コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
今日はね、シャーレで自習してるの。すぐ近くに先生がいて、分かんないとこがあったら教えてくれるから!
いつもは他のみんなが教えてくれてるけど、今日は用事があって無理みたいだし。先生、忙しくてトリニティに来れてないし。……しばらく会わなかったら、女の子の好感度が下がっちゃうんだよ?
「メブキ、いらっしゃい」
「先生、今日もよろしくお願いします!」
「うん、わからないところがあったら聞きにきてね」
私を出迎えてくれた先生は、お兄ちゃんみたいに優しく笑ってくれてた。でも、私は見抜いてるんだよ?
──先生がトリニティに顔を見せないのは、先生に会えない切なさから、私たちの感度を強制的に上げさせる焦らしプレイをして、初恋処女えっちでイカせようって思ってるんだってこと!*1
我慢させられすぎたみんなのムラムラがイライラに変わって、騎乗位で交替ばんこで襲いかかる可能性だってあるんだから、そーゆーイジワルは程々にしないとダメなんだよ! お姉ちゃんなんか、先生が好きすぎてお尻えっちまでしちゃうだろうし!!*2
「先生、駆け引きも程々にしないと、実力行使になっちゃうんだよ?」
「一体何のこと?」
「ムラムラのこと」
「……エッチな話?」
「そうだよ!」
元気良く、うんってすると、先生にダメだよって口のあたりに人差し指でしーってされる。ダメじゃないから、先生の指をペロペロした*3。ちょっと塩味、女の子を気持ちよくできそうな指さんだね?*4
「メブキ、めっ!」
「めっ! じゃないよ!」
「めっ、だよ。ほら」
先生は指をハンカチでふきふきした後、そっと流し台の方を指差した。するとそこには、萌え袖きゅーとな女の子が、真剣なお顔で先生のためにコーヒーを入れてたの。
あ、あの究極かわかわロリータな女の子は!?
「いーたん!」
「ふぇ?」
いーたん、丹花イブキちゃん。みんなに愛されてて、みんなのことが大好きな可愛い女の子! 私もいーたんのこと大好きだから、すっごくニコニコになっちゃう。
「めーたん!*5」
「久しぶりだよ!」
「うん、久しぶりだね!」
いーたんも気が付いてくれて、一緒に手を取り合ってルンルンする。そのまま、円の形に回りながら二人でクルクルする。会えて嬉しいよ、いーたん!
「いーたん、元気だった?」
「うん! めーたんは?」
「やる気マンチカンで、元気ムクムクだったよ!」
「イブキ知ってるよ!
マンチカンって猫さんだよね!」
「そう、猫さん!
いーたん、後で猫さんごっこしようね?」
「うん!」
可愛い過ぎるいーたんの頭をナデナデすると、私の頭もナデナデしてくれる。私の方がちょっと身長が高いから、少し背を伸ばしながら。
……実はいーたんは、このキヴォトスにおいて数少ない、私よりも背の低い生徒さんなの。それもあってね、私はいーたんが可愛くて可愛くてしかたないんだよ。
「いーたん、いつでもお姉様って呼んでいいからね?」
「めーたんなのに、お姉様はヘンじゃないかな?」
「じゃあ、いーたんのこともお姉様って呼ぶから!」
「うん、分かった!
猫さんごっこのあとは、お姉様ごっこだね!*6」
「そうしよっか!」
私はいーたんのお姉様で、いーたんも私のお姉様。そんな約束をした私たちは、つまりは二人のお姉様。エルダーシスターとして、トリニティとゲヘナの両校の頂点に君臨するの!*7 お姉様が小さいと萌えるから、きっとみんなメロメロになってくれるよね?
「相変わらず、仲良しだね」
「先生、いーたんが可愛すぎるからって、えっちなことしちゃダメなんだよ?」
「メブキもね」
「めーたん、先生はそんなことしないよ?」
純真無垢ないーたんは、先生の内側に秘められているえっちすぎる気持ちをまだ理解できていなかった*8。男の子は、一皮剥けば野獣だって言うし、突如として先生のおにんにんさんの皮が剥けちゃうことだってあるかもしれないのに*9。……私がえっちすぎるからとか、そんな理由で*10。
「いーたん、もしかしたら先生が突然オオカミさんになっちゃうこともあるから、そうなったら私に任せてね?」
「先生、オオカミさんになれるの?」
「男の子は、突然そうなっちゃうんだって」
「そうなんだ……」
ねー、って先生の方を振り向いたら、ジトーっとしたおめめを先生はしてたの。まるで、私がお家で豊胸体操をしている時にお姉ちゃんがむけてくる視線とおんなじ。
──つまり、えっちな視線ってこと!*11
「めーたん」
「何かな、いーたん」
「イブキね、先生ならオオカミさんでも仲良くできるよ!」
「にゃ?」
「だって、先生なら、絶対に悪いオオカミさんになんてならないもん!」
先生が私にえっちな視線を注いでる中で、いーたんはとっても可愛すぎた。胸がキュンキュンってして、私の中の萌え萌えハートが熱くなってる。男の子は、こういう気持ちをボッキさんっていうのかな?*12
「ねぇねぇいーたん」
「どしたのめーたん」
「ぎゅー、してもいい?」
「いいよー」
許可をもらって、私はいーたんをぎゅーした。きっと、いーたんは天然記念生徒さんで、護ってあげなくちゃいけなくて、私の妹さんだった*13。
今日は特別に、家に帰ったらいーたんにはカレーオムレツを作ってあげなきゃ。カレーライス以外も作れるってお姉ちゃんの威信を、いーたんには見せてあげないといけないからね!*14
「今日の夕ご飯、楽しみにしててね!」
「めーたん、作ってくれるの?」
「うん、いーたんは今日からウチの子だから」
「そうなの?」
「そうなの! おねーさま、もしくはお姉ちゃんって呼んでくれていいよ! 一番上のセイアお姉ちゃんは、ケモミミ横乳貧乳ロリお姉ちゃんって呼んでね?*15 いーたんがお姉ちゃんって呼んでいいのは、私だけなんだよ?」
とっても喜ばしい事実を発表をしたのに、いーたんはどうしてか困ったさんなお顔になっちゃってた。……もしかして、私が妹でいーたんがおねーさまの方が良かったのかな?
うーん、それはちょっと厳しい気がするね? 私の溢れんばかりのおねーさま力が強すぎるからね。
「ごめんね、いーたん。やっぱり、おねーさまは譲れないの」
「それは良いの、めーたん。でもね、帰らないとみんな心配しちゃうから……」
「みんな?」
「うん、万魔殿のみんな」
万魔殿、初めて聞いたら悪の秘密結社さんだって勘違いしそうになるけど、私はいーたんに教えてもらったから知ってるの。それが、ゲヘナの生徒会の名前なんだって。
……そう言えば、いーたんはそこの議員さんだっけ? お姉ちゃんは、いーたんのことゲヘナのお姫様だって言ってたけど、それでも一年生で生徒会入りするなんて凄すぎるね?
私がティーパーティになっちゃったら、制服の下にスク水着用を義務付けるけど*16、いーたんは何してるのかな? ゲヘナ生さん全員に、萌え袖着用の義務化とかしたら、きっと人気は鰻登りで鯉のぼりさんなんだろうね。最先端のいーたんファッションだもんね!
「いーたん、万魔殿では何してるの?」
「え? えーとね、先輩たちのココア入れたり、肩をモミモミしたり、がんばれー、って応援してるよ!」
想像してみる、いーたんのいる日常を。
朝、モーニング騎乗位をしながら起こしに来てくれる、幼馴染ないーたん。昼、一緒に作ったお弁当を屋上で食べる、クラスメイトないーたん。夜、怖くておトイレに行けなくて、一緒にお漏らしをしてくれる妹ないーたん。
全部が全部、とっても素敵ないーたん。やっぱり、いーたんは素敵すぎる女の子だね!
……そっか、分かっちゃった。
素敵でかわかわな女の子だから、ゲヘナのみんなからも大切にされてるんだね。いーたんも、そんなみんなを大切に思ってるんだ。だったら、私の妹さんにはなれないね*17。
「いーたん、無理言ってごめんね? いーたんが好き過ぎて、妹さんになって欲しかったの……」
「ううん、めーたん。イブキもめーたんが沢山好きだから、全然平気だよ!」
「いーたん!」
「めーたん!」
二人でガバ(おまんまんの破れる音じゃないよ?)*18ってして、ぎゅーってする。二人でニコニコして、好き好きってしちゃう。いーたんがいい子過ぎて、私のお姉ちゃんになりたい欲が、先生のおにんにん並みに大きくなっちゃったの。
お姉ちゃんも、私を妹だよって言ってくれる時、心の中でおっきしてくれてるのかな? だったら私、とっても嬉しいな!*19
「相変わらず、二人とも仲良しだね」
そんな私たちに、先生が出来たてミルクティーを淹れて、持ってきてくれたの。ありがとって言いながら受け取って、ふぅふぅしながらごっくんする。落ち着いて優しい気持ちになれる、そんな味。いーたんと一緒に飲むと、ポカポカした気持ちになれちゃうね。
「私といーたんは、牛乳同盟の仲間だもんね?」
「牛乳、同盟?」
「えっとね、イブキもめーたんも、背がまだまだ伸びるはずだから、毎日一回牛乳飲もうねって同盟!」
先生は、牛乳って言葉にえっちな気配を感じちゃったのか、私をじっと見つめていた*20。本当に先生はえっちで仕方がない、トリニティのみんなでお嫁さんになってあげないといけない人だから。だから、私も見つめながら先生に気持ちを伝えた。
──私もいーたんも、おっぱいもっとおっきくなるから、今から楽しみにしててね?
精一杯の気持ちを込めて、先生の目に訴えると、先生はしばらく私の目を見た後に、スッと目を細めたの。それから、いーたんに気づかれない様に、そっとメモ用紙を渡してきたの。
それは"メッ"て一言書いてあるだけの紙。折角だから、メッの後ろにブキと書き足して、先生に返却する。メモ用紙を受け取った先生は、困ったお顔になりながら、用紙を机に仕舞ってた。
……もしかすると先生は、私がずっといーたんに構ってるから、寂しくてちょっかいさんかけてきたのかもしれない。もしそうだったら、先生も仲間に入れてあげたほうがいいのかな?*21
「先生も牛乳同盟、する?」
女の子は牛乳でおっぱい大きくなるけど、もしかすると男の子はおにんにんが成長期に入るかもしれない。すると先生のせーえきは、牛乳味に品種改良出来ちゃうかもしれないし!
「私はコーヒーがあるから」
でも、先生は自分のせーえきをコーヒー味にするって決めちゃったみたいで、牛乳同盟には加入してくれなかったの。残念だね?
……もしかすると、男の人のせーえきが苦いのって、コーヒーの飲み過ぎでコーヒー味に品種改良されちゃったからかもしれなかった。怖いね?*22
「先生、大人だもんね」
「じゃあ、私といーたんは牛乳たくさん飲んで、先生よりいっぱい(お胸)大きくなろうね?」
「イブキね、まずは先輩たちと同じくらい大きくなりたい!」
「私も、いつかハナコちゃんと一緒くらいになるよ!」
将来、私はいーたんと並んで、トリニティとゲヘナの巨乳的架け橋になるの。おっぱいがあれば世界は平和になるし、おっぱいを揉めば世界が豊かになるらしいし!
これが本当のエデン条約だって、誰も気がついてないの。流石はナギ様、これが性治のやり方なんだね? 淫棒も胸も大きく出来ちゃうなんて、流石すぎるね? 今度、私のおっぱいが出るようになったら、お中元のお乳あげなきゃだね?*23
「それならね、二人とも」
先生はいつの間にか、ほわほわお兄ちゃん笑顔になってて。私といーたんの頭をナデナデしながら、お勉強を教えてくれる時みたいに優しく続けたの。
「牛乳だけじゃなくて、たくさん食べて、たくさん眠って、たくさん学んで、たくさん遊んで、色々なたくさんを経験して、大きくなっていって欲しいな」
先生の言葉に、いーたんと二人で、コクって頷いて。でも、急にどうしちゃったんだろって思ってると、先生はちょっと微笑んで。
「仲が良いのは、良いことだなって思っただけだよ」
意味深に、そんなことを言ったの。
……よく分かんないけど、仲良しなのはいいことだよね。いーたんと顔を合わせて、うんうんと頷いた。だって私たち、とっても仲良しさんだから。だから今日は、沢山シャーレでいーたんや先生と一緒に遊んだの。
お勉強さんなんていらなかった。ねぇ、お勉強さん、いーたんや先生相手に寝取られちゃってごめんね? でも、何度も一緒に叡智したのに、全然気持ちよくしてくれないお勉強さんが悪いんだよ? ふへへ*24。
「おや、あなたは」
「奇遇、というのはわざとらしいか。君も迎えなのだろう?」
シャーレのビル玄関口で、二人の少女が顔を突き合わせていた。百合園セイアと棗イロハ、片やトリニティのティーパーティー、片やゲヘナの万魔殿の議員。通常ならば、一触即発になりうる雰囲気が漂うであろう間柄だが……二人は何事もなかったかのように、歩調を合わせてシャーレの執務室を目指していた。まるで、見慣れた旧友と歩くかの如く。
「あなたは……相変わらず、妹を盗撮してるのですか。イイ趣味ですね」
「言いがかりは止すんだ、誰だって妹を放し飼いにしたりはしないものだろう?」
「ペットですか、貴方の妹は」
「にゃーんと鳴く」
「……路地裏で拾ってきたので?」
「気が付いたら、家に居着いていたんだ」
”それはそれは、大した博愛精神ですね”と言い捨てて、イロハは会話を打ち切った。セイアが妹のことを話し始めると長いことを、経験として知っていたから。
そう、知っている。幾度もこうして、二人は会話を行っているのだ。具体的には、エデン条約機構の双方の代表として。百合園セイアと棗イロハ、この二人が両校の条約を司る責任者であり、監督者でもある。
本来ならば、ゲヘナ側は空崎ヒナ風紀委員長がその任に就くはずだったのだが……治安維持の関係で、残念ながら常任できなかったのだ。その代打としてお鉢が回ってきたのがイロハ、政治的バランサーになれる適役が彼女の他に居なかったともいう。
必然的に、二人は好む好まざると関わらず、会話をする他なかった。ただ……この二人、案外相性は悪くなかった。というよりも、共犯者と言った方が正確かもしれない。
というのも、セイアは常習的なシエスタ実行犯であり、イロハもまたサボりの達人であった。勿論、二人は必要な仕事を終えた上でそういった行動を取っている。探り探り、お互いのパーソナルスペースを確かめながら、二人は同じ職場で段々と図々しくなっていってしまった。
気がつけば、ある程度の気のおけない関係になっていた。友人と言っても差し支えないかもしれないが、そう言い切るには二人に妙な照れやプライドがあるらしい。
つまりは、あれこれ言いつつも仲が良い二人、というのが結論になる。
「君にも、先生から連絡が来たのだろう?」
「えぇ、イブキが寝てしまったので迎えに来てほしいと。貴方もですか?」
「一文字違いで全く同じモモトークが届いたよ。全く、予習をすると言っていたくせに一日遊んでしまって……」
「イブキがお世話になったみたいですね」
「残念なことに、妹の方がお世話をしてもらってたみたいだ。君のところのお姫様に、構ってもらえるのが嬉しくて仕方ないみたいでね」
「イブキは、愛されるために生まれてきましたので」
「実はうちの子もなんだ」
出ましたねシスコン、と口には出さずにイロハは読み歩きをしていた本に目を落とした。実際に口に出すと、セイアの妙に長ったらしい上に実は言い訳できていない妹大好き宣言が始まるのを、イロハは知っていたから。この絶妙な面倒くささが、イロハからあの人友達じゃないですと言われる理由になってたりなってなかったりする。
そんな実のない話をしながら、二人はシャーレの執務室へとたどり着いた。先生が軽く手を上げて、二人に軽く挨拶する。ソファには、遊び疲れて眠りについた二人の幼女が毛布を掛けられて眠っていた。
それに二人は微笑しながら、それぞれの妹分を抱え上げた。抱えた時、眠りについてる少女たちが、お互いの手を繋ぎながら眠っていたことに気がついて、悪いと思いながらゆっくりと引き離した。本当に、どうしてここまで仲良くなれたのか、なんて微笑ましく思いながら。
「先生、仕事の邪魔をさせてしまったようで、済まなかったね」
「イブキとメブキには、良い息抜きをさせてもらったよ」
「私の時も、それくらい素直にサボってくれても良いんですよ」
「イロハのは……ね」
「先生、イロハでイヤらしい気持ちになるのは、些かどうかと思うよ」
「……セイアは、段々とメブキに似てきたね」
「は?」
理解不能と言ったセイアの顔に、イロハは失笑しそうになった。でも、セイアのそういったところが、イロハは嫌いではなかった。彼女が曲がりなりにも、トリニティ生の前でサボる気になれたのは、時折みせるこの様子のおかしい言動が原因だったりもする。この人、普通に陰湿なトリニティの輩とは違う、と印象付けられたのだ。それはそれとして、セイアは全く得心していなかったが。
「先生、生徒を誹謗中傷するのは良くないことなんだ」
「自分の妹相手に、なんてこというの」
「私は卑猥じゃないっ」
「……あんまり騒がないでください。起きちゃいますから」
イブキを背中に背負ったイロハが、呆れ顔でセイアを注意して。セイアは、それ以上食い下がることができなかった。はぁ、とため息を吐きながら、小さな身体で更に小さな妹を背負う。少し重さを感じるが、頑張れば何とかなる軽さだった。
「では、帰るよ。私が鼠径部に似ているかどうかは、また今度の機会にゆっくりと話をしよう」
「そんなこと、一度も言ってないよ」
「ん? ……メブキの寝言だったかな?」
無論、メブキはそんな寝言なんて言っていない。夢の世界で、陰核帝国の皇帝、マンコ・カパックとしてあらゆる下ネタを統べる女王になり、下々のモノ達の上に君臨するので忙しかったからだ。セイアは十分、メブキに汚染され尽くしていた。
「それじゃあ先生、また後日に」
「私も後日……また二人っきりでサボりましょうね」
「は?」
「それじゃあ二人共、またね!」
イロハの怪しい物言いに、セイアは思わず反応しそうになってしまったが、先生の勢いに押されて釈然としないまま帰宅の道についた。イロハとも途中で分かれて、トリニティへと向かうバス停を目指して。今日こそは、カレー以外のものを食べなくてはという使命感に燃えながら。
そうして、シャーレに一人残された先生は、執務室が手広くなったことに寂寥感を感じつつも、確かな温かさが心に灯っていた。それは、トリニティやゲヘナといったしがらみに関係なく、イブキとメブキの二人が仲良しなことが、何よりも嬉しかったからだ。立場を気にしない二人が、健やかにあってくれる。先生は、それだけで穏やかな気持ちになれた。
「よしっ!」
ぱちんと自分の頬を叩いて、先生はデスクへと向き合った。メブキ達に付き合っていたから、まだ仕事が残っていたのだ。もうひと頑張りしなきゃ……思ったところで、先生の携帯にモモトークが届いた。それも二件、同時にである。
なにかと思って見てみれば、それはセイアとイロハからのモモトークだった。
『妹が仕事の邪魔をして済まなかったね。
お詫びと言っては何だが、ミカがD.U.に居たらしいので応援に向かわせておいた。
本人が乗り気だったらしいから、扱き使ってあげてほしい。
PS ミカに暇を与えるとロクなことにならない、常に仕事を与え続けてくれ』
『机、見ました。既に夕方ですが、仕事が山積みでしたね。
サボれと言っても聞かないことくらいは理解しているので、ワーカーホリックの風紀委員長に万魔殿として命令を下しておきました。
ちょうどシャーレの近くに居たらしいので、すぐに駆けつけると思います。
今日はヒナさんに先生を貸すので、今度は私に借りられてください』
二人揃って、同じことを気にしてくれていた。あの二人も、自分に気を配ってくれている。生徒にそうされることが嬉しいような悪いような、そんな気持ちが綯い交ぜになって。
でも、当番でないのに申し訳ないから、遠慮のモモトークを送ろうとしたところで……誰かの足音が近付いてきた。どうにも、一歩遅かったことに気が付いて、先生は少し笑った。何だかんだで、誰かが一緒に居てくれるのを先生も悪くないと思っていたから。
そんなことを考えてる間に、ミカとヒナが同時に入室してきた。お互いを気にしているような、どう接すればいいか難しそうな雰囲気を漂わせながら。
もう暫く、アイスブレイクの必要があるのかもしれない。来てくれた二人を歓迎しながら、段々と氷解していく両校の関係を思って先生はそう思った。
きっと、雪解けの日は直ぐそこまで来てる。
そんな、いつか訪れるであろう春の日を予感して。
イブキTIPS:実はメブキを同い年だと思ってる。
イロハTIPS:セイアのことをムッツリ狐だと思ってる。