた時終点は自ずと明らかで、結末に至り初めてテーマは完成する。

 あらゆる理論は反証可能性を抱え、あらゆる物語の主題は暫定に留まる。

 区間を切り取るのは主体の恣意であり事象の歪曲である。

 一部を見て全部を知ることは偽なるも、逆は真たりうる。

 顕微鏡で見ることができるのは海ではなく砂である。

 望遠鏡が見せるのは過去の光であり今の自分ではない。

 過去と未来は現在に重なり合い、記憶と想像は現実と混成する。

 虚実入り乱れる世界を現実と呼び、その全ては情報の知覚である。

 織られ重なり合う現実と現実の境に、未知なる存在が横たわっている。

 

 

 

――――中神内人『蝶番の被告』

 

「ホロン・フラクタル氏の挨拶」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 何になら手が届くのだろうか。

 果てしなく湧き現れては過ぎる泡の音に意識を傾けて、ふとそう思った。

 この一つ一つの泡に世界がある。

 それらは押し潰され一つになりながらも、決してその外には出られない。

 ああ、水面から差し込む光がちらちらと反射して、眩しい。

 沈むとも浮くともつかない波に揺られながら、たわいないことへ意識が向かう。

 泡が浮かんでは、弾ける。泡が生まれては、浮かんでゆく。

 終わりのないこの循環は、どこか、穏やかな焦りを引き起こすようだ。

 繰り返される。少し違うだけの、無限。ただ変わってゆくだけの、永遠。

 この中に時間など、空間など、確かに、何の意味も持たない。

 すべては今ここで、始まりが終点なのだ。

 こんなにも満たされているのに、虚しい。

 過去も未来も、この泡一つの中に閉じ込められる、運命。

 本当に閉ざされているのだろうか。

 この泡たちは、解き放たれつつあるのではないだろうか。

 自らに束縛されない、外へと運命を投げ出す、自由。

 もはや見ることのできないそれは、地獄でも楽園でもなく――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 主要人物紹介1

 

詩織(しおり)

 睡眠工学を研究していた故人。死後にAIの外見モデルとなる

 知性と美貌と予知能力を兼ね備えていたが心臓が悪く早逝

塚原進路(しんじ)

 精神力学を研究していた故人。人格関数エンジンの開発者

 理論物理学で大きな功績を挙げたが逆恨みで研究センターごと焼死

草凪和沙(なぎさ)

 榊詩織の姪。主人公の一人

 触れた相手の過去を夢に見る能力を持つ

塚原影路(かげみち)

 塚原進路のクローンの一人。主人公の一人

 睡眠障害と摂食障害を患っている

塚原回路(かいじ)

 塚原進路のクローンの一人

 殺人冤罪事件の被害者だが現在は消息不明

 

星野夜宵(やよい)

 和沙・影路の所属する演劇部の部長。視点キャラクターの一人

 優れた記憶力と五感を持ち、反響定位が可能

鏡名(かがみな)(ひびき)

 演劇部員の一人

 頭脳・身体能力共に優れていて、電脳化している

夢方(ゆめかた)みこと

 演劇部員の一人。視点キャラクターの一人

 保育士志望の常識人

 

鴾野(ときの)聡正(さとまさ)

 元演劇部員。影路の監視役

 義体化している

千道彩音(あやね)

 元演劇部員。聡正の監視役

 電脳化している

 

ほか

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