コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
「私が赤点を取ったのは、メブキを監視するためなの。バカだから赤点取ったわけじゃないもん!」
「コハルちゃん、好きぃ!」
「ひ、引っつくなぁ!」
「ヤダ!」
コハルちゃんにひっつき虫する。だって、コハルちゃんは私を心配して落第してくれてたんだもん。二年生のテストを受けるなんて言ってた時は、コハルちゃんは賢いなぁで済ませてたけど、本当は私と一緒にいるためにそうしてくれてたって、分かっちゃったから!
「えへへー、コハルちゃんは本当に私が好きなんだもんね? 仕方ないよね?」
「アホのメブキなんて好きじゃない、勘違いしないで!」
「私はコハルちゃん大好き!」
「バカバカバカ、知らない!」
みんなで挨拶したり、自己紹介したりする中で、コハルちゃんは何でここに来たのかをお話ししてくれた。一年生なのに二年のテストを受けた理由、一年生用のテストなら簡単に合格できるってこと、ワザとそうしたのは私を見張ってるため。
コハルちゃんはイヤイヤしてるけど、私を見張るために赤点まで取ってくれるなんて愛だよね。嬉しいね? 頑張らないとって、気持ちがすっごく漲ってくるよ!
「みんなには、これから1回目の試験がある日、つまり終業式の日まで放課後はここで自習をしてもらうよ。分からないことがあったら、すぐ私に聞いてね。ここで全員合格できなかったら、夏休みに補習授業部で合宿することになっちゃうから」
合宿! すごい素敵なフレーズ、青春の青さが透けて見えるね! あ、でも、みんな夏休みが潰れちゃうのは嫌だよね。……足を引っ張らないように、頑張らないとだよ*1。
「先生、それって国語でも理科でも、保健のことでもいいの?」
「うん、一通り教えられるから、任せて」
でも、ちょっと安心。先生は、何でも教えられる万能先生だったから。高校からは、科目ごとに先生が変わるらしいのに、全部教えられるってすごいことだよね! 連邦捜査部の顧問さんだから、推理学とか開講してくれたら絶対受けに行きたいよ。
他にも、保健の総合的な探究の授業とかで、先生の今までしたえっちなお話とかもたくさん聞きたいし……先生がトリニティで教えてくれるなら、すっごく楽しくて嬉しい毎日なんだろうなぁ。
「せんせー、私のお家にお引越ししないかな? 先生がいてくれたら、お勉強毎日頑張れると思うの。トリニティで、お勉強教えてくれるともっと嬉しいよ!」
「メブキ、先生を独り占めにするのは良くないと思う」
「そうですよ、メブキちゃん。みんなの先生ですからね」
「ごめんね、メブキ。シャーレからは、色々と設備もあるし離れられないかな」
「そっかー*2」
先生は素敵な大人さんだからモテモテで、色んな人に大人気なんだよね。シャーレでテスト勉強してた時とかも、色んな生徒さん達が先生と楽しそうに当番してたし。ユウカさんとかノノミさんとか、シャーレの当番として私にお勉強を教えてくれたしね。今度会った時、何かお返ししないとだよ……自作のASMRでいっかな? "菊門! 開門! 快便! ウンチ! できて! 偉い!"みたいなの*3。
自分の声を録音すると、変に聞こえて恥ずかしいって最近気づいちゃって以来、自分のえっちなASMRはまだ作れてないから。アズサちゃんにもプレゼントしてあげなきゃだし、えっちなのは諦めて赤ちゃんみたいに褒めそやすASMRにしようって最近は思ってるよ! いつかね、私以外にも赤ちゃんみたいに甘やかして欲しい系女子が出てきた時、このASMRで癒してあげられるし!
「それでは皆さん、一次試験まで頑張りましょー!」
「おーっ!」
ヒフミちゃんの音頭で、補習授業部の放課後自習が始まったよ。みんな毎日、放課後になると指定の教室に集まって自習するの。それから聞いて、イマジナリーお姉ちゃん! 私ね、やっと中学生の問題が解けるようになってきたんだよ! 偉くないかな、褒めてくれていいんだからね!*4
「ヒフミちゃんヒフミちゃん、これ合ってるかな!」
「えっと……はい、合ってます。メブキちゃん、偉いです。現代文の文章題は読解できてるので、後は漢字を覚えるだけですね。メブキちゃんならきっとできます!」
「えへへ、ありがと! 頭撫でてくれると、もっと頑張れるよ!」
「はい、いい子いい子」
「にゃうーん」
でも、イマジナリーお姉ちゃんは夢の中でしか会えないから、まずはヒフミちゃん達に撫で撫でしてもらってるの。みんな、私は褒められたら調子に乗るから、もっと褒めちぎっていいんだよ!
「うーん、うんうん……」
「どうかしましたか、メブキちゃん」
「あ、ハナコさん。えっとね、酸性とアルカリ性の違いが難しくて」
「ふふ、メブキちゃん。それは簡単なことですよ。酸性は酸っぱくて、アルカリ性は苦いんです。この意味、分かりますか?」
「…………も、もしかして、精液と愛液!?」
「その通りです、メブキちゃん♡
酸性は愛液、アルカリ性は精液と覚えれば、後は愛液か精液かを分別する作業になりますよ」
「て、天才だぁ!」
「え、エッチなのはダメ、死刑!!」
そしてハナコさんは、私に分かりやすくえっちに問題を教えてくれる。やっぱりえっちな女神様なんだよ、ハナコさんは! エロ神様、つまりティッシュのようになくちゃならない存在だね?*5
あと、コハルちゃんは私をえっち呼ばわりしてるけど、保健のことを聞くと100%正しい答えが返ってくるの。
「な、なんで答えがビクンビクンになってるのよ!」
「最初は膣イキって書いてたんだけどね、女の子はお豆さんでもイケることに気がついたから、ビクンビクンにしたの」
「ヘンタイヘンタイ、ヘンタイメブキ! 性的な緊張から突然解放されるのはオルガズム、エッチな本の言葉を直接使っちゃダメ!」
「はーい」
絶対、私よりコハルちゃんの方がえっちだよ。こうやって、すっごく細かい違いまで指摘するもん。孕ませじゃなくて妊娠って言ったり、中出しのことを射精って言ったり……えっちのことは私より詳しいマウントかな?
「メブキ、私と同じ答えになった?」
「せーので見せ合いっこしようか」
「うん、それじゃあ」
「「せーの!」」
アズサちゃんとは、お勉強をしながら競い合いっこしてるよ! おんなじ問題を解いて、合ってるのが多い方の勝ち。私の1勝13敗、流石は私のお勉強ライバルのアズサちゃんだね! アズサちゃんの知恵袋は、もしかすると妊娠6ヶ月くらいの状態かもしれないね?
「せんせー、なんか解き方ね、分かんなくなっちゃった」
「うん、応用は一目だけ見ると頭がこんがらがるよね。でも、一つずつ噛み砕けると、基礎でやった部分で解ける問題だよ」
「読解力さえあれば、いけるってこと?」
「部分的にはそうかも。例えば、ここの問題。同位体の組み合わせで作れる分子の数を答えよってやつ。これはね、頭や手で数えてるとこんがらがってくるけど、一つずつ書けば整理できるよ。時間は掛かるけど、堅実に行こう。メブキ的に言えば、好きなようにカップリングを作ってくださいってこと」
「!? 分かった、乱交えっちだね!*6」
「……………………そう、だね」
先生は、一生懸命に寄り添って教えてくれる。えっちなのは詳しくないけど、頑張って合わせようとしてくれて、だから私もとっても嬉しい。頭だって、いつも以上に冴えちゃうの!
そうして、みんなの力を借りて迎えた追試験当日。私には叡智が満ち満ちて、私の脳みそは充血しまくった海綿体さんと化してるの。勃起するってこういう気分なんだね、初めて知ったよ! フルパワーメブキちゃんの力を見せて、IQが100万を突破してるってところを証明するチャンスだね。
みんな、待っててね? いっぱい不安そうな目で見られてるけど、そのおめめをキラキラに変えてあげるから!
試験内容は、各教科の詰め合わせ問題集。国語や数学、その他の教科もごった煮になってるテストで、範囲も狭かったから的を絞りやすかったし、ハナコさんが張ってたヤマに思いっきりぶち当たってる。完璧だね!
ふへへ、問題が次々解けて全知全能になった気分! 合宿は惜しいけど、みんなで楽しく夏休みを過ごすのだって素敵だもんね。みんなのお陰で合格できそうだよ、ありがとう!
テスト結果
阿慈谷ヒフミ:72点
結果――合格
白洲アズサ:60点
結果――合格
春風メブキ:22点
結果――不合格
下江コハル:11点
結果――不合格
浦和ハナコ:2点
結果――不合格
補習授業部の合宿が決定した!
???
「先生あのね、これ本当は220点だと思うの。採点ミスじゃないかな?*7」
「メブキがすごく頑張ってたのは知ってるよ。でも、テストは100点までなんだ」
「う、嘘だよね?」
「ごめん、本当なんだ……」
お空を見上げる。とっても青くて、ふわふわな雲。あれに寝転べたら、きっと天にも昇る気持ち(絶頂じゃないよ!)になれるんだろうね。
ふへへ、ふへへへへ、おかしいね? 今回は、本当に精一杯やったんだけど……*8。
誰かが、肩に手をポンと置く。振り返れば、ハナコさんがとってもいい笑みを浮かべていた。可愛いね?
「安心してください、メブキちゃん。私は2点です」
「2点……?」
………………?
???*9
「先生、ハナコさんの点数だけど、多分2億点の間違いだと思うの」
「メブキ、さっきこのテストは100点満点が最大値だって言ったよね?」
「ハナコさんは、居てくれるだけで2億点だから」
「まあ、ではメブキちゃんも2億点ですね」
「えへへ、ありがとう!」
「どういたしまして♡」
「うん、仲良しなのは良いことだけど、結果は覆らないから」
現実は、いつだって急に牙を剥いてくる。お勉強さん、私あなたに結構尽くしたんだよ? それなのにこの結果って酷いよね。DVなの? どすけべちっくバージンなの? 開発され尽くした挙句、私はお勉強さんにやり捨てされちゃうのかな? そんなことしたら、イマジナリーお姉ちゃんが黙ってないよ!*10
「メブキちゃん、あ・そ・こ」
へにゃへにゃメブキになりつつある私に、ハナコさんはすっごくえっちな声である方向を指差した。そこには……この世の終わりみたいな顔になってるコハルちゃんが居た。
「メブキに負けたメブキに負けたメブキに負けた……なんで? 夢? そうね、夢よきっと。あり得ないもん、そんなの。本来の私は正義実現委員の活動をしてて、こんなバカの巣窟にいるわけないわ。メブキがエッチ過ぎて見せられてる淫夢に違いないのよ、これは」
半分ダンゴムシさんになってるコハルちゃんは、あまりに儚い小動物と化していた。ちゃんと一年生用のテストを受けたはずなのに、コハルちゃんも赤点さん……私がテストに落ちるって確信してたのかな? それにしては、とっても落ち込んでるけど。
「コ・ハ・ルちゃん♡」
「……な、なによ」
ハナコさんは、すっごく楽しそうにコハルちゃんへ話しかけた。ニコニコしてて、可愛いハナコさんの笑顔を見てると私までにっこりしてきちゃう。
「私たち2人とも、きっちりメブキちゃんくらいの頭だったみたいですね♡」
コハルちゃんが、窓際からお空を見上げた。流れる雲は、ゆるりと風に乗っている。何となく私も隣に行くと、ハナコさんも並んで3人でお空を眺めた。……前世では、こうして窓を見つめるか、夏物のエロゲーしてる時に感じた感触。夏だーって気分。
「ねぇ、コハルちゃん」
「何?」
「私とコハルちゃんとハナコさん、3人並んでケルベロスメブキだね?」
「…………きっと何かの間違い、こんなアホアホメブキに負けるはずないもん」
「ふふ、地獄の番犬なんてとっても強そうですね。でも、私達はもっと違うもの、熱くて硬い交わりがあると思います♡」
「熱くて硬い!? エッチなのはダメ、死刑!!」
「エッチなんですか? ふふ、コハルちゃんは一体何だと思ったんです?」
「ヘンタイの言うことなんて、分かるわけないでしょ!」
「ピンクポッチーズ、とか?」
「メブキちゃん、すごく良いですねそれ。今日から私たちは、ピンクポッチーズです♡」
「ふ、ふざけないで! どう考えても硬くなってる乳首じゃない!! あんたのことなんて全部わかってるんだからね、このヘンタイメブキ!!!」
コハルちゃんは、本当に私のことを分かってくれてる。けど、その理解者の反対によって、私たちはピンクポッチーズにはなれなかった。鳴滝こよりちゃん、残念ながら私はあなたの意思を継げませんでした。どこか別の世界で、ピンクポッチーズの結成を心よりお祈りしております、まる。
「なるほど、ご報告ありがとうございます、先生。あと2回、ですね」
先生はその日の夜、ナギサへ補習授業部のことを報告しにやってきていた。柔らかに微笑む彼女は、一見すれば嫋やかな淑女で。けれども、その口から紡がれている言葉は、上品であっても柔らかさを微塵も含まないものであった。
「3回とも不合格なら、どうなるの?」
先生の問いに、ナギサは退学という言葉を以て応答する。驚愕する先生を尻目に、ナギサは事も無さげにシャーレの権限を流用して、退学手続きというものを可能にしたと語ってみせて。先生の眉を、僅かに吊り上げることに成功していた。
「そもそも、補習授業部は生徒を何時でも退学できるように作ったものです」
「どうして?」
「あそこにいる生徒達は、物事に対する変数だからです」
「変数?」
「えぇ。イレギュラー、アンノウンとも言い換えられます。それの何が困るのか、理解して頂くにはエデン条約について語らねばなりませんね」
ナギサは語った。あの日の、イマジナリーお姉ちゃんとは別の切り口での、彼女にとってのエデン条約について。明瞭に、理を以て。トリニティとゲヘナの平和への希求、それを遂行する覚悟についても。
「条約の締結直前まで来た、このタイミング。ここが、エデン条約の阻止工作が行える最後の期間なのです。私は、その妨害、または障害になり得る可能性を限りなく0に近付ける義務があります」
「でも、それなら退学にまで追い込む必要はあるのかな? これから行われる合宿は、文字通りの隔離措置になると思うけど」
「先生、もし条約締結に何らかの支障が生じた時、それが彼女達が起点になっていた場合に、直ぐに切り捨てる必要があります。私達トリニティと彼女達は、何ら関係がありませんと潔白を証明するためにも」
「……あの子達が、そんなことをする様には思えないけど」
「それは先生の私見に過ぎません。……ですが、そうですね。もし先生が、彼女達が何者なのか。それを探り、解明し、無害を証明出来るのならば、また条件は変わってくるのかもしれませんね」
ナギサの微笑は、何かを取り繕っている様に先生は感じた。疑心、不信、それらがナギサの周りを渦巻いているということも。
「先生、もしもの時は直ぐに報告をください。これは、トリニティだけではなく、キヴォトスの秩序のためにも。……それから、ごめんなさい。こんなことに巻き込んでしまって、こんな役回りを押し付けてしまって」
「……ナギサは、いま苦しんでいるの?」
先生の問いかけに、ナギサの笑みに少しの亀裂が入った。だが、それは奥底までナギサのことが見えるものではなく、直ぐに取り繕える技量を彼女は有していた。入ったヒビは、瞬く間に見えなくなってしまう。
「苦痛を他者に強いる者が、私も苦しいと言い訳するのは、実に滑稽ではないですか?」
「うん、だからナギサが無理に貧乏くじを引かなくても、良いんじゃないかなって」
「ふふ、綺麗事ですね。……ですが、私のためを思ってくれての言葉です。ありがとう、ございます」
陰謀、策略を弄している自分を気遣っての言葉は、確かにナギサの胸に染み込んだ。何事も信じきれなくなっている自分への嫌悪も、また己が内を渦巻いていたが。
「私は私のやり方で、彼女達が普通の生徒だって証明するよ。誰も……ナギサだって、苦しまずに済むように」
「期待しています、先生。ですが、私の懸念もお忘れなきように。試験についても、私の手のひらの上にあるということも」
自身への嫌悪を、ナギサは露悪的に振る舞うことで肯定的に捉えようとした。元から、自分などはこの程度の人間であるのだと、そう言い聞かせながら。
「どうかこの結末が……できるだけ、苦痛を伴わないものであることを願います」
「またね、ナギサ」
「はい、補習授業部をお願いしますね、先生。彼女達が何者であるのか、変数を暴いて定数にしてみせてください」
みなさん聞いてください!
人生で初めて、自分の小説のファンアートを頂きました!
嬉しくて小躍りして、パソコン蹴っちゃって焦りましたね。
こちら、豆腐餅さんから頂いたメブキのファンアートになります。一緒にメブキが可愛いことに喜んでいただけると、とっても嬉しいです。
【挿絵表示】