ゲンタイ班!次の世界へ!
「……スマホ?」
通学路を歩いてると彼女、
(……こういう時って…交番?)
スマホを見つめながら、彼女は考える。落とし物は学校ならば職員室に、外ならば警察に、が基本だ。
しかし、スマホの落とし物は拾った事も聞いた事もない。なのでどう対処するかと悩んでいると…
【おはよう〜?】
「──!?」
屈んでスマホを見ていた彼女の目の前に、ニヤついた表情を浮かべる中年男が現れた。
その男は体を直角に折り曲げ、みこの顔に自分の顔を近づけている。大凡、人間業ではない。
「……やっぱり、交番かな…」
みこはその男を無視するとスマホを拾い上げ、歩き出す。彼女の反応に、男はつまらなそうな表情を浮かべる。そして何処かに消えていった。
(…ビ、ビックリしたぁぁぁ…!!いきなり出てくるのは反則でしょ!?)
拾ったスマホを眺めるフリをしながら、彼女は内心で叫び。
そう、四谷みこは所謂
(何で見えるだけなの……)
彼女は霊媒体質であるが見えるだけだ。祓う事も封印する事も、ましてや幽霊から逃れる事も出来ない。
こんな力ならば目覚めなければ良かったと、何度自問自答したか。
(はぁ……愚痴ってもしょうがないか)
どれだけ嘆いても彼女の状況は変化しない。半ば諦めたように、拾ったスマホを弄っていると…
「ロックかかってないじゃん」
(…危機管理大丈夫か?このスマホの持ち主…)
電源を着け、自分のスマホにやるように、手癖で画面をフリップすると、このスマホのホーム画面が映る。
大体のスマホの持ち主は易的なロックをかける筈だが、このスマホの持ち主はそれすらしていないようだ。
(……本当に使ってるのかな…このスマホ)
開けたならば、中身が気になるのが人の常だ。四谷みこもそれに洩れず、スマホの中身を確認する。
しかしスマホの中身は殺風景であり、買ったばかりのスマホみたいだな、と彼女は思った。
「ん〜〜……ん?」
先程の恐怖を紛らわせる為に、スマホを暫く弄っていると変わった名前のアプリを見つける。
アプリアイコンの下には、ゲンタイ掲示板と書かれていた。
「あっ…バス来た…」
バスの停留所でスマホを見ていたが、かなり時間が経っていたらしい。
スマホを持ちながらバスに乗り、みこは席に着く。
(……気になる…)
先程見つけたアプリが気になるみこ。少し悩むと…
(まあ…最悪、交番に預ければ…)
もし、先程のアプリが危険であろうと、そのアプリが入っているのはこのスマホだ。自分のスマホではない。
(映らないように……)
アプリを開けた瞬間、カメラが起動する事を想定し、スマホの画面を下向きにした後、アプリをタップするみこ。
…撮影音はしなかった。恐る恐るスマホの画面を見ると、其処には掲示板のスレッドが表示してあるだけだった。
(あー…確かに、掲示板って書いてあったしね…)
彼女もスマホを扱う現代っ子。使いはしないが、そういう所が在るのは知っている。
(警戒しすぎたかな…)
何も書き込まれていないスレッドを見ると、彼女は肩の力を抜いた。
最近は幽霊達の相手で常に気を張っていた。もしやこのスマホも…とも考えたが杞憂だったらしい。
(あっ…何か書き込まれた…)
緊張が途切れ、暫しスレッド内をボーッと見ていると、何個かレスが付く。
1:普通の名無し
2:普通の名無し
あら?何も書かれてない…
3:普通の名無し
釣りスレ?
4:普通の名無し
スレタイも文字化けしてるしな
5:普通の名無し
なんだー
6:普通の名無し
釣られちゃった〜
7:普通の名無し
イッチ〜?
「へー…こんな感じなんだ…」
ネットに在る掲示板の存在は知っているが、その中身は知らないみこ。
物珍しさにそう呟いたのが、彼女の運命の分かれ目だった。
8:見える子
へー…こんな感じなんだ…
9:普通の名無し
お
10:普通の名無し
こんな感じって?
11:普通の名無し
見える子って変わったコテハンやな
12:普通の名無し
何か不思議なものが見えるの?
「!?……んっ!」
(何で私の言葉が!?)
これには驚き、叫び声を上げそうになるみこだが、幽霊達の相手で慣れているのか、咄嗟に口を塞ぐ事で叫び声を抑える。
しかし、心臓はバクバクと脈をうち、額からは冷や汗が出てくる。
(……さっさと手放さなきゃ…!)
冷静になるように自分に言い聞かせると、彼女はバスを降りた後、直ぐに交番に届ける事を決めた。
(!)
【お腹痛いの〜?ねぇ?】
(こんな時に……!)
前屈みになっているみこが気になったのか、近くに居た30代位の女の幽霊が彼女に近付く。
幽霊は物質を潜り抜けると、みこの顔の目の前に腹を出し、見せつける。
(うっ…!)
【私もね〜痛いのよ〜】
幽霊の腹はズタズタに引き裂かれ、みこはその光景に眉をひそめそうになる。しかし…
「痛った…賞味期限切れてたのかな…」
【・・・】
みこは顔を下げ、目を瞑ると自身のお腹に両手を当てる。暫く、お腹を擦るみこの姿を見た幽霊は、見えていないと判断したのかその場を離れた。
(危なかったぁぁ……!)
気配が無くなったのを確認すると、みこは目を開き、辺りを目だけで見渡した後、乗車席に体を預けた。
(…着いた!後はこのスマホを交番に……え?)
手に取ったスマホの画面を見た瞬間だった。画面がついているのは良い。そういう設定なのだろう。しかし、スレッド内に書き込まれた内容が、彼女の心を揺り動かした。
129:普通の名無し
怖い怖い怖い怖い怖い
130:普通の名無し
見える子ってそういう事かいな…
131:普通の名無し
ていうか女の子!あれイッチだよね!?大丈夫!?
132:普通の名無し
……今戻った。確かにイッチの安否が心配だ…
133:普通の名無し
見てる?イッチ!大丈夫なら返事して!?
134:普通の名無し
焦るな。彼女も困惑してる筈だ
135:普通の名無し
そや。イッチ。見てても、落ち着いてから書いてくれればええ
136:普通の名無し
そうだね…少し焦りすぎたわ…ごめんなさいねイッチちゃん…
「あ、あっ……ウソ……でも…」
其処には幽霊を見た時の恐怖と、みこを心配する書き込みが溢れていた。
もしかしたら、もしかしたらと、みこは藁にも縋る気持ちでスマホに向けて言葉を発した。
147:見える子
み、見えたんですか…?
148:普通の名無し
イッチちゃん!?…大丈夫だったの?
149:普通の名無し
見えてたっていうのは、あのバケモンみたいなおばさんか?
150:普通の名無し
腹が…
151:普通の名無し
うぇ…また思い出したちゃった
152:普通の名無し
先程の女の姿をした化け物ならば、我々は全員見た。……そしてもし、返事を出来るならば、貴女の安否を教えて欲しい。
153:普通の名無し
無理して答えんでもええからな…
「居た…!…居たんだ…!私以外にも……」
近くの公園のベンチに座りながら、スレッドの内容を読み上げるみこ。その瞳からは涙が流れ、スマホの画面に落ちる。
今まで彼女は誰にも相談出来なかった。信じてくれるかどうかではなく、単純に周りを巻き込まない為に。
幽霊達は神出鬼没だ。相談しようと友人や家族に話し掛けようとしても、その途中で幽霊が自分の事を話しているのに気付き、襲いかかって来るかも知れない。
そうなれば自分だけではなく、他の人々も傷付ける。それがみこは怖かった。しかし今は…
【お嬢さんどうしたの…】
「!」
178:普通の名無し
また来た!
179:普通の名無し
さっき来たばっかだぞ!?
180:普通の名無し
今度はキモいオッサンか…
181:普通の名無し
小太りで汚いね…
182:普通の名無し
イッチちゃん!スレッドを見てるフリをして!
(でも、中を見られたら……)
幽霊にスレッドの内容を読まれたら、自分を認識している事がバレる。そう思ったみこは、スマホの電源を切ろうとするが。
【あっ!スレッドだぁ~懐かしいなぁ】
(見られた…!)
それよりも早く幽霊はスレッドに気付き、内容を見ようとスマホに目を向けた。
万事休すかとみこは目を瞑るが、スマホを覗いた幽霊の気配から困惑の感情を感じ、目を開けた。
【……変な文字ばっかじゃ〜ん…釣りスレかよぉ……】
(えっ?………読めるのに…?)
幽霊はスマホを覗いた後、不満そうにそう言い、みこの傍から離れた。
でかい頭が離れたお陰で、みこもスレッド内を見れたがその内容は理解出来るし、読み取れる。
何故幽霊が見れないのか、みこがそう疑問に思っていると、幽霊は萎えたのか何処かに歩いていった。
203:見える子
居なくなりました
204:普通の名無し
みたいやな
205:普通の名無し
イッチちゃんも無事みたいで良かった
206:普通の名無し
つーか!真っ昼間から出てくんのかよ!
207:見える子
はい。夜でも昼でも居ました。
208:普通の名無し
嘘だろ…こういうのって夜だけだろ…
209:普通の名無し
口振りからするに…かなり前から経験しているのかい?
210:普通の名無し
ああ、確かにイッチちゃん、慣れた感じだったね
211:普通の名無し
始めに見たのは─前ですね。家にも出ます。
212:普通の名無し
家にも!?
213:普通の名無し
そんな前からか…
214:普通の名無し
他の人とかは?
215:普通の名無し
多分…
216:見える子
私だけにしか見えないみたいです。家族や友達も、近くにアイツラが居ても気にしてませんし…
217:普通の名無し
そりゃまた…
218:普通の名無し
何か対策とかしたのかしら?
219:普通の名無し
うーん…塩とか?
220:普通の名無し
あのバケモンに効くのかなぁ
221:見える子
塩は試しました。でも効く奴と効かない奴がいます。他にも数珠を買いましたが、アイツラに触れると壊れました。
222:普通の名無し
大体出来そうなのは試した感じか
223:普通の名無し
数珠壊れるって…効かないより怖いな…
224:普通の名無し
イッチちゃん…1人で頑張ったのね…
225:普通の名無し
頼れる人は居らずか…俺には無理だな
226:普通の名無し
どうやらあの化け物達には、この書き込みは見れないようだな
227:普通の名無し
まあ…心当たりはあるな
228:見える子
それ、私も気になりました。どうしてですか?
229:普通の名無し
その前に済まない。……ゲンタイ組、手を挙げろ!
230:普通の名無し
薄々そうじゃないかと思ったが…挙手!
231:普通の名無し
まとめニキっぽいのおったしな。挙手
232:普通の名無し
えっこれゲンタイ案件なの?挙手
233:普通の名無し
うわー!少し振り〜挙手!
234:見える子
何をしてるんですか?
235:普通の名無し
挙手は此処まで。矢張りゲンタイ案件か。
236:普通の名無し
見える子ちゃんって呼ぶな?多分気付いてると思うけど、この掲示板普通じゃないんや
237:普通の名無し
うん。何か選ばれた人?しか認識出来ないし、入れないみたいなの
237:普通の名無し
さっきの映像から見た感じ、見える子ちゃんはスマホから書き込んどるのか?
238:見える子
はい。そうです。でもこのスマホ、私のじゃなくて拾った物なんです。ロックもかかってなくて、中身を見たらこの掲示板に繋がってて…
239:普通の名無し
前と同じパターンか
240:普通の名無し
そやな。彼も拾った言うてたし
241:普通の名無し
基本、不思議なスマホからしか来れないのか…
242:普通の名無し
見える子ちゃんにも分かるように纏めると
1 この掲示板は選ばれた者しか来れないし、見れない。
2 その機能のお陰か、悪意ある者はこの掲示板を見ても認識出来ない。先程の化け物が認識出来なかったのも、これが原因だと考えられる。
3 そして我々はゲンタイと言い、此処に来る者を手助けする集団だ。
こんな感じだな
243:普通の名無し
まとめニキ!まとめニキやないか!
244:普通の名無し
これも久しぶりな感じだね
245:普通の名無し
大丈夫?見える子ちゃん。
246:見える子
大丈夫です。それでさっきのアイツは困惑してたんですね。後、すいません。学校があるのでこれ以上は…
247:普通の名無し
大丈夫大丈夫。また相談したくなったら来な
248:普通の名無し
いつ来ても誰かは居るからな
249:普通の名無し
そっか。学生ぽっかたもんね。
250:普通の名無し
またアイツラに会ったら此処を見な。アイツラは認識出来ないみたいだし。気が紛れるだろ。
251:普通の名無し
スマホ見てるのは不自然じゃないか
252:見える子
有難う御座います。いざという時はお願いします。
「ふふっ…」
四谷みこは久しぶりに上機嫌だった。いざという時に頼れる人達が居る。それは今まで1人で化け物達に対処していた彼女からしたら、とても喜ばしい事だ。何より…
「頑張ったね……か…」
自分の努力を理解し、そして褒めてくれた言葉が嬉しかった。今までの自分の行いが認められたようで。そして彼女は珍しく、鼻歌を歌いながら学校に向かうのだった。
見える子ちゃん
自分の状況を理解し、寄り添ってくれるスレ民達に感謝している。時系列はゴッドマザーに会った後で、二暮堂ユリアに会う前。
スレ民達
原作は知らない。お色気シーンが多い為、原作を知っているとスレ民達も気まずくなってしまうので。