コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
「──サオリ?」
困惑したように声を上げたのは、先生達をアリウスへと先導していたミサキだった。私も居ますよーとヒヨリがアピールしてきて、ミサキは困った様にヒヨリもと呟いた。
「何、しているの」
ミサキの問いかけ、それはサオリがここにいる理由を問うものであり……彼女が今している行為に対して問いかけでもあった。
サオリは手を地べたにつき、深々と頭を下げていた。いわゆる土下座、その格好で先生達にサオリは哀願をしに来ていたのだ。……そうするしか、アツコを助ける手段がなかったから。
「巫山戯るなと思われることは承知の上だ。だが、それでも敢えて頼みたい。──アツコを、どうか助けて欲しい」
「姫に何があったの、サオリ!」
アズサが、真っ先に反応する。ミサキは話を促すように、それでと問いかけ、先生もそれに追従する。
「詳しく話してもらってもいいかな?」
先生の問いかけに、サオリは頷いて話し始めた。
メブキを連れてアリウスに帰還したこと。そこで待ち受けていたアリウスの生徒会長、ベアトリーチェがセイアを求めていたこと。そのセイアを取り込むために、まずはアツコを取り込みセイアの力を受け入れることのできる様にすること。きっと、このままだとアツコは真っ先に死を与えられること。
そこまで話しきって、サオリは懇願した。この身が朽ち果てても構わない、だからどうか、と。
「分かった、それなら──」
「その前に、メブキちゃんがどうしているか、教えてもらってもいいですか?」
先生が認めようとしたところを、無礼だと分かりつつもハナコは遮った。その目は鋭く、声も冷たいもの。いつものハナコを知るものからすれば驚くような態度。ただ、ハナコはサオリ達が明らかにその部分をボヤかしていることを認識していた。……だから、嫌な予感が止まらなくなっていた。
「それは……」
「答えてください、そうでないと協力は出来ません」
「……ハナコ?」
サオリ達が味方になってくれるのかと喜ぼうとしていたアズサは、尋常ではない様子のハナコに困惑をしてしまう。ただ、問い糾される側のサオリ達もどうにも様子がおかしくて、口を挟むことが出来ない。そうして……。
「奴は、春風メブキは────死んだ」
酷く苦しそうなサオリの告白、まるで辺りの音が静止したような静寂が訪れる。
死、その言葉の重みを、咄嗟に誰もが咀嚼しきれなくて。だから沈黙が訪れて。
「……ウソよ、そんなの」
その中で、最初に言葉を発したのはメブキの一番の親友だった。声は震えて、目に怯えも宿っている。けれど、微塵も主張を撤回する気はない姿勢で、コハルは一歩前へと踏み出していた。
「め、メブキはね、弱っちくて、チビで、意味不明な癖にヘンタイなバカだけど! 何時だって一生懸命で、生きてることにも前向きだったの! だから、そんなメブキが死んじゃうなんて、そんなことないんだもん!!」
話している内に、声が涙声になっていく。話せば話すほど、メブキが弱いってことを思い出してしまうから。けれど、それでもとコハルは忍び寄った考えを振り払う。転生したことを聞いて、今生は楽しくやりたいと語っていたメブキのことを応援していたから。だから……。
「し、信じないからっ。そんなこと言って、私達を騙し討ちにするつもりなんでしょ!?」
怒った声でコハルは言い切って、サオリとヒヨリを睨みつけた。そこに合理的な理由なんてものはなく、そうでなくては報われないという気持ちだけで、コハルは二人を嘘つき呼ばわりしていた。
サオリは、そんなコハルの怒りを受け止める他にない。その怒りは当然で、自分がアツコを奪われていたら、即座に銃を持ち出していることは想像に難くない。
だから、サオリは深々と頭を下げ続けた。自分が銃で撃ち抜かれても、そのことで溜飲を下げてくれるならばと。悲壮感を漂わせながら、そうして情に訴えるしか彼女は術を持っていなかったから。
自分達が起こした行動で、春風メブキは死んでしまった。その事実は変えられず、これがサオリにとっても始めての殺人だった。直接手を下してはいなくても、その自覚がサオリにはあったから。……殺されても文句は言えないと、そういう覚悟で頭を下げていた。
「……作戦のためならサオリは嘘を吐く。でも、兵隊としてのプライドも在る。普通だったら、こんな格好はしない」
それを見兼ねて、助け舟を出したのはミサキだった。普段のサオリを知っているからこそ、これがフェイクでないことを見抜いていた。そして、それは一緒に過ごしていたアズサも同様で……。
「メブキが……死んだ?」
呆然としたように、サオリが口にした言葉を反芻するアズサ。目は見開かれ、何かが胸の奥から吹き出しそうな気配だけがアズサを支配している。一歩、アズサがサオリに近付こうとしたところを、無意識にヒフミは手を掴んで制止した。振り返ったアズサの瞳は、昏い淀みが浸りつつあった。
「ヒフミ、止めないで」
「で、ですが、コハルちゃんの言う通りかも知れません! だって、そんなこと……。メブキちゃん、また来年も海に行こうねって……また合宿だって、ペロロ様のイベントだって、みんなで一緒に!!」
ヒフミの目は潤んで、今にも泣いてしまいそうだった。コハルと一緒で、そんなことは信じたくないと心を訴えている。
おはようと挨拶して、美味しいと言いながらご飯を食べ、ウンウンと困っている彼女に勉強を教えて、楽しいって笑顔を浮かべながら遊んで……そうして、また明日と言い合える。そんな毎日が続くし、当たり前だとヒフミは思っていたから。
張り裂けそうな胸を押さえつつ、だからヒフミはアズサを引き止めた。このまま止めなければ、アズサはきっと暴力に訴えていただろう。大切な人を傷付けられて、ましてや死だなんてモノを聞いて大人しくしているほど情が薄くないことを、ヒフミはキチンと理解していたから。だから引き止めて、言葉を尽くして知らされた報告を否定しようとする。
「め、メブキちゃんが撃たれちゃったのだとしても、ヘイローはそうそう壊れたりなんてしません! きっと、ビックリして頭を打っちゃったとか、そんなことで……」
「マダムが春風メブキの胸に触れると、そのまま腕が彼女の身体の中に沈み込んでいた。掻き乱すように乱暴に臓器のある辺りをグチャグチャにして、何かを掴み取る動作をしながらマダムが腕を引き抜くと、春風メブキは幻のように解けて消えた。死体すら、残らなかった」
「……え?」
ヒフミの無理筋な過程を、実際にその光景を見ていたサオリが否定する。それにヒフミは固まって、困惑の声を上げた。一方、アズサも想像とは違う状況を耳にして、頭が僅かに冷えていた。何か、想定している前提と、そもそもズレているのだという直感が働いたから。
「アズサ、撃ちたければ私を撃て。私が作戦を立て、私が誘拐し、そうして死んだのだから。だが、それが済んだらどうか……」
サオリが抱いている情の深さを、幼少期に護られていたアズサは未だに覚えている。例え何があっても、自分達のことを護ろうとしてくれていた姉の後ろ姿を。
「vanitas vanitatum、だが……」
苦しみながら言葉を吐き出すサオリに、アズサも耳を傾けた。さっき胸に抱いた赫怒は、一度棚上げに。今のサオリからは、悪意も憎悪も感じられないから。
「全てを諦めるには、私は未だに未熟に過ぎるっ」
サオリの言葉を、アズサだけでなくその場のみんなが聞いていた。
コハルは、都合が良すぎるとその言い分に怒りを抱いて。けれども、それよりメブキの死がより濃くなっていく空気に、胸が押しつぶされそうで。
ヒフミは、アズサに誰かを憎悪のままに傷付けてほしくなくて。ずっと、その手を握り続けている。メブキちゃんに悲しい結末なんて似合わないから、きっと大丈夫と自分に言い聞かせながら。
ヒヨリは、これ程までに思い詰めたサオリを見たのは久しぶりで。その悲壮な覚悟に他人事ではいられず、いざとなったらサオリを担いででも逃げて、漁夫の利でアツコを助け出そうと考えていた。自分達の仕出かしたことへの贖罪は、後日へ棚上げしようと都合をつけて。
ミサキは、サオリの感じている責任を分け合いたかった。それに、どうせ殺されるならば、自分が殺されてしまった方が良いとさえ思っている。そちらの方が、誰の都合も悪くは無いのだから、と。
先生は、きっと声を掛けるべきは私ではないと見守っていた。言いたいことも問いたいことも在るけれど、まずは眼の前のことから解決されるべきだからと思ったから。
そうして、アズサは──。
「サオリ、何時だってサオリは諦めてなんかいなかった。私達を、諦めようとしてくれなかった。だから、私は学べたんだ。例え虚しくても、抵抗し続けることの大切さを」
ヒフミの手を握り返して、怒りを押し留めて言葉を繋いだ。ここでサオリを撃っても、虚しさが押し止められる訳では無い。その事実を受け入れて、けれども未だに希望は捨てずに。
「アツコを助けよう、サオリ。それに、メブキのそれだって、普通の状況じゃない。何か、在るかも知れない」
「アズサ……」
子供の頃とは違う、護られるだけの存在ではなくなっているアズサに、独りでに成長していた妹を見てしまった気持ちが過ったサオリ。だが、だからこそ素直にその手を取ることが出来た。私が頼っても、きっとアズサは応えてくれると認めることが出来たから。
「──そうですね、メブキちゃんはまだ大丈夫です」
そこで、一連の流れを注視していたハナコが、ようやく口を開いた。何時でも手が滑る準備が出来ていた引き金から指を離し、アズサが我慢したから蟠りにも蓋をして。これまでに知っていた情報と、サオリの口から出た言葉を照らし合わせて、その推測を口にした。恐らくとか、きっととか、そういう但し書きを付けなかったのは、コハルの縋るような目がハナコに向けられていたからか。
「ほ、本当なの!」
「えぇ、アズサちゃんの言う通り、メブキちゃんが死んでしまったというには、現場が異常すぎます。恐らく、セイアちゃんが引き抜かれてメブキちゃんは身体が維持できなかった。だから、解けてしまったのでしょう」
「だ、だが、それならば一体どこに春風メブキは……」
一方でサオリも、もしかしたら自分の罪が軽くなる可能性の事態に動揺して、途中で口を挟んでしまっていた。それに、話が早くなるとハナコは微笑みながら答える。目は、微塵も笑っていなかったが。
「魂だけで、ヒョコヒョコと歩き回っている可能性が高いです。迷子の子猫のように、頼りない感じに。だから、早く保護してあげなければなりません」
そう言えば、とサオリは思い出した。あの時、春風メブキが消えた後に、淡い光のようなモノが残っていたことを。
「ならば、あの時に発生していた小さなホタルくらいの動き回る光が、春風メブキなのだろう」
一応、サオリも納得が出来た。だが、希望が芽生えるのと同時に、焦りも忍び寄ってくる。あの時、ベアトリーチェはあの光を……。
「急いだ方が良い、マダムは……いいや、ベアトリーチェは情け容赦のない人物だ。あの時に発生した光を踏みつけ、嬲りものにしていた」
サオリの忠告に、明るく成りかけていた場が再び張り詰める。皆が皆、希望を見つけると共に、それを心身両面から踏みにじる行為に怒りを抑えきれなかった。それは無論、ようやく視界が開けつつあったアリウススクワッドの面々も同様で。そもそも、真っ先に危ないのはアツコなので、一番急いているのは彼女達だったから。
「行こう、助けに」
先生の声に皆が力強く頷いて、我先にと駆け出し始めたコハルに続いてみんなも走り始めた。その中で、ハナコはひっそりと抱いた気持ちを胸に仕舞い込んで。
もし、メブキちゃんが間に合わなかったら。
もし、セイアちゃんが死んでしまったら。
──アリウスに関するもの全て、私は許せないでしょう。
それは、コハルの信頼に応えたいから隠した憎悪。もし間に合わなかったら、その時は、きっと……。
紙とインクのにおい、パチパチとする暖炉の火花が弾ける音。そうして、紙に何かを書く時の羽根ペンの擦れる気配。なんだろうね、なんで私の身体、こんなに痛いのかな?
「……ウイ、先輩?」
ゆっくり瞼を開けると、そこは古書館じゃなくて知らない場所。
どこかの誰かの書斎、机で何かを書いている誰かの後ろ姿。
「残念ながら、ここに古書館の魔術師は居ません」
その人は男の人で、何かを書いているままにお話を始めたの。
「私の書斎へようこそ、春風メブキさん。我が名はゴルコンダ、しがない物書きです」
「こ、こにゃにゃちは?」
ゆっくりと起き上がって周りを見渡すと、そこは隠れ家みたいなお部屋。広いお部屋だと思うけど、本棚がいっぱいあって狭くなっちゃってる。でも、好きなものを沢山詰め込んでるって感じがあって好き。私も将来自分の部屋の本棚にエロゲー陳列して、惚れ惚れしたいし!
「フフ、客人を招くことは久しいので、不調法なのはお許しください」
穏やかな声で、後ろ向きのままお話ししてるの。……お顔、見られちゃダメとか、そんなルールあるのかな?
「さて、困惑の中で問い掛けることをお許しください。ですが、必要なことです。……あなたは今までのことを思い出せますか? 自身の身体がなぜ痛むのか、思い出すことは出来ますか?」
ほえ、今までのこと?
えっと、えっとね……確か、誘拐されながらお漏らしして、それでお漏らしお姉ちゃんが出来て、アツコさんにおてて繋いでもらって、サッちゃんさんに色々と教えてもらいながらアリウスって学校に来て、それで……。
「あ、あぁ!?」
そうだよ、私ってば紅い人にお胸の中サワサワされて、それで……。お胸を確かめると、傷は一つも無かったよ。でも……なんか変。フワフワ浮いてるみたいな、ぼんやりしてる感じ。なんだろね、この変なの。
もしかして……えっちなことされちゃったの? だってイッちゃう感覚ってフワフワしてるっていうもんね。つまり私は、気付かない内に合意なしすやすやえっちされたってことなの!?
あ、でも、私が寝てる間はイマジナリーお姉ちゃんが身体を借りてること多いし、おお、い……し?
もう一度、お胸をサワサワする。変わらない筈の身体、でもぽっかり穴が空いちゃってる感じ。大切な、まるで心臓が無くなってる気分。
お胸が寂しい。何かが無い、何が無いの?
『私の瞳はおおよそのモノを捕捉し、知覚できる代物。妖精眼には及ばずとも、特別と言って差し支えないものです。知覚できれば、この様に触れることさえ可能なのです』
あ。
『さようなら、亡霊の貴女。必要なのは百合園セイアのみです。──消え去りなさい』
ああっ!?
お胸が寂しいの、分かっちゃった。イマジナリーお姉ちゃんがいないから、だよ。
いつもあったかくしてくれてて、寂しい時でも一緒で、夢の中でだって毎回優しくしてくれてた筈のお姉ちゃんが、いなくなってるの。ずっと一緒で、いつかは離れなきゃいけないけど、今はポカポカしてくれてるお姉ちゃんがいない。頭をサワサワすると、ヘイローも無くなってる。
……そっか、私また死んじゃったんだね。
「泣いておられるのですか……無理もありません。頼りにしていた家族と引き離され、自身の状況を把握されたのですね。無情な現実を前に打ちひしがれる、それもやむを得ないことでしょう」
気が付いたら、泣いちゃってた。
寂しい、寂しいの、心の底から。いつも手を繋いでくれてた感覚がなくて、迷子になっちゃったみたいだから。
「ぐすっ、ご、ごめんなさいっ」
「いいえ、どうぞ存分に。紳士足り得ぬ身であり、ハンカチを渡せぬ我が身をお許しください」
「うう、ん、だい、じょぶ、です。……ごほんで、おはな、かんでも、いい、ですか?」
「っ、待ってください、早まらないでください! ティッシュならば、あなたが望めば手に入ります!!」
そう言われて、そっかと納得する。ここ、夢の中なんだ。だったらと想像してみると、ぽんっとポケットティッシュが現れる。なら、これもどうかなって想像してみると、ちゃんとウイ先輩棒も現れてくれたの。ギュッとすると、ちょっと落ち着く。寂しいの、少しだけマシになった気分。
いつもありがとう、ウイ先輩。私死んじゃったけど、夢枕に毎晩立つから、夢の中ではお嫁さんにしてね? 毎晩式場で、ヴァージンロード歩こうね? そうしてたら、きっとウイ先輩は永遠に処女でいられるから。ユニコーン系守護霊の春風メブキとして、これからもよろしくね?
……いつもだったら、胸の辺りが賑やかになるのに、今日は全然そんなことない。きっと、イマジナリーお姉ちゃんがメってしてくれてたんだって思う。何だか、物足りないね……。
「それは、電気按摩器ですか?」
「はい、ウイ先輩棒です……」
先輩棒を抱きしめながら、お鼻をチーンってする。机の近くにゴミ箱があったから、ポイってする。ゴミ箱の中、沢山紙があったけど……そういうことなのかな?
「ほぅ、古関ウイをモデルにしたミニチュアですか。古来ならば、呪術的な意味合いが生じそうなものですが……なぜ電気按摩器に?」
「ふ、震えている先輩が可愛いから、です」
ところで、ここはいつもの私の夢の中じゃないね? いつもは、ベッドの上から始まるもん。うーん、だったら、ここはこの人の夢の中なのかな? そうだったら、なんか不思議な感じ。どうして私、死んじゃったのに他の人の夢にいるんだろうね?
「なるほど、独特な形での人形ということですか。幼子が持ち、離さないでいる架空の友人。さしずめ、イマジナリーフレンドといったところでしょうか」
「? ウイ先輩はウイ先輩で、イマジナリーなのはお姉ちゃんです、よ?」
「……言い方を変えましょう、その電気按摩器はイマジナリー古関ウイとして、彼女がいない間も君の友達で居てくれているということです」
男の人は、学者さんみたいだった。多分、ウイ先輩が開講してほしいって言ってた、春風メブキ学の教授さん。だって説明されて、納得できたもん!
「実在の人物でヒトガタを形作る、それは執着の現れです。古関ウイは、あなたにとって特別な人物なのでしょうね」
「ふへ、ふへへ」
笑って誤魔化しちゃう、キミってばウイ先輩好きすぎだよねって言われちゃったんだもん。そうなんだけど、初対面の人にそう言われると流石に照れちゃう。いつか、イマジナリーお姉ちゃん棒やメガハナコ様棒も作らないといけないし、将来的にはお友達みんな揃えてプルプルさせたいね? ……死んじゃってるし、無理なんだけど。
「イマジナリーお姉ちゃん、ですか」
後ろ向きの人、ゴルコンダさんはずっと何か書いてるの。物書きさんって言ってたから、もしかするとなろう小説を書いてる最中かもしれないね? もしそうなら、みんなに読んでもらう方法とか教えて欲しいよ。私の小説、せっかく投稿したのにBANされちゃったし!
阿弥陀如来のマンポポに潜り込んだら別世界に到着したのって、何が悪いのかな? 彼の文豪のトンネルを抜けたら雪国だったのパロディなのに、不適切な表現だとかなんとかって、酷すぎるよ! 運営サイトは、川端さんに謝らなくちゃダメなんだよ!!
「私のお姉ちゃんです」
「君は、頑なに彼女の本名を呼びませんね。それに、何の意味があるのでしょうか」
「にゃ?」
なんか、難しいことを聞いてくるね。イマジナリーお姉ちゃんは、イマジナリーお姉ちゃんだからって理由以外ないけど……ゴルコンダさんは春風メブキ学の教授だし、何か分かったりするのかな?
「……おっぱい、無いから、とか?」
「それならば、私のことはイマジナリーゴルコンダと呼べますか?」
「ふぇ?」
ゴルコンダさん、男の人、確かにおっぱいは無いね? でも、別にイマジナリーでもなんでもないし、ゴルコンダさんはゴルコンダさんだよ。
「ううん、呼べません」
「でしょうね、それならば他に理由があるということです」
うにゅにゅ、確かに一理あるよ。おっぱいのある無しじゃないみたい、じゃあなんで私はイマジナリーお姉ちゃんをそう呼び続けてるんだろ? うーん、うーーん?
「ならば、幾つか質問をいたしますので、それに答えてください。それならば、可能ですか?」
「えっと、はい」
本当によく分からないけど、ゴルコンダさんは私のことを理解しようとしてくれている、本当になんだか分からないけど。にゃら、それはイヤじゃないから、私もよく分からないまま答えちゃう。だって、自分を知ってもらうのって、恥ずかしいけど助かることだもんね。
「一つ目、あなたは百合園セイア、イマジナリーお姉ちゃんのことを好きですか?」
「うん、大好き!」
一つ目は、とっても簡単な質問さん。そんなの、考えるまでもないもん。私もイマジナリーお姉ちゃんも、二人揃って両思いだから!
「そうでしょうね、だからこそ涙が流れた。その文脈に説明がつきます。では二つ目、あなたは姉のことをどう思ってますか?」
「えっと、ロリ狐ケモミミ横乳貧乳はみ出てるお姉ちゃんです!」
「では、あなたはロリ狐ケモミミ横乳はみ出てるお姉ちゃん。つまりは、彼女の見た目だけが好みなのですか?」
そう言われて、ちょっと考えてみる。確かに、私の中でイマジナリーお姉ちゃんは私の中でえっちな塊だけど、それだけじゃないの。身体も好きだけど、何より心が一番好きだから。
「えと、お姉ちゃんの心が一番好きです。身体はついでに好きです」
「ふむ、なるほど」
ゴルコンダさんはカキカキを続けながら、うんうんと頷いてた。何か、わかってきたりとかしてるのかな?
「では、三つ目の質問です。あなたは……そうですね、自分のことを赤ん坊だと思いますか?」
「思ってるよ!」
ゴルコンダさんは、急に私を赤ちゃん扱いしてきたの。多分、内なる母性に男性ながら目覚めちゃったんだと思うけど、私は勢いよく頷きながら答えたよ。だって、本当のことだもん。全人類、私を赤ちゃんみたいに扱うべきなんだよ!
「ふむ、分かってきました。あなたがお姉さんのことをどう思ってるのか、どうしてイマジナリーお姉ちゃんと呼ぶのかが」
「すごいです!」
やっぱり、ゴルコンダさんはとても頭が良い人なんだよ! 私も知らない私のこと、簡単に分かっちゃうんだから。先生とわからせ対決したら、どっちが強いのか気になっちゃうね?
「では、最後の四つ目。メブキさん、あなたは百合園セイアさんに包まれて過ごしてきた。そういう自覚がありますか?」
「あります!」
ずっと胸が暖かくて、ヘイローが私を守ってくれてるって思ってたから。だから私はその質問に、うんと元気よく頷いて。ゴルコンダさんはカキカキするスピードが上がって、すごい速度で文字を書いて。……そうして、ピタッとあるところで止まったの。
「少しだけ読み解けましたよ、あなたのことが」
ゴルコンダさんのお声は、とっても楽しそう。まるでミステリーモノのエロゲーで、犯人の予測が当たってた時みたい。innocent gray製のエロゲーとか、ゴルコンダさんは好きになる素質がありそうな気がするよ。
「春風メブキさん、あなたは百合園セイアさんが内にいることで、揺籠にあるような安らぎを得ていたのでしょう。いえ、母の腕の中という方が今は正しいのでしょうか」
「イマジナリーお姉ちゃんが、お母さん?」
考えてみる、イマジナリーお姉ちゃんがいた時と、いない時の差を。
いてくれた時、いつだって心強かった。元気いっぱいでいられたのは、いつだって一緒だって気持ちだったから。だから、悲しいことがあっても、辛いことがあっても、寂しいとは思わなかったの。
それで今、いない時。元気に振る舞ってみても寒くて、あったかくならない。ずっと寂しいのが無くならなくて、切ないの。……これって、もしかして赤ちゃんの気持ちなのかな? 寂しいのが嫌で、わんわん泣いちゃってるってこと?
「あなたは百合園セイアさんに母でいて欲しかった。それと同時に、兄弟姉妹の如く一緒に遊んでいて欲しかった。あなたは母であると同時に、百合園セイアさんに姉でいて欲しかったのです。しかし、百合園セイアという個人を確定させると、年齢の問題もあって近しい姉という定義しか出来なくなる。だから、執拗に名前を呼ぶことを嫌ったのでしょう。自認としてあなたは自身を赤子だと考えているからこそ、無邪気に、ワガママに振る舞っていた。母の腕の中で……どうですか?」
ゴルコンダさんは、凄い早口で捲し立てるように言葉を並べ立てた。まるで、探偵さんが犯人を指摘する時みたいに。
私はポカンとそれを聞いて、それからね、うん……。
「そう、かもしれないね?」
ちょっとした気まずさの中で、うんと頷いたの。私、イマジナリーお姉ちゃんから生まれたいって、多分考えてたかもしれないの。ごめんね、イマジナリーお姉ちゃん。私、お姉ちゃんの赤ちゃんで居たかったみたいだよ。
「うん、私イマジナリーお姉ちゃんの子宮に居られてるって思ってたかも」
しょうがなく、私はゴルコンダさんに白状しちゃってた。だって、ミステリーとかで言い当てられた犯人さん達は自供するもんね? シミコちゃんにお勧めしてもらった本を読んだから、私知ってるよ!
「んん?」
「ふえ?」
どうしてだか、ゴルコンダさんはこっちに振り向いたの。コナンくんの全身タイツさんみたいに、お顔が真っ黒なの! 探偵さんが真犯人ってパターンもあるんだね、初めて知ったよ!!
「あの子は、ただ幸せになるべき子だった……」
粛々と、アツコが十字架に掛けられる中で、百合園セイアは一人独白していた。ポロポロとこぼれ出る涙は、大切で儚い妹を想ってのもの。連れ去られた先で何をされているのか、想像するだけで胸が苦しくなる。
いつか、二人で手を繋いで歩こうと考えていた。それまでは、ずっと内側で見守っていようとも。なのに、分かたれた現在は妹の手を握れない。それどころか、メブキは身体を解かれてしまった。あどけない妹の姿を思い浮かべると、切なくなって胸を抑える。
「お人形遊びはもう良いでしょう、それとも未来を変えるための駒でしたか、アレは」
扇子で口を隠したベアトリーチェは、嘲笑を隠さずにセイアへと言い放った。それに、セイアは胸がグチャグチャになりながらも、ベアトリーチェを睨みつける。──確かな憎悪に、飲まれかけながら。
「うるさい……っ」
「フフ、その泣き腫らした顔こそ、己が無力さの証明です。アツコの次にでも尽きる命ではありますが、最後に大人の階段を登るのも良いでしょう。妹などと甘言を用い、籠絡した事実を認めてはどうですか?」
嫐るように、言葉を投げかけてくるベアトリーチェ。彼女にとっては、所詮暇つぶしの戯言でしかない。けれども、今のセイアに無視するだけの余裕などなくて……。
「黙れと、言っている!」
悔しげに床を叩きつけたセイアを、ベアトリーチェは嗤っていた。