コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです!   作:ペンギン3

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ペロロ様

 えっちな本が買えない! こんなの絶対におかしいよ!!*1

 

 ある日、ふと思いついたんだ。いつもコハルちゃんがえっちな本を持ってきてくれて、私は一緒に読ませてもらっているだけだなって。だから偶には、私からえっちな本を用意してあげて、コハルちゃんをビックリさせようって。早速、私はさすらいの旅人になり、コンビニへと向かった。

 

 それなのに、コンビニでえっち本を持ってレジに差し出した時、店員さんは余りに無慈悲な言葉を宣告した。

 

「その、申し訳ないのですが、この本は大人の方にしか販売できません」

 

 ?

 

「大人です」

 

「直ぐわかる嘘つくのはやめてください」

 

 ???

 

「このえっちなモノに詳しい、知性溢れる目を見てください。分かりますよね?」

 

「君がすけべなこと以外、全く分かりません」

 

 意味が分からないまま、私はコンビニを放浪する旅に出た。えっち本を求めて三千里、どのコンビニでも販売拒否をされてしまう。おかしいね?

 

「本当にダメなのかな?」

 

「だ、ダメです!」

 

 最後の希望を持って、シャーレに併設されているコンビニに走った。ここでアルバイトをしてるソラちゃんは中学生らしくて、私よりも年下なので先輩を立ててくれるよねって思ったから。……どうして売ってくれないのかな、ソラちゃん?

 

「ダメじゃないよ?」

 

「こ、この本、ここにR−18って書かれてます!」

 

「これはね、18歳以上推奨ってだけで、18歳未満の人は買っちゃダメって意味じゃないんだよ?」

 

「う、嘘はいけないと思います」

 

「先輩のこと、信じられないかな?」

 

「はい」

 

 ソラちゃんにすら拒絶された私は、悲しみのあまりシャーレのシャワー室で憤慨しながらシャワーを浴び、そのまま帰宅した。*2

 

 えっちな本なんて、みんな持ってきててコハルちゃんに没収されてるのに! 私には売れないなんて、何らかの陰謀に違いないよ! 誰の陰謀なのかな……もしかしてイマジナリーお姉ちゃんなの? 教育的に不適切な欲情は禁止しちゃうの? 頭コハルちゃんなの?*3

 

 ……世の中は不条理だらけだよ。だって、こんなにもえっちなモノを大切に思ってる私が、こんなにも酷い目に遭うんだから。こうなったら、もうあそこへ探しに行くしかないね。正攻法で購入させてくれないのが悪いんだから、仕方ないよね?

 

 

 

 今日の私はサングラスにジャージ、それに髪型を三つ編みにしてマスクまで付けたフルアーマーメブキと化していた。変身ヒロインみたいに誰にも春風メブキと認識できない格好に、ちょっぴり満足*4。なんでこんな格好をしてるのかといえば……私は、ブラックマーケットにこれから行くから。

 

 私の正体がバレちゃうと、お前を見ているとかいうモモトークが届いて、ブラックマーケット側の人達が学校に来ちゃうかもしれない。それはとっても困るから、こうして謎の女の子エージェントMとして活動することにしたんだ。

 ――因みに、MっていうのはメブキのMで、マゾのMじゃないよ!*5

 

 

 

「き、来ちゃった」

 

 遂に、ブラックマーケットへと足を踏み入れてしまった。ついこの前まで、トリニティから出るのすら怖がっていたというのに、私の進化スピードは世界最速なのかもしれないね。

 

 ただ、今回は隣にコハルちゃんがいなくて、更に危ないところかもしれないので、心臓がバクバクって落ち着かない。けどもうここまで来ちゃったら帰れない、そんなのはエロゲーのえっちシーンを飛ばすくらいの悪行だから。ちゃんとえっち本を見つけて、コハルちゃんの元まで帰らないとね!

 

 そうしてえっち本を探すため、露天商さんや古本屋さんを探して回る私の旅は始まったんだ、けど……。

 

 

 ヒソヒソ

 

「ねぇ、あれってさ」

 

「あの小ささ、一年の春風さんでなくて?」

 

「やっぱり? 迷い込んじゃったのかな?」

 

「変装しておられますから、多分違うと思いますが……」

 

「なら何しに来たんだろ」

 

「……まさか、噂のキャベツだけのお好み焼きを販売しに?」

 

「ま、まさかぁ」

 

 ヒソヒソ

 

「あの珍妙な格好、間違いなくメブキさんですわね」

 

「……迷子かしら?」

 

「いえ、恐らくあの謎カレースープの素を買いに来たのでしょう」

 

「そんな高級品でして、あれが?」

 

「いえ、きっと低品質なものでしか作れない、ギークな趣味の食べ物なのですわ」

 

 

 なんか、みんなから視線を集めちゃってるような? おかしいね、私の変装は完璧なはずなのに。

 もしかして、私からエロゲーのヒロイン的なオーラが撒き散らされてたりしてるのかな? もしそうだったら光栄だね! でも、今回は誰にも春風メブキだってバレないで、えっち本を手に入れるのが目的があるんだけど。……困っちゃった。

 

 あぅ。もしかして、これって一般的な闇市に出入りする格好じゃなかったりする? 攻略ヒロインの中に一人男の子が混じってた時の、そんな目で見られてる? もしそうならマズイよ、賛否両論どころか炎上しちゃうよ! 摘発されて、あなたのおにんにんを摘出しますって公然で素っ裸にされちゃったら、流石の私でも狂っちゃう! ど、どど、どうしよぉ。*6

 

「あ、あの!」

 

 絶望的な状況に気がついて、思わずお股をガードしていたその時。私に声を掛けてきたのは、トリニティの制服を着た女の子だった。

 ……あれ、よく周りを見てみると他のみんなも制服の人が多い。もしかしなくても、正体とか隠さなくてもよかったりするのかな?

 

「は、はい!」

 

 この人はトリニティの制服着てるし、ブラックマーケットのおにんにんもぎ取りに来た刺客では無さそうだった。なのでお返事をすると、彼女は心配そうなお顔をしていて。

 

「あの、もしかして迷子だったりします?」

 

「ま、迷子じゃないよ!」

 

 亜麻色の髪をした女の子は、ブラックマーケットにいるとは思えないくらい親切な人だった。でも、この完璧なエージェント姿の私を迷子と間違えるのは、ちょっとお人好しがすぎると思うな。

 

「声掛けてくれてありがとう。でも、多分? 大丈夫だよ!」

 

「た、多分……。あ、あの、一緒に買い物しても良いですか? 私、この辺りに詳しいので」

 

「ふぇ?」

 

 ちょっとお人好し、じゃなかった。もの凄くお人好しだった。もしかしたら、現代に転生した天使さんなのかもしれない。

 

「いいの?」

 

「はい、是非!」

 

 お返事すると、直ぐに手を握られた。もしかしたら、よく遊びに来るけれど心細い思いをしていた女の子なのかもしれない。だからこうして、三つ編み凄腕エージェントの私を頼ってきたのかも。キッチリ守ってあげたいなって気持ちが、心の中から溢れて出てくる。

 任せて! 暁の護衛をプレイしたこともあるし、きっと護衛は得意の筈だから!

 

「えへへ、ありがとう。しっかり守るから、案内よろしくね」

 

「守る? ええと、こちらの方こそよろしくお願いします」

 

 よーし、頑張るぞー。おー!

 

 

 

「ところで自己紹介がまだでしたね。私は阿慈谷ヒフミって言います」

 

「ふぇ!? あー、えっと」

 

 多分、ヒフミちゃんの名前は本名だよね? なら、私はどうしよう……。いや、待って、待つんだよメブキ。今日の私はえっち本を探しにきているんだ。そんな中で本名なんて使ったら、学校でえっち本を探してた奴として噂されちゃうかもしれない。

 

 そんなことになったら……名前を春風メブキから性のメブキに変えられて、全校生徒の前で"姫騎士アンジェリカ あなたって、本当に最低の屑だわ!"の音読実況をさせられてしまうかもしれない。……む、ムリムリムリ、流石にそれは恥ずかしすぎる!

 

「わ、私はエージェントM、流離いのえっち本ハンターだよ!」

 

「え、エムちゃん? えっち本……って、エッチな本!?」

 

 私の任務を聞いて、ヒフミちゃんは恐れ慄いていた。だってトリニティでは、えっち本は御禁制だから。そう、今の私は校則違反の生徒なのだ。

 

「怖くなっちゃったかな?」

 

「い、いえ。でも、どうしてそんなものを?」

 

「好きだから!」

 

「あ、あはは、そうなんですね」

 

 ダメだよと言わないヒフミちゃんは、何だかんだでブラックマーケットに来ているだけあった。そうして、ヒフミちゃんに案内されるままにえっち本探索が始まる――。

 

「本屋さんよりも先に、私が買い物したいお店が近いんです。先にそっちを優先しても良いですか?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 は、始まる前に、先にヒフミちゃんの目指すお店へと向かった。仕方ないね、ヒフミちゃんは!

 そうして来たお店は、ぬいぐるみを沢山置いてあるお店。色々な種類の子がいてて、どの子も可愛いなって思う子が多い。そんな中で、ヒフミちゃんが一目散に駆け寄ったのは……。

 

「よかったぁ。ペロロ様の新作、ちゃんと残ってる!」

 

 ハメドリくんの親戚みたいな*7、クンニリングス(クリーニングじゃないよ!)が得意そうな鳥さんのところだった。……ひ、ヒフミちゃん?

 

「こ、個性的なお顔だね?」

 

 もしかするとヒフミちゃんは、噂に聞く何がクニだよクンニしろオラァ! とブチギレる系の女子なのだろうか。もしそうなら、コハルちゃんより絶対に強そうだし、私程度が勝てるわけがない。あれ、もしかしなくても私の護衛なんて必要ないの?

 

「そうなんです、ペロロ様は個性的なんです!」

 

 でも、ヒフミちゃんのキラキラ笑顔で、私の心配はパタパタと羽が生えて飛び立っていった。本当に好きなものに出会った時の笑顔で、まるでエロゲーのメインヒロインみたいだったから。私にマウンティングして、えっちなことを強要してくることなんてないと自信を持って言えるキラキラだった。

 

 ……そっか、ヒフミちゃんにとって、このクンニ鳥が青春なんだね。私にとってのエロゲーみたいなもので、凄く大切なものだね。

 

「そうなんだ、かわいいね」

 

 そう思うと、この鳥も可愛く見えてきた。ヒフミちゃんが青春を燃やしている鳥、幸せの青い鳥なんだきっと!

 

「ですよねですよね! ペロロ様はかわいいんです! エムちゃんは分かってくれるんですね!」

 

「はみ出た舌がキュートな感じするね」

 

 きっと、純愛戦士ペロロくんとか、そんなタイトルの作品に出てくる鳥さんなのだと思う。いつもえっちする時は、念入りにペロペロしている女の子思いのすけべ鳥なんだ。

 

「今日からエムちゃんは同志です。一緒にペロロ様を推していきましょう!」

 

「う、うん」

 

 なんか分かんないけど、私の推し? が一匹増えることになった。もっと知らないと推しようが無いから、帰ったらどのえっちな作品に出てるのかを調べないと。ヒフミちゃんが好きな作品だから、陵辱ものじゃないことは想像つくんだけど。

 

「はい、エムちゃんにもプレゼントです」

 

「え……良いの?」

 

「ペロロ様を好きになった記念日ですから」

 

 私が推察を重ねている隙に、ヒフミちゃんは買い物を済ませていて、一匹のクンニ鳥……ペロロ様を私にくれた。同じものをヒフミちゃんも抱えてて、お揃いな感じがムズムズする。

 

「嬉しい、ありがとう!」

 

 でも、こうしてぬいぐるみさんをプレゼントされたのは初めてで、何か胸がほわほわする感じ。ちょっと可愛いって感想だったペロロ様が、凄く可愛く見える。ペロロ様をギュウっとしてみると、締め殺されてる光景みたいな絵面になるけど、それが何だかチャーミング。ハメドリくんの系譜なんだって思ってたけど、本当は愛されバードだったんだね、君は。

 

 

 

「ヒフミちゃん。次は私の番だよ!」

 

「え、エッチな本でしたよね?」

 

「うん、ペロロ様のお礼に、ヒフミちゃんも一冊いるかな?」

 

「あ、あはは、大丈夫です」

 

 次はコンビニで買えなかった、えっち本の番。ヒフミちゃんに何かお礼をしたかったけど、やっぱりご禁制の本は怖いよね。またいつか、別のものをプレゼントするから待っててね!

 

「ほ、本屋さんはここです。色々な本が売ってるので、エムちゃんが欲しい本も、多分あるんじゃ無いかなと思います」

 

 そして10分も歩かない内に、本屋さんに到着した。2人でお顔を見合わせたのは、どうしようかって気まずさもあったと思う。だって今から買うのは、えっち本だもん。

 

「うん、ヒフミちゃん、今日はありがとうね!」

 

「あ、エムちゃん、待っ――」

 

 流石の私も、えっち本を一緒に買うのは恥ずかしいし、ヒフミちゃんもヤだと思うからここでバイバイ。私は勢いよく本屋さんに入店し、店員の人からジロッと睨まれたのでお行儀良く店内探索を始めた。……えっち本、あっ、あった! 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 ペロロ様と一緒に、えっち本を大切にカバンに仕舞う。流石はブラックマーケット、私がえっち本の会計に来ても、二度見されただけで購入させてくれた。コンビニよりも高い値段だったけど、それだけで私は満足。ニコニコしながら店の外に出ると、どうしてだかまだヒフミちゃんが立っていて。

 

「ヒフミちゃん、どうしたの?」

 

「いえ、ここまで来たら、エムちゃんと一緒に帰ろうかなって思いまして」

 

 まるで友達みたいなことを言って、私を待っててくれていた。ヒフミちゃんは、もしかすると私を喜ばせる天才なのかもしれない。何か、お胸がいっぱいになりそうな感じ!

 

「迷惑、でしたか?」

 

「すっごく嬉しいなって。ありがとうヒフミちゃん!」

 

「はい、そう言ってもらえるとこっちも嬉しいです」

 

 私達は仲良く帰った。まるで、クラスの仲が良い二人組みたいに。

 えへへ、今日は良い一日だったなぁ。

 

 

 

「あ、最後に少し良いですか、エムちゃん」

 

「どうしたの?」

 

 そうして、別れ際。夕暮れをバックに、ヒフミちゃんが携帯を取り出していた。

 

「連絡先、交換しましょう」

 

「も、モモトークを?」

 

 なんと、最後の最後にとんでもないイベントが待っていた。モモトーク、それはお友達とだけ交換する連絡先。シミコちゃんも一回交換しようって言ってくれたけど、えっちな話の誤爆が怖くてまだ出来ていない。そう、うっかりシミコちゃんに”洗ってない女の子のアソコは、チーズと一緒のにおいなんだって! えっち過ぎる食べ物だね!”なんて送ってしまった日には、シミコちゃんの誕生日にチーズをプレゼントしてあげようと、なんて苦しい言い訳をするくらいしか無くて。それは、ヒフミちゃんに対しても一緒。だから断ろうとしたんだけど……。

 

「ダメ、でしょうか?」

 

「い、いいよ!」

 

 あんまりにもしょんぼりとしたヒフミちゃんのお顔に、思わず口が勝手に動いちゃってた。……え、ほんとに?

 

「ありがとうございます、エムちゃん! モモフレンズのこと、沢山話しましょうね!」

 

 でも、嬉しそうな顔をしてるヒフミちゃんに、やっぱりダメとも言えなくて。私はオズオズと連絡先交換をしてしまっていた。そして――。

 

「本名はメブキちゃんって言うんですね。これからはそう呼んでも良いですか?」

 

「ふぇ?」

 

 あ、あ、あ……しまった、そうだったよぉぉぉ! モモトーク交換したら、私の本名分かっちゃうじゃんか! バカ、私のウマシカ! このままヒフミちゃんに、えっちな女の子として私の存在が発信されてしまったら、しまったら……ヒフミちゃんだし、大丈夫なのかな?

 

「あ、ああ、あの! ヒフミちゃん、今日のことは誰にも言わないで、下さい!」

 

 私は半泣きになりながら、ヒフミちゃんにお願いしていた。これでダメなら、私はヒフミちゃんに一生逆らえない生き物として生きていくしかなくなる。それは、折角お友達に為れたのに、悲しいなって思ったから。

 

「大丈夫ですよ。メブキちゃんがエッチな本を好きって、誰にも言ったりなんてしません!」

 

「ほんと?」

 

「はい、だからメブキちゃん、安心して下さい」

 

 良かったよぉ! これでもしヒフミちゃんに、”これから私の奴隷になってもらいますね。バターメブキとして生きてもらいます”なんて言われたら、世の中の人はコハルちゃんとシミコちゃんに古関先輩、マリーちゃんにイマジナリーお姉ちゃん、それに先生しか信じられなくなるところだった。あれ、結構信じられる人がいるね?

 

「今日からよろしくお願いしますね、メブキちゃん!」

 

「こ、こっちこそ、おねがいします!」

 

 こうしてまた一人、新しくお友達が出来た日になった。やったね!

 そしてヒフミちゃんは、実は2年生だということも発覚した。ソワソワしながら、先輩ってモモトークしたら、名前で呼んでって言ってくれたので、これからもヒフミちゃんって呼ぼうと思う。初めての年上の友達、年上の人でも友達になれるんだね、初めて知ったよ!

*1
どこに勝算を見出していたんだ

*2
シャーレのシャワー室は君の秘密基地じゃないんだ、やめなさい

*3
意味不明な八つ当たりはよしてくれ

*4
挙動が君過ぎて無意味だよ、全く

*5
madnessでなかったのは幸いだよ

*6
客観的に見て欲しい。もう十分におかしいんだ、きみは

*7
言い過ぎだよ、メブキ。精々7割くらいじゃないか

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