黒狼鳥女のヒーローアカデミア 作:極限獰猛傀異克服歴戦王辿異種黒狼鳥
「始めようか有精卵共!! 訓練のお時間だ!!!」
グラウンドβに着いた私達は、ほぼ同じタイミングで来た男子と一緒に、先に待っていたオールマイトの号令で集合する。
自分のコスチュームが極端に浮いてないか、他のクラスメイトと話している男子の方を見てみる。どれも個性的ではあるけど珍妙ではないし、むしろ『これが一番それっぽい』と思わせるほど似合ってた。何人かフルフェイスのコスチュームを着てるはずなのに、不思議と誰が誰なのか分かる気がする。
もし男子のコスチュームがサラリーマンが着るような格式ばったスーツだらけだったら、私も含めた女子全員が羞恥心で倒れてたと思う。違うってのは中々くるものがあるから、誰もが慣れられるものじゃない。
「いいじゃないか皆!! かっこいいぜ!!」
大ベテランのオールマイトからもお墨付きをいただいた事で、心の中に残っていたコスチュームへの不安が消え去る。たとえこの言葉がお世辞だとしても、世に出て恥ずかしくない姿なのは間違いないってことだから。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」
中世騎士がフォーミュラカーを纏ったみたいな鎧のコスチュームを着た人が、手を挙げてオールマイトに質問する。私がコスチュームのデザインから予想していた通り、正体は飯田くんだ。
中身が癖でやっているカクカクとした動きとコスチュームが鳴らしているガチャガチャという金属音が合わさって、その姿はさながらロボット。
「いや! 今回はもう二歩先に踏み込む! 屋内での対人戦闘訓練だ!!
ちょっと長かったけど、要は強敵と戦うのは室内が多いからそこでの戦いを学ぼうって事なんだろうね。……そういえば、誰かと一緒に戦うのは初めてかもしれない。
そんな事を思っていると、ちょっと前の方にいる蛙吹ちゃんが手を挙げながら質問をする。
「基礎訓練も無しに?」
「その基礎を知る為の実践さ! ただし、今度はブッ壊せばOKなロボじゃないのがミソだ!」
オールマイトが蛙吹ちゃんの質問に答えたのをきっかけに、次から次へと出るわ出るわの質問の雪崩。
「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスかァ?」
「分かれるとはどの様な分かれ方をすればよろしいのですか!」
「1人余るんですけどそれはどうすれば……?」
「このマントヤバくない?」
「ンンン〜〜〜聖徳太子ィィ!!」
流石のNo.1ヒーローでも同時に何個も出てくる質問は聞き取れなかったのか、耳を塞いで降参のポーズ。
雪の雪崩は止めれても──実際にニュースで見た事がある──質問の雪崩には勝てないか。
質問が止まったのを確認したオールマイトは、どこからか小さな紙束を取り出し、それを見ながら説明をしていく。
紙束なんて何に使うかと思えば、正体はカンペだった。それを見て私は目を丸くする。
テレビじゃ完璧超人に見えていた有名人は、思っていたより完璧じゃないみたいだ。彼の人間らしい一面を見て私は苦笑いする。
「状況設定としては、
核というワードが入っていたせいかイマイチ現実味が無かったけど、勝つための条件はシンプルかつ個性の相性に左右されにくい。個人的な好みになるけど、駆け引きは無いよりある方がいい。その方が面白いから。
出来ることは多ければ多いほど、抜け道が生まれるもの。もちろん、いい意味でも悪い意味でも。
「コンビ及び対戦相手はクジだ! そんでもって、このクラスは21人だからどこかのチームは3人になるな! ただし、3人チームでも2人捕まればアウトだ!」
「適当なのですか!?」
「それに1チームだけ1人多いって、そんなのズルいよオールマイト!」
飯田くんはクジ引きに対して、芦戸ちゃんはチームの分け方に不満を挙げる。辺りを見回してみれば、何人か納得していない様子だった。クジ引きはともかく、振り分け方に関しては21人なら3人チームを7組作ればいい話だし、当然と言えば当然だろうね。
すると、昨日個性把握テストで不思議な気配を一瞬出した男子───名前までは覚えてないけど、名字は覚えてる。確か緑谷だった───が意見を発する。
「プロは他事務所のヒーローと急遽チームアップする事が多いし、そういう事を想定しているんじゃないかな。 それに、ヒーローと
緑谷くんの意見で不満は減ったけど、それでも完全とまではいかなかったみたい。飯田くん以外は、理解はできたけど納得まではしてない感じだった。
むぅ……このままだと雰囲気が悪いままだし、個人的にも戦うなら言い訳なく白黒はっきりつけたい。意見は言うだけならタダだし、やるだけやってみよう。
「私は3対2でもトントンだと思うよ。確かに3人チームはできることも多いけど、急造チームだからその分付け入る隙も増える。もしかしたら相性の悪い人同士で組まされちゃって連携にボロが出るかもしれない。なんなら2人捕まえれば勝ちな事に変わりはないでしょ? ……それにさ、"勝負に絶対は無い"って言うじゃん! なら、私は数の差が絶対の有利とは限らないって思うね!」
今までこういう風に注目された事が少なかったせいか、緊張でちょっと顔が赤い気がする。みんなが私の意見を聞いて少し考えこむ。少しして納得がいったのか、漂っていた不満のある雰囲気はさっぱりと消えていた。
「なるほど……先を見据えた計らい、失礼致しました!」
「……って、ごめんなさいオールマイト。生徒なのに知ったような口聞いちゃって」
「いいよ!! 早くやろ!!!」
飯田くんが頭を下げ──とても綺麗な直角だった。実は本当にロボットだったりして──るけど、これ以上は長くなると思ったのかオールマイトは強引に話を切り上げた。
全員くじも引き終わり、チームが振り分けられる。
あれだけ数の不利はほとんど無いと言ってた私が、3人チームに振り分けられるのは何の皮肉だろうか。
Aチーム:緑谷 出久・麗日 お茶子
Bチーム:轟 焦凍・障子 目蔵
Cチーム:八百万 百・峰田 実
Dチーム:飯田 天哉・爆豪 勝己
Eチーム:芦戸 三奈・青山 優雅
Fチーム:砂藤 力道・口田 甲司
Gチーム:耳郎 響香・上鳴 電気
Hチーム:蛙吹 梅雨・常闇 踏陰
Iチーム:葉隠 透・尾白 猿尾・玄竜 烏姫
Jチーム:切島 鋭児郎・瀬呂 範太
「私は葉隠ちゃんと尾白くんの2人とだね。よろしく!」
「うん! よろしくねーー!!」
「うん、2人ともよろしくね」
私の軽い挨拶に葉隠ちゃんは明るく、尾白くんは静かに挨拶を返してくれた。
オールマイトが2種類の色が違う箱(それぞれヴィラン、ヒーローと英語で書かれている)に手を入れる。少しして出てきたのは────
「最初の対戦相手は────こいつらだ!!!」
(……これ、本当に戦闘訓練だよね?)
モニターの前で私は顔をしかめる。
結果から言えば、まぁ色んな意味で無茶苦茶だった。
ビルの下で緑谷くんと爆豪くん───この2人、なんと幼馴染らしい──が私情まみれの大喧嘩を始めて、最終的にビルが半壊した。
核のある最上階では飯田くんの
本人達には悪いけど、素人目線でも飯田くん以外は"訓練"として動けてたとは思えない。
その後の講評会で八百万さんが私と似たような感じの事を言って、ひとまずAチームとDチームの試合は終わった。
「さて、気を取り直して次の組み合わせを決めようか!!」
切り替えるようにオールマイトが箱に手を入れて、次の試合の組み合わせが決まる。出てきたのは……
「うむ! ヒーロー側が"B"チーム、
さっきの試合で使われたビルとは別の建物の中に入って、最上階への道中で尾白くんと葉隠ちゃんに改めて自己紹介をする。
「それじゃ、改めて自己紹介しよっか。私は玄竜 烏姫、個性は『鳥竜』で昨日みたいに変身すれば色々できるよ。変身中は喋れないけど、色々できる。確かあの時見せてないのは……クチバシから火の球を吐けて、尻尾の先っちょから毒が分泌されたり……あぁ、あとめっちゃデカい声も出せるね」
こうして並べてみると、"抑え"を外した私の出来ることが多い事を改めて実感できる。個性持ちなのを込みで考えても普通に人間を逸脱しているけど、個性なんてそんなものだと割り切るしかない。
「次は私だね! 葉隠 透、個性は見ての通り『透明化』だよー!! 不意打ちは任せてね! シュッシュッ!! シュッシュッ!!」
そう言いながら葉隠ちゃんは、ブンブンと身振り手振りを交えながら説明し、最後にシャドーボクシングをした。
葉隠ちゃんの全身は透明でコスチュームの手袋とブーツしか見えないのに、不思議とどういう動きをしているのか分かっちゃう。
「最後は俺か。尾白 猿尾、個性は見ての通り、この尻尾。よろしくね」
尾白くんはそう言いながらこっちに自分の尻尾を向けて自由自在に動かす。尻尾と一括りに言われてるけど、私の尻尾とは似て非なるものだ。
「おー……その尻尾、結構柔らかいんだね。私の尻尾は硬くてあんまり曲がんないからさ、普段は邪魔に思う時あるんだよねー、特に寝る時。ちょっと羨ましいや」
「それ、俺も凄く分かるよ……仰向けで寝られないのはキツいし、尻尾が布団からはみ出たりするよね」
「分かるーー!! 他にはさ──「ちょちょちょ!! 2人ともストーップ!! 尻尾トークは後にして、今は作戦考えよ!」──っと、ごめんごめん。そうだったね」
尻尾仲間の悩みで話し込んでしまっていると、私達は葉隠ちゃんに遮られてようやく正気に戻った。恥ずかしい……。
ちょうど最上階に着いて、私達はハリボテの核兵器──それにしては質感とかがやけにリアルな気もする。これを本物と言い張っても疑われないんじゃ……──の近くで座り込んで作戦会議を始める。
「んー……聞いた感じ、みんな近接寄りの個性だね。私も遠距離は石とか投げるくらいしかできないし、固まって動いた方がいいかも?」
「うん、俺もその方がいいと思う。そういえば、玄竜さんは変身すると喋れないんだよね? その間も俺達の声は聞こえるの?」
葉隠ちゃんがチームの大まかな動き方を意見して、尾白くんが葉隠ちゃんの意見に同意して、続けて私に軽い質問をする。
「あー……一応聞こえるし、話してる言葉の意味も分かるんだけど……変身中はアドレナリンの量がやばくてさ。多分目の前の戦闘最優先になって、連携らしい連携は厳しいと思う」
「うーん……なら、玄竜さんは単独で動いた方が良さそうかな?」
「うん。それで、相手チームの2人なんだけど────」
私は尾白くんの確認に頷き、続いて昨日の個性把握テストで見た情報を頼りに、相手チームの個性を予想する。
これは私の考えだけど、戦いで1番恐れるべきなのは"分からない"事だと思う。分からなければ何も出来ない。最適解なんて夢のまた夢、これは真理なんだ。
最終的に尾白くんと私が相手チームにタイマンを仕掛けて、隙を見て葉隠ちゃんが不意打ちで捕縛する作戦になった。相性も考慮して、尾白くんが障子くんを、私が轟くんを狙う事に。
『そろそろ始めるぞ!! 互いに位置に付くように!!』
室内のスピーカーから、オールマイトの声が出て準備を促してきた。互いに顔を見合わせ、立ち上がる。
(…………さぁ、どう来る?)
私は瞑目して、試合開始を告げるブザーを待つ。
『第2戦──────スタートっ!!』
小話:玄竜ちゃんは明確に格上、あるいは何かしらの目標と定めた相手には初対面以降も"さん"呼びや敬称を付ける。一応オールマイトみたいな例外はありますが、本当に稀。
玄竜サイズ:普段の身長は170cm。"抑え"を外した姿では高さは2m、全長は13mにもなる。
これだけではサイズ感をイメージできないと思うので、本物と比較しよう。
MHXXの通常個体イャンガルルガの最大金冠が1744.50cm、最小金冠が1228.13cm
MHXXでの隻眼イャンガルルガ(コイツは通常種より一回りほど小さい)の最大金冠が1482.91cm、最小金冠が1127.02cm
通常個体のイャンガルルガの最小金冠より大きく、隻眼イャンガルルガの最大金冠よりは小さい位のサイズ……これなら画像などを見てイメージできるのではないでしょうか。