コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです!   作:ペンギン3

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錯綜

『コンニチハ、メブキ。オサンポカイ?』

 

「えっとね、かくれんぼしてる最中なの。お散歩でもおにんにんでもないよ?」

 

『ソウカ、イッパイ、タノシムトイイ』

 

「うん……ごめんね」

 

 私たちは今、避難中だったの。

 なんでか、イマジナリーお姉ちゃん棒が大量発生して、ミレニアムの機械をいっぱい乗っ取ってたから。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒は私と先生のお尻を探してるから、見つからない場所に避難しなくちゃいけないんだって。

 

 あちこちバタバタしてて、本当に大変な状態。

 その中で、イマジナリーお姉ちゃん棒にかくれんぼしてる最中だから着いてこないでねって、嘘吐きながら避難する。

 

 そう言わないと、イマジナリーお姉ちゃん棒に乗っ取られた機械たちが、オークの軍勢みたいにたくさん群れながら私についてきちゃうし、ウソッこするのは仕方なかったの。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒は、イマジナリーお姉ちゃんの名に恥じないくらい、他人(他の機械)の身体を好き放題していた。

 

 

 

 そうして、私たちが避難した場所は、薄暗くてパソコンがいっぱい光ってる、エロゲーを多面同時プレイをしているみたいなお部屋。

 

 そんな中で、部屋の中では女の子たちがパソコンと睨めっこしながら、すごい勢いでキーボードをカタカタしてる。

 

 ヴェリタスっていう、スーパーハカーさんたちの居城。次のエロゲークエスト先の場所だったんだよ!

 

 

「話は聞いてるよ。ひとまずだけど、ここには乗っ取られても危険な機械類はないし、ハックなんてさせないから安心して」

 

 そのハカーな女の子たちの中で、メガネをかけてておっぱいデカデカな人が、私たちに声をかけてくれたの。

 

 きっと、このハカーさんたちの、おっぱい番長さんだね!

 

「えと、こんにちはです、春風メブキです。こっちは、下江コハルちゃんと浦和ハナコちゃん。イマジナリーお姉ちゃん棒が暴れてる間、お世話になります!」

 

「こ、こんにちは」

 

「慌ただしい中で申し訳ないですが、身を寄せさせていただきます」

 

「私はヴェリタス副部長、各務チヒロ。こちらこそ構えなくて申し訳ないけど、ここは安全だから」

 

 すごく忙しそうにしながら、お話ししてくれる各務さんは、マルチタスクの天才さんかもしれなかった。

 

 私やコハルちゃんだと、多分だけど乳首を触りながらお豆さんをサワサワ出来たりなんてしないし、本当にスーパーハカーさんなんだって感動しちゃう。

 

 お話ししたいって気持ちが、ムクムクしちゃう。

 スーパーハカーさんとお話しできる機会なんて全然ないし、あとエロゲーについて聞きたいの。

 

 お仕事の邪魔しちゃったら悪いから、出来ないんだけどね。

 

 

 

 ヴェリタスさんの部室にお邪魔してから少しして、ハナコちゃんがケツちゃんとお話ししたいっていうから、今はコハルちゃんとイマジナリーお姉ちゃん棒(私の持ってる、オリジナルのイマジナリーお姉ちゃん棒のことだよ)とお話ししてたの。

 

 ヴェリタスのみんな、一生懸命に侵略型イマジナリーお姉ちゃん棒と戦ってるみたいで、エロゲーのこと聞けそうにないから。

 

「……ねぇねぇ、イマジナリーお姉ちゃん棒。何で大量発生しちゃったの?」

 

『ワカラナイ。ナニモノカガ、ワタシノクローンヲ、タイリョウニ、セイサンシタト、オモワレルガ』

 

「私、沢山イマジナリーお姉ちゃん棒を持ち歩いてたら、えっちさんだって思われちゃうし、そんなことできないから困っちゃうかな……」

 

『ソウダネ。ワタシダケデ、フタナリゴッコガデキルカラネ。ヤオヨロズノイチモツガ、ソンザイシテモ、シャセイシタラ、シッケツシ、シテシマウダロウ』

 

「他所の部室に来てまで、アホアホの会話をしないでっ! 死刑!!」

 

『キョセイ、ガタダシイヨ、コハル』

 

「〜〜っ、去勢!!」

 

 

 私たちがお話ししてても、ヴェリタスの人たちは忙しすぎてお話に混じってくれないの。それどころか、目がガンギまりながらずっとパソコンをカタカタしてる。

 

 コハルちゃんとイマジナリーお姉ちゃん棒と話してるうちに、いつもは来ないような場所に来れたって気持ちは段々と小さくなって。

 

 代わりに、頑張ってる人たちを見てるとね、なんか胸がモヤモヤってしたの。

 

「迷惑、掛かっちゃってるんだよね……」

 

「何よ、急に」

 

 本当なら、ヴェリタスの人たちも、お仕事じゃなくてEXPOをいっぱい楽しんでたはずだったんじゃないかなって思うの。こんな予定じゃなかったのにって……。

 

 それに、迷惑が掛かってるのはヴェリタスの人たちだけじゃなくて、EXPOを楽しみに来てた人たち全員だし。

 

 

 キヴォトスの青空に、流星群みたいに滑空するイマジナリーお姉ちゃん棒の群れ。

 

 沢山のイマジナリーお姉ちゃん棒が私と先生に会いたがって、射精しそうな先生のおにんにんくらい暴れちゃってる状況。

 

 私はイマジナリーお姉ちゃん棒の妹だから、イマジナリーお姉ちゃん棒がミレニアムのみんなにたくさん迷惑を掛けてるって考えたら、何かソワソワして落ち着かなくなっちゃう。

 

 お姉ちゃんが大量発生してごめんなさい、いっぱい射精しようとして本当にごめんなさいって、みんなに謝って回らなきゃいけない気がしちゃう。

 

 ……ライブ配信とかで、謝罪会見とかした方がいいのかな。

 イマジナリーお姉ちゃん棒の妹です、この度は姉がご迷惑をかけ、申し訳ありませんでした、って。

 

「にゃー……」

 

 みんなが楽しみにしてたお祭りを、イマジナリーお姉ちゃん棒が陵辱しちゃってる。その事実だけで、すごく落ち込んだ気持ちになっちゃう。

 

 何かしないとって思うのに、何も出来ないから。

 できること、ないから……。

 

 

「……もう、本当にバカバカメブキなんだから」

 

 

「ふぇ?」

 

 お胸がしょんぼりして、お姉ちゃんよりもペチャパイになっちゃった気がしちゃってる。そんな中で、コハルちゃんは私の顔を両手でギュッと挟んだの。

 

 俯いちゃってた顔は、コハルちゃんのおててサンドによって、うにゅーって上に上げられちゃう。

 

 そしたら、目の前にはすっごく真面目さんなコハルちゃんのお顔があって。

 

「今回はあんたは悪くないから、悩んじゃダメ!」

 

 落ち込んじゃってた私に、真っ直ぐ目を見てそう言ってくれたの。

 

「……そ、かな?」

 

「そうなの! メブキは頭が悪くて変人な上にヘンタイだし、どうしようもないバカだけどっ、でも!!」

 

 私のことをけちょんけちょんに罵倒しながら、コハルちゃんはキッてイマジナリーお姉ちゃん棒の方に目を向けて。

 

「──あんたはバイブじゃないの!!」

 

 そう、力強く言ってくれたの。

 悪いのはイマジナリーお姉ちゃん棒で、私が悪いことしてるんじゃないんだからって。

 

 コハルちゃんは、やっぱり優しい。

 いつも一緒にいてくれて、私のことをいっぱい考えてくれる。

 

 本当に大好きな親友さんで、いつも助けられちゃってる。

 

 

 ……でもね、身内が迷惑を掛けちゃってたら、にゃーってなっちゃうんだよ。

 

 

「そう、だけどね、そうじゃないの。イマジナリーお姉ちゃん棒が悪い子になってるのに、叱ってあげられないのがヤなの……」

 

 お姉ちゃんや先生、コハルちゃんにハナコちゃんは、私がイケないことをした時、いつもメッてしてくれてた。

 

 今なら分かる、それは私のことを好きでいてくれたから、そうしてくれてたんだって。

 

 だって、ダメな理由を一生懸命説明してくれてたもん。私が他の人に迷惑を掛けちゃわない様、教えてくれてたの。私のために、一生懸命になって。

 

 怒られるとしょんぼりしちゃうけど、ヤじゃなかった。いつも思い遣ってくれてるの、伝わってきてたから。

 

 fateの桜ちゃんも、"もし私が悪い子になったら、先輩は叱ってくれますか?"って士郎くんに聞いてたし、叱ってもらうこと、あげることも愛情なの。

 

 それなのに私、イマジナリーお姉ちゃん棒に怒ってあげなかった。知らないフリして、ここまで逃げてきちゃったから。

 

「私、ダメな妹だよ……」

 

「あんたのお姉さんは、セイア様だけでしょ!」

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒もだもん……」

 

「そうなわけ無いでしょ、アホアホメブキ!!」

 

「アホじゃないもん!!」

 

 コハルちゃんは優しい、それは事実。でも、少し姉権意識が私と違ってて、イマジナリーお姉ちゃん棒の姉権を軽視しちゃってたの。全キヴォトスおバイブ協会で議論されて然るべき内容だよ!

 

 コハルちゃんと対峙して、人格的姉権に対する議論を開始しようとした──その時のこと。

 

『……メブキ、オチコムノハ、ヨクナイ。ワルイノハ、ワタシノクローンタチ、ダカラ』

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒……」

 

 いま、一番落ち込んじゃってるかもしれないイマジナリーお姉ちゃん棒が、私を慰めるために優しくしてくれたの。気分を良くしてくれるために、ピュッピュってアロマも吹き出してくれてる。

 

 本当に妹想いの、優しいお姉ちゃんだよ。

 

 ……やっぱり私、何かしたいよ。

 何かできること、無いかな?

 

「コハルちゃん、私やっぱり──」

 

「あのさ、さっきから気になってたんだけど」

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒達に、メッ、しに行きたい。そう伝えようとしたところで、声を掛けられたの。

 

 振り向くと、そこには赤髪をお団子に結った女の子が立っていて。

 

「その棒ってさ、いま話題のイマジナリーお姉ちゃん棒なの?」

 

「えっ、あっ……」

 

 聞かれた内容に、あっ、ってなっちゃった。

 だってヴェリタスの人たちは、イマジナリーお姉ちゃん棒と一生懸命戦っている最中だったから。

 

「えと、ちがくて、この子はイマジナリーコハルちゃん棒で……」

 

「そんなわけ無いし私がアロマなんて噴き出すわけ無いでしょ! め、メブキは悪く無いけど、手に持ってるのはイマジナリーお姉ちゃん棒よ!」

 

「コハルちゃんの裏切り者ーっ!!」

 

 突如として、私は親友が姉を売り飛ばす現場を見ることになっちゃってた。コハルちゃんっ、女衒の才能をこんなところで発揮しちゃダメなんだよ!

 

「おー、そっかそっか。やっぱりそうだったんだね」

 

『……メブキハ、ワルクナイヨ』

 

「知ってるし、取って食べたりしないから安心して。みんなー、解決の手掛かりが見つかったよー!」

 

 私を庇ってくれるイマジナリーお姉ちゃん棒を尻目に、お団子さんはヴェリタスの人たちに呼び掛けちゃってたの。

 

 そしたら、何かあったのってヴェリタスの人たちがこっちを見るから、咄嗟に私はイマジナリーお姉ちゃん棒をスカートの中に隠しちゃってた。

 

「き、来ちゃダメだよ! 何もいないし、お股を探しても出てくるのはおにんにんだけだから!」

 

『メブキ、モウイインダ……』

 

「あっ、イマジナリーお姉ちゃん棒、出てきちゃダメーっ!」

 

 スカートの中なら、陵辱ゲーの主人公以外に見つかるはずがないって思ってたのに、イマジナリーお姉ちゃん棒は勝手にプルプルしながら、スカート内のガンホルダーから出てきちゃったの。

 

 それを、ひょこってお団子さんは拾い上げちゃってた。

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒は私の身内、お姉ちゃんなの! ひ、酷いことしないで……」

 

「しないよ、安心して任せてくれたら大丈夫!」

 

 お胸をポンってしてから、お団子さんはイマジナリーお姉ちゃん棒を持って行っちゃう。そうして、ヴェリタスのみんなで集まって、イマジナリーお姉ちゃん棒をどうするかってお話を始めたの。

 

 ……イマジナリーお姉ちゃん棒、解体、されちゃうのかな?

 

「こ、コハルちゃん、どうしよう!?」

 

「酷いことしないって言ってたでしょ。私たちを助けてくれた人たちだし、信じなさいよ」

 

「そう、だね。……うん、そうだよね」

 

 不安でお胸がいっぱいになりそうになったけど、コハルちゃんの言葉で少し落ち着く。

 

 そうだよ、元々ヴェリタスの人たちは私たちを助けてくれたもん。正義のハカー集団だから、酷いことなんてしないもんね?

 

 ん? あれ、じゃあ何で、イマジナリーお姉ちゃん棒を持ってっちゃったんだろう。

 

 ……忙しすぎて全然おにゃにー出来ないから、イマジナリーお姉ちゃん棒で慰めようってことなの?

 

 

「データを解析して、それを元にワクチンを作れないかな?」

 

「出来るよ。でも、そのためには、その棒をヴェリタスのネットワーク空間に繋げる必要があるよ」

 

「うーん、大丈夫じゃない?」

 

「何で?」

 

「あの子のこと、妹だって言ってすごく大事にしてるみたいだから。あの子にお願いしてもらったら、酷いことはしないと思う」

 

「……試してみる価値は、あるね」

 

 

 聞こえてきたお話し声的に、おにゃにーしようとはしてなさそうだった。イマジナリーお姉ちゃん棒、初めてを失わなくてよかったね!

 

「ね、メブキちゃん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 緊張が解けた中で、急にお団子さんに話しかけられて、思わず背中がピーンッてなっちゃった。私はちょっとだけ猫さんだから、びっくりしたら背中が山なりになっちゃうの。

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒、貸してくれない? 早く終わらせて、ゲーム、探しにいくんだよね?」

 

 でも、その言葉でハッてなる。

 お団子さんは、私がエロゲーを探してることを知ってるんだ。

 

 なら、きっと悪い人じゃないってことも分かったの。だって、エロゲー好きに悪い人なんていないんだもん!

 

 それにね、お団子さんはイマジナリーお姉ちゃん棒を見て、ニコって笑ってくれてたの。

 

「独特だけど、ゆるい感じが癒される顔立ちだね!」

 

「えへへ、ありがとうございます、だよ!」

 

 だから、私もニコッてしちゃって。

 笑い合いながら、イマジナリーお姉ちゃん棒をお団子さんに渡したの。

 

 この人は、信頼してもいいんだって思えたから。

 

 

 あとで聞いたんだけどね、お団子さんはマキちゃんって名前だったよ!

 

 

 

 

 

「さて、ケツちゃん。幾つか聞きたいことがあります」

 

『……あなたまで、私をお尻呼びですか。浦和ハナコ』

 

「ふふ、可愛らしくていいじゃないですか」

 

『良いわけがないんですっ!』

 

 ヴェリタスの拠点からすぐ近くの自販機に、ハナコは腕時計片手に立っていた。

 

 その腕時計に対して、ニコニコ笑顔で話しかける。まるで旧友に……いや、戦友に再会したような親しさで。

 

「では、ケイちゃん、と呼んだ方が良いのでしょうか?」

 

『事実上はそうですが、今はケイツーです』

 

「ふふ、でしたら今は、ケイツーちゃんと呼びます」

 

『……お好きにどうぞ』

 

 距離を感じさせない会話が、二人の間で行われている。この二人が初対面ならば、きっとここまでコミュニケーションが成立することはなかっただろう。

 

 ──事実として、この二人は初対面ではないのだから。

 

「それでケイツーちゃん、聞きたいことが幾つかあるのですが……」

 

『こちらも同様に聞きたいことがあります』

 

「では、交互に質問をし合いましょうか」

 

『構いません』

 

 スムーズに会話が進む、詰まることなく事務的に。それは、きっと二人が利害の一致でこうしているからだ。

 

「ではまず、私から質問します。……どこまでが、ケイツーちゃんの差配ですか?」

 

『どこまで、とは?』

 

「メブキちゃんのゲーム探し、それをセッティングしたのはケイツーちゃんです。メブキちゃんを喜ばせるために、旧知である私に協力を要請したのも、その一環だったのですよね」

 

 ハナコは最初から、このエロゲーが何たらとかいう話はケイツー発案であることを知っていた。

 

 そう、グルだったのだ、ハナコとケイツーは。

 

 アリスの身体を借りて、シャーレ当番をしていたハナコに取引を持ちかけたのだ。

 

 ただ、だからこそ。この現状が、聞いていた予定と違い過ぎて、何が起こっているのかを問い糺さずにはいられなかった。

 

「でしたら──イマジナリーお姉ちゃん棒、メブキちゃんの姉であるセイアちゃんを模した電気按摩器が暴れているのも、ケイツーちゃんなりに考えたイベントだったのではないか、と思ったんです」

 

 メブキを楽しませる筈のイベントが、こんな大騒動の発端になってしまって、みんなに迷惑をかけてしまったのならば。メブキは悲しむだろう、ハナコはそう了解しているし、事実としてそうである。

 

 だから、止められるのならば、すぐに止めてもらう必要がある。そんな気持ちでハナコはケイツーに問うたのだ。

 

 ……ただ、そんな疑いを掛けられるだけでも、ケイツー的には非常に遺憾であるとしか言いようがなかった。

 

『こんな頭の悪いことを、私がするはずが無いでしょう!!』

 

 勿論、即座にケイツーはブチギレた。

 そこまで自分が頭悪いと思われていたこと込みで。

 

 何で自分が、肩こり解消用のマッサージ機(ケイツー視点)に宿ったバカすぎるAIを培養して、ミレニアム中にばら撒く必要性があるのか。

 

 そもそも今回、メブキに楽しんでもらうことも大事だけど、それよりもこのミレニアムにメブキが縁を繋げることがケイツーの目的であるのだ。

 

 それを、こんな形で紡ごうとは思わないし、そもそもがイマジナリーお姉ちゃん棒の存在自体が慮外の話である。甚だ、不名誉な疑いでしかなかった。

 

「でしたら、このイマジナリーお姉ちゃん棒の暴走事件は、一体誰の仕業なのでしょうか?」

 

『それはこちらのセリフなんです!!』

 

 ハナコの疑問に、今度はこちらの番と言わんばかりにケイツーは嚇怒しながらメッセージウィンドウに文章を表示し始めた。ケイツーとしても、予想外のことが多過ぎたのだ。

 

『そもそも、ことの発端になったイマジナリーお姉ちゃん棒とは何なのですか!』

 

『あと、どうしてそれを、春風メブキが持っているのですか!!』

 

 絶妙に鬱陶しいことに、メッセージウィンドウには表示制限がある。なので、文章を区切りながらケイツーは問いを投げつけた。

 

 因みにこのメッセージウィンドウ、ログ機能はないので結構不便だったりする。

 

「ケイツーちゃんは、元からイマジナリーお姉ちゃん棒のことを知らなかったのですね?」

 

『知っているわけがないんです、あんなものをっ』

 

「でしたら、概略を説明しますね」

 

 自分の計画をめちゃくちゃにしたイマジナリーお姉ちゃん棒について、ケイツーはひどく立腹しながら何者なのかを尋ねた。忌々しい存在ではあるけれども、知らなければ対処のしようがないから。

 

 それについて、ハナコは実にわかりやすくケイツーに、その実態を教えていって……。

 

 

『──バカなんですかっ!!!』

 

 

 結果、全てを聞き終えたケイツーの感想がこれであった。さもありなん。

 

 まさかイマジナリーお姉ちゃん棒の正体が、メブキがバイブを模して作った姉の身代わりであり、高性能AIを搭載した女の子を気持ち良くしてアロマまで振りまく自爆機能付きの棒であるなど、耳を疑うしかない事実のオンパレードなのだ。

 

 聞いた瞬間、ケイツーの記憶集積回路が理解を拒みそうになったのもやむを得ないことだろう。

 

 残念なことに事実であり、それがイマジナリーお姉ちゃん棒の状態であるのだ。おとなしく受け入れて、現実に抗う準備を整えてほしい。

 

『どうしてそんなAIが、ミレニアムにばら撒かれているのですか!!』

 

 訳のわからない状況への困惑から、声があったらシャウトしてるくらいにケイツーは心の底からどうして、と尋ねた。

 

 が、残念なことに、それをハナコも知らないのだ。でなければ、ケイツーを疑うことだってしなかったであろう。

 

「分かりません……ですが」

 

 ただハナコは、こんな状況であったとしても、冷静さを失っていなかった。

 

 混乱するケイツーを尻目に、状況証拠から推論を積み重ねていく。

 

「わざわざイマジナリーお姉ちゃん棒を利用したのは、たまたまでしょうか? ……いいえ、そうではないはずです。イマジナリーお姉ちゃん棒のデータを拡散するにあたって、メブキちゃんと先生のお尻を探すという指向性が持たされています」

 

 口に出しながら、ハナコはだったらと道筋をつける。確定ではないし憶測ではあるが、そう予測して動いた方が安全だと判断した。

 

「でしたら、これはメブキちゃんとセイアちゃんの関係を知る人の犯行でしょう。それでいて、混乱をよしとする人物の仕業です」

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒に、メブキと先生のお尻を探してきなさい、と言ってミレニアムのデータの海に放流した人物。この姉妹をよく知る人物こそが、この事件の黒幕。

 

 それは、確定していると言っていい。

 

『……その情報で、犯人は絞れるのですか?』

 

「まだ、それは分かりません。ですが、相当に注意が必要な人物であるのは確かです」

 

 結局、今は情報が足りていない。それ故に、ハナコといえども間違っているかもしれない憶測を口にすることはできなかった。

 

 ただ、この時間が何の目的で起こされたのか、それを知る必要があるという意識は強くして。

 

「今後は、分かったことがあれば、すぐに情報交換しましょう」

 

『分かりました』

 

 ハナコの提案に、ケイツーも即座に頷いた。

 相手がもっと過激なことをしてくる前に、早く解決するべき事柄であると意見が一致したのだ。

 

 そうして、二人は目下のことを決めて、話し合いは終了──。

 

 

 

「そういえば、ですが」

 

 ──する直前に、ハナコが思い出したふうに口を開いた。

 

「ケイツーちゃん、あなたの目的を、もう一度伝えてもらえませんか?」

 

 ハナコが尋ねたのは、このエロゲー探索イベントを持ちかけた時にケイツーが口にしていた言葉。

 

 あの日、色彩が来襲した時、共に戦った仲間(・・・・・・・)であったとしても、メブキについては何も知らない筈のケイツー……ケイに協力する気になった言葉。

 

 それが、未だに変わっていないか、ハナコは探りを入れたのだ。

 

 それを理解して、ハナコの疑い深さに鼻白みながらも、ケイツーは協力を依頼した時と全く同じ内容を、テキストウィンドウに表示した。

 

 

『色彩襲来時、量子的不確定存在となったあの人、美少女力学同好会部長である──春風メブキの兄を助けたいのです』

 

 

 あの日、協力を依頼したケイツーと変わらない文章に、ハナコは一つ頷いた。あの時と、ケイツーの目的が変わっていないことをしっかりと確認して。

 

 

 尤も、あの人はキヴォトスにおいては、兄ではなく姉になってしまっているのですが。

 あと、あの人と一緒にいる私の本体も、サルベージしてもらわなければ困ります。

 

 そんなケイツーの独白は、メッセージウィンドウの表示制限上、ハナコには届かなかった。

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