黒狼鳥女のヒーローアカデミア 作:極限獰猛傀異克服歴戦王辿異種黒狼鳥
本来の席順なら以下の通りになるのですが……
轟 砂藤 尾白 青山
葉隠 障子 上鳴 芦戸
爆豪 耳郎 切島 蛙吹
緑谷 瀬呂 玄竜 飯田
峰田 常闇 口田 麗日
八百万
どういう訳か玄竜ちゃんと口田くんの順番を間違えてしまっていました。一応会話できなくはない距離なので玄竜ちゃんが席を間違えたって事にしておいてください……
「生徒の如何は先生の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
初日から除籍処分の可能性があるの……? 自由もここまで来れば横暴と変わらないかもしれない。でも……
(ここで認められれば、私には価値があるという証明になる)
「最下位除籍って、入学初日ですよ!? いや、初日じゃなくても理不尽すぎる!!」
糾弾の声にも動じず、相澤先生は逆にこっちを煽るようにしてくる。 私は"抑え"を戻しつつ、相澤先生の話に耳を傾ける。
「いいか、世界は理不尽にまみれている。そういう理不尽を覆していかなきゃならんのがヒーロー」
最下位が除籍処分……っていうのは、部分的には嘘だろうね。
そもそもここにいる時点で同学年の中でも上澄みなのは明らかだし、もし全員がとてつもない高成績を叩き出したら、1人潰すだけでも大損だろう。
「放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。 "Plus Ultra"。全力で乗り越えて来い!」
金の成る木と知っていながら燃やすような行為。そんな事をこの極まった合理主義者がするとは思えない。
……この演説で確信した。最下位除籍は嘘、でも見込みが無ければ1位だろうと無条件で除籍処分にするつもりなんだ。
第1種目 50m走
本来なら2人同時に走らせて計測する50m走だけど、私が特別枠として入った影響でA組だけ21人だから1人だけぼっちで走る……と思いきや、相澤先生は1組だけ3人でやればいいだろと言って、私の番で3人走る事になった。ごもっともだ。
一緒に走るのは後ろの席の(私、席を1つズレて覚えちゃってたみたい)口田くんと、前の席の男の子(こっちの方は名前を知らない)。
ロボットから『ヨーイ』という合図が聞こえた私は"抑え"を外して、脚に力を溜める。さっき蛙跳びでやってた子もいたし、必ず普通に走らなきゃいけないってわけでもなさそう。なら……
「!!??」
「うおぉっ!?」
『2秒24!!』
「ぺっぺっ……まずぅ……」
2人が走りきった辺りで"抑え"を戻す。口の中に土が入った……しかも白線の粉も混じってて最悪……。
私がとった方法はすごく単純。地面を思いっきり蹴り飛ばしてほぼ水平に跳躍しただけ。勢い余って地面にクチバシが刺さっちゃったけど……まぁ記録には影響しないでしょ。
第2種目 握力
これはちょっと困った。"抑え"を外すと手が翼に変わっちゃうし、足も握力計を握れるほど器用に動かせない。というか"抑え"を外した姿、小さなものを掴むって行為自体が苦手なんだよね……。
仕方なく"抑え"を外さないまま握って、104kgを出した。一応飛ぶ為の部位になる所だし筋肉はあるの。それを握る事にうまく活かせないだけで……。
第3種目 走り幅跳び
工夫もへったくれもないただの飛翔を続けていると、下から相澤先生の声がかかる。
「玄竜、いつまで飛んでいられるか?」
『───っと。試してはないですけど、あの姿なら一日中飛べると思います。それ以上は食料とかの問題でちょっと現実的じゃないと思いますけど」
空中で"抑え"を戻して相澤先生の近くで着地する。あの姿で話せない事は知ってたみたいで、中断した事は特に何も言われなかった。
私が現実的なラインで飛べる時間を伝えると、相澤先生が手元の端末に手動で記録を打ち込んで、それを皆んなに見せる。そこには『計測不能』と書かれていた。まぁ一日中も飛んだら敷地から大きく離れちゃうから仕方ないし、何より日が暮れちゃう。
前々から思ってたけど、"抑え"を外している間まともに喋れないのはかなり不便だ。どうにかしてあの姿でも言葉を、最低でも大まかな意思を伝えられる手段を考えないと。
第4種目 反復横跳び
特に言うことなし。"抑え"を外していつも通りピョコピョコ跳ぶだけだ。
あ、そういえばウサギのお姉さんは個性も『兎』だし、今度電話で跳躍のコツでも聞いてみよう。
第5種目 ソフトボール投げ
同じ方法で投げ飛ばしたけど、5mしか変わらなかった。3桁の記録で5mはほぼ誤差だし言うことはない。次行こ次!!
第6種目 上体起こし
これも特に言うことなし、普通にやる……つもりだったけど、"抑え"を外した後のクチバシが足を抑えてくれる人に刺さりそうで危ないから、"抑え"は外さないでやることに。
ちょうど私の番になった時、ソフトボール投げの方でざわめきがあった。そっちを見てみれば、相澤先生が生徒の1人と何か話していた。その間相澤先生は髪が逆立ってたけど……ボサボサすぎて乾かしたのに柔らかい昆布に見えちゃう。失礼だから口には出さないけど。
しばらくして相澤先生の髪が元通りになって、彼と話していた生徒がボールを投げようとした瞬間、私は感じ取った。
「今のは……?」
彼の指からボールが離れる直前、とてつもない気配が8つ出た。似てるようでちょっと違う、優しそうな気配。不思議な事に、気配の場所は全く同じで、完全に重なっている状態で感じた。
あれは一体何なんだろうか。どうにも私は彼からしばらく目を離せなかった。
第7種目 長座体前屈
これは"抑え"を外さない方がいいはず。甲殻が可動域を狭めるし、翼は明らかに長座体前屈に適したものじゃない。常闇くんは胸から
第8種目 持久走
これでもスタミナには自信がある。"抑え"があっても2000m程度なら全力で飛ばし続けられるし、外せばその辺のバイクより速い。瞬発的なスピードならもっと出せるだろうけど、長時間スピードを維持するなら120km/hくらいが限度かな。
メガネをかけた生徒(見覚えがあると思ったら、入試の時に見た真面目メガネだった)と競り合いながらゴールイン。ハナ差ならぬクチバシ差で私が1着になってメガネは悔しそうだったけど、ほぼ数cmの誤差だ。私は同着と変わらないと思ってる。その事をメガネに伝えたら、何故か「しかし、それでも君が速い事は変わらないだろう!!」とか言われて褒められた。あと名前は飯田らしい。
「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する……ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す為の合理的虚偽」
「あんなのウソに決まっているじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」
1位だった八百万さんはそう言ってるけど、私の予想が的外れじゃなければ除籍が嘘な事こそ真っ赤な嘘だろう。相澤先生がどういう人間なのかもだけど、「雄英は全力で苦難を与える」という発言。これって相澤先生に限らず、どの教師も見込みなしと判断した瞬間除籍させるというこの学校の姿勢を意味してるんだ。
ちなみに私は2位。むしろいい順位ではあるんだけど、1位の八百万さんとは大差を付けられているから素直に喜ぶことはできない。
私は特別枠として入学できた経緯を知っている。あのネズミみたいな自称校長先生の話が本当なら、この個性把握テスト以外にも私がヒーローにふさわしいのか見てくるんだろう。苦難は始まったばかりだ。
玄竜ヘアー:真っ直ぐ硬めのセミロングで、根元付近は緑、毛先は薄めの紫。原理は不明だが"抑え"を外すと銀色に変色し短くなる。