コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
全てが気のせいだったら、どれほど良かっただろうか。
呆然としながらも、セイアの足は彼の棒(小型ストラップモード)の持ち主であるヘルメット団の少女を追いかけていた。
捨て置くことなど、到底できそうになかったからだ。
(あの棒、何故ストラップ形態になって、しかもヘルメット団が装備している? 何かに利用されているのだろうか、あの棒が。……何に利用するつもりなんだっ!)
今すぐ問い糺したい欲求に抗いつつ、セイアは音もなく尾行する。ヘルメット団員に突っ掛かるには、セイアはか弱い少女に過ぎないのだ。正面からの抗議など、出来るはずもない。
そうして尾行を続けていると、件のヘルメット団女子は人目を気にしながら、地下へと続く階段を下っていって。何か予感を感じながら、セイアもその階段を下っていった。
薄暗い地下道、人通りが殆どない場所。
そこでセイアが見たものは……。
「みんな、集まったな」
怪しげな集会の場。
広い地下道に、多数のヘルメット団員が集まっていた。
ゴクリと、固唾を飲んでそれを見守る。
今のセイアには、聞き耳を立てることしかできないから。
リーダーらしきヘルメット団員が、集団の前に出てきた。そして、集まった団員たちを見渡してから、一言。
「お前たちに集まってもらったのは他でもない──これより、計画を開始するからだ」
「「「うおーーーーっ!!!」」」
謎の一体感の下、勝鬨みたいな雄叫び(メブキ曰く、女の子のは雌叫び)を上げているヘルメット団員たち。
フロアが熱狂している、真夏のアウトロービーチでの思い出を、未だに引き摺っているみたいなアガり方。彼女たちに、何か一体感を与えるような催しでもあったみたいな。
ビクリと、セイアは震えた。ここまで来て、今この場で行われているのは、何か陰謀めいたモノの会合なんじゃないか、ということに気がついたからだ。
「みんな、手筈通りに動けよ。……これが成功したら、お金がガッポリ儲かる上に、キヴォトス中に旋風を巻き起こせるんだからなっ! アタシらで作るんだっ、新しい流行を!」
アジテートをぶち上げた後、リーダーであろう彼女は、懐に忍ばせていたある物体を取り出す。それを見て、セイアは思わず白目を剥いてしまった。
「──全ては、イマジナリーお姉ちゃん棒普及のために!」
取り出されたのは、イマジナリーお姉ちゃん棒ストラップ。ペカーと、無駄に目が発光しているそれに、うおーっと少女たちは腕を突き上げた。
「ミンナト、トモダチニ、ナリタインダ。ヨロシク、タノムヨ」
その一言で、異様な熱狂が辺りを包んだ。
ビバ、イマジナリーお姉ちゃん棒!
親友を普及しろ、売り飛ばせ!
ぼっちどもに話し相手を!
声かわいい、サイコー!
肩こりによく効く孝行下僕!
ミレニアムゆるキャラグランプリで戦えるデザイン!
それぞれが、主観によるイマジナリーお姉ちゃん棒の価値を口にしながら、熱い口調で語り続けている。
──絶対売れる、アタシらの親友は。
敢えて、この場を包んでいる一体感を言語化するなら、この一語に尽きるだろう。
(なっ、何なんだそれは〜〜っ!!!)
そんな中で、耐え切れなくなったセイアは、一人ゴロゴロともんどりを打つ。
端的に言うと、発狂していた。
(ふざけているのかっ、一体何を考えているんだ! ここにいる全員、メブキ並みの知能なのか!!)
思いつく限りの罵声を脳内で浴びせながら、ジタバタと暴れる。ジッとなど、していられるはずもない。
このままでは、自分の恥が輸出品になってしまう。
全キヴォトスで、自分に似た声の電気按摩器が、プルプルと震えながらお喋りをする未来。正にセイアにとっての絶望、赤い空の日に匹敵する壮絶な結末。
そうなっては最後、外を出歩くことすらままならない。家で引きこもりとなり、妹を抱き枕にして眠ることしか出来ない毎日が訪れる。
(到底許されざる未来なんだ、そんなものは!)
セイアは激怒した。
必ず、あの邪痴淫虐な棒を去勢しなければならないと決意した。
……したのだが、ジタバタ暴れていたからだろう。賑わっているヘルメット団員たちの中とはいえ、隠密なんて出来やしないくらいに暴れ散らかしていたセイア。
具体的にいえば、屈辱に耐えるために近くにあった自販機をガクガクと揺らしてしまっていた。当然、そんな事をしていれば気付かれてしまう。
「? 誰かいるのか!」
声を張り上げられて、セイアは無くしていた理性を取り戻した。……が、セイアが隠れているのは袋小路。逃げようにも逃げられない、穴に潜った狐状態。
焦って、どうすれば良いか辺りを見回して。
──咄嗟に、転がっていたダンボールへと目を向けた。
「あん、誰もいないのか?」
確かめに来たヘルメット団員が、路地をキョロキョロと見回す。その中で、セイアは落ちていたダンボールを被って息を潜めていた。
普段ならその違和感にヘルメット団員も気付けたかもしれないが、今はミレニアムEXPOの真っ最中。準備のために用意されて、一時的に投棄されたダンボールが周りにいくつもあったから。
その中の一つに隠れているセイアのことを、上手く認識できなくて。
それでも、と諦めずに確かめようとしていたヘルメット団員の肩に手が添えられた。
「さっきの物音の原因、見つからないんだ。お前も手伝って──」
「──何が、見つからないって?」
そこで、ヘルメット団員の少女は気がついた。自分の肩に置かれていた手が、仲間のものじゃないことに。
「なっ、お前は!?」
「よう、何してンだよ、こんなところで」
薄い赤色のショートヘアから覗く、鋭い眼光。まるで、狩りに勤しむ猛獣の目を幻視するそれに、確認に来ていたヘルメット団員は大声で叫んでいた。
「──棒狩りが現れた!」
「ダセェ呼び方すんなよ、しばくぞ」
「うぼあーっ!?」
しばくぞと言いながら、グーパン一撃でヘルメット団員を沈める赤髪の少女。無茶苦茶その場でしばいていた。
一方、少女の来襲を知らされた他のヘルメット団員たちは、先ほどと違う種類の喧騒に支配された。
「一人で30本ものイマジナリーお姉ちゃん棒を破壊してきたって噂の、あの棒狩りなのか!?」
「やべぇ、逃げるぞお前たち!」
「し、親友を破壊されるわけにはいかない、逃げろ!!」
「お前たち、依頼主から指示が届いた! 各製造班、バラバラの方向に逃げろ! 奴は強いが一人だ。運が悪い奴は捕まるが、良ければ逃げ切れる!!」
狂乱に支配される中、リーダーから指示を受けたヘルメット団員たちは、半ば四分五裂状態でそれぞれの逃走経路を確保して逃げ出した。
それを不機嫌そうに眺めていた赤髪の少女は、追いかける素振りもなく、めんどくせぇとぼやいて。
追いかける代わりに、しばいて気絶したヘルメット団の首根っこを引き摺りながら、ダンボールが投棄されている場所に声を掛けた。
「ったく、隠れてるのは分かってんだ、さっさと出てこい」
本当なら、前々から暗躍していたヘルメット団員たちを、奇襲し、纏めてぶちのめせるはずだった。その、予定であった。
だが、どこかのバカが騒いだせいでそれも台無し。確認に来たヘルメット団員は、近場に潜伏していたネルの方へと探りを入れてしまったから。だから見つかる前に、仕方なく出て来ざるを得なかったのだ。
僅かな沈黙の後、のそりとセイアがダンボールから這い出てきた。その姿を見て、赤髪の少女は珍しく目を丸くし、思わず問い掛けていた。
「…………お前、黒幕か?」
棒と一致する見た目、お祭り騒ぎなのにわざわざこんな場所に居る理由。それらを複合して、もしやと思っての問い掛け。
しかし、それに対してセイアは、まるで自身も棒になったかのように震え始めて。顔を上げて、ポークの軍勢を睨みつけるが如く、赤髪の少女を睨みつけた。
「〜〜っ、世界で一番最悪な勘違いなんだ、それは!!!」
「っ、るせぇ……」
恐らく、セイア史上で最も大きな叫び声であった。
人でいっぱいなミレニアムEXPO、私達は逸れちゃわないように、私が真ん中になって3人で手を繋いでたの。こんなに大変なんて、ちょっとビックリ!
エロゲーでも夏祭りとかで、人混みが多くて大変だから、と木陰に行って隠れ浴衣えっちしてるもんね。それと一緒で、ミレニアムの何処かでも隠れ人混み回避えっちが行われてるかもしれなかった。
「会場の受付、皆さん競って殺到していますね」
「あーっ、もう! 人が多すぎて、並ぶ場所もわかんなくなってるじゃない!」
揉みくちゃ女子高生フローラル団子状態の受付会場は、先生のおにんにんを受け入れたおまんまんみたいにパンパンになってたの。とてもじゃないけど、今すぐには手続きが終われそうにない。
だからね、一旦受付を諦めて退却したんだ。あのままだと、いつの間にかオークの軍勢に囲まれちゃってても、全然気が付かないままに処女膜を散らすことになっちゃうから。
「少し落ち着くまで、お茶でもしましょうか」
「も、もう一回頑張れば、何とかなるかもしれないし!」
「コハルちゃん一人でなら、そうかもしれません。ですが、メブキちゃんも一緒だとどうでしょうか?」
「うにゃ〜」
ハナコちゃんの言う通り、私のざこざこボディじゃ到底オークの群れには勝てそうになかった。だからね、対魔忍には私は全然なれそうにないの。もしコハルちゃんが、対魔忍特有のピッチリスーツを着ることがあったら一緒に写真撮影してね?
「もう、メブキは本当に仕方ないんだから!」
「ふへへ、コハルちゃん、ごめんね?」
「あ、謝らなくて、いいけど」
「ふふ、コハルちゃんは偉いですね」
「あ、頭撫でるなぁ!」
コハルちゃんはいつの間にか、ハナコちゃんに頭ナデナデをされてたの。コハルちゃんは良い子だから当たり前だけど、羨ましいね?
「……ハナコちゃんにナデナデされるコハルちゃんは、私を撫でる義務が発生するんだよ?」
「なんでよ」
「私もナデナデされたいから!」
「お子様メブキ! ……近くに来なさいよ、撫でられないじゃない」
「にゃーん!」
「コハルちゃんは、本当に優しいですね」
「知らない!」
コハルちゃんの近くで頭を突き出すと、わしゃわしゃ、わしゃわしゃーって撫でてくれたの。
……猫さんじゃなくて、犬さんの撫で方されちゃってるね? 気持ち良いから、今だけわんわんメブキになっちゃうんだけど!
「わんわん! コハルちゃんのペットな、わんわんメブキだよ! バターメブキをするには、ナデナデしてたくさん好感度を稼がないとダメなんだからね?」
「いきなり何なのっ。エッチなのはダメ、死刑!!」
コハルちゃんはネコさん派閥だったみたい。ワンちゃんになった私を、早速保健所へと突き出そうとしていた。こんなこと、許されて良いのかな?
「コハルちゃん、ネコさんの舌はザラザラで危ないんだよ?」
「何でメブキなんかにペロペロなんかされなきゃいけないのよっ! 舌を去勢するわよ!!」
「舌を去勢!?」
コハルちゃんは、どうしてだか舌を性器と勘違いしてたの。もしかすると、犬さんや猫さん達の甘えるペロペロも、コハルちゃんには全部性行為に見えちゃってたのかもしれなかった。恐ろしいね?
「コハルちゃん、舌はおまんまんやおにんにんをペロペロするためのものじゃないんだよ? えっち本だとそればっかりだったから、勘違いしちゃうのも仕方ないけど……」
「してないわよ、クソバカメブキ! アンタがえっちなことばっかり言うから、破壊しようとしてるのよっ!!」
「破瓜いするの!?」
恐るべきことに、コハルちゃんは私の舌に処女膜があると思い込んでたの。私の小説を読んで、もしかしたらそんな結論に辿り着いちゃったのかもしれない。自分の文才が、恐ろしくて仕方ないね?
でも、そんなことされたら、みんなとお喋りできなくなるし、ご飯も食べれなくなっちゃう。それは凄く困っちゃうから、怖すぎてプルプルしたの。
ハナコちゃんは、そんな私とコハルちゃんを優しく抱きしめてくれて。
「わーい!」
「きゅ、急に何するのよ!?」
うふふってお上品に微笑んで、ハナコちゃんはちょっと周りを見渡したの。するとね、そこにはなんか遠巻きにしてるミレニアムの生徒さん達がいて。
ヒソヒソ
「なに、あの……あれ、なに?」
「わ、分かんない。……あの人たち、本当にトリニティ生なのかな?」
ヒソヒソ
「舌って去勢するものだっけ?」
「しないんじゃない?」
「だよね! ……舌が海綿体で構成されていたのなら、或いは?」
「悍ましい前提すぎない?」
ヒソヒソ
「待って。いま気がついたんだけどさ、あそこのピンク髪の人、晄輪大祭の開会式で……」
「エッ、あの◯◯で✖️✖️とか言ってた人!?」
「多分そう」
「ろ、ロックじゃん」
「ファックの間違いでしょ?」
ヒソヒソしながら、私たちの方を見てたの。
……ハナコちゃんが美人すぎて、みんなびっくりしちゃってるのかな?
「人気者ですね、私たち♡」
「なっ、なっ、なぁ!?」
「にゃ?」
突如として、コハルちゃんはウイ先輩棒に取り憑かれちゃったみたいに、ハナコちゃんの腕の中でプルプルと震え始めちゃったの。……お漏らしの最中かな?
「いっ」
「? イっちゃうの、コハルちゃん?」
「イヤアアァーーっ!!!」
お顔が真っ赤になったコハルちゃんは、私とハナコちゃんの手を掴んで、そのまま猛スピードで走り出しちゃったの。ビックリだね?
気が付けば、私たちはコハルちゃんに、人気がないところに連れ込まれちゃってたの。
「ハナコちゃん、コハルちゃんはどうしちゃったの?」
「思春期なんです♡」
「そっかー」
コハルちゃんは思春期で、どうしようもなくリビドーが抑えられなくなっちゃう時があるみたいだった。
でも、幾らコハルちゃんが相手でも、お外でヌキヌキなんてしてあげれない。だから、どうやったらコハルちゃんの性欲を抑えてあげられるかなって、いっぱい考えようとして。
「にゃ?」
そこで、私の携帯がさっきのコハルちゃんみたいに、プルプルって震え始めたの。そっか、さっきのコハルちゃんは、ちゃんとマナーモードだったんだね。
「もしもし、春風メブキです!」
ピッてお電話に出ると、電話口からは何の声も聞こえない。どしたんだろうね?
「間違い電話さんですか?」
尋ねてみると、少しの間の後に、ボソッと女の子の声が聞こえてきたの。
『モモトーク、見てください』
「ふぇ?」
それだけ告げて、直ぐに電話が切れちゃって。一瞬、イタズラ電話さんだったのかなって思ったんだけど……直ぐね、私の勘違いだって、気がついちゃった!
だって、モモトークにメッセージがちゃんと届いてたんだ──keyから!