黒狼鳥女のヒーローアカデミア 作:極限獰猛傀異克服歴戦王辿異種黒狼鳥
唐突な試練がぶち込まれた初日とは打って変わって、2日目は抜き打ちテストとかも無くスケジュール通りに───その中身は午前中だけで基本の五教科とそこそこな密度だけど───授業が行われた。
お昼も軽く済ませて、午後に行われるヒーロー科限定の授業の準備をする。確か最初は『ヒーロー基礎学』だったかな? 何をするかは詳しく書いていなかったけど、五教科も含めて1番単位が多かったのはすごく印象に残ってる。
(まだ来ない……何かあったのかな?)
席に座って待っているうちに、少しの不安がよぎる。もうすぐ授業が始まりそうだというのに、一向に担当の先生が来ない。こういうものに対する意識が緩そうなプレゼント・マイク先生だってチャイムが鳴る前には来てたのに、足音ひとつないのはおかしい気がする。
もしや急な授業変更があったのかと思い、隣の瀬呂くんに話しかけようとした時、私の耳が知らない者など居ないあの声を拾った。
「わーたーしーがー……? 普通にドアから来たッ!!!」
「オールマイトだ! すげぇや、本当に先生やっているんだな!」
「
HAHAHAという特徴的な笑い声と共に、ヒーロー基礎学を担当する彼が教室に入る。
彼の名はオールマイト。私達が生まれる何年も前に鮮烈なデビューを飾り、それ以降日本のヒーロー界隈の頂点に立ち続けている。
オールマイトの登場に程度は違えど、みんな興奮を抑えきれていない。ヒーローについて殆ど知らない私でさえ、オールマイトは小さい頃からそれなりには知ってる程なんだ。そんな人が現実として目の前にいて、しかも指導してくれるんだ。こんなの誰だってワクワクを抑えられない。
「私が担当するのはヒーロー基礎学!! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ! 単位数も最も多いぞ! 早速だが今日は……これだっ!! 戦闘訓練ッ!!!」
最後の言葉に、何人かが待ってましたと言わんばかりの反応をする。もちろん、そこには私も含まれている。
ようやく……ようやくだ。思わぬタイミングで来たせいか、"抑え"を外していないはずなのにアドレナリンが湧いて全然にやけが止まらない。どういうわけか、瀬呂くんが若干引いてる気がする。失礼な、私は至って正しい反応をしてるんだよ瀬呂くん。
「そして、それに伴ってぇ……こちら!!! 入学前に送って貰った『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた『
教室の壁がせり出して、そこからコスチュームの入ったロッカーが現れる。それぞれ自分のの出席番号が書かれたケースを手に取り、少しだけ中を覗いてちゃんと自分のものが入っているのを確認する。……うん、おおむね要望通り。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!!」
オールマイトが教室を出た後、私はこれからやる事が何なのか予想しながら早歩きで更衣室へ向かう。立ってる時間さえ惜しい。善は急げと言うしね。
着替えている間もにやけは止まるどころか悪化した。普通の授業も苦痛ではないし、むしろ中学の時より楽しめてはいるんだけど……なんというか、満たされる感じは欠けらもしなかった。一番期待していたものは確かにあるはずなのに、来ない。そんな中、サプライズのようにそれを出されたらこうもなる。
更衣室で実際にコスチュームを着て、開けた時では確認できなかった違和感が無いかチェックする。要望通りの素材や色だし、緩かったり締め付けられる事も無い。ウサギのお姉さんのアドバイス通り、時間をかけて細かく指定した甲斐があった。
(自分で要望しておきながら思うんだけど、よくコレそのまま通ったね……)
コスチュームをまじまじと見て、あの時の自分はどうかしていたかもしれないと考える。
今身につけているものの見た目は殆どスポブラにスパッツ。黒い生地に紫のラインのアクセントがあるシンプルなもの。見た目はその辺で売られているものと変わらないけど、その実態は防弾防刃耐火加工に保温機能を搭載した上でゴム並みの伸縮自在ともりもり山盛り。お値段なんて考えたくない。
"抑え"を外せば骨格をはじめとしたありとあらゆる要素が丸ごと変わるせいで、普通の服だと破けるかサイズが合わなくなってストンと落ちる(これが結構致命的で、個性をコントロールできるまで服は長袖のやつが着れなくて冬がしんどかったし、よく靴下も破いてしまった)。
「玄竜ちゃん……それ、ホントにコスチュームなん? ウチには下着にしか見えんのやけど……」
うん、その考えはめちゃくちゃ正しいと思うよ麗日ちゃん。
ヒーローとして活動するなら頻繁に"抑え"を切り替えるだろうし、その度に服を破くか着替えるかなんてしていたら色んな意味で非効率的すぎる。戦う度に服を破くか目の前で着替えるなんて間抜けもいい所だし。でも寒いのは苦手だから厚着したい。そんな相反した要望にも答えが返ってきた。全く、聞いた時は目から鱗だよ。
「一応ギリギリまで布面積を増やしてもらうようには伝えたんだけど、これが限界みたい。でもそのままだと風邪ひいちゃうし、代わりにコレ着とくの」
麗日ちゃんの疑問にそう答えながら私がケースから取り出したのは白衣。丈はふくらはぎまで届く程で防寒の意味合いが強いんだけど、お姉さんのアドバイスで素材はだいたい一緒。例の山盛り加工が施されている。
他にもボタンやファスナーではなくマジックテープで留めるようになっていて脱ぎやすくなっていたりと、もはや白衣っぽい別の何かに思えてくる。
「おー……!! 玄竜ちゃん、すごく似合ってるよ! 私、要望ちゃんと書かんかったからパツパツスーツんなってもうた……」
「んー……私は麗日ちゃんのコスチューム、かなり似合ってると思うけどね。ほら、未来の宇宙服みたいでさ」
「ホンマに!? ありがとう!!」
どうやら麗日ちゃんは細かい要望を伝えなかったみたいで、制作側に勝手にパツパツスーツとしてデザインされたそう。本人は恥ずかしがっていたけど、素直に感想を言ったらふにゃっとした笑顔になった。
その後他の女子も混ざり、互いのコスチュームの感想を話し合いながらグラウンドβに向かった。
別にコスチュームに体の一部を使わなきゃいけないなんて縛りは無いのでね、こんな形になりました。でも戦う度にすっぽんぽんになる女の子もそれはそ((((((((((殴
玄竜アイ:母親譲りのアメジストの色をしている。"抑え"を外している時は父親と同じ赤銅色。やはりこちらも変化の原理は不明。