コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
オシッコに行きたすぎて目が覚めたら、何故か真夜中の校内に立ってたよ。怖いね?*1
え、本当になんで? 催眠攻撃受けちゃってる? でも、もしそうなら、シミコちゃんが守ってくれるはずだし……。
うーん、考えても分かんない。
「あ、光ってる?」
怖いなって思い始めた時、どこかの建物の明かりがついてるのに気がつけた。
えっと、あそこは……図書館だ! 私、図書委員だから、図書館にお邪魔しても何にも問題ないね! 目一杯走って図書館に駆け込んで、明るい館内まで飛び込んだら胸の不安がちょっと無くなった。やっぱり、ずっと暗いところにいるのは良くないんだね。
「メブキさん?」
「メブキ、こんばんは。どうしたの?」
それで、図書館で私を迎えてくれたのはシミコちゃんと先生だった。二人共、夜中に会ってるなんてえっちなことしてるのかなって一瞬思ったけど、先生はパソコンでお仕事してて、シミコちゃんはご本を読んでるだけで。全然えっちな気配はしなくて、ほのぼのって空気感。……ちょっとだけ残念だね?
「なんかね、気が付いたらお外に立ってたの! 二重人格とかに目覚めてるかもしれなくて。どうしよ、シミコちゃん、先生!」
なんかよく分からないこの状況について、2人に伝える。
気が付いたら校内に立っていたこと。パジャマで寝たはずなのに制服に着替えてること。何故か紙パンツでなくて、普通のパンツを履いてること。なんかオシッコに行きたいこと。月姫や痕で見たような、自分ではないもう1人の自分がいてしまうかもしれないこと。
全部を話し終えると、先生はそっとトイレを指差した。そうだね、もうおもらしはこりごりだもんね……。取り敢えず、先におトイレに行ってきます!
スッキリして戻ってくると、シミコちゃんが椅子にクッションを敷いてくれてた。それだけで、図書館の椅子が全然違って感じる。凄いね、お家みたいにリラックスできる柔らかさだよ!
「ありがとう、シミコちゃん」
「はい、どういたしまして。それで、メブキさんはどうしてだかお外に立っていた、というお話でしたよね?」
「うん、もしかしたら実は二重人格かもしれなくて……。どうしよう、もし私が知らない間にえっちなことしちゃってたら……」
想像してしまう、もう一人の私がお姉様(偽)みたいな人になって聖堂に押し入っていく姿を。清楚なシスターフッドの人達を押し倒して、あなたは神の身元へと送られるのです、アガペーと叫びながらえっちなことをして妹にしちゃったりしてたら……*2。
ど、どうしよう! シスターフッドのみんなが私をお姉様って呼び始めたら、もう言い訳なんてできないよ!
「2人とも、どうしよう!? もしかしたら私、お姉さまになっちゃったかもしれないよ!」
「なってないよ……ほら」
先生がタブレットをぽちぽちして、モモトークの画面を見せてくれた。シスターフッドの人にチャットで確かめてくれたみたいで、そこには、
『小柄な女の子がそっちに行ったりしなかったかな?』
『いえ、来られておりませんが、人を探しておいでですか?』
『ううん、確かめたかっただけだから。ありがとう』
『お役に立てずに申し訳ありません。では、先生の明日が、良い日でありますように』
といったメッセージが表示されてる。あ、これ、マリーちゃんだ!
『マリーちゃん、本当に私そっちに行ってないよね? お姉さまになってないよね!?』
『お姉さま? にはなられてません、大丈夫ですよ。先ほどの先生からのモモトークは、メブキさんのことだったのですね』
『そうだよ! ありがとうマリーちゃん、おやすみー!』
『はい、お休みなさいメブキさん』
良かった、本当にアガペーしてたら、取り返しがつかないところだった。でも、それなら二重人格の私は何を……というか、本当にそんな子はいるのかな? イマジナリーお姉ちゃんは何か知ってる?*3
「2人はなんか分かるかな? 因みに私は分かんないよ!」
「もう、メブキさんったら。……そうですね、着替えまで済ましているということは、恐らくは夢遊病ではありません」
「連れ去られて、着替えさせられた?」
「それも無理がありますし、メブキさんといえど途中で目を覚ます筈です……よね?」
「た、多分?」
スヤスヤ眠る方だから、ちょっと自信がないね。えっちなことされてたら、流石に飛び起きちゃうと思うけど。うぬぬ、誘拐もあり得るのかな? シミコちゃんも、難しそうなお顔をしてるし難しいところだね。
「紙パンツを普通のパンツに履き替えていたことは?」
「誘拐されたパターンなら、私の紙パンツが大好きな人なんじゃないかな?」
「多分違う」
「先生、絶対と言い切っていいですよ」
シミコちゃんの言葉はにべもなくて、とっても呆れた顔もしてる。なんで?
「あの、メブキさん。前から思っていたのですが……。もしかして、エッチなお話が好きなんですか?」
ぎくっ!? ど、どうして!?
シミコちゃんの前で馬脚を表したことはないから、馬並みね? なんて言われる隙なんて無かったのに。まさか私に催眠を……ううん、シミコちゃんがそんなことする訳ないよね。だったら……。
「せ、先生! 私がおもらししたこと喋ったの!!」
だったら、先生がシミコちゃんに、メブキはおもらしが性癖なんだって喋っちゃった可能性が高かった。そもそも、そんな性癖無いけど! 他人に見られながらおもらしして、泣いちゃうのが性癖だって吹き込まれたのなら、シミコちゃんの反応も理解できるし! 違うけど!!
「お、おもらし?」
「あれ?」
なんかシミコちゃん、初めて聞いたような反応。先生は、困った風に私を見てるし。うーん?
「先生、喋ってない?」
「喋ってないし、メブキが傷つくような事はしないよ」
「そっか、ごめんね先生。他に犯人が見つからなくて。先生が優しいの知ってるのに、冤罪掛けちゃった」
「メブキは一旦、いつもの自分を振り返った方が良いよ」
先生に言われて、ちょっと思い返してみる。……もしかして、コハルちゃんがえっちな女の子だってバレてるのかな? もしそうなら、何時も一緒にいる私がえっちなお話が好きっていうのも理屈が通っちゃう。
「こ、コハルちゃんの陰謀?」
「メブキさん、エッチだと思った物を見つけると、結構はしゃいでますよ」
「ふへへ――嘘だよね?*4」
「大丈夫、周りはメブキが楽しい子だなって思ってるから」
「えっちな子ってとこを否定してよ!」
「メブキはエッチな子ではないよ」
「ありがと!」
おかしいね? お嬢様学校に来て、清楚であることを心掛けていたのに、どうして! ……やっぱり、もう一人の私が居ちゃうのかもしれない。猥談を話す怪談、それがもう一人の私なの?
「もしかすると、もう一人の私は猥談師なのかもしれないね」
「誘拐路線ではなくなったんだね」
「二重人格、となるともう一人のメブキさんとお話する機会がなければ、どうしようもありませんね」
「本当にいるのかな、もう一人のメブキは」
「流石にこれも、突飛が過ぎるとは思います。……メブキさん、本当に心当たりはありませんか?」
「うーん? 私の中にいるのは、イマジナリーお姉ちゃんだけだし。本当に分かんないね*5」
私の言葉に、二人はキョトンとしていた。何か、おかしなことを聞いたみたいに。
「イマジナリー……」
「お姉、ちゃん?」
「夢の中で会えるよ!」
でも、確かに考えてみると、イマジナリーお姉ちゃんって謎めいた生命体だよね。私の脳内に住んでいて、夢の中でしか会えなくて、なのに私の為に家とか用意できたりとかして。……そういえば、今日は夢で会っていないような?
「どんな子なのか、聞いてもいいかな?」
「えっとね、狐耳してて、ロリで、横パイ見えそうな服なのにペチャンコだから見えなくて*6、難しいことばっかり言ってるの!」
「シミコ、知ってる?」
「よ、横パイ? そんな服装の方、キヴォトスにいらっしゃるのですか!?」
「…………ファッションって多様だから」
「背は私と同じくらいだよ、多分!」
あれだけロリロリしてるんだもん。私よりイマジナリーお姉ちゃんの背が大きいって、そんなのはうそっこの筈だよ*7。いつか、イマジナリーお姉ちゃんの横パイに、おっきくなっちゃったって言いながらパッドを押し当ててみたいって思ってるし*8、胸も私と同じくらいの筈だよ!
「残念ながら分かりません。該当する人がいれば、またモモトークの方に」
「シミコちゃんは、イマジナリーお姉ちゃんが犯人だって思ってるの?」
「いえ、どんな存在なのかすら分かっていませんので。でも、何か手掛かりのキッカケになればと」
「そっか、でもイマジナリーお姉ちゃんはとっても優しくて、大好きだから悪い人じゃないよ!」
「はい、分かりました。心に留めておきますね」
眼鏡をキラリと光らせて、名探偵シミコちゃんの捜査がこれから始まろうとしていた。シミコちゃんは探偵さんの才能があると思うし、期待大だね! それにしても、やっぱり眼鏡を掛けてる人は賢いね。私もテストのために眼鏡買っとかないと。
「私も心当たりがあるのか、色々と探ってみるよ」
「先生はパソコンでの捜し物が得意だし、そっちで期待してるね!」
「任せて。これでも連邦捜査部の顧問だからね」
「れんぽー操作部?」
催眠や洗脳が主な活動の、連邦生徒会の暗部かな?*9
「先生は、理科の先生じゃないの?」
「……あぁ、シャーレにいるから理科の先生って思ったんだね。理科も教えられるけど、違うよ」
「じゃあ先生の本業は、洗脳のプロフェッショナルなの!?」
「待って! 洗脳はどこから出てきたの!?」
「だって、操作部って人を操る部活動ってことだよね? 噂で先生はえっちなことしてるって聞いたことあるし、嘘だって思ってたけどホントのことだったんだね……」
そっとシミコちゃんの後ろに隠れると、先生はシミコちゃんを催眠に掛けようと真っ直ぐ見つめていた。シミコちゃんは最強の催眠眼鏡だから負けるはず無いって思ってたけど、隠れていた私をそのまま先生に突き出してしまった。そ、そんな、シミコちゃんが負けちゃうなんて!?
「せ、先生許して。先生のことは好きだけど、えっちなことは初恋の人としたいよ……まだ居ないけど」
「エッチなことしないから、まずは話を聞いてくれないかな?」
「本当?」
「君は私のことを何だと思ってるの」
「えっちな部活動の親玉」
「違うよ! 催眠から離れて!」
でもシミコちゃんを催眠したし……。チラッとシミコちゃんを見ると、クスクスと笑っていた。酷いね?
「シミコちゃん、先生の催眠術ってやっぱり強力なの? だから裏切っちゃったの?」
「メブキさん、先生に催眠術に掛けられたから引き渡した訳ではないですよ?」
「そうなの?」
「先生はいわゆる、探偵部の顧問さんですから。問題ごとがあると、それを解決して回るんです。ですから、メブキさんの思ってることは誤解、ですよ」
なんと、先生は本業の探偵さんだった。もし私が青春を求めて覗きをしてると、犯人はお前だと摘発されてしまうかもしれない。先生の前では悪いことしちゃいけないんだね、覚えておかないと。
あ、でもそれより、もっと良い方法があるかもしれない。悪いことしちゃった時に、どうにかする方法!
「ふへへ、先生。足をお舐めいたしましょうか?*10」
「メブキ、足を舐めるなんて行為、気になる人以外にしちゃダメなんだよ」
「先生、気になる人にもやっちゃいけないと思いますけど……」
「シミコちゃん、足を舐めるのはえっちな行為じゃないんだよ*11」
「そうだよ、シミコは真面目だからびっくりしちゃうだろうけどね」
「えぇ……」
先生に忠誠を誓い、シャーレもとい先生の犬になる。そうすれば、もし罪を犯してしまっても見逃してもらえるかもって思ったんだけど、そう簡単にはいかないみたい。あと、足を舐めることの意味についても、先生とは考え方が違うみたいだった。
多分、先生は足を舐めることを、相手のことが大好きだと示す親愛の行為だって思ってる。純愛厨みたいな考えで、大人な先生がちょっと可愛く見えた。そっか、私が先生の足をペロペロすると、先生は私が先生のこと大好きなんだって思っちゃうんだ……えへへ*12。
「やっぱり先生の足、舐めても良いかな?」
「ダメ」
「けちんぼ」
「ダメ」
「わかったよ、足じゃなくて先生のお胸にするから、ね?」
「ダメ」
取り付く島もないし、先生はもしかすると舐めるという行為にえっちさを見出しているかもしれなかった。本音は隠して、私には舐めさせないで、大人は汚いよ!
「じゃあシミコちゃんを舐めるもん」
「だ、ダメですよメブキさん。足を舐めるのは、その、健康上良くないんです」
私に味方は居なかった。おかしいね?
でも、シミコちゃんは道徳的な話ではなくて、健康的な視点でダメって言ってるから、足湯にでも誘った時に舐めさせてもらうね。念には念を入れて、蜂蜜も持っていったら素敵な思い出になっちゃうね?
「分かった、今回は諦めるね!」
「今回は、なんですね」
「今度足湯に一緒に行こうね?」
「ふふ、この流れで一緒にはいきませんよ」
「先生も一緒だよ?」
「それなら……まぁ」
もしかすると、シミコちゃんは先生に足を舐めて欲しがってるのかもしれなかった。もしくは、先生の足を舐めたいのかもしれない。そうだとしたら、私がシミコちゃんの足を舐めるのは問題かもしれなかった。人の性癖を邪魔するものは、馬に入れられ死んでしまえらしいし。
「応援してるからね、シミコちゃん!」
「また何か勘違いしてませんか?」
「全部わかってるからね、大丈夫だよ!」
シミコちゃんのお手々をギュッと握り、友情を確かめる。大丈夫、何時かシミコちゃんが先生の足を舐められる様に、私も頑張るから。どさくさに紛れて、足の小指くらいは舐められるかもなんて思ってないからね!
「ところで二人共、もうこんな時間だけど大丈夫?」
先生が時計を指差してて、針は2時を指している。お話が弾みすぎて、いつの間にか時間がたっぷり経ってたみたい。あ、明日も授業だったよね。チラッと先生を見る、休みたいなぁ……なんて。
「ダメだよ」
「先生はえっちなゲームのNPCさんなの? ダメ以外にも喋って良いんだよ」
「人を勝手にエッチなゲームに登場させちゃダメだよ」
ダメらしかった、酷いね? でも、先生はきっと主人公の才能があるから、いつかあのスク水巨乳美少女とラブラブする妄想とかもしたいなぁ。……ゲームにしなきゃ、きっと大丈夫だよね!
「あ、閉館準備しないと」
「大丈夫です、私はもう少し本を読んでから、仮眠室を使わせてもらいますので」
「シミコちゃん、明日も授業あるけど大丈夫なの?」
「ショートスリーパーなんです、私」
なるほど、シミコちゃんは他の人が寝ている時間帯に、ずっと本を読んでたらしい。シミコちゃんが図書館の本を全部読めたカラクリは、速読家なだけじゃなかったんだね。もしかすると、エロゲーとかもスキップ押しながら全部読めるくらいの能力がシミコちゃんにはあるのかも。凄いね!
「うん、それじゃあお願いします。シミコちゃん、先生、おやすみなさい!」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ、メブキ」
「うん!」
えへへ、自分の家じゃないけど、お休みって言って貰えるの嬉しいね! イマジナリーお姉ちゃんもおやすみだよ!!*13
何が何だかよく分からないままだけど、家までの足取りはとっても軽かった。これからは、コハルちゃんとかにも、寝る前におやすみって言おうかな?
「シミコ、ちょっといい?」
「メブキさんのことですか?」
「うん、流石に心配だから」
図書館に残っていた二人は、ここから去っていったメブキについて話をする。
気が付いたら、着替えてお外にいました。本人は至って通常運行だったが、本来はもっと取り乱してもおかしくない事態だ。メブキ自身が気にしていないにしても、二人にしたら気にかけて然るべき事柄でもある。
「分かった事といえば、メブキの中に誰かいる……かもしれないってことだけ」
「特徴は狐耳、幼い、脇が開いている服を着ている、胸は小さい、身長はメブキさんと同程度、理屈屋の気質がある」
メブキが語った要素を抜き出していくと、どうにも個性的な人物が出来上がる。メブキが脳内で作り出した、自分の愛するお姉ちゃん像だと言われても信じられるレベルだ。
ただ、メブキはまるで、その人がいるんだと信じ切って話をしていた。そして現在、メブキに起こった事象を説明するのに、明らかに怪しさを持っているのが件のイマジナリーお姉ちゃんだった。なんで実在を確信してるくせに、イマジナリーお姉ちゃん呼ばわりしてるのかは、この二人を以てしても謎すぎた。
「何か分かったら、また話し合おう」
先生の言葉に、シミコはしっかりと頷いた。
この日から時々、夜の図書館で二人のイマジナリーお姉ちゃん捜査報告会が開催される流れとなった。当のメブキ本人は戦力として看做されておらず、二人が頑張っている間は爆睡していた。夢の中で、イマジナリーお姉ちゃんと紅茶しばいたりしているらしかった。