コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです!   作:ペンギン3

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ASMR

「ウイ先輩、先輩は宇宙で一番オホ声が似合う素敵な女性なんです!*1

 

「は?」

 

 古書館に来た私は、思いの丈をウイ先輩にぶつけていた。先輩には、音声作品の才能があるんだって、前から思っていたことを情熱的に伝えるために。先輩の驚いた時のヘァ〜って声で、ウイ先輩の才能に気がついてしまったのだから。

 

「ウイ先輩、私と一緒にキヴォトスでえっちの覇権を握りましょう? 私達ならきっと、えっちっちマイスターとして、DLsiteからオファーだって貰えるから!」

 

 先輩のオホ声は全世界に発信され、世界中のオホ声ソムリエ達からその才能を評価される。いずれは音声作品界のスターになって、大晦日の紅白でもオホり倒して先輩の名前は永遠になるの! そんな先輩が見れたら、私もちょっとASMRが上手くなるって思うんだ*2

 

「オホ声の星、オホ星様になろ? ウイ先輩ほどの才能なら、オホ姫さまどころかゴリラだって発情させられるよ!」

 

「こ、ここまで侮辱されたのは初めて……」

 

 先輩はプルプルと震えていた。もしかしたら、今からASMRの付属商品について考えてくれてるのかもしれない。多分だけど、バイブレーションウイ先輩(大きさ15cmの棒状のウイ先輩)とかかな?

 

「それじゃあウイ先輩、今回やってもらいたいジャンルはね――」

 

「やるわけない、寝言は寝てから言って」

 

 触手でウネウネされて、対魔司書ウイは絶体絶命に陥ってしまった。感度3000倍になる粘液をかけられてしまったウイは、一体どうなってしまうのか!

 

 そういうストーリーラインを語ろうとしたところで、すっごく不機嫌そうなウイ先輩に話を遮られる。どうしてか分かんないけど、私を怖い顔で睨みつけながら。……対魔司書が嫌なのかな?

 

「大丈夫です、ウイ先輩。先輩なら、ピッチリスーツ着ても可愛いと思うから。背だって高いし、対魔司書の才能あるよ。対魔司書が嫌なら、超昂閃忍にしますか? 悪鬼彷徨う現の闇を払っちゃいますか?」

 

 ただ、超昂閃忍ウイだと、オホ声成分が足りなくなっちゃう。折角のASMRなのに、格好良くて可愛いウイ先輩しか見れなくなっちゃうかもしれなかった。えっちなウイ先輩を、みんなにお届けしないといけないのに。……やっぱり、対魔司書が良いと思うな!

 

「ウイ先輩、対魔忍は恥ずかしい職業じゃないんですよ? だって全年齢に発信してるし、その内にプリキュアに代わって女児のなりたい職業ランキングに乗る日も遠くない筈だから。先輩、有名になってテレビで、オホめいただき光栄ですって言いましょう?」

 

「笑いものには一人でなって!」

 

 ウイ先輩はズルズルと、私をお外へと追放しようとする。酷いよ!

 

「先輩、やーっ!*3

 

「ジタバタしないで、大人しく出てって」

 

「先輩とASMR作るからヤダ!」

 

「意味が分からない情熱を燃やさないで」

 

「意味が分かれば、一緒に作ってくれます?」

 

「性的なものを作るわけ無いっ!」

 

 もしかしなくても、ウイ先輩はえっちなのが苦手……? アレだけえっちな画集について、語る時は平然としてたのに。先輩もえっちなのはダメ、死刑ってタイプってこと!?

 

「ご、ごめんなさいウイ先輩。えっちなのがイヤなら、ほのぼの純愛作品にするから!」

 

「何で私がそんな恥ずかしいもの、作らないといけないのっ!」

 

「先輩が可愛いから!」

 

「さっきはオホ声とか、頭が悪い言葉を並べ立ててた癖に!」

 

「先輩のオホ声、きっと可愛いから?」

 

「言い訳が適当過ぎるっ」

 

 必死に先輩にしがみついて、何とかつまみ出されないようにする。幸いにも、ウイ先輩はコハルちゃんより腕力がない。背がおっきくても、筋力は決して強くなかった。

 

「し、しつこい!」

 

「お話聞いて、意地悪しないで!」

 

「人聞きの悪いことをっ」

 

「無理矢理ASMRさせないから、一緒に居させて!」

 

「…………頭の悪い騒ぎを、これ以上広げない?」

 

「約束するよ!」

 

 何とか背中にしがみついて、おんぶしてもらってる形になったところで、ウイ先輩はようやく譲歩をしてくれた。大きいけど、ちょっと猫背で柔らかな背中。ちょっぴり本と珈琲の匂いがして落ち着くけど、先輩がダルそうにしているので渋々と退去した。

 

 

 

「それで、今度は何が理由でおかしなことを言い始めたの?」

 

 コーヒーを淹れてくれながら、ジトっとした目で私を見ているウイ先輩。多分、シミコちゃんが催眠に掛けられたと勘違いした件が後を引いてて、私が何をしていてもどっかが間違ってるって思われてる。あの時は偶々で、全然そんなことないのにね。

 

「えっとね、命を助けてくれたらASMRを作ってあげるって約束しててね」

 

「待って、状況が把握できない。どうしてそんな頭のおかしい約束をしたの?」

 

「死んじゃって化けて出たら、みんなの耳元に怨霊ASMRをしようと思って。でも、やっぱり死にたくないから、助けてくれたら生きたままASMRをしてあげるよって*4

 

「い、意味が分からない。言葉の意味もだけど、メブキさんの意味が分からない……」

 

「私が分からない……て、哲学のお話ですか?」

 

「ある意味でそう、春風メブキ学が必要」

 

 ウイ先輩は、分からないなら理解してくれようとする。それって、かなり優しいことだよね。私はまだ、お勉強全般と相互理解し合えてないし、仲良くなりたいって思えてないもん。

 

「えへへ、ならウイ先輩が講師さんしてくださいね!」

 

「分かってないのに、教えられない」

 

「私も古関ウイ学の先生になりますね!」

 

「なれない、私はメブキさんみたいな謎生物じゃないから」

 

「先輩の権威であれば、即ちオホ声学の権威なのでは?」

 

「学会ごと追放してあげるから」

 

 ウイ先輩は、学問を弾圧する悪い権力者さんだった。きっと今も、エロゲー文化学会やドスケベ学を抑圧し、その学問を学んでいる人達に性的興奮を頒布しているに違いなかった。可愛い女の子に構われちゃうとビクンビクンってしちゃう学問だし、多分ね?

 

「で、どうして死にかけに? はい、熱いから気をつけて」

 

「ありがとうございます! えっとですね、日向ぼっこしようと思って聖堂にもたれ掛かったら、そこの壁がガコってヘコんで、ゴロゴロと地下へ転がってったの*5

 

 ウイ先輩が入れてくれたコーヒーを受け取りながら答える。あの時はヘイローのお陰で怪我しなかったけど、生身だったらまた死んじゃってただろうし。コーヒーをペロペロ舐めると、やっぱり苦い。お砂糖をサッサと振り掛ける。ふぅ、やっぱり甘苦いコーヒーじゃないと美味しくないね。

 あれ、ウイ先輩どうしたんだろう、何か目に怯えが混じってるような?

 

ぼ、謀殺されかけた? ……やっぱり、メブキさんはあの人の関係者なの? だから、そんな目に?

 

 何か小さな声でウイ先輩は呟いて、目を何度もパチパチさせて。そうしてから、先輩はとっても真面目さんな顔をして私の目を真っ直ぐ見ていた。

 

「どしましたか?」

 

「何かあったら匿うから、直ぐに古書館に来て」

 

「ふぇ?」

 

 まるで私がドスケベ性人にでも狙われてるみたいに、ウイ先輩は心配してくれていた。……え、あの地下、やっぱりえっちな生物がいる? 私とアズサちゃんの匂いを覚えて、地上に狩りに来ちゃったってしちゃうの?

 

「わ、私、えっちな生物に狙われてるんですか!」

 

「もっと恐ろしいものに、メブキさんは狙われてる」

 

「えぇ!?」

 

 えっちな生物よりも、もっと恐ろしいもの。……もしかして、沢越止さんとかに私狙われてるの? 触手やオークより恐ろしいのなんて、それくらいしかないよね。もしそうだったら史上最悪すぎるから、どうにかして男の子になる方法を模索しなきゃだけど。

 

「ウイ先輩、男の子になるのってどうすれば良いですか!」

 

「こ、今度は何? 男の子になって何するつもりなの?」

 

「男の子になれば助かるかなって」

 

「助からない。そもそも、変態のメブキさんを男の子にするのは、あまりにもリスクが高すぎる」

 

「せ、先輩、私が男の子になったら、先輩やシミコちゃんに酷いことするって思ってるんですか……?」

 

「それはないけど、常に股間を膨張させてそうで嫌だから」

 

 想像してみる、私が男の子になってコハルちゃんとえっちな本を読んでいる光景を。

 

 えっちだねって話し合いながら、血潮が騒ぎ始めているのに気が付いた私。平均の13cmを超えて、性剣を抜刀状態にしてしまって、それを見咎めたコハルちゃんに死刑(去勢)されちゃう未来……嫌だよ!?*6

 

「お、男の子になるのは諦めても、どうすれば助かりますか?」

 

 どう足掻いても、危ない状況にいるかも知れない私。このままでは、妊娠出産まで爆速の勢いで辿り着き、トリニティを退学になった挙句にシャーレのシャワー室で子育てを始めることになりかねない。あ、頭がおかしくなりそうだよ!*7

 

「シスターフッドに近づかない、1人で行動しない、迂闊に変なことしない。大体これを守れば、自分の責任の範囲内では何も起こらない、はず」

 

「シスターフッド? そういえば、あの地下はシスターフッドが作ったって聞いたような?」

 

「やっぱり! でも、誰から聞いたの?」

 

「通りすがりのアズサちゃんに」

 

「だ、誰?」

 

「地下で仲良くなった、ガスマスクの女の子です!」

 

 私の言葉を聞いた途端、ウイ先輩はブルブルと震え出した。お顔は真っ青で、まるで怖がってるみたいに。そうだよね、ガスマスクって一般性癖じゃないから怖いよね。私も、最初見た時は強盗かなって思っちゃったもん。

 

「ガスマスク、シスターフッド……ま、まさか、古い時代の亡霊はまだ存在してた? 今の世でも人知れず、粛清を続けてる?」

 

「先輩、大丈夫です。アズサちゃんは迷子になった私を助けてくれましたから」

 

 ガスマスクをつけたアズサちゃんは、とっても不審者だった。けど、とても優しくて天然さんだってことを知ってるから。誤解があるなら、解いてあげないといけないって思ってた。

 

「ほ、本当に何もされてない? 実は頭を手術されてて、その時の記憶が無くなってるとか」

 

「あとでミネ団長のとこに行くけど、そんなことはされてませんよ!」

 

 ウイ先輩はゆっくりとコーヒーを飲んでから、頭をグニグニと揉みしだいていた。性感帯なのかな?*8

 

「頭気持ちいいですか? えいえいっ」

 

「きゅ、急にグリグリしないで。やるなら背中がいい」

 

 ウイ先輩の背中は、柔らかいけど猫背さんだった。モミモミとおっぱいを揉むようにすると、先輩はちょうどいい感じって言ってくれて。……今のやり取り、録音できたら完璧だったね?

 

「分かった、助けてもらったって言うなら信じる。シスターフッドも、全員が悪人じゃないと思うし」

 

「アズサちゃんは、修道服着てませんでしたよ? ガスマスクも、利便性でつけてるだけだって」

 

「趣味でガスマスク付ける変態は、メブキさん以外いない」

 

「私はガスマスク着脱萌えで、ガスマスクには興味ないです!」

 

「それでも十分異常性癖」

 

 えっちだと思う心が、えっちを作り上げてるって思うんだ。つまりは、ウイ先輩はえっちを心に秘めてる。普通の人は、ガスマスクにえっちさを見出そうとしないらしいしね!

 

「……待って、それでどうして私が音声作品を作る流れに? さっきの話からすると、メブキさんが1人で勝手に作ればいい話では?」

 

「ウイ先輩、絶対ASMR上手だって思うから、参考にしたくて」

 

「し、信じられない自己中心さ。さ、最悪すぎる……」

 

「ごめんなさい、迷惑あんまり掛けたくないけど、ウイ先輩が素敵だったから、つい……」

 

「声が?」

 

「はい、声が」

 

 目があって、お互いに見つめ合う。…………両手で自分のほっぺを摘んで伸ばすと、先輩はそっと視線を外した。にらめっこは私の勝ちだね!

 

「私にやる理由がない」

 

「……友達の顔を立てる的な?」

 

「ず、図々しすぎる」

 

「ウイ先輩、甘えさせてください!」

 

「……しかも、恥じらいなく開き直るタイプ」

 

 ウザいって先輩のお顔に書いてある。先輩のお顔をグニグニしたら、メブキさん大好きってなってくれるかな? ……うーん、余計に怒らせちゃいそうな気がする。ウイ先輩に嫌われちゃうのはイヤだし、好き好きって伝えるところから始めないとなのかな?

 

「先輩せんぱい! ウイ先輩のことが大好きな、可愛い後輩の春風メブキです。いっぱい優しくしてもらうと喜ぶので、よろしくお願いします!」

 

「……そこまで正直になられると、怒るに怒り辛くなる」

 

 とっても深いため息を吐いていたので、お顔をグニグニしてあげたら私もやり返されちゃった。なんかこそばゆいね?

 

「そこまで言うなら、台本を用意してきて。そうしたら、考えてあげるから」

 

「だからウイ先輩って大好き!」

 

「言葉が軽すぎる、ってわぁ!?」

 

 ウイ先輩にギュウっと抱きついて、ありがとうって伝える。ポカポカ暖かいのは、先輩の優しさが体温で伝わってくる感じ。えへへ、えへへへへ。

 

 

 

 その後、引き剥がされちゃったけど、絶対に素敵なASMRを作ってくるからねって約束して、今日はそのままお家に帰った。パソコンを前にして、カタカタと脳内で纏まった脚本を打ち込んでいく。

 

 待っててね、ウイ先輩、アズサちゃん! 私、今日から萌え系シナリオライターになるよ! やっぱりASMRだし、静かで癒される系が良いよね? あ、でも、ちょっとオホ要素入れたい。

 

 ……でも、えっちなのにすると、先輩やってくれないだろうし。"オホ弁が美味しすぎる! オホ、オホホホホーーーーッへあっ!?"くらいなら、許されるよね? 先輩なら、読み上げるだけでえっちに読んでくれそうだし。

 

 そうして後日、完成した台本をウイ先輩の元へ持っていくと、台本の9割を修正される悲しい事件が起こってしまった。酷いね? 私が用意して残った部分は、先輩が古書を修復するこしょしょ作業ASMRのみ。セリフの大部分が検閲って、そんなのおかしいですよ、先輩!*9

 

 あっ、でも気持ち良い……。ウイ先輩にお耳気持ち良くされちゃう! 先輩、実は私の恋人だったりする? いつからお付き合いし始めたかな? お耳がウイ先輩で満たされてくよぉ。

 

 

 

『アズサちゃん、私ね、ウイ先輩の恋人だったかもしれない』

 

『不用意に名前を出さないで、傍受されたらどうするの? あと、おめでとう?』

 

『ありがとう、アズサちゃん。今度、アズサちゃんの好きな人も誘って、ダブルデートしようね?』

 

『だから名前……。次からコードネームを事前に用意して渡さないと。でも、それはできたら素敵、かも』

 

『うん、楽しみにしててね!』

 

 

 

「ウイ先輩、毎日お弁当作ってきてあげます! カレーでハートマーク描いてきますね!!」

 

「急に彼女ヅラ……こ、怖い」

 

「先輩の可愛い彼女ですよ!」

 

「違うけど」

 

「そうなの!?」

 

「す、少しはその思い込みの激しさを反省して、メブキ」

 

 虫さんを見る様な目をするウイ先輩に、私は悶絶しながらおもらしもして、深い悲しみのあまりシャーレのシャワー室に立て籠って1人で泣いた。こんなの絶対におかしいよ、ASMRではあんなにイチャイチャしてくれたのに! うえーーーん!!!*10

*1
メブキ、普通の女子にとってそう言われるのは、侮蔑以外の何者でもないんだ

*2
過程が長過ぎる、その寄り道は必要かい?

*3
ウイ、本当にすまない。悪い子ではないが、頭は本当に悪いんだ。許してとは言わないが、嫌いにならないで欲しい

*4
押し売りもいいところだね

*5
シスターフッドの不手際だね。尤も普通のトリニティ生は、聖堂を背にもたれるなんて罰当たりなことはしないが

*6
馬などの動物は、去勢されることで気性がおとなしくなると言うが、さて……一考の余地はあるのか?

*7
急にそんなことされたら、先生の頭もおかしくなってしまう。やめなさい

*8
メブキ、マッサージはスケベな行為ではないんだ。だから脳内にある、整体師への偏見を更新してあげて欲しい

*9
むしろ収録拒否されなかったウイの優しさに感謝した方が良い

*10
先生、もう慣れたって顔をしないで欲しい。来る度にダメだと叱りつけてくれ。頭を撫でて慰めるのは……先生はメブキを甘やかしすぎだと思うね、全く





オホーツクのお弁当、略してオホ弁! 北海道 小清水町で来月13日より発売開始! セットでウイのASMRもよろしくお願いします!
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