コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
私達、試験に落ちちゃうと退学になっちゃうんだって。ビックリだね、驚いてお腹が痛くて堪らなくなっちゃったよ。
優しさを求めてバファリン飲んじゃったけど、アレってお腹に効くんじゃないんだって。生理痛に効くらしいから、ハナコちゃんの赤ちゃんがお腹にいる間は必要ないみたいだね。また一つ、テストで使わない賢さが上がっちゃった。
………………何で?*1
あの試験の告知を受けてから、私達は退学の危機にあるんだってハナコちゃんが話してくれたの。この話を知っていたのは、ハナコちゃんにヒフミちゃん、それから先生だけだったんだって。
そうだね、アズサちゃんはともかく、私やコハルちゃんはお腹がギュウってなって集中できなくなっちゃいそうだし、聞かなくて良かったって思うな。
でも、いま知っちゃった。急にテストの点数が上がって、それにゲヘナで試験を受けなきゃダメなの。それも、夜の3時なんて時間に。
夜まで予習してて、すぐに出発しないと間に合わない時間。だから慌てて、私達は出発して。試験会場に向かう途中のチンピラさんたちを、千切っては投げてを繰り返しながら進んで行ったの。
ゲヘナって、生徒のみんながオーク並みの性欲を持っていて*2、道中で次々と私達に襲いかかってきたのは怖かったかな。でも、みんなと力を合わせて、私達の処女と先生の童貞を守り続けたの!
途中で美食研究会の人達も来て、今回は私たちを助けてくれたんだ。今回もフウカたんは縛られてたけど、緊縛プレイの実験でもされちゃってたのかな。可哀想だったから解いてあげたよ。
そうして私達は、フウカたんの車を強奪した美食研究会の人達のお陰で、苦難の果てに試験会場まで辿り着けたの。ゲヘナって爆発しまくる土地柄なんだね、怖すぎるね?
最後なんて、ハルナさんが美食は滅びません、またお会いしましょうって言いながら、車ごと川に沈んで行ったし。虚淵さんの作品くらい、治安が悪い土地柄だよ、ゲヘナ。
そうして、苦労の果てにたどり着いた私達は、試験を開始しようとして。──爆発、しちゃったの(性欲がじゃないよ!)。
物理的に、建物だけじゃなくて、周辺の土地も含めてドッカーンって。それでね、テスト用紙も跡形も残らずに消し飛んじゃったんだ……。
第2次特別学力試験、結果──
浦和ハナコ──試験用紙紛失(不合格)
阿慈谷ヒフミ──試験用紙紛失(不合格)
白洲アズサ──試験用紙紛失(不合格)
下江コハル──試験用紙紛失(不合格)
春風メブキ──試験用紙紛失(不合格)
補習授業部、第2次特別学力試験──全員不合格!
……こんなこと、許されても良いのかな?
そんなことがあって今、合宿所にボロボロで戻ってきた私達の間には、すっごく暗い空気が漂ってる。特に、私とコハルちゃんの間には。
「もう嫌っ!! こんなことやってらんない! 分かんない! つまんない! めんどくさい!」
「もう、舐めるしか……脚だけじゃ足りない? 大切なところを舐めて、バターメブキになるしかないの? テロは出来ないから、ペロに走らなきゃ。ペロリストメブキ? あ、それ、過激派ペロロ様ファンのお名前だったね、ふへへ……」
私とコハルちゃんは荒れに荒れていた。だって、どうすれば良いかわかんないもん。お勉強、一生懸命頑張ったの。本当のほんとに、今までの人生で一番。でも、やっと達成できそうだった条件が引き上げられて、もう絶望一直線。闇堕ちしちゃいそうになる、ダークネスメブキだよ*3。
「二人とも……えっと、その、こうして集まっているのは、退学せずに済むようにするためですし、とりあえず、その……今はみんなで知恵を寄せ合って、何かいい方法を探さないと……」
そんな中で、ヒフミちゃんが前向きなことを言ってくれてる。けど、実際にどうすれば良いの? 私、お勉強は得意じゃないの。だからこのままだと、退学になっちゃう。いっぱいの思い出と沢山のこれからがあるトリニティを、離れなくちゃいけなくなるの。そんなの、やだよ……*4。
「コハルちゃん、それにメブキちゃん。……今の私たちは、黒ずんで萎れてしまっている、お胸のぽっちそのものなのかもしれません」
「は?」
「頑張り続けた姿が、擦り続けた乳首に似ているってこと?*5」
「そうです」
いっぱいいっぱい頑張った挙句に、残されちゃったのは草臥れた乳首だけ。確かに、今の私たちそっくりだね? そっか、私たち乳首だったんだ。ふへへ、先生に毎日ペロペロしてもらえたら、輝く桜色になれるのかな?*6
「このままでは、あのころの綺麗なピンク色に戻ることはないかもしれません。ですが、諦めるにはまだ早いと思います。キラキラ乳首に、戻りたいと思いませんか?」
「でもね、ハナコちゃん。90点は難しいと思うの……」
「フフ、確かにそうかもしれません。ですが、思い出してみてください。私が前のテストで何点だったかを」
ハナコちゃんの前のテスト? ……そういえば、ハナコちゃんは前の模試で100点取れちゃってたね。自分のことが嬉しすぎてあんまり気にしてなかったけど、ハナコちゃんの真の実力が解放されちゃってた。うん、ハナコちゃんの乳首は、確かにきらめきを取り戻してたね。
「私、知ってるよ? ハナコちゃんはメガハナコ様だって」
「いいえ、違いますよメブキちゃん。私はメガハナコではありません」
「私にとっては、いつまでも女神様だよ?」
「ありがとうございます、ですが……私は人間で、それでいてメブキちゃんの友達です」
とっても嬉しいことを、ハナコちゃんは言ってくれる。うん、温かい。ハナコちゃんな思いやりは、ありがたいな。でも、今だけはあんまり素直に喜べないや。
「うん、ありがとう。……でもね、イメージが浮かばないの。キラキラでおっきした私の乳首の姿が」
ハナコちゃんのは、すぐにだって想像がつく。すっごくキラキラ乳首してるんだって、すぐに分かっちゃう。他のみんなも、コハルちゃんだってそうなれるって思う。
でもね、私ってずっと不健康な身体で、ガリガリの鳥の骨さんだったから。全然、ぼっきっき乳首になんてなれそうにないや……*7。
「メブキちゃん……」
すっごく心配そうな、ハナコちゃんの声。ごめんね、そんな気持ちにさせちゃって。でも、ちょっと今はしんどい、かな……。
「だ、大体、ティーパーティの偉い方々が私達を退学にさせようとしてるなら、勉強してても無駄になるじゃない!」
そんな中で、耐えられなかったみたいに、コハルちゃんがシャウトする。……そうだよね、それもあったね。退学、私だけでも嫌なのに、他のみんなまで……どうしよう。
「先ほどのように、ありとあらゆる手段を取られると、確かに難しいかもしれませんね」
「そうよね! そもそも、なんで退学なんかにならなきゃいけないわけ!? 意味分かんない、どうして私たちがこんな目にあってるの!!」
「……補習授業部には、ナギサが信じてあげられなかった生徒が集められたんだ。エデン条約に、危害を加える可能性のある生徒を」
追加で、先生からとんでもないことを聞かされちゃった。私たち、テロリスト予備軍だって思われてたみたい。頭悪いとテロに走るんだって、偉い人は思っちゃってるのかな。酷いね?*8
「そうですっ、先生! あの報告、みんなは無実だという報告は!?」
「上手く伝えられなくて、信じてもらえなかった。ごめん、ヒフミ」
「そんな……ナギサ様に連絡しなきゃ。あれ? ……繋がらない」
みんながみんな、上手くいってないことがあるみたい。いつも頑張ってくれてるヒフミちゃんまで、曇り顔になっちゃってる。そっか、友達が落ち込んでるお顔って、確かにみてると落ち着かない。ヒフミちゃん、そんな苦しい顔しないでって思っちゃうもん。
「これ以上、ナギサさんがよからぬことをしないように、見張る必要がありますね」
「……ぐすっ、無理、絶対無理よ。……頑張ったの、ここまですっごく頑張ったの、頑張ったもん! バカなメブキだって一生懸命で、精一杯やってたのに、こんなのあんまりじゃない……」
「コハルちゃん……」
あのコハルちゃんが、泣いちゃってる。いつも頑張り屋さんで、優しくて、私のことを見捨てずにずっと一緒にいてくれてる親友が。私のことも思って泣いてくれてて、胸がぐちゃぐちゃしてくる。慰めてあげなきゃって思って、なのに私、どうすれば良いか分かんない*9。
でも、気持ちはなんか、分かる。コハルちゃんのこと、分かっちゃう。こんなに頑張ったのにって気持ちは、勿論あるの。でも、それよりも自分のせいでって。自分が足を引っ張っちゃうから、みんなに迷惑をかけてるのが、何よりも苦しくて辛いの。──分かっちゃうから、慰めてあげられない。私だって、迷惑を掛けちゃう側だから*10。
「……ちょっとお外に行ってくるね」
「メブキちゃん!?」
ここで私が泣いちゃったら、もうダメになっちゃう。知ってるの、そういう時のこと。私が泣くとね、お母さんも泣いちゃって、お兄ちゃんは悲しそうなお顔で必死に抱きしめてくれた。でも、結局周りに悲しさをお裾分けしちゃっただけで、みんな疲れちゃうって知ってるから。私、こういう時に泣いちゃう時は、一人でこっそりって決めてるの*11。
足早に、お部屋を後にする。コハルちゃんをほっとけないから、誰も追いかけてこれないよね? 一人になりたかったから良かった、うん、良かったよ。
そうして、私はプールまで来ちゃってた。最初に、補習授業部のみんなで楽しいことをした思い出の場所。そこで三角座りをして、顔を埋もれさせれば完成。……ずっと屋上で青春を眺めてた時の、一人ぼっちの時を思い出すね*12。
なつかしい感触。遠い昔みたいに思っちゃうのは、いっぱいあったからだね。楽しいことがいっぱい、嬉しいこともいっぱい。全部、トリニティのみんなや、仲良くしてくれた先生たちがくれたもの。だから、退学になっちゃったら、それが全部無くなっちゃう。……私、何もなくなっちゃうよ*13。
「な、んで? 私、バカなウマシカだから、ダメだったの?」
顔を膝に押し付けると、ポロポロと涙が出てくる。これも、懐かしい。悔しくて、悲しくて泣いちゃうなんて、本当に久しぶり。まるで、前世に戻ってきたみたい。痛くないのに泣けちゃうなんて、贅沢なのにね。
「転生、したいよぉ。ひっぐ……ウマシカな、私、じゃなくて、もっと、賢くてりっぱな私、に*14」
泣いてて、声が詰まって、でもちゃんと言葉になってる。私って、こんなにダメな子だったんだねって、余計に分かっちゃう。転生してもバカは治らないって、自分で証明しちゃってるのにね?
「うぅ……」
「──セイアちゃん?」
そんな時に、誰かの声がして。慌てて涙をゴシゴシ拭う。こんなの、他の人には見せられないし。
そうして、なんとか涙を引っ込めて顔を上げたら、目の前には月からホームステイにでも来てそうな、キラキラで綺麗で可愛い絶世の美少女さんがいた。……ウマシカな私を転生させにきてくれた、天使さんかな?*15
「こ、こんばんは?」
「泣いてたんだ……はい、これ」
挨拶すると、ハンカチを差し出してくれた。やっぱり天使さんなのかもしれない。アズサちゃんと並べると、美少女コンテストだって開催できちゃうね。
「あ、ありがとうございます、ずびーっ*16」
「うわぁ、鼻かんでる。えっと、そのハンカチあげるね⭐︎」
「ありがとう、ございます。代わりにこちらをどうぞ」
「えっと、これ何かな?」
「木彫りのハメドリくん、です」
ポケットに偶々入ってた木彫りのハメドリくんを渡すと*17、優しい人はジッと睨めっこを始めちゃってた。いろんな角度からハメドリくんを見て、何かを確かめてるみたい。オスかメスかを確かめてるのかな?*18
「えっと、ハメドリくんは性別上はオスですけど、ポリコレ上はメスの幸福の青い鳥です。玄関に置いておくと、淫気が良くなります*19」
「そうなんだ、でもキモいから置かないね」
「ハメドリくんはキモいけど、キモくないハメドリくんはハメドリくんじゃないので……」
「要するに、キモいってことだね」
「はい」
お話をしてると、なんかちょっと元気になってくるね。ニコニコしながらお話をしてくれるから、こっちも何だか気分が良くなってくるの。でも、この人、どこかで見たようなお顔だね。どこだろ……ん? あっ!?
「ティーパーティの聖園ミカしゃん!?」
「アハハ、いま気が付いたんだ。そうだよ、私が聖園ミカしゃんだよ⭐︎」
知ってる、トリニティの偉い人だよね、この人。毎年、各派閥が輪姦? 制で交代ばんこでえっちして、最後まで生き残った人がトップになるの*20。女の子同士だから、処女は無事だったのかな。それとも、バイブで破られちゃうのか……私には絶対に参加できない、恐怖の権力争いだよ。
あれ、偉い人……あっ!?
「あの、あのあのあの!」
「テンパらなくて良いよ」
「はい、おちちつきます!」
「ふふ、お乳はお餅じゃないよ」
お乳はお餅じゃない。確かにその通りだけど、ミカさんのお胸はお餅のようにモチモチそうだった。イマジナリーお姉ちゃん、お姉ちゃんのお胸でパイつきすれば、おっきくなるかな?*21
……って、そうじゃないよ! 今なすべきことが、私にはあるの。偉い人が、こうして目の前にいてくれてるんだから!
「あの! 足を舐めても良いでしょうか!!」
「え?」
「ペロペロして、忠誠を誓っても良いでしょうか!!!」
「ええと」
「それで、そうしたら、みんなの退学を取り消してもらえますか!!!!」
「……そういうことかぁ」
私は昔、コハルちゃんの前でやったように、四つん這いになって土下座する。本当は全裸の方が屈辱感あって良いってブラック企業もののエロゲーで学んだけど、それはもう私が耐えられなくなっちゃう。
ブラック企業って、女性社員がミスしたら全裸で土下座させた後、立たせて反省文を読ませた後に、私は無能ですって言わされるんだよね。私がそんなことさせられたら、数秒で精神崩壊しちゃう。働く女性ってすごいね? でも、そんな人たちには敵わなくても、足舐めを要求されたら即座に実行に移せる高機動型メブキなんだよ?*22
「こーら、そんなことしちゃダメ」
でも、そんな私の誠意は、ひょこっとミカさんに持ち上げられちゃって潰えちゃった。どして?
「全裸で土下座しなきゃ……ダメですか?」
「土下座いらないから」
「私、いらないから追放されちゃうんですか!?」
「そんなことしないよ。ほーら、たかいたかーい⭐︎」
「ほわーっ」
ミカさんは、とっても力持ちみたい。私の身体が簡単に持ち上げられて、夜空が少し近くなる。……俯いてて気が付かなかったけど、星ってこんなに綺麗だったんだね。なんか、久しぶりに気がついたよ*23。
「ほわわー」
「喜んでくれてる?」
「……はい!」
ミカさん、私を赤ちゃん扱いしてるね? うん、私の扱い方をよく分かってくれてるよ! 私、こうして甘やかしてもらえるの、大好きだもん!*24
「そっか、良かった。
でも、セイアちゃんの妹がこんなに弾けた子だなんて、知らなかった。理屈っぽくて、嫌味に羽が生えてるって思ってたのに*25」
「ミカさん、イマジナリーお姉ちゃんのお友達さんですか?」
「せ、セイアちゃん、そんな呼ばれ方してるんだ。確かに姿見えないし、声もセイアちゃんのじゃないもんね!*26 もう、メブキちゃんって面白いんだから!」
ミカさんは、なんかツボに入っちゃって、ケラケラと可愛く笑ってる。わぁ、可愛いって思って、先輩さんって分かってるのに頭をナデナデしちゃったら、一緒にキャッキャして喜んでくれたの。ミカさん、可愛くて素敵だね?*27
もっと遊んでほしいなって見つめると、今度はそれそれーって、フワッと真上に投げられて戦慄したよ! でも、ちゃんとキャッチしてくれて一安心。スパイラルマタイしなくてすんだよ!
でも、これで分かっちゃった。やっぱりイマジナリーお姉ちゃんの妹で居たいし、みんなの友達でいたいから転生したくないよ! きっとミカさんは、それを教えるために私に他界他界してくれたんだって!*28
「でも、良かった。セイアちゃんが変わった理由、なんか分かったし。……メブキちゃん、私の妹になってみない?*29」
「ふぇ?」
「ふふ、なんてね⭐︎ セイアちゃんを揶揄ってみただけだよ。今までイジワルなこと、言われてきたお返し*30」
「仲良しさんのイタズラですね!」
ミカさんとイマジナリーお姉ちゃん、結構仲良しさんなんだね。もしかして、足を舐め合う関係だったのかな? 先生は、足を舐めるのは親愛の証だって思ってるし、もしかしたらそれがキヴォトスのスタンダードかもしれないね*31。
「メブキちゃんも、セイアちゃんにイタズラするの?」
「はい、えっちなオモチャをお姉ちゃんのベッドに届けてます」
「エッチなオモチャをセイアちゃんのベッドに!?」
「ちゃんと未使用で、綺麗なやつです! 使って良いよって張り紙もしてます!*32」
えっへんって胸を張ると、ミカさんにオデコをツンってされる。えっ、痛いよ!? 私、今秘孔突かれちゃったの? ば、爆散したりしないよね?
「メブキちゃん、セイアちゃんだって女の子なんだから、セクハラしたらだーめ*33」
「でもね、イマジナリーお姉ちゃん、喜んでくれてたと思うの」
「あのセイアちゃんが?」
「夢の中で記憶が曖昧だけど、真っ赤になって照れてくれてたなって」
「ソッカー、セイアちゃんってばエッチだね*34」
「うん!」
私達はニコニコ……ううん、ニヤニヤしながらお話した。ミカさんって、お茶目さんで面白い人だね!*35
「はい! あっ、でも……」
ミカさんのお陰で、テンションは戻ってきた。でも、このままだと、私たちがトリニティを追放されちゃうのだけは変わってないの。ミカさんを見る、トリニティの偉い人。優しくて、面白くて、力持ち。でも、何でもは出来ないみたい。お顔が、ちょっと困った風な笑い方になってたから。
「そうだね、ナギちゃんがハリネズミをやめない内は、どんなに頑張っても報われないかもしれない。……なら、メブキちゃんは諦めちゃう?」
ミカさんに問われて、改めて考えてみる。トリニティを出た後の、私のことを。
例えば、他の学校に転校する。多分、そこでも楽しいことがたくさんあるし、キラキラだって見つけられると思う。でも、しっくりと来ない。だって、もう一度素敵で楽しいことを、この学園で積み上げちゃったから。
じゃあ、家に引き篭もってみる? 昔みたいに何も出来なくなっちゃって、ぽやーってしてるの。……これは絶対やだね、本気で。イマジナリーお姉ちゃんが居てくれたとしても、心配掛けちゃうと思うし*36。
うん、やっぱりここが良い。最初は成り行きだったけど、今は自分でちゃんと選べるよ。
「ヤ、です。みんなと一緒にいたくて、まだここにいたくて……トリニティが好きなんです!!」
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しい。私も、トリニティが好きだよ。……うん、決めた」
ミカさんにナデナデされて、にゃーんって声が出そうなのを我慢する。もしミカさんが猫さん派じゃなくて犬さん派だったら、私は去勢されちゃうもんね。
でも、そんな鳴き声が出そうになるくらい、ミカさんの言葉が嬉しかったの。自分の好きが他人に伝わるのって、胸が弾けるみたいな感じがするから。
「メブキちゃん、私は私にできることをする。だから君も、トリニティを諦めないでいてくれるなら、もうちょっとだけ頑張れる?」
「が、頑張ります!」
「オッケー、約束だよ」
ミカ様が小指を差し出してきたから、私もそれに小指を絡めて一緒に唱えた。
ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらはーりせんぼーんのーますっ、ゆーびきった!*37
「うん、それじゃあメブキちゃん。お友達も迎えにきてるし、お別れだよ」
「お友達?」
誰か来てくれたの? ……実はね、さっきはちょっと強がってたから、嬉しくて温かい気持ちになっちゃうね?
「あ、コハル、ちゃん」
ワクワクしながら振り向けば、そこには真っ赤に目を腫らしたコハルちゃんがいて。無理を押して、ここまで来てくれたのが分かっちゃう。
「ありがとうございます、ミカさん。お礼はいつかします、イマジナリーお姉ちゃんが!*38 私もいっぱいします!!」
「セイアちゃんからも貰えるなんて、メブキちゃんは流石だね!」
ウキウキしてるミカさんの声を背にして、私はコハルちゃんに駆け寄った。そのまま、ぎゅってする。嬉しくて、頑張りたくて、慰めたくて。
「来てくれて嬉しいな、コハルちゃん!」
「……メブキなんか、暗いところに一人でほっといたらエッチなことしちゃうから。だから見張ってなきゃダメだし、泣いてる暇がなかったの」
「うん、コハルちゃんがいなきゃ、私の頭がおかしくなって野外ひとりえっちしちゃうから、ずっと見張っててね!」
「エッチなのはダメ、死刑なんだからね」
「うん……コハルちゃん、本当にありがとう。私のために泣いてくれて、ありがと」
「は? 泣いてなんかないし、メブキの方こそ泣いてるじゃない! 隠れて泣いてるなんて、ナマイキなことしちゃダメ」
「……コハルちゃん、生意気っていうのはね、ナマでイクことじゃないの。実はえっちなことじゃなかったんだって知った時、私も驚いちゃったけど」
「違う、いつも通りのバカバカメブキ!! ……心配させちゃ、もうダメなんだからね」
「今度は、コハルちゃんのお胸でわんわん泣くね?」
「……しょーがないから許すけど、エッチなことしたら許さないから」
私たちは手を繋いで、一緒に合宿所に帰った。明日から、無理だと思っても頑張ろうねって、そんなことを二人で話しながら。
明日は今日より良い日でありますように。もっともっと、笑っていられますように*39。
「ミカ、メブキのこと、ありがとう」
「先生ったら、こんな夜にメールしてくるんだもん。ドキドキして、私が勘違いしちゃったら、どうしてたのかな?」
「ごめん、直ぐに来てくれるとは思わなかったから」
「あー、酷いなー。私、これでも気にしてるんだよ?」
メブキとコハルが去った後で、ミカは待ち合わせをしていた先生と合流していた。ナギサと連絡が取れず、ならばとミカに連絡を入れた先生のモモトークには、すぐに行くねの文字があって。慌てて、もう夜だよと返信しても、プールサイドで待ってるね⭐︎ と返されてはどうしようもなかった。
「それで、これからのことについて、ミカの力が借りたくて……」
「良いよ」
「助かるけど、良いの?」
「ずっと罪悪感があって、何かしたいなって思ってたの。でも、私が何かすると大体が碌なことにならないじゃん? だから、じっとしてよっかなって思ったけど、頑張ってる子を見つけちゃったらね、ほっとけなくなっちゃった」
「そっか……ミカ、ありがとう」
「その代わり、先生に貸し一つだよ⭐︎ 私の言うこと、なんでも一回聞いてね!」
「ハハ、聞ける範囲でならね」
初めて会った時のような緊張感はなく、二人は盟友のように語り合った。試験について、ナギサについて。エデン条約については、時間がなかったから後日に割愛して。
「もしもの時は任せて……でも、これだけで本当にいいの? もっと、私にならできることがあるけど」
「うん、こっちでもハナコが色々と考えてくれてるから」
「そっか、ハナコちゃんってば、やっぱりお馬鹿さんなフリをしてただけだったんだね」
「ミカ、ハナコは優しい子だよ」
「先生、女の子はいつだって、自分がちょっと贔屓されてたいの」
「ミカの優しさも、勿論わかってるから」
「色男さんだね、先生⭐︎」
ミカはもうひとつ約束事を増やして、スキップしながら帰宅した。自分にも、まだやり直せる機会があることを噛み締めながら。ちょうど夜が明けて、朝日が顔を覗かせ始めた時間帯だった。