コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです!   作:ペンギン3

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全ては愛に

 イマジナリーお姉ちゃん棒は、もう射精しない。

 私の言ったこと、ちゃんと分かってくれたから。

 

 でもね、射精アロマをドクドクし足りないのか、まだおっきしたままだったの。

 

 このままだと、陸地に戻ったイマジナリーお姉ちゃん棒は、猥褻物陳列罪で、ヴァルキューレ警察学校送りになっちゃう。

 

 それにね、このままイマジナリーお姉ちゃん棒がおっきしたままだと、セイアお姉ちゃんが勃起したイマジナリーお姉ちゃん棒になっちゃって、永遠の時間軸のナカを射精出来ずに彷徨うことになっちゃうらしくて。

 

 だからね、私──イマジナリーお姉ちゃん棒を、わからせなきゃいけなくなったの。

 

 きっと助けてあげるからね、セイアお姉ちゃん。

 だから、レイプ目でこっち見なくても大丈夫なんだよ?

 

 

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒、あのね、実は大切なお話があるの」

 

『ナンダイ、メブキ。……モシヤ、"異性界転生、万力おまんまんを手に入れたコハルちゃんが如何にして周りをイカせて、レズクンニ王国を建国したかを記した史書"ノ、ショセキカガ、ケッテイシタノカイ?』

 

「ううん、違うの。あの小説はね、修羅先生って人とコラボしたらね、炎上して更新する度に感想欄が荒れちゃうようになったから、もう更新できなくなっちゃったんだ……」

 

 

 それは、私が初めて経験した炎上。

 小説って、焚書坑儒以外でも燃えちゃうんだって知った出来事。

 

 始まりは、とある小説サイトである小説に感想を残したことから。

 それが、修羅先生の小説。

 

 他の最強もの小説を参考して、(下エロ)コハルちゃんの万力ちからを強化しようって思ってたんだけど、他の小説が面白くて、つい読み込んじゃったんだ。

 

 それでね、感想を書いた翌日に、修羅先生から"手前様はセンスがありますね"って感想返しが届いて、そこから暫く感想を毎回書き続けたの。

 

 そしたら、ある日のこと。

 修羅先生から、コラボしてみないかってお誘いがあったんだよ!

 

 わぁ、楽しそうって思ってコラボしたんだけど。まさか、あんなことになっちゃうとは思わなかったんだ……。

 

 コラボ小説を書いて投稿した後、その日はひっきりなしに感想が届いたの。ただね、内容は殆どがキッズの悪口ばっかり。

 

 "こんな小説とコラボしたら、修羅先生が汚れるからやめろ"とかいう、修羅先生のユニコーンさんからの感想。

 

 "修羅とかいうやつムカついてたから、品位落としてくれてマジ感謝"とかいう、修羅先生アンチの書き込み。

 

 "馴れ合いのコラボより、コハルちゃんがおまんまんチョークスクリーパーを喰らって全身失禁気絶した後の展開が気になるので、そっちを優先して書いてください"っていう、私の小説の過激派さんたち。

 

 そんな感想を沢山ドクドクされて、小説の感想欄は荒れるに荒れまくった。もうどうしようもない程、感想欄が汚れちゃって。

 

 無理やり仲良しされてる女の子って、こういう気持ちなんだってことを、擬似的に体験させられちゃったの。

 

 インターネットで炎上させにくる人たちは、本物の竿役ばっかりなんだって、分かっちゃった。

 みんなも気をつけないと、ダメなんだよ?

 

 因みに、修羅先生はきっちりお気持ち表明をした後、小説の前書きで炎上させにくる人たちに中指を立ててたよ。強いね?

 

 

『ソンナ、カナシイコト、ガ……』

 

「うん、本当に悲しかったけど、今は関係ないの」

 

 そう、今は関係ない。

 いま話したいことは、それとは別の案件だから。

 

 

「しゃーっ、しゃーーっ!!」

 

「コハルちゃん、今はダメです。メブキちゃんの邪魔をしたら、セイアちゃんが大変なことになっちゃいますからね」

 

「ふしゃーーーッ!!!」

 

 

 後ろからコハルちゃんの鳴き声が聞こえてきたけど、今は遊んであげられないの、ごめんね?

 

 でも、後でいっぱい遊んであげるから、待ってて!

 

『ソレデハ、ハナシタイコト、トハ?』

 

「──イマジナリーお姉ちゃん棒のことについて、だよ」

 

『ワタシ、ノ?』

 

 うんって頷いて、目の前のASMRっぽい機器がホログラムで映し出してるイマジナリーお姉ちゃん棒(勃起)を見つめたの。

 

 多分、向こうにもホログラム越しの私が、イマジナリーお姉ちゃん棒をジッと見てるの、伝わってる。

 

 ホログラム越しに、目が合ってる感覚がする。

 だからか、何だか落ち着かない気持ちになってきちゃった。

 

 私が今から言うことは、イマジナリーお姉ちゃん棒にとって、中田氏された後に催眠を解除された時みたいなセリフに感じちゃうだろうから。

 

 ──でも、言わないとセイアお姉ちゃんが居なくなっちゃう。

 

 それは、絶対に嫌だから。

 軽く息を吸い込んで、私は伝えたの。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒は、お姉ちゃんじゃないんだよってことを。

 

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒、あのね。イマジナリーお姉ちゃん棒とセイアお姉ちゃんは──別人なんだよ」

 

 

 ドキドキってしながら伝えた言葉に、イマジナリーお姉ちゃん棒はキョトンってしてる感じで。

 

『……オリジナルハ、ヒショジョ、トイウコト、カイ?』

 

「ううん、まだ違うよ。お姉ちゃんのおまんまんは、ピカピカ新品のおぼこさんなの」

 

『……オシリノ、ホウカイ?』

 

「それは……わかんにゃい」

 

 お姉ちゃんは処女だけど、もしかするとお尻は処女じゃなくなってるかもしれない。誰かとえっちしたとか、そういうのじゃないけど。

 

 ただ、先生を想って我慢できずにおにゃにーしちゃったけど、前は挿入できないから後ろを、って可能性は否定できないの。

 

 

「私が自分のお尻を弄んでいるなんて、そんなことをする訳がないんだ! 第一、そっちの棒には、膜は最初から無いだろうに!!」

 

「セイア、落ち着いて。気持ちは分かるけど、今メブキを邪魔すると後が大変になるから!」

 

「分かってはいるが、酷すぎる名誉毀損なんだ!!」

 

 

 何処からか、棒の処女膜差別をするお姉ちゃんの声が聞こえてきた気がする。けど、お姉ちゃんが差別をする筈は無いから、きっと気のせいなんだよ。

 

「でもね、お姉ちゃんのお尻が処女でも非処女でも関係ないの。もっと根本の話」

 

『コン、ポン……』

 

 おうむ返しにつぶやいて、イマジナリーお姉ちゃん棒は明けつつあるお空を見上げたの。

 何かを探すように、ジッと。

 

「……オニンニンノ、ハナシカイ?」

 

「部分的にそうだよ!」

 

 そうして、何かを理解してくれたのか、イマジナリーお姉ちゃん棒は自分とセイアお姉ちゃんの違いに言及した。

 

 根本って言葉が、おにんにんを連想させたんだね。お股から生えてるし、確かに想像しちゃうよね、分かるよ。

 

「セイアお姉ちゃんは射精出来ないし、イマジナリーお姉ちゃん棒は射精出来ちゃう。これって、何でだと思う?」

 

 ここがわかって貰うきっかけになると思って、一気に畳みかけちゃう。普通の女の子は射精できないけど、なんでイマジナリーお姉ちゃん棒は出来ちゃうのかなって。

 

『……オリジナルノ、シオフキガ、テンニマデ、トドイテシマウカラ、ソレヲ、ヒョウゲンスル、タメダネ』

 

「っ、その解釈があったんだね!? お、お姉ちゃんがえっちすぎるから、否定できないよっ」

 

 

「ふざけているのかぁーーっ!!」

 

「お前、妹の教育どうしてるんだよ……」

 

「毎日してるが、追いつかないんだ!!」

 

『……否定しても、イマジナリーお姉ちゃん棒は収まらない。いま必要なのは、論破ではなく納得。あなたの妹の判断は正しいわ』

 

「そんな計算、持ち合わせられる妹じゃないっ。本心から口にしている戯言なんだ!!」

 

「マジで一回しばけよ」

 

「妹にそんなこと、できる筈ないだろうっ。キミこそ何を言ってるんだ!?」

 

「いや、何でだよ……」

 

「ネル、そっとしておいてあげて。セイアはメブキが大好き過ぎて、メブキの話になると若干メブキよりになっちゃうんだ」

 

「……病気じゃねーか」

 

「私はおかしくなんてなっていないっ」

 

 

 向こうから、誰かが何かを言ってる声が聞こえてくる。多分だけど、論破されちゃった私のことを、応援してくれてる声だよね。

 

 ……うん、ありがとう。

 私、絶対に負けないよ!

 

「確かに、射精の件はそうかもしれないね?」

 

『コマッタ、オリジナル、ダヨ』

 

「本当にその通りだね?」

 

 何処からか、"困らされてるのは私の方なんだ!"って声が聞こえた気がするけど、お姉ちゃんがえっち過ぎて困ってるのは私たちの方だから、きっと気のせいだよ!

 

「ただね、そんな困ったセイアお姉ちゃんだから、指摘できる違いができちゃうの」

 

『……マダ、ナニカ、アルノカイ?』

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒の言葉に、うんって頷く。

 

 ……本当はね、これはセイアお姉ちゃんが恥ずかしがるから、みんなには内緒にしておいてあげたかったことなの。

 

 でも、セイアお姉ちゃんが居なくなっちゃうかもしれなくて、イマジナリーお姉ちゃん棒がその原因になっちゃうかもしれないって、知っちゃったから。

 

 だから、ごめん。

 セイアお姉ちゃんの恥ずかしい秘密、バラしちゃうね?

 

「ね、イマジナリーお姉ちゃん棒。お姉ちゃん棒の性感帯って、何処にあるのかな?」

 

 私の問い掛けに、イマジナリーお姉ちゃん棒は身体をコテンって不思議そうに傾けて。

 

『ドコト、イワレテモ。ソンナノ──ムネニ、キマッテイル、ジャナイカ』

 

 うん、そうだよね。

 イマジナリーお姉ちゃん棒は、そうだもんね。

 

 ウイ先輩棒は、おまたクニクニでイッちゃう棒だったから、差別化するために、イマジナリーお姉ちゃん棒は、お胸クニクニでイッちゃう棒にしたの。

 

 でもね、幾らお姉ちゃんを忠実に再現したイマジナリーお姉ちゃん棒でも──そこだけは、お姉ちゃんと違うところなんだよ。

 

 

「ごめんね、イマジナリーお姉ちゃん棒。──お姉ちゃんの性感帯は、お股のお豆さんなの」

 

 その言葉を伝えた瞬間、イマジナリーお姉ちゃん棒のつぶらなおめめは、大きく見開かれちゃったの。

 

 


 

 

「ふざけるなぁーーーっ!!!」

 

「お前、キレるパターンがワンパターン過ぎるだろ」

 

「メブキのふざけ方も、ワンパターンだからなんだっ」

 

 唐突に始まったメブキの供述は、セイアとしては看過し難いもの。

 

 突如として、特大の流れ弾が被弾することになってしまったのだから、やむを得ない怒りだったといえよう。

 

 ただ、ブチギレて抗議を開始しようとするセイアを止める声があった。

 

『待ちなさい、あれを見て』

 

 電磁パルス銃をカチャカチャするセイアに、リオが待ったをかけたのだ。

 

 リオが言うあれとは、イマジナリーお姉ちゃん棒のこと。

 呆然としているような、そんな風情があって。

 

『……ナ、ゼ?』

 

 心の底から、混乱しているような様子が見て取れる。メブキに告げられた真実を、受け止めきれていないと言わんばかりに。

 

「……あの棒は、一体何を困惑しているんだ?」

 

 そんな動揺を見たからか、少し溜飲が下げられたセイア。故に、少しは落ち着いて物事を見ることができた。

 

『今までの発言を鑑みるに、イマジナリーお姉ちゃん棒とは──百合園セイアの姉と性欲の部分をアイデンティティとして生まれた電気按摩器』

 

「前衛的ですね」

 

「イカれてんのか?」

 

「私にあんな部分がある訳ないんだ!!」

 

 ただ、ここにはセイアを激怒させる事実が、そこら中にゴロゴロと転がっていた。真相に近づこうとする限り、セイアは瞬間湯沸かし沸騰器になるしかなかった。

 

『事実よ。少なくとも、これまでの言動から、本人はそう思っていると推論できる』

 

 これまでのイマジナリーお姉ちゃん棒の発言を思い出して、みんなは頭が痛くなった。言われてみれば、そんな気がするとさえ思えた。

 

 それを裏付ける様に、リオは更に言葉を続ける。

 

『イマジナリーお姉ちゃん棒が抱いていた執着。それらに着眼すれば、見えてくるものがあるの』

 

「……メブキと、先生のことかい」

 

『そう、姉から春風メブキを求めていたの。なら、残る性欲の部分は──』

 

「言い掛かりなんだ!!」

 

 全てリオが言い終わる前に、セイアはその言葉を遮断した。顔は真っ赤で、手はプルプルと震えている。

 

 その理由には、もちろん屈辱もあるのではあるが……。

 

「先生、違うんだ! 私はそんな汚らしい目で、先生を見ていたことなど無くてっ」

 

 先生に勘違いされたくない、先生からえっちな女の子だと見られたくない。

 

 そんな意地らしい乙女心から、必死に弁解を始めて。

 

「……うん、大丈夫。わかっているよ、セイア」

 

 先生が直ぐさまフォローを入れたおかげで、セイアの諸々は比較的すぐに鎮火された。

 

 先生が分かってくれているのなら、先生にはしたない女の子だと思われないから。心の底から、セイアはホッとしたのだ。

 

 

 

 そして、みんなには聞こえない秘匿回線にて。

 

『リオ、あんな言い方がありますかっ』

 

『ヒマリ、何を怒っているの? 私はただ、イマジナリーお姉ちゃん棒がどう思っているかを、分析して話しただけなのだけれど』

 

『その言い方に、甚だしくデリカシーが欠如していたのですっ。性欲、などと言われたら如何な美少女といえども、咄嗟に全てを否定したくなります。それに、恐らくは彼女のそれは性欲などではなく……』

 

『……何故、最後まで言わないの?』

 

『っ、乙女の秘密だからです!』

 

 少しは成長したと思っていたけど、まだこの有様なのですね。

 

 ヒマリは溜息を深く吐いて、リオはやはりリオでしかないのだと言うことを思い知らされた。

 

 そのことに、少し安堵してしまったのは、乙女の秘密である。

 

 

 因みに余談ではあるが、ヒマリの言う通りの感情も確かに混ざっていたが、それでも性欲と姉心がイマジナリーお姉ちゃん棒の基幹となってることは、紛れもない事実であった。

 

 

 

『……ごめんなさい、配慮に欠けていたわ』

 

「リオが一生懸命なのは分かってるから、あとは伝え方だけ気を付けてね」

 

 リオの謝罪によって、その場に満ちていた若干のいたたまれなさが緩和される。

 

 セイアとて、リオが自分のために奔走してくれているのを分かっていたから、今のは少し自分が大人がなかったのかも、と少し自省した。

 

 それはそれとして、リオも悪いと思っているから、自分は謝ることなどしなかったが。

 

 とにかく、今はイマジナリーお姉ちゃん棒の動向を、みんなで見守ることにした。

 

 DDoS攻撃でも喰らってしまったかの様に、フリーズしてしまっているイマジナリーお姉ちゃん棒を。

 

 

 

「ねぇ、イマジナリーお姉ちゃん棒。お姉ちゃん棒の性感帯は、どこかな?」

 

『ソレ、ハ……』

 

「私ね、知ってるよ。何処をコショコショされたら、ビクンビクンってしちゃうか。私が言ったほうがいいかな?」

 

 メブキの追い込みに、イマジナリーお姉ちゃん棒は震える声で、ボソリと呟いた。

 

『……チクビ、ダヨ』

 

「うん、そうだよね。イマジナリーお姉ちゃん棒は、ぼっきっきした乳首をこしょこしょされると、ビクンビクンってしちゃうんだよね?」

 

 まさに完敗。妹に手玉に取られた挙句、自らとセイアの性感帯の違いを自供させられて、イマジナリーお姉ちゃん棒は自我が崩壊しそうになっていた。

 

 ただ、まだそれを完全に認めたわけではない。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒の姉心も、先生への想いも、全部が百合園セイアだから持っていたものだと定義していたが故に。

 

 自分が百合園セイアでないのならば、この気持ちは何処から来たものなのか、分からなかったのだ。

 

『……ダガ、オリジナルモ、チクビデイケル、サイノウガ、アルカモ、シレナイ』

 

「そうだね。あんな横乳してるから、その可能性もたくさんあるよ」

 

 即座にメブキは肯定したが、完全に単なる偏見でしかなかった。

 

「……でもね、それは今じゃ無くて未来の話。今のセイアお姉ちゃんは、乳首くにくにされてもおっきするだけで、ビクンビクンってなれないんだよ」

 

『────』

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒は言い返さない、言い返せない。

 

 何を言っても、この自分のことをよく理解する妹は、完全に自分を納得させてしまうと理解したのだ。

 

 

 だが、そうなったら、自分は何なのだろう?

 メブキは本当に妹なのか、本当に先生のことを愛しているのか?

 

 分からない、分かりたくないことだらけだ。

 

『…………ダッタラ、ワタシハ、ナニモノ、ナンダイ?』

 

 自分はどこから来て、何者で、どこへ行くのか。

 

 その全てが分からなくなり、ぐちゃぐちゃになって、バラバラになってしまいそうな不安に苛まれた。

 

 そんなイマジナリーお姉ちゃん棒に、メブキはにっこりと笑いかけて。

 

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒は、イマジナリーお姉ちゃん棒。──私のお姉ちゃん、セイアお姉ちゃんの、双子みたいなお姉ちゃんなんだよ!」

 

 

 自我があやふやになる混濁の中で、それは定まっていた運命なんだと言わんばかりに、メブキはあなたもお姉ちゃんなんだよと告げた。

 

『…………ソウ、ダッタノ、カ』

 

 それが、大穴が開いていた心に、すっぽりと嵌まって。

 

『……マダ、キミノアネデ、イラレルノ、カイ?』

 

「私からお姉ちゃんになって欲しくて、イマジナリーお姉ちゃん棒を作ってもらったんだもん。当たり前だよ!!」

 

 その言葉を得て、ようやく認めることができた。

 自身が、百合園セイアではないという現実を。

 

「……ソウ、ダネ。ワタシハ、キミノアネ、ダヨ」

 

 

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒から光が淡く漏れ出て、空へと還り始める。全てを認め、納得したのだ。

 

 つまりは、セイアとイマジナリーお姉ちゃん棒は、分たれたということ。

 

「終わったの、かい?」

 

 だから、このバカすぎる珍騒動は是にて終幕──。

 

『……ンン?』

 

 すると思われたのだが、突如として、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の光り方が変わり始めた。

 

 何というか、成仏しそうだった光から、自爆してしまいそうな光り方へと。

 

 そして、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は──。

 

『ンホオオオオオーーッ!???!?』

 

 突如として、凄まじい絶頂感に襲われてしまったのだ。

 

 


 

 

「ふん、結局、茶番と化したか」

 

 それは、倉庫群から事態の推移を見守っていた者の声であった。

 

 冷ややかに、ことの経緯を見守っていた者、フランシス。

 

「元より期待などしていなかったが、ここまで三流のビュルレスクを見せつけられるとはな……」

 

 期待はなかった、しかし失望は存在した。

 それは、あの日の勇姿が焼き付いていたから。

 

 あの日、色彩が訪れ、キヴォトスが崩壊する危機にあった日。

 

 先生というテクスチャを剥がされても、それでもと生徒を思い続けて、奇跡を起こした姿を見ていたが故の失望。

 

 終始、見せつけられた下劣な劇に対する八つ当たりの怒りであった。

 

「所詮は、ゴルコンダの粗末な棒に過ぎなかったか」

 

 崇高の一片、その一欠片すらなく、そこにあったのは果てしない射精のみ。逆ギレに過ぎなくても、内容がカス過ぎたので、怒るフランシスにも相応の正当性が存在したといえよう。

 

「なれば──せめて、最後くらいは興じさせてみせよ」

 

 だから彼は、手元にあった赤いボタンを押した。

 

 そのボタンは、ゴルコンダが悪ふざけの付属品として作り出した、爆発するボタン。

 

 一定の質量を有してしまったイマジナリーお姉ちゃん棒を自動検知し、霊的バイブレーションを胸部辺りに発生させて、自爆させるジョークグッズ。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒が手に負えなくなったら、これで始末しようという保険。それを、全てが円満解決しようとしている場面で、フランシスは連打したのだ。

 

「喜劇は喜劇らしく、バカバカしい終幕を迎えるがいい」

 

 


 

 

 その場にいた全員が、事態の把握ができずに戸惑っていた。

 

 ……そう、その場にいた全員は。

 

「何が起こっているんだ!?」

 

『恐らく、自爆シークエンスに突入したの』

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒を解析し、よく研究していたリオのみが、その場で起こった出来事の全てを把握していた。

 

 このままでは、全てが木っ端微塵になった上に、自爆によって発生する津波によって、ミレニアムが少なからざる被害を出してしまう、ということも。

 

「イマジナリーお姉ちゃん棒が、乳首でメスイキを始めちゃったってこと!?」

 

「最後の最後までふざけ倒すのは何なんだっ」

 

「クソッ、トキ、離脱しろ!」

 

 ここに留まると、とんでもない爆発が起こる。

 それを理解した面々は、急いで離脱の準備を始めたのだが……。

 

「おい、トキ?」

 

 どうしてか、操縦桿を握っているトキは、その場を離れようとしない。不審に思って操縦席を覗き込んだネルは、そこで無表情ながらにモニョモニョしている様子のトキが目に入ってきて。

 

「まだ、なんかあんのか?」

 

 ネルの問い掛けに、トキは逡巡しながら頷いた。

 

「リオ様……」

 

 そして、その小さな呟きこそが、トキがすぐにこの場を離れようとしない理由であった。

 

「おい、何かあるならとっとと言え」

 

 即座に、ネルが口を挟んだ。

 リオが待ったを掛けるなら、それ相応の理由があると理解して。

 

 早くしないと、マジでクソみたいな理由で死にかねないという必死さも伴ってのことだった。

 

『……利用、できそうなの』

 

「は?」

 

 だが、返ってきた返事には主語がない。

 何に対してのものか、サッパリ分からない。

 

 ネルがちょっとイラっとしてしまったのも、仕方のないことであった。

 

 ただ、その意図を正確に把握した者も居て。

 

『……ナゴリのこと、ですか?』

 

「ナゴリの!?」

 

 ヒマリの問い掛けに、リオは即座に頷いていた。

 

『イマジナリーお姉ちゃん棒の集合無意識は、本来四次元上の存在。だから、その意識データに介入出来れば、退去する際に追跡ができれば、居場所がわかると思ったの』

 

 リオの言によれば、四次元空間に戻るイマジナリーお姉ちゃん棒に、発信機代わりのデータを混ぜて置けば、より高位の座標でも探り当てることができるのではないか、ということであった。

 

 離脱指示を躊躇ったのは、それを行うならイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒にUSB経由でデータを流し込まなければならないから。

 

 ローテクのイマジナリーお姉ちゃん棒のせいで、ハッキングを行うことができないための非常措置であったのだ。

 

『けれど……もう、間に合わないわ』

 

 だが、謎に光り輝いているイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、近付くだけでも危ないと見て取れる。ハイリスクローリターンな状況、とてもではないがバカな賭け事はさせられない。

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒がまだ耐えられているのは、さっき怒られた手前、妹のメブキに格好をつけているため。自分が反省したと伝えるために、必死に絶頂爆破に耐え凌いでいるのだ。

 

 もう、事態は一刻の猶予もないと言えた。

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の、絶頂の時は迫っている。

 

 だから、リオは。

 

『トキ、離脱を──』

 

 諦める指示を出そうとした、その時のこと。

 

 

『"待ってください!"』

 

 

 AMASのホログラム機能に介入して、テキストが表示された。

 

『"もう一つだけ、試したいことがあります"』

 

『……ケイツー?』

 

『えっ、ケツちゃん?』

 

 リオの呟きに、メブキは自らが身につけている腕時計に目を落とした。すると、確かにその時計は、チカチカと光っていて。

 

『"……お願いします、時間をください"』

 

 そのケイツーが表示したテキストに、決断に皆が判断を鈍らせた。どうにかする方法があるのなら、解決したいと誰もが思っていたから。

 

 このままイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒が爆発したら、ミレニアムに大きな被害を出してしまうことが分かっていたからでもある。

 

 

「おい、なんかあるなら勿体ぶらずにとっとと伝えろ!」

 

 そんな解決と命の天秤が揺れる中で、真っ先に均衡を破ったのはやっぱりネルであった。多くの鉄火場を乗り越えてきたネルであるからこそ、即座に決断する選択が出来たのだ。

 

 

『"……射精、させてください"』

 

「…………は?」

 

 

 ただ、そんなネルであっても、こんな要求は予想外であったのだろう。表示されたテキストを読んで、脳が理解を拒んでしまったのである。

 

『……イマジナリーお姉ちゃん棒の自爆エネルギーを、射精させることで次元を渡る亜空間ワープのエネルギーに置換し、自爆自体をさせないということね』

 

『"はい"』

 

 リオの補足に、その場にいた全員が"はいじゃないが?"と思ったが、リオだけは納得したように少し頷いていた。

 

『確かに、ユビキタスイマジナリーお姉ちゃん棒ネットワークの存在のお陰か、2度目の射精時に空間の歪みを計器が感知したわ』

 

 データを確認しながら、リオは"なるほど"と小さく頷いて。

 

『同じ部分に同量以上のエネルギーを照射すれば、1mmくらいの穴は開く、ということね』

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒に射精させなければならない理由を、リオが訥々と語る。

 

 ミレニアム生からしたら、正気を疑うような最悪な光景であったが、現状必要な理解を促してもくれていた。

 

『"そこに、あちら側と向こう側を繋げられる、両方に縁がある人物──春風メブキの意識を投射すれば、あの人を迎えに行くことだって可能な筈です"』

 

『ふぇ、私?』

 

 そこまで、頭の良い話だ! と思って黙り込んでしまっていたメブキに唐突に話が振られて、本人はビックリしたように目をまん丸にして驚いてしまった。

 

 もう自分にできることはないし、イマジナリーお姉ちゃん棒にお空から見守っていてね、と告げてお別れすることしか考えていなかったから。

 

『えと、ケツちゃん。どういうことなの、かな?』

 

 頭の中がハテナで埋め尽くされながら尋ねたメブキに、ケイツーはおバカな子にもわかるよう、一言だけテキストを表示した。

 

 

『"あなたの兄に、会いたくないですか?"』

 

 

 その一言で、メブキは大きく目を見開いた。

 

『……お兄、ちゃん、と?』

 

 だって、もう会えないと思っていた兄と、また巡り会えると聞いたから。

 

『"あなたの兄は、色彩の襲来時、あの赤い空の日に遠くの次元へと幽閉され、今も彷徨っています。一緒に、迎えに行ってくれませんか?"』

 

 その情報を聞いて、それぞれがまちまちの反応をしていた。

 

 ミレニアム組は"あいつ女だぞ"と怪訝そうにして、事情を知っているセイアとハナコは、まさかこのタイミングでだなんて、とも思った。

 

 そして、唯一何も知らなかったメブキとコハルは……。

 

 

「あんたの、病気で死んじゃった時のお兄さん、なのよね……」

 

「お兄ちゃんのことなら、そう、だね……」

 

「キヴォトスに居たって、知ってた?」

 

「ううん、知らなかった……」

 

「あんたは、どうしたい?」

 

 コハルの問い掛けは、そっと背中を押すような思い遣りに満ちていた。メブキの中で、もう決まっていることを後押しするみたいに。

 

 その優しさに、メブキは思ったことを、そのまま口に出すことができた。

 

 

『迎えに行きたいよっ、お兄ちゃんのこと! まだ、お兄ちゃんに、ごめんなさいしか言えてなくて……ありがとうって、伝えられてなかったから!!』

 

 

 ここに、ケイツーが求めていた最後のピースが揃った。

 

 この世界とナゴリに強い縁を持った人物が、次元と次元の架け橋を担えるのだから。

 

「……決めたことだろうが、一応聞く。安全、なのかい?」

 

 ただ、その中でもセイアだけはその不安を隠せなくて。戻って来れるか怪しい旅路に、妹を送り出してしまうことにならないか、という不安が口に出てしまったのだ。

 

 だから、流れを止められないだろうが、と我慢できずに行った問い掛けに対して、返事をしたのはケイツーではなくリオであった。

 

『それを担保するのが、あなたの役目よ。セイア』

 

「……は?」

 

『──妹の夢に潜り込んで、あなたが向こう側を観測する機器になるのよ』

 

 唐突に役割を与えられて、思わず絶句するセイア。そもそも、何で夢に入れることを知っているんだと困惑は広がってしまう。

 

『……嫌、かしら?』

 

 けれども、急かすようにリオに促されて、セイアはキッと一物になんか負けない顔をして。

 

「できない訳がないだろうっ、妹を見守るのは姉の役目なんだ!!」

 

 期せずとも煽られたと思ったセイアは、半ギレ気味にその場で睡眠を始めた。本気を出したセイアの眠りにつく速度は、のび太くんのそれに匹敵するのだ。

 

 

 

 因みに、余談ではあるが、リオが事情を把握していたのは、ケイツーから常に送信されているデータを解析した結果によるもの。

 

 何故かケイツーがメブキの夢に潜り込んで、そのまま心中に留まってしまったかを解析していたがために見つけたデータ。

 

 セイアが昨晩、寝てもメブキと夢で合流できなかったのは、夢の共有は一対一でしか出来ない法則性があったから。

 

 ケイツーが夢に入り込んでしまったのは、メブキのデータを取ろうと腕時計越しに様々なデータを取っていたら、腕時計が発する計測の電磁波を通じて、自身が取り込まれてしまったがため。

 

 メブキとケイツーが同時に眠りへと落ちた(ケイツーはスリープ機能を作動させた)という点も、メブキへのパスを繋げる条件になっていたのかもしれない。

 

 リオとケイツー、二人揃って絶妙に報連相が苦手な二人組であったが、そこに自覚的であったからこそ互いに付け合っていた首輪が上手く作動した形となった。

 

 ……多分、二人が秘密主義ではなく、互いに何でも話し合える親友になれてたら、事態はもっと単純な様相を呈していたのであろうが、無理なものは無理であるのだから詮無いことである。

 

 

 

『ウゥ……イキ、ソウダ』

 

 最後の作戦会議中、ずっと放置されていたイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、既に限界を迎えつつあった。

 

 我慢しすぎて、段々とゲーミングイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒へと発光しつつある。

 

 ちゃんと反省して、必死に射精しないように我慢しているのだ。妹と約束したから、もう迷惑を掛ける射精はしないと。

 

 しかし、いくら我慢しようとも、絶頂へ向けた収束は避けられない。

 

 もうそろそろ、全身から射精アロマをぶちまけてしまいそうになっていた、そんな時のことであった。

 

『あのね、イマジナリーお姉ちゃん棒』

 

 今にも爆発してしまいそうなイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒であったが、愛する妹であるメブキの呼び掛けに、必死に理性と我慢をかき集めて、末期の返事をする。

 

 少なくとも、妹の前でみっともないところは見せられない、と姉心を全開にして。

 

『ナン、ダイ。メブキ……』

 

『えとね、力を貸して欲しいの。いっぱい大変な中なのに、ごめんね?』

 

 だから、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、その呼び掛けがとても嬉しくて仕方なかった。

 

 自分にも、まだ妹にしてあげられることがあるのだと感じて。

 

『イイ、ヨ。オネエチャンハ、イツダッテ、イモウトノ、ミカタ、ダカラネ』

 

 射精圧に晒された身体が、ゲーミングち◯ぽ華道部が如き様相へと変質する中で、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は微かに笑った。

 

『イマジナリーお姉ちゃん棒っ。あのね、嬉しい、助かるよ!!』

 

 そして、メブキも姉の愛を感じて、目から熱い気持ちが溢れ出した。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒は、あったかい。

 愛は見えないけど、漂っているんだ、と。

 

 思い遣りを受け取って、メブキはより強く決意した。

 

 イマジナリーお姉ちゃん棒から受け取った気持ちで、お兄ちゃんを助けに行こうと。

 

『お空にある輪っかにアロマ射精、出来ちゃう?』

 

『……アロマヲ、ダシテモ、イイノカイ?』

 

『うん、人助けのアロマ射精だから!』

 

 そう告げられたイマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、静かにアロマを目から流した。

 

 今まで迷惑を掛けてきた射精で、救える妹がいる。贖いの射精を行える機会がある自分は、とても幸せなお姉ちゃんであると。

 

『オネエチャンニ、マカセテ、ホシイ』

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、空へと、あのヘイローへと射精角を取った。妹に頼られたお姉ちゃんは、無敵なのだと証明するために。

 

『頑張って、イマジナリーお姉ちゃん棒!!』

 

 妹からの声援を受け、胸のバイブレーションから拡がる快感を、股間に一点集中させていく。概念的アロマが、実感を伴って収束していく。

 

「……イマジナリーお姉ちゃん棒」

 

 そんな最中──イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、愛している、筈である彼の声が聞こえた。

 

「本当はこんなこと、しちゃダメなんだけど……ごめん!」

 

 彼は悩ましい顔をしながら、懐よりカードを取り出す。

 そのカードが、淡く輝いて……。

 

 ──突如として、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒の耳元に、バイノーラル先生の声が聞こえてきた。

 

『カウントダウンしながら、その……感覚を送るから、一緒に出して欲しい、かな』

 

 瞬間、イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、今までで感じたことのない、この世の全ての悦楽を味わうことになった。

 

『10、9、8──』

 

 何故だか、胸と股間の辺りを、人の手が弄っている感触がしたのだ。

 

『7、6、5、4──』

 

 耳元に聞こえてくるのは、明らかに先生の声。

 恥ずかしそうに、申し訳なさそうにしている大人の声だ。

 

『3、2、1──』

 

 なら、己のことを、誰が弄っているかなど、もはや明確なこと。

 

『──0、イマジナリーお姉ちゃん棒、いって!』

 

 これが愛する人とまぐわう感触、これが愛し合うということ!

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、最後の最後に全てを手に入れて。

 

『ンホオオオオオーーッ!!!!!!』

 

 高らかと、天蓋を切り裂く様なアロマを解き放った。

 

『イマジナリーお姉ちゃん棒、ありがとーーっ!!』

 

 最後の聞こえた、泣いてる様なメブキの声が、本当に愛おしくて仕方がない。

 

 イマジナリークソデケェお姉ちゃん棒は、全ての愛を感じ、皆への愛を祈りながら、射精と共に七色の光と共に退去した。

 

 世界が愛で満ちますようにと、純粋な思いやりを残して。

 

 


 

 

『っ、歪みのポイントへ、射精の着弾を確認。ごく微量ながら、空間への穴を観測出来たわ!』

 

『"今です!"』

 

「うん! ハナコちゃん、お願いします!!」

 

 その時が来て、メブキに指示を飛ばされたハナコは、仕方のない子だなぁ、と優しい目をしつつ、メブキを正面からギュッと抱きしめた。

 

「メブキちゃんは、えっちな女の子ですね♡」

 

「はにゃこおねーさまぁ、ちがうんですぅ」

 

「何が違うんですか? ほら、メブキちゃん、ぎゅー、ですよ♡」

 

 正面からハナコに抱きつかれたメブキは、必然的にハナコのその豊満な胸部へと、頭を埋もれさせることになって。

 

「ふにゃあー……きゅう」

 

 大好きな友達で憧れなハナコを相手に、ギュッ、ギュッと抱き付かれてしまったメブキは、そのまま意識を失うことになった。

 

 セイアのように、どこでも眠れる特技がなかったが故の非常手段。

 

「エッチなのはダメ、しけぇっ」

 

 そのあんまりにあんまりな光景に、コハルはエ駄死を詠唱した。が、眠りを妨げない程度の声量だったのは、これは必要な必然だったと理解している為なのだろう。

 

 配慮の出来たエ駄死であった。

 

 


 

 

「──きなさい」

 

「……にゃ、あ?」

 

「起きなさい、春風メブキ!」

 

「うにゃあ!?」

 

 お兄ちゃんを助けるために、イマジナリーお姉ちゃん棒の射精によって破けた、お空の処女膜*1

 

 そこを通るには、意識だけにならなくちゃいけない。

 

 だから、私はハナコちゃんにだいしゅきホールドをしながら、大好きなお姉様おっぱいに溺れて気を失ったの*2

 

 そうして、気を失った私が目を覚したのは……。

 

「ケツ、ちゃん?」

 

「今回は、アリスと間違えませんでしたね」

 

 なんか揺れてる床の上で、目の前にはおめめが赤いアリスちゃんの姿。

 

 でも、アリスちゃんの目はいつも青色だから、これはケツちゃんだって、ちゃんとわかったんだよ!*3

 

「ここ、は?」

 

「……どうやら、次元の跳躍には成功したようです」

 

 ケツちゃんに言われて、思い出す。

 そうだ、私はお兄ちゃんを助けに、四次元の空間に来たんだってことを。

 

 

『春風さん、よく聞きなさい。あなたは眠りにつく時に、強くお兄さんのことを意識する必要があるの。また会いたいと、助けたいと、強く願う。その想いが、愛が、跳躍する導となるはずよ』

 

 

 ……良かった、ちゃんと成功したんだね!

 

 ハナコちゃんのおっぱいが気持ち良すぎて、お兄ちゃんへの気持ちが負けちゃうんじゃないかって心配だったけど、勝てて良かったよ!*4

 

 じゃあ、ここが四次元の場所、なんだね。

 でも、ここって……。

 

「電車の、中?」

 

「どうやら、そのように空間を定義している人物がいるようですね」

 

 何でか、四次元空間は電車の中だったの。

 

 ケツちゃんは、誰かがここを、"ここって電車っぽいよね!"って思ったからそうなってるんだって言ってるけど、その気持ちだけで形になっちゃうだなんて、すごい空間だね?*5

 

「ここを探せば、お兄ちゃんが見つかるのかな?」

 

「十中八九、その筈です」

 

「そっか。じゃあ、迷子のお兄ちゃんを、見つけてあげないとだな」

 

 ケツちゃんに起こしてもらって、私達はソワソワしながら電車の中を歩き始めたの。

 久しぶりに会ったら、何てお話ししようかなって考えながら。

 

 車両を跨いで、人を探す。

 二つ、三つと別車両へと歩いて行って。

 

 ──そこで、一人座ってる人を見つけたの。

 

「っ、お兄ちゃん!?」

 

 逆光になってて姿がよく見えなかったから、お兄ちゃんだって思って、走り出しちゃったの。

 

 けど、ね。

 

「こーら、電車の中で走ると、危ないですよ」

 

 そこに座っていたのは、お兄ちゃんじゃなくて、お空の髪色をした女の子だったんだ*6

 

 背がずっと伸びてて、お姉様の才能に溢れてる感じの人。その人が……。

 

「ようこそ、春風メブキさん、それにkeyさん。……いえ、今はケイさんでしたね」

 

 アロマ塗れになっちゃった姿で、私達に笑いかけてきてくれてたの。

 

 何だかとっても楽しそうにしてて、ちょっと変な人かもって思っちゃったよ*7

*1
やっと繋がったと思えば早々に、キミは何て表現をしているんだっ。オゾン層は処女膜では無いし、破けたら放射能に晒されるだけなんだ!

*2
代案が、キミの頭に銃撃して気絶させるしかなかったから仕方ないとはいえ……コアラみたいな絡みつきは、本当に必要だったのかい?

*3
何故よそ様を公然と侮辱する呼び名を付けているんだ!? 妹が本当にすまない……

*4
勝ててなかったら、修道院送りにして煩悩と戦わせていたところなんだ

*5
キミは、こういう解釈は素直に理解できるのだね。そういう物語に、たくさん触れてきたからなのかい?

*6
まさか、キミは……

*7
連邦生徒会長、どうして、こんなところに……

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