コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
ハナコに捕縛されたセイアは、密会場と化している先生の部屋へと連れてこられた。先生に久しぶりと声を掛けられ、居心地悪そうな顔をする。計画では、まだ姿を現すつもりはなかったから。
「メブキ、ちゃん?」
その中で、ヒフミだけは事前に説明は受けていても、やはりまだ感覚が追いついていなかった。中身が違うと聞いてはいるが、先生やハナコの言葉とはいえ、見た目はそのままメブキなのだから。
「いいえ、この子はセイアちゃん、百合園セイアちゃんですよ」
「ティーパーティの……でも、この表情は間違いなく、トイレに行きたい時のメブキちゃんです」
「メブキはトイレに行きたい時、毎回こんな顔をしているのかい!?」
妹がトイレに行きたい時、唇を結んでムッツリとしている。そんな事実を初めて知って、セイアは困惑した。何なら、自分が気まずい時と妹が尿意を催した時が同じ反応と聞いて、そこはかとなく嫌だった。
「お節介ですが、お手洗いに行きますか?」
「……結構だ」
「た、確かに口調が違います。本当にメブキちゃんじゃないんですね……」
一方でヒフミは、メブキがここまで不機嫌そうな顔をしているのを初めて見て、動揺を隠せなかった。いつものメブキなら、一緒におトイレ行こ? と誘ってきた挙句、"違うの、ヒフミちゃんのおしっこの音を聞きたかったんじゃないの! 私のなら聞いていいから許して! じょぼじょぼじょぼ"と、聞いてもいない言い訳を並べ立ててくる筈だから。
「前提は共有できたことだろう。それで、何が聞きたいんだい。まさか、私と水着パーティーがしたくて拉致したわけではないだろう」
胡乱な目でハナコに視線をやるセイアに、ヒフミは首を傾げて先生は曖昧な笑みを浮かべる。そして、皮肉を投げかけられたハナコは……必死に、笑ってしまいそうな自分を抑えていた。
「せ、セイアちゃんを呼んだのは他でもありません。聞きたいことが、沢山あるからです」
「……悪いが、全てには答えられない」
「それは、私たちが知っていると、不都合が起こるから?」
先生の問い掛けに、セイアは口籠もった。最終的に協力を得るために、全てのことを話さなくてはならないだろうが、この時点では事態をややこしくしてしまいそうだから。
また、試験についてはナギサは微塵も緩和するつもりはなく、更に締め付けるだろうことも考慮に入れると、あまり気をそぞろにされても困るというもの。信用していないというよりは、段階を踏んで欲しいというのが正直なセイアの内心だった。
「話をする前に、紅茶を入れてもらってもいいかな? 少し長くなりそうでね」
「分かりました、少し待っていてください」
セイアの要求に、即座に反応したのはヒフミだった。ナギサとの付き合いもあって、こういったことはお手の物であったから。
「それで……ヒフミちゃんに聞かせたくないお話が、何かあるんですね」
「──ナギサは命を狙われている」
ヒフミが紅茶を淹れに席を立った後、セイアが口にした言葉は端的で、けれどもハナコと先生が険しい顔をするには十分な言葉だった。
「……それは、セイアちゃんが行方をくらませて、メブキちゃんと一緒になっていることと関係がありますか?」
「そうだね、まず最初に命を狙われたのが私だと言えばいいかな」
「……セイアちゃん、あなたの身体はどこに?」
「言えないが、無事ではある。少なくとも、五体満足で生き延びている」
怜悧な顔を覗かせたハナコは、その言葉を聞いてホッと一息つく。確かに、紅茶が欲しくなるような、そんな落ち着かない話し合いになっているとも思いながら。
「ヒフミも直に戻るだろうから、端的に伝える。私を暗殺しにきたのはアズサだ」
「アズサ──アリウス?」
「ミカから聞いたのかな? あぁ、そうだ。アリウスが、トリニティを傀儡にしようとしているのさ」
「先生のその反応……ミカさんは、アリウスと繋がっている?」
「話が早いね」
ここまで情報が揃えば、ハナコは容易に答えにたどり着ける。たどり着いて、陰謀の糸に嫌悪を感じはしたが。
「ミカさんを唯一のティーパーティとし、ゲヘナとの全面戦争に持ち込むのがアリウスの青写真ですか」
「アリウス、かつてトリニティ統合を目指した第一回公会議で、強硬的な姿勢を崩さずに弾圧された分派の一つ。弾圧の果てに追放された彼女らは、辺境の奥底でずっと復讐する時を待ち望んでいた。元から憎んでいたゲヘナと、自分達を無かったことにしたトリニティへ」
空気が暗くなって、口が皆重たくなった。愉快と笑えるほどに他人事でなければ、性格も悪くない。真面目に考えれば、気が滅入りそうな気分にもなる。
「でも、アズサは君を殺さなかった。そうだよね」
そんな中で、先生の言葉には悲観も悲壮も含まれていなかった。ただ、一つの事実を提示しただけ。なのに、セイアとハナコの顔には、少し色が戻っている。その事実こそが今は肝要だという認識が、共有されたのだ。
「だからこそ、私もここで話をできている。アズサは、トリニティと争わない道を選んだ。アズサが君たちと一緒にいる時に見せる気持ち、これが本物なのは私が保証する」
「それは、予言ですか?」
ハナコの問い掛けに、セイアは苦笑した。確かに、そう尋ねるのが何よりも確実だから。なので、その返答も悩ましかった。何故ならば、これは別に予言でも何でもないのだから。
「残念ながら、これは予言じゃない。そういう未来もあるけど、これはもっと不確かな、形のないものだ。──信頼、かな」
あえて口にしてみた言葉、セイアはその頼りなさに何だか落ち着かず、ハナコは驚きで言葉を停滞させてしまっていた。あのセイアが、偏屈で周りの理解も共感も得ないし必要としなかった人が、信頼が証だと言ってのけた。以前の彼女ならば、錯覚として切り捨てただろう概念。
思わず、ハナコはセイアにスリスリしていた。ワンチャン、メブキなのではといった疑いが生じたのだ。当然、身体はメブキでも心はセイアなので、鼻血も出ないし想像妊娠もしなかった。
「急に何をするんだ、ハナコっ! そんなことをされて喜ぶのは、メブキだけで私は嬉しくない。……しかし、続けられるとメブキが目を覚ますかもしれない。ハナコの心だけでなくて、身体も好きなんだ、あの子は。このままでは、本能で目覚めかねないぞ」
トンチキなことを言っている自覚はあったが、セイアも含めて全員が確かにと納得した。にゃーんと言う幻聴が、三人の頭の中で乱反射して聞こえたのだ。
「名残惜しいですが、仕方ありませんね」
「全く、メブキのすけべが悪化しているのは、君にも一因があるんだと自覚してほしい。こんなこと口にはしたくないが、あの子は君に憧れや尊敬、友情の他に……その、感じてしまってるんだ、そういうものを」
酷く口ごもりながらの発されたセイアの言葉に、ハナコの中のセンサーが反応する。あの百合園セイアが、そういう話題を自ら口にした。あまりに美味しい展開に、ハナコは自制心のタガが緩んだのを自覚する。
「そういうこととは、どういうことですか?」
ニコニコと、満面の笑みだった。それに気が付いたセイアの顔は、逆に渋柿を食べたみたいになる。メブキが寝言で、それは白濁液と宣ったのが聞こえて、余計に衝動的になりそうだった。
私にそんなものを飲ませるなっ!
心の底で言い捨てて、セイアはヤケクソ気味に先生へと矛先を向けた。ダンマリを決め込んでいるが、口角が少し上がっている。タチの悪いことに、自分とハナコのやり取りを楽しんでいるのだと、セイアはすぐに察することができたから。
「先生、君もだよ。メブキは明確に君を意識してるし、恋愛感情はなくともずっと一緒には居たいと思っている。確かに先生にならメブキは預けられるが、まだ早いんだ。結婚するのは二十歳を過ぎてから、そう約束してもらえるかな?」
「待って、セイア。どうして私がメブキと結婚することになってるの!?」
「逆に聞くが、あの子の面倒を見てくれる物好きはどこにいるんだい?」
「きっといい人がどこかに……」
「そうだね、ちょうど私の目の前にいる」
圧の強いセイアに、先生は前までに感じていたミステリアスな雰囲気とのギャップで、頭がバグりそうになる。明らかに妹を押し売りに来ている彼女は、もう姉を超えて親になっていたから。
一方、セイアの豹変ぶりを見たハナコは、もう笑いを堪えきれなくなっていた。思っていた展開とは違うが、想像以上に斜め上な反応に愉快さを隠せない。
いつも静かで、理解者なんていないと言いたげな友人の変化に、ハナコは思いの外自身が喜んでいることに気がついた。人は変わっていける……まあ、変わり過ぎている気もするが、それが喜ばしい変化だと感じたから。自分も、いつかはこんなふうになれるのかもしれないと、そんな期待も持って。
「紅茶、淹れてきまし、た?」
そうして、紅茶を持って戻ってきたヒフミの前には、セイアが一人で憤慨している姿。先生は曖昧に笑い、ハナコは口元を抑えて笑っている。何があったのかわからないが、ひとまずヒフミはセイアにカップを手渡した。思っていたより、感情が出やすい人なのかなと思いながら。
「ありがとうヒフミ、いつもメブキがお世話になってるね。メブキも君のことがとても大好きだ。これからも、是非仲良くしてあげて欲しい」
「こ、こちらこそ、セイア様。私もメブキちゃんのこと、とても好きです。初めて、モモフレンズを語り合える友達になってくれましたし。それに、いつも愉快で楽しいですから」
「その、いつも迷惑をかけているね。すまない」
「いえ、今のメブキちゃんは、ペロロ様人形に豊胸マッサージをしているだけなので……」
「それと同じ感覚で揉まれたのか、私は……」
「セイア様?」
「いや、何でもない。本当に何でもないんだ」
セイアの脳裏によぎるのは、先ほどまでいた夢の内容。
『おねーちゃん、おっぱいは愛情を込めて揉むと大きくなるんだよ! 好き好き好き、だーいすき!』
『自分の胸を揉んでくれ、何で私のをっ! あ、こら、やめないか!』
『お姉ちゃんも、後で私の揉んでね?』
『やるわけないだろう、そんなこと!』
そんな妄言を吐きながら、夢で揉まれた胸に微妙な気持ちになる。ペロロ様、いっぱい大きくなるんだよ? と言いながらぬいぐるみの胸部をグリグリしていたメブキは、同じ感覚で自分の胸を揉んでいたのか。色々と最悪な想像だったので、全てを忘れて目を逸らす。今は、そんなことに気にしている時でもなかったから。
因みに、メブキは女性同様に、男性の性器も愛情を込めて揉むと大きくなるという信仰を抱えていた。隆起した状態じゃなくて、通常サイズが。なので、これからも時折先生の先生は狙われ続けることとなる。色々と残念な上に酷い話だった。
「それで、その、セイア様はどうしてメブキちゃんと一緒になったのですか?」
一度落ち着いてから、ヒフミがおずおずと質問をした。それは、セイア以外の三人ともが有していた疑問。メブキとセイア、二人がどういう状態にあるのか。一つの体に二人の意識、それもそれぞれ別人の。これだけで、尋常じゃない状態なのではと邪推してしまうには十分なもの。心配が故に、ヒフミは不安を滲ませていて。
「まず最初に分かって欲しいのは、今の状態がメブキに害を及ぼしているわけではない。むしろ、私はメブキを守っている。それは信じて欲しい」
「それは……メブキちゃんのヘイローが、セイアちゃんのものと同一であることと、関係ありますか?」
「まあ、そうか。これがあったから、ハナコもメブキの中にいるのが私だと断定できたんだね」
メブキのヘイローは、セイアと全く同じの十字架のもの。セイアを知っている人が見れば、まず既視感を覚えるヘイローだった。
「そのヘイローは、セイアちゃんのもので間違いありませんね?」
「正真正銘、私のものだ」
「なら、メブキちゃんのヘイローは……」
「ない」
端的な言葉に、ヒフミは息を呑んだ。生徒がヘイローを有していない、それはこのキヴォトスにおいて死に限りなく近い状況を示唆するものだから。セイアのメブキを守っているというのは、そのままの意味合い。文字通り、メブキの盾にセイアがなっている。だから、メブキがこうしてキヴォトスで活動できている。そうでなければ、きっとメブキは既に死亡していることだろう。
「……メブキちゃんは、生徒でない?」
「それは……先生はどう思う?」
ハナコの悩ましげな呟きに、先生は至ってフラットに回答した。いつも通りに、ことなさげに。
「メブキは私の生徒だよ。どこから来て、何者だったとしてもね」
「うん、先生ならそう言ってくれると思っていた。この子は、みんなと一緒に居たいんだ」
「はい、メブキちゃんは、私たち補習授業部の仲間ですし、大切なお友達です!」
先生が認めて、ヒフミが言い切った。だからハナコは、それ以上の詮索は打ち切った。メブキの身に危機が迫っているのならばともかく、今はセイアが護っている。複雑な事情が絡まっているが、今それを解き明かすのは最優先のものではないから。
「私とメブキは、現状なんら問題がない。だから、そのことで不安になる必要はないんだ。目下に迫っていることへの対処を、今は優先したほうがいい」
「うん、分かった。信じるよ」
セイアに誤魔化された気もするが、確かにナギサからの依頼も遂行しなくてはならない。今の調子だと、全員合格出来そうではあるが、それと同時にナギサが感じている疑心が晴れればとも先生は思っているから。
それに、セイアがメブキを妹と呼んでいる時の想い、これも嘘ではないと感じたから。メブキも、彼女をイマジナリーお姉ちゃんとして慕っている。だから、先生はまた話せば良いと、安全だけ確認出来たので解明は後回しにした。何度だって、セイアとも話す機会はあるだろうから、と。
「でも、メブキちゃんのことが分かったので、これでナギサ様にアズサちゃん以外のことについて報告できます!」
ヒフミは無理難題と感じていた課題に光明が見えて、明るい気持ちで前向きになっていた。
メブキはセイアが住み着いていて、ハナコはワザと成績を悪くしていて他意はなく、コハルは単純に成績不良。自身のことについては……ブラックマーケットに出入りしていた事実を認めて、謝罪をすれば良い。あと一歩と気合を入れるヒフミに、先生は待ったをかけた。ミカから聞いていたアズサのことは、伝えても良いと思ったから。
「アズサは、かつてトリニティと統合できなかった、アリウスって学校から来ているんだ。また、トリニティでアリウス生がやっていけるのか、その検証のためにね」
「そうなんですか!?」
「うん、アズサの入学を許可したミカから聞いたし、間違いないよ」
「なら、もうナギサ様に報告に行けますね!」
先生から話を聞いたヒフミは、とても明るい表情になった。いまの今まで、ヒフミの脳裏には退学の二文字がチラついていたから。ナギサは謎を解き明かせば、この厳しすぎる条件を緩和してくれると言っていた。普通の、みんなが安心して過ごせる合宿が、ヒフミは何より欲しかった。
「一旦、私がまとめて報告するから、ヒフミはみんなの勉強の方をお願いできないかな?」
ただ、まだ裏があることを知っている先生は、待ったを掛ける。ヒフミの報告を、ナギサがそのまま鵜呑みにするのだろうかという疑問もあった。どうすれば、ナギサはこちらの言い分に耳を貸してくれるのか。まずは、そこからだった。
「分かりました、お願いします先生!」
「うん、任せて」
先生にとって幸いだったのは、ヒフミは先生を信頼してくれていたこと。素直に納得して、自分にできることをしようという献身と懸命さを備えていたことだ。
「ナギサ様、これで安心してくれますよね」
ヒフミのポツリと漏らした言葉に、反応できたのは一人だけだった。
「ナギサは今、疑心暗鬼の靄の中にいる」
「セイア様?」
「疑わしいこと、不思議なこと、やりたいこと。様々折り重なって、信用する方法を見失ったんだ。だから、こんな試すような行動をとってしまう」
今のナギサの行動、それは信じてもいいのですか? と不安に揺れながら問いかけるが如き行為……にしては、連帯責任だの退学だの、代償が大きすぎるものだが、補習授業部の皆を絶対に処分しようとしての行動ではない。それがセイアから見たナギサだった。
「ヒフミ、今度ナギサに会った時は、貴方を護りたいと伝えてあげて欲しい。君ならば、ナギサの蟠りを解き切れるかもしれない」
発せられた言葉の意味を、全て理解できたわけではない。でも、ナギサの味方をしてあげて欲しいという、セイアの意図は汲み取れたから。ゆっくりと、ヒフミは頷いたのだった。
「それでは、今日はこれくらいでお開きにしよう」
「セイアちゃん、もうですか?」
「もうも何も、既に夜中だ。今日は珍道中もあって疲れているのに、揃って無理をしてるだろう」
セイアの言葉で、ヒフミは自身が疲れていたことを思い出した。一方で、ハナコの癪に障る言葉でもあった。
「それはメブキちゃんもです。毎夜毎夜、出かけてばかりではメブキちゃんの身体が持ちません。今日も眠たそうだったんですよ?」
「それは……言い返せないね」
正鵠を射た言葉に、セイアはバツが悪そうな表情を浮かべるしかなかった。事実、メブキは日頃からアドレナリンドバドバではあるが、今日は眠たそうにしていたのだから。
「分かった、気をつけるよ」
妹に無理をさせすぎるのは、セイアの本意ではない。それに、幾ら大事な時期であっても、体調を崩したらセイアは面倒を見てあげられないから。
「それから」
落ち込み気味にメブキのベッドに帰ろうとしたセイアに、ハナコはもう一つだけ、伝えたいことがあった。それは、セイアが姿を見せなくなってから、ずっと思っていたこと。
「セイアちゃんが姿を消して、どこにも居なくなって、ずっと心配していました。次からは、一声くらい掛けてください──友達、なんですから」
「……すまない、悪かった」
ハナコの声音は鋭利なのに、セイアの胸には刺さるのではなく届いていた。自分がここまで気に掛けられていた、その事実に今更ながら気が付いたのだ。
「私も、君を友達だと思ってる、ハナコ」
滅多に口にしないことを宣言して、セイアは気恥ずかしくて堪らなくなった。それを振り払うようにして、足早にこの場を後にする。残されたのは、そんなセイアに温かな視線を向けるハナコと、感心するようにその様子を眺めていたヒフミ。あと、微笑ましそうに見守っていた先生。誰も、ハナコがスク水なことにはツッコもうとしていなかった。
「あ、おかえりー、お姉ちゃん!」
「ただいま……何をしてるんだ、一体」
「んとね、ローション豊胸体操!」
スク水に着替えた私は、にゅるにゅるとお胸を触っていたの。モミモミ出来ないくらいにぺったんこだから、代わりにローションで擦るスピードをアップしてたんだよ!
「そこまでいくと、もう確実にいやらしい行為なんだ。私と一緒の時にやらないでくれ」
「違うの、待って! 全然気持ちよくならないの、だから一人えっちじゃないんだよ? でもね、なんかお胸はおっきくなった気がする!」
「気のせいだ」
「デカパイメブキだよ?」
「気のせいだ」
「そんなことないよ!」
「気のせいだ」
そんなバカなとお胸をサワサワする。……ほんとだ、モミモミ出来てないからおっきくなってない! なんで!!
「気のせいだった!」
「だろうね」
「私のおっぱい、どこ?」
「未来にしかない」
「そっか、なら将来はお姉ちゃんを養えるね!」
「なんで君の乳で養われなければならないんだっ」
お姉ちゃんは、時折おかしなことを言うね。妹に養われるの、そんなに嫌かな? 私、今まで養われる立場だったから、恩返ししたいんだよ? ちゃんとお姉ちゃんがおっきくなれるように、栄養満点のおっぱいになるの!
「大丈夫、立派なおっぱいになるよ、私」
「妹の乳を啜る姉は、紛れもなくヘンタイなんだ」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんがヘンタイさんになっても、私ずっと一緒にいるから!」
「ヘンタイが嫌だと言ってる!」
「ヘンタイのお姉ちゃん、嫌じゃないよ?」
お姉ちゃんはツカツカとこっちに来ると、指をパッチンする。すると、スク水もローションもなくなっちゃって、私はパジャマ姿に戻っちゃってた。
現実だとローションはコハルちゃんに御禁制にされちゃったのに、酷すぎるよ!! 豊胸体操の邪魔するなんて、やっぱりお姉ちゃんはヒンニュー教徒だったんだね。道理でおっぱいが小さいはずだよ!
……でも、お姉ちゃんとお揃いなのは、悪くないかも?
「お姉ちゃん、私、お揃いパジャマがいいな?」
「分かってる、ちょっと待って」
お姉ちゃんが指を鳴らすと、私とお揃いの猫さんパジャマに早替わり。夢の中だと、大体のことが指パッチンで解決するの。すごいね?
「お姉ちゃん、ぎゅーっ!」
「はいはい、ぎゅー」
わーい、とベッドに飛び込んで、お姉ちゃんを抱きしめる。こんなにロリロリ狐さんなのに、私よりもおっきいのはおかしいね? でも大好き!!
「お姉ちゃん、頭ナデナデして?」
「君は甘えん坊だね、将来が心配だよ」
「えへへー、私の将来はねー、お姉ちゃんの妹でね、ヒフミちゃんの愛猫でー、ハナコちゃんの赤ちゃん! それから、アズサちゃんとお勉強さんの愛人でー、コハルちゃんの親友なの!! 先生はね、みんなの旦那様になってるよ!」
なりたいものが多すぎて、全部乗せになっちゃったね?
「もう何者か分からなくなっているじゃないか」
「お姉ちゃんにナデナデされながら、ヒフミちゃんにご飯もらってにゃーんする毎日だよ」
「人間ですら無くなったか」
「コハルちゃんとえっち本見たり、ハナコちゃんにバブバブする時は、ちゃんと人間に戻るね?」
「常に人間でいてくれ」
お姉ちゃんもケモミミ狐なのに、変なこと言うね? でも、そんなに人間の私が好きなら、ずっと人間でいちゃおっかな。転職先希望は触手さんだけど、お姉ちゃんは許してくれなさそうだし。
「お姉ちゃんが、いつまでも私のお姉ちゃんでいてくれたらそうするね?」
「そんなもの、私が望んでそうするさ」
「お姉ちゃん、好きって言って!」
「それは流石に恥ずかしいな。……メブキは可愛い妹だよ、これで勘弁してもらえないかな?」
「にゃ、にゃーーーーんっ!!」
「人間でいてと言ったそばから、早速猫になるんじゃない」
えへへ、嬉しいね? お姉ちゃんもカワカワロリ生物だから、いっぱい甘やかされ系お姉ちゃんになってね? 甘えるのも大好きだけど、甘やかしてあげたい欲も、私あるよ!
「お姉ちゃんお姉ちゃん、いつもみたいにASMR耳元でして?」
「まったく、しょうがない妹だ」
お姉ちゃんは耳掻きを用意してくれて、優しく耳掃除してくれながら、お耳に囁いてくれる。何回も聞いた、まるでお母さんの味みたいなASMRだよ……ふにゃーん。
「よしよし、勉強をいつも頑張って偉いな。メブキは自慢の妹だよ」
「えへへー、お姉ちゃんも自慢のお姉ちゃんだよぉ」
あう、夢の中なのに、眠くなってきちゃった。うー、まだまだお姉ちゃんと一緒にいたいのに、でも、気持ち良くて逆らえないよお……。
「おやすみメブキ。いつか、きっと二人で暮らそう。出来るようになるさ、君が本当の意味で──生まれ変われる日が」
「うにゅ、おやすみなさぃ、おねーちゃん……」