コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
一生懸命走って、勃起しちゃったイマジナリーお姉ちゃん棒の所に向かってたの*1。
急がないと、イマジナリーお姉ちゃん棒が迷惑をいっぱいドクドクしちゃうから。
ミレニアムには頭の良い人がいっぱい居て、沢山の優しさがあって、エロゲーだって存在しちゃう素敵な学校。
だから、絶対にアロマ射精で水没させていい学校じゃないし*2、イマジナリーお姉ちゃん棒にみんなを不幸にすることをして欲しくなんてなかった。
いっぱいいっぱい、息が苦しくなるくらいに走って、イマジナリーお姉ちゃん棒がある筈の海岸まで来た。
けど、イマジナリーお姉ちゃん棒はどこにも居なかったの。
「はぁ、はぁ……あれ、イマジナリーお姉ちゃん棒、どこ、かな?」
「居ない、じゃないっ」
「……あれを、どうやら戦闘中のようです」
ハナコちゃんの指差す方向を見ると、そこにはイマジナリーお姉ちゃん棒の欲望が肉棒になった触手で掴まれちゃってるヘリと、股間を緑色に光らせてから大規模射精アロマをするイマジナリーお姉ちゃん棒の姿があった*3。
ミレニアムの街でえっちする前に、海の果てで果てて、自分の射精がちゃんとミレニアム全土まで届く中田氏なんだってことを試してたんだと思う*4。
「い、イマジナリーお姉ちゃん棒、そんなことしちゃダメーーっ!!」
このままだと、手遅れになっちゃう。
ミレニアムの街にズコズコして、中田氏妊娠アロマえっちをしちゃうつもりだって思ったから*5。
精一杯の大声で、イマジナリーお姉ちゃん棒にメッてしたの。
けどね、イマジナリーお姉ちゃん棒は遠くにいてて、私の声が聞こえてなかった。私がちびちびメブキすぎて、声、届けてあげられなかったの。
「……近付くには船か航空機が必要ですが、ここには漁船も無いようです」
「ど、どうするのよ!」
「どこからか足を借りるか、それともイマジナリーお姉ちゃん棒を岸まで誘引するか、でしょうか」
ハナコちゃんが冷静に考えてくれてるけど、私には分かっちゃう。イマジナリーお姉ちゃん棒はハナコちゃんみたいに常に賢者モードじゃ無いし、今は射精アロマを出そうと一生懸命になってるってことを。
私たちが何かしても、気が付いてくれない。
それが分かっちゃう。
「どうすれば、良いのかな……」
イマジナリーお姉ちゃん棒を叱らなきゃダメなのに、その方法がない。私が虹を掛ける勢いで潮吹きしたら気が付いてもらえるかも知れないけど、おにゃにーのやり方だって知らない私がそんなこと、出来るはずなかったから*6。
イマジナリーお姉ちゃん棒に、声を届ける方法がない。
何も、出来ることがない。
今度こそ、私がちゃんと叱ってあげなきゃダメなのに……。
空は明るくなりつつあるのに、私たちの目の前はエロゲーにある、えっち後の暗転みたいに真っ暗になっちゃいそう*7。
──そんな中での、出来事だったの。
『失礼します。あの棒、イマジナリーお姉ちゃん棒の妹である、春風メブキさんですね?』
「ふぇ?」
急に、どこからか明らかに美少女の声が聞こえてきたの。
ビックリして、キョロキョロって辺りを見回しても、私たち以外は誰も居ない。まだ薄暗いから、なんか怖くなってきちゃう。
……もしかして、イマジナリーお姉ちゃん棒に絶頂死させられた女の子の幽霊が、私に話しかけてきちゃったのかな?*8
イき返るために、生き返った私のおまんまんを利用して、産まれ直そうってしてるの!?*9
「ゆ、幽霊さん、私のおまんまんを利用して産まれ直すつもりなんだったら、小さすぎて絶対ロリっ子になっちゃうんだよ! 20歳になっても、身長が140cm以下の合法ロリになっちゃうんだよ!! ママに選ぶなら、コハルちゃんにしてください!!!」
「こ、こんな時に、なに言ってるのよ! 幽霊なんている訳ないし、そんなの絶対イヤ、ふざけないで!!*10」
咄嗟にコハルちゃんの後ろに隠れたけど、コハルちゃんも怖かったのか、直ぐに揉み合いになっちゃったの。
イマジナリーお姉ちゃん棒の前に、まさかコハルちゃんと戦うことになるなんて……*11。
「だってコハルちゃん、護ってくれるって言ったもん!」
「友達を売り渡す悪党メブキなんて、護るわけないでしょ!!」
「コハルちゃんの嘘吐き!」
「クソバカメブキ!」
護ってくれるって言ってくれた、温かいコハルちゃんはもう居ない。
私たちは、どっちかがイき残るために、どっちかの子宮を生贄に捧げなきゃいけない。そんな戦いを始めようとした──そんな時に、また幽霊さんの声が聞こえてきたの。
『……どうやら、間違いなく春風メブキさんの様ですね』
「その通りです。お久しぶりですね、ヒマリさん」
『えぇ、ハナコさんもお元気そうで』
「はい、二人のお陰で毎日が楽しいです♡」
そして、その幽霊さんとハナコちゃんが、平然と会話し始めちゃってた。まるで、お隣の美人お姉さん同士で会話しちゃうみたいに。
「……ハナコちゃん、幽霊さんとお知り合いなの?」
「彼女は幽霊さんではなく、明星ヒマリさん。ミレニアムの叡智な人です」
「ミレニアムのえっちな人!?*12」
そして告げられたのは、とんでもない真実。
えっちな人が、私たちに話しかけてきてたんだって事実!*13
「コハルちゃんどう思うかな!?」
「ハナコの友達なんだったら、絶対変態に決まってるでしょ! きっと水着で街を出歩いてるから、私たちの前に姿を見せられないのよ!*14」
『そんな訳はありませんし、エッチではなくミレニアム最高の天才清楚叡智系病弱美少女ハッカーですっ』
「清楚エッチ系!? エッチなのはダメ、死刑!!*15」
コハルちゃんは、即刻死刑宣告を下しちゃってた。多分、お声が好みのお姉さんすぎて、我慢できなくなっちゃいそうだったんだと思う。
分かるよ、コハルちゃん。
ウイ先輩ASMR集を監修してきた私には、分かっちゃう。
──この人も、素敵なえっちASMRをする才能が存在するんだって*16。
「あ、あの、あのあのあの! もしよければ、何ですけど……。"ウイ先輩オホ声企画プロダクション"に所属するつもりはありませんか!」
『何ですかそれは!?*17』
「トリニティが誇る、ダウナーツンデレ系オホ声美少女先輩の古関ウイ先輩のASMRを作成する、私が作った組織だよ!」
ウイ先輩に所属を拒否されたから、メンバーは私一人だけだけどね!
『噂に聞いていた魔術師が、まさかそんなことをしている人物だったなんて……』
ネットへの流出は、したら絶交するって言われてるからできないけど、みんな居なくなった300年後くらいにウイ先輩のオホ声ASMRデータに発見されて、死後評価される宮沢賢治さんみたいな感じになったら良いなって思ってるよ!*18
「それで……どうですか?」
『しません! …………ハナコさん、微笑んでいないで助けてください』
けど、これだけのえっちボイス力を持っているのに、えっちな明星さんはその才能を活かそうとしなかったの。
こんなに聞いてて良い感じの声なのに、本当に惜しいね?
「ふふ、アイスブレイクが必要かと思いまして」
『油を注いで放火することを、アイスブレイクとは言いませんよ』
「私が日々楽しいと思えている理由も、お分かりいただけた様で何よりです」
『退屈しないのと退屈している暇がないのは、似て非なるモノですが……それはさて置き、時間がありません。本題に入りましょう』
「イマジナリーお姉ちゃん棒にどう対抗するか、ですね」
でも、その言葉で、明星さんのえっちな才能については、お姉ちゃんの脇に挟んじゃうことにしたの。
イマジナリーお姉ちゃん棒の射精を阻止しなきゃいけないって使命を、ちゃんと思い出したから!*19
そうだよ、えっちすぎる明星さんのせいで頭がパーンってなっちゃってたけど、私、そのためにここに来たんだ!
「あの、あのあのあの! 私、イマジナリーお姉ちゃん棒にメッてしてあげないといけないんです! 悪いことしてるから、いっぱいダメって伝えてあげなきゃいけないんです!」
私達だけだと、遠くにいるイマジナリーお姉ちゃん棒に声を届けられない。だから、そのために……。
「だから、助けてください! 遠くにいるイマジナリーお姉ちゃん棒に話し掛けるの、手伝ってください!!」
姿は見せないで話しかけてる明星さんの技術を、貸してくださいってお願いしたの。
きっと、この人もイマジナリーお姉ちゃん棒をなんとかしようとして、話しかけてきてくれたんだって分かったから。
『──良いでしょう、こちらとしても好都合です』
「ほんと!?」
だから、多分大丈夫じゃないかなって思ってたの。でも、実際に協力してくれるって言ってもらえると、何だか安心できちゃった。
『それに……ちょうど良いタイミングです。リオの派遣したAMASがそちらに到着したようですね』
「あます?」
何だろって思ってキョロキョロすると、いつの間にか近くに、ASMRって印字されてる円盤みたいな機械がふわふわ浮いてたの*20。
……この場で収録、し始めるってこと?
「お説教ASMRを収録して、イマジナリーお姉ちゃん棒に聞かせる作戦なのかな?」
『違います』
「違うんだ……」
違ったみたい。
この機械、よく見たらAMASって書いてあるね。
……ASMR機器の偽物、掴まされちゃったのかな*21。
『この機械と同じ物が、向こう側にも存在しています。この機械同士で中継し合い、向こう側にあなたの声を届けることができるのです』
あっ、そもそもASMRの機械じゃなかったんだ。
偽物だと声を届けられそうになかったし、よかった!*22
『ですので、あの棒に語り掛けてください。あなたが怒っているという事実を、包み隠さずに。先生以外で唯一、あの棒が重要視しているメブキさん、あなたならば……』
明星さんは、お星様にお願いする時みたいな声をしてたの。すっごく困ってて、自分じゃどうにも出来ないから、神様にお願いしてる時みたいな。
……そう、だよね。
外からEXPOに来ただけの私でも、良い学校だって思うもん。
ここの生徒の人なら、ミレニアムがイマジナリーお姉ちゃん棒の射精アロマで沈んじゃうかもしれないの、もっと苦しいよね*23。
「──イマジナリーお姉ちゃん棒に、そんなことしちゃダメってちゃんと伝えます」
決めたよ、絶対にイマジナリーお姉ちゃん棒に射精させないって。
どんなにイマジナリーおにんにんが苦しくなってても、人に迷惑が掛かっちゃう顔射は絶対にしちゃダメだから、イマジナリーお姉ちゃん棒を射精管理するって。
「ミレニアムは、射精アロマで沈んだりしません。だから、元気出してください!」
もう決めたから、これは約束。
私、みんなのお陰で、まだ約束を破ったことがないから。
今回も絶対、破らないよって気持ちを込めて。
明星さんに安心して欲しくて、そう伝えたの。
『いえ、考え事をしていただけで、落ち込んでいた訳ではありません』
「そう、なの?」
『はい、ですが……』
なんか、私の勘違いだったみたい。
でも、って明星さんは続けて。
『その気遣いは、嫌いではありません。それに、あなたは助けてと言っていましたが、こちらの方からメブキさんにこう言うべきでしたね』
どこにいるか分かんないけど、真っ直ぐに私を見てくれてる気がした。そうして、明星さんが口にしたのは……。
『春風メブキさん、どうかミレニアムを助けてください』
私に助けて、頼らせてっていうお願いだったの。
私、頼られたんだよね。
ずっと、助けてもらってばかりだったけど、今回は助けてあげられるんだね。
──頑張ら、なきゃ。
「っ、うん、任せて!」
胸がいっぱいで、うおーって気持ちになってくる。
頑張って、絶対何とかしなきゃって感じ。
もしかしたら、先生はいつもこんな気持ちだったのかも。そう思ったら、なんか無敵になっちゃった気分で。
『回線、繋げます』
「うん!」
だから、胸がいっぱいになるように、たくさん空気を吸って。
「イマジナリーお姉ちゃん棒、めーーーーっ!!!」
多分、今までで一番大きな声が出ちゃってた。
イマジナリーお姉ちゃん棒に、やっとメッて伝えられたの。
……やっと、ちゃんと叱ってあげられるよ*24。
その大声が響き渡った時、何が起こったのか正確に把握できていた人物は少なかった。
ただ、確かな事実として、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、ヘリへの挿入行為を止めていて。
「……メブキ?」
誰の声かを把握したセイアが、どうしてと言わんばかりに声の主の名を呟いた。
一方で、先生はホッと胸を撫で下ろしていた。
間に合ってくれたという安堵と、色々と失わずに済んだ事実を噛み締めて。
未だ先生はアロマに塗れておらず、貞操も失っていなかったが故に。
『……メブキ、ヒツジノマネカイ? ワタシハイマカラ、センセイト、ジュンアイエッチヲ、スル。ケンガク、シテイクカイ?』
「させるわけがないし、キミが行おうとしていることは同意なしの陵辱行為なんだ!!」
ただ、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は諦めておらず、耐えかねてキレるセイアに対しても、実質キミが先生とエッチするようなものだよ、と聞く耳を持たない。
『いっぱい勃起しちゃったイマジナリーお姉ちゃん棒が先生とえっちしたら、気持ち良すぎてミレニアムが射精沈んじゃうの。だから、えっちしちゃダメ!!』
『ソン、ナ……』
それでも、大切な妹であるメブキの言葉には、しっかりと反応してしまう。
先生を相手に、ガチ恋中田氏射精をするんだと強く意気込んでいたイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒であったが、本気でメブキが怒ってるのが伝わってきて、普通にショックを受けてしまっていた。
彼女の中では、自分と先生がえっちするのなら、好奇心いっぱいの目で観察して、先生と自身のハメ撮りを撮影するだろうと思っていたから。
なのに、全く違う反応をされてしまい、姉心が若干傷ついてしまったのだ。
『ドウ、シテ……』
『もう午前中に迷惑をたくさんドクドクしたのに、お射精してミレニアムをアロマ水没させちゃったら、イマジナリーお姉ちゃん棒がみんなから許してもらえなくなっちゃうからだよ!』
『ユリゾノ、セイア、メイギデ、コギッテヲ、キルヨ。ソレデ、シズンダ、ミレニアムヲ、サイケン、シヨウ』
「確かに資産家であることは自負しているが、一学園を再建するほどの資産を有しているわけがないんだ!!」
『シャッキン、シテモ、イイ』
「何でキミのために、私が生涯に渡る苦役を科されなくてはならないんだっ。ふざけないでくれ!!」
それでも、どうしても先生に中田氏したかったイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、醜く抵抗を続けていた。
続けていた、が……。
『お金は大切だけど、お金の問題じゃないの』
これまでにない程、真剣なメブキを前にして、完全に気圧されてしまっていた。
『私もね、お姉ちゃんやコハルちゃん、先生に友達のみんな。たくさんの人に、迷惑を掛けちゃってる』
ミレニアムに来る前、先生やシミコから、暴走してしまう自分との付き合い方について、考えさせられることが多々あった。
それは、自分が暴走してしまう度に、みんなを困らせてしまっているという罪悪感があったから。
みんなを困らせないで、楽しく元気に毎日を過ごしたいな、とメブキは日々思っていたから。
迷惑を掛けてしまう度に、しょんぼりしてしまっていたのだ。
──それが、悪いことだと自覚があったが故に。
『でもね、それで開き直っちゃダメなんだよ。いっばい迷惑をドクドク掛けちゃっても、その後にフキフキして、ごめんなさいって謝らなきゃいけないの』
だからこそ、余計に止めなきゃと思ったのだ。
このままでは、イマジナリーお姉ちゃん棒が、みんなに嫌われちゃうから。
自分の好き勝手に暴れるだけだと、いずれは破綻してしまう。みんなに嫌われて、イマジナリーお姉ちゃん棒は去勢されてしまう。
そんな未来を迎えるなんて、あまりにも悲しいと思ったのだ。
『イマジナリーお姉ちゃん棒──迷惑は掛けちゃう度に、反省しなきゃダメなんだよ?』
『ウゥ……』
心を込めて、本気でイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒にお説教をするメブキ。それは、心の底から第二の姉を案じての、愛のある行為であった。
一方で、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、メブキの話に真摯に耳を傾け続けていた。
そこに愛があると、姉心が感じたからだ。
そうして、遂に──。
『……センセイ、ワタシノ、ソウニュウハ、メイワク、ダッタカイ?』
「明け透けに言っちゃうと、そうなるのかな」
『……ソウ、カイ』
そこにいた全員、何で迷惑じゃないと思っていたんだと思ったが、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の中では、純愛ならレイプも無罪であった。
だから大丈夫と思い込んでいたのだが、先生にしっかりと拒絶されてしまって、何かが折れてしまった。
「うおっ、何だ!?」
「百合園セイア棒、自壊していきます。拘束が解けました」
「何でキミまで、そのふざけた名称を使っているんだっ。あれはイマジナリーお姉ちゃん棒触手なんだ!」
そう、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の、百合園セイア棒が。
「それどころじゃないよ、セイアっ。お、落ちてる!?」
「トキ、再始動からの急上昇させろ!!」
「アイアイ、ママ」
「ママじゃねぇ!」
メブキに諭されてしまい、そもそも妹の前で硬度を維持するのが困難であったイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒。
遂には、勃起が萎え切ってしまい、シナシナイマジナリーお姉ちゃん棒(大きさ据え置き)になってしまったのだ。
触手から解放されたヘリは、重力に従って落下していくが……。
「うおおおおぉーーーっ。トキ、早くしろぉ!!!」
「ふんっ!」
海面ギリギリのところで浮力を得ることができ、何とか生還することに成功する。
「……生きてる?」
「どうやら、海底に冥府は存在しなかったらしい。生きているみたいだ……」
間一髪、あちこちぶつけまくって身体中がボロボロになっている先生とセイアであったが、この痛みこそが生きている証と言わんばかりに、揃って大きなため息を吐いたのであった。
全てが終息へと向かっていた。
『イマジナリーお姉ちゃん棒、ダメってこと、分かってくれた?』
『アア、ワカッタヨ……』
『反省、した?』
『シタ、ヨ……』
あれ程に勃起していたイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、もはや中折れしたかの如く、シナシナになっている。
先生への中田氏欲求も、メブキ叱られて植え付けられた罪悪感で、何処か遠いところにまで追いやられていた。
故に、いま残っている問題は一つだけと言えるだろう。
『少し、良いかしら?』
『ほえ?』
お説教もひと段落したところで、メブキに話しかけた人物がいた。
メブキに話し掛ける機会をずっと伺いながら、絶妙にタイミングを逃し続けていたリオである。
『私は調月リオ、セミナーの……いえ、セイアの友達よ』
そして、リオが口にしたその言葉は、彼女らしからぬ気遣いに溢れていて。
周りの皆は、目を見開いて驚かずにはいられなかった。あのリオが、他人に気を遣って、それでいて明確に他者のことを友達と定義するだなんて、と。
『そうなの、お姉ちゃん?』
『……シラナイ、ヒトダヨ』
「キミには聞いていないんだ! ……そうだよ、リオは私の友達さ」
直に友達と言われたセイアは、その言葉のくすぐったさから、モジモジしながら何とか首肯した。ちょろいタイプの狐であった。
『そうなんだね、リオさん。私は春風メブキです、よろしくお願いします!』
『知っているわ』
『そうなんだね!』
夜が明ける中で、新しく知り合った同士の会話が始まる。
つい少し前まで、何ら接点がなかった者同士の会話になるが、今は確かな共通項がある。
『それで、話したいことなのだけれど……セイア、あなたの姉についてのことよ』
『お姉ちゃんについて? ……匂いがミルクってことについてです?』
『いいえ、違うわ』
「必要のない暴露なんだ!!」
近くにいたネルが、"えっ、マジかよ"と思って鼻をすんすんしたが、今は全面アロマの香りに満たされてしまっていたが為に、ミルキーセイアの匂いを拾うことは出来そうになかった。
今度、トリニティに遊びにきた時にでも嗅いで欲しい。
『私が言いたいのは──このままだと、セイアが居なくなってしまう、ということ』
だが、そんな気の抜けた空気は、リオのその言葉で亀裂が入った。
『おねーちゃん、が?』
やっと終わって、あとはみんなで帰ってベッドでねむねむするだけ!(えっちな意味ではない)
と思い込んでいたメブキは、事態がまだ収束していなかったこと、それから自らが愛する姉が何か大変なことになっているということが分かって、妙な焦燥感に駆られてしまった。
『な、何で、ですか?』
リオの声が、あまりにも仕事のできる女性のそれだったから。こんな声の人が言うことなら、絶対真実だよね、と解してしまったのだ。
『──イマジナリーお姉ちゃん棒と四次元空間、それが全ての要因よ』
そして、素直なメブキの反応を見て、リオは全てを語り始めた。
イイマジナリーお姉ちゃん棒の集合無意識が形作る、ユビキタスイマジナリーお姉ちゃん棒ネットワーク。
それが百合園セイアにどのような影響を与えて、どんな結末をもたらすのか、を。
『イマジナリーお姉ちゃん棒がセイアお姉ちゃんと同じって思ってるから、世界もセイアお姉ちゃんをイマジナリーお姉ちゃん棒だと思い込んじゃって、同じ時間に居続けられなくなっちゃうかもしれない、なんて……』
全てを聞き終えて、メブキの呟きに初めてそれを聞いた面々は顔を見合わせた。
本気で言ってる? と疑う類の困惑であった。
ただ、一応は無茶苦茶でも、理屈は存在してしまっている。
『こうして、イマジナリーお姉ちゃん棒の集積体が、現実の存在として顕現してしまっている以上、ユビキタスイマジナリーお姉ちゃん棒ネットワークの存在は、肯定されたも同然なの』
それに……。
『それも、足りない筈の棒の数を、噂の情報量で嵩増しした状態で。今のセイアは、非常に危険な状態よ』
あまりにも無情なリオの宣告に、疑いながらも信じざるを得なかった。
よくよく考えてみれば、この目の前の虚棒(巨棒)も、同じくらいに無茶な存在であると理解してしまったが為に。
「酷すぎる交通事故なんだっ」
セイアの憤りも、本当に仕方のないものだろう。
事実、本当にふざけてた事態なのだから。
『こ、このままだと、セイアお姉ちゃんも、イマジナリーお姉ちゃん棒と一緒の見た目になっちゃうの!?』
『知らないわ』
「気にするところ、そこじゃねーだろ」
一方で、あまりにあんまりな情報を過度に頭に流されてしまったメブキは、それをどう処理して良いかわからなくて、頭を抱えてしまっていた。
(セイアお姉ちゃんがイマジナリーお姉ちゃん棒で、イマジナリーお姉ちゃん棒がセイアお姉ちゃんで、つまりはセイアお姉ちゃんがイマジナリーお姉ちゃん棒の見た目になっちゃって、イマジナリーお姉ちゃん棒が100万人のセイアお姉ちゃんの見た目になっちゃうの?)
メブキの脳内処理の混乱を視覚化すると、こんな感じになる。
大大大好きな姉の危機なのに、何をどうすれば良いかわからずに頭がパーンってなってる。ある意味で、いつものメブキと言えるのかもしれなかった。
『──だから、セイアを救うために力を貸して欲しいの』
けれども、リオのその呼び掛けで、頭をグワングワン揺らしていたイマジナリーお姉ちゃん棒情報が、一時どこかへと棚上げされた。
『お姉ちゃんを助ける方法があるの!?』
目で捉えられるかの様な光明が、リオから差し出されたから。
『えぇ、そう。あるの、今、この時だけ』
「そうなのかい!?」
勿論、セイアも同様であった。
孤独に、時間に囚われずに生きなくても済むかもしれない。
それは救いで、今のセイアの目には、リオが女神のように映っていた。
『えぇ、丁度目の前にあるの──解決するための手段が』
リオはAMAS越しに、あるものを見つめていた。
それは、全ての元凶。
百合園セイアを名乗る、AIと噂の集合無意識。
『イマジナリー、お姉ちゃん棒……?』
もしかして、と口にしたメブキを、リオは静かに肯定した。
『そう、イマジナリーお姉ちゃん棒。その集合無意識の実体化したものが、目の前にある』
その言葉に、その場の全員が方向性は違えどもピンと来た。
──要するに、手が届かないところにいた筈の棒の集合無意識が実体化しているのだから、ここでどうにかしてしまえばいいのだと。
「だから、メブキなのか」
『そういうことよ』
セイアの納得に、リオはまた首肯する。
先程までの戦いで、武力を以てイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒を排除することは、事実上不可能だと証明された。
ならば、言葉を以て、百合園セイアとイマジナリーお姉ちゃん棒は別物であると納得させれば良い。
ここで言う納得させる対象は、勿論イマジナリーお姉ちゃん棒である。
『先生も候補ではあるけれど、イマジナリーお姉ちゃん棒を欲情させてしまう。一度行為に及ばせたのならば、可能かもしれないけれど……』
チラッと、みんなは先生を見た。
……正確には、先生のお尻を。
先生のお尻に、謎の棒が刺さっている光景。
何故かそれぞれの頭に、そんなものが過ぎる。
無論、即座に頭の中から追い出されたのではあるが。
「出来ないよ!」
当たり前すぎる先生の応答に、みんなはホッと胸を撫で下ろした。
万が一、先生がイマジナリーお姉ちゃん棒チャレンジを始めてしまったら、肛門科送りになることは間違いなかったであろうし。
先生が苦しむ姿など、みんな見たくなかったのだ。
……自分が先生と結婚した時、お尻がガバガバになってるのはなんか嫌だな、と無意識下で思ったかどうかは乙女の秘密である。
『だから、あなたしかいないの、春風メブキ』
先生がダメなのならば、後はもう彼女しかいない。
消去法ではあったが、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の棒走を止めた実績もある。それを見込んで、リオはするべきことをメブキへと伝えた。
『自身が百合園セイアでないことを、イマジナリーお姉ちゃん棒相手に証明するの』
できるかしら、という問い掛けに、メブキは力強く頷いた。
このキヴォトスで、イマジナリーお姉ちゃん棒以上に彼女の生態に詳しいのは、春風メブキをおいて他にいないという自負を持っていたから。
『イマジナリーお姉ちゃん棒は、イマジナリーお姉ちゃん棒だもんね。……うん、任せて!』
その返事に、リオは頷いた。
メブキに、セイアの命運の全てを託せると信じて。
『ケイツー、これは奇貨よ。──噛み合えば、全て解決するわ』
故に、リオはメブキに全てを任せた。
自身の望みと、やるべきことに向き合うために。