コハルちゃんとは、えっち本を共有する仲なんです! 作:ペンギン3
アロマ塗れだった変な人は、何でか私のことを知ってたの(ケツちゃんの名前は間違っちゃってたけど*1)。
一瞬、私のストーカーさんなのかなって思っちゃったけど、変な人さんのお姉様度が高いって春風メブキ妹センサーが反応してるから、多分違うの。
キラキラ素敵なお姉さんがストーカーなんてするわけ無いし、勘違いして変なこと言っちゃわなくて良かったよ!*2
「何故、あなたがこのような場所にいるのです」
「ここは始発点にして分岐点。時間と空間、過去と未来を内包している路線です」
「ほえ?」
けど、ほっと安心してる間に、アロマさん*3とケツちゃんは、分かりあっている風にお話し合いを始めちゃってたの。
知り合いさん、だったのかな?*4
「……いつでもやり直せるように、待機しているとでも?」
「いいえ、違います。起こってしまったことは、覆せません。死を、さかしまにすることが出来ないのと同様に」
難しい内容だけど、私だって沢山のSFエロゲーをこなしてきたエロゲーマーなんだよ?
だからね、ゆっくり考えたら、二人のお話し合いをしてることも少しは理解できると思うの。
「やり直しは、出来ないと?」
「実際に物事を変えることができるのは、その場にいる人だけですから」
えっと、確かここは四次元空間。
お空の狭い処女膜を破って入った、色んな時間に繋がってる場所。
要するに、ガバガバおまんまんの中なんだよね?*5
「ここは、見ているだけしか出来ない場所なのですか?」
「そうであるとも言えますし、そうで無いとも言えます」
「余計な言葉遊びはいりません、結論を話してください」
そんなおまんまんの中に居てたこの人は、赤ちゃんってことになっちゃう。
お姉様気質なのに赤ちゃんなんて、なんかおかしいね。もしかしたら、赤ちゃんじゃなくて子宮さんなのかな?*6
「助けを求める声があって、条件が整っているのならば……応えられる時もあります」
「……貴方程の器量があってこの場所に座していても、全能にはなれないということですか」
「元より、人よりできることが多いだけです。万能には程遠い身、みんな過大評価をしているんです」
「所詮は人間、ということでしたか」
「ケイさん、keyであったあなただって、権能はあれども全能ではなかったでしょう?」
子宮さんだとしたら、納得できちゃう。
赤ちゃんより、お姉様って感じだもん。
……受精しちゃって、ちっちゃな赤ちゃんとか産んじゃったこと、あったりしないかな?
例えば、先生の子供とか!*7
お空は処女だったけど、お姉様力によって処女受胎とかできちゃうかもだし!!*8
「それは……」
「私たちは、存在するという軛からは逃れられません。いつだって、何処にだって何かを残し続けているんです」
「例え、死んでしまっても?」
「そうです。痕跡は残り、誰かの轍となります」
でも、だったら、目の前の美人お姉様は、経産婦さんってことになっちゃうんだ。
ママなお姉様……なんかえっちだね?
ん? あれれ?
何で私、このお姉様が経産婦さんだってこと、突き止めちゃってたのかな?*9
確か、子宮さんのお話をしてたんだっけ……?*10
「……でしたら、貴方は何故こんなところに居るのですか」
「不可解ですか?」
「ええ、全てが見えても、殆ど何もできない場所であるのならば、ここに居る意味などありません。貴方の言う轍を残すためにも、戻る方がよほど有意義といえます」
違ったよね? 絶対子宮さんの話じゃなかったと思うの。第一、ここに来たのはお兄ちゃんを助けるためなんだもん。
お兄ちゃんがお空の子宮さんを通じて生まれ直すなら話は別だけど、そんな話は全然なかったもんね?
「だとしたら、何故?」
「……残さないとと、思ったからです」
「残すとは、一体何を?」
「──キヴォトスの全てを。ここにある愛を全部、です」
「何、を……」
あっ、でも……そっか。
そういうこと、なんだね?
なんかね、この人のことを経産婦さんだって思っちゃった理由、分かっちゃった。
えへへ、そういうことだったんだ!*11
「いつまでも、いつまでもレールが続けば良いと思っています。ですが、レールが途切れてしまい、轍が残らなかった世界も存在しているんです」
「……わざわざ、破滅した世界を見て回っているので?」
「そこにあった愛を、誰かの気持ちを、忘れないでいたいんです」
あの時、私がパーンってなっちゃった時、みんなが一生懸命になって助けてくれたの。
私の命はね、みんなが拾って繋げてくれた。
だから、ありがとうっていっぱいみんなに伝えたの。
ずっとずっと、感謝してるよって。
……でもね、一人だけ、それを伝えられなかった人がいるの*12。
「アーカイブでも、気取るつもりですか?」
「いえ、そんな大層なものではありません」
「でしょうね。今の貴方は、感傷に浸っているだけです。……自らの役割を、全てあの大人に投げ捨てて」
「手厳しいですね」
「事実なのでしょう?」
「……ですが、私よりも先生が必要でした」
「言い訳ですか?」
「そうですが、聞いてください」
「……別に、いいですけど」
本当は、お姉ちゃんが産むつもりだったって、全部終わった後に聞いたの。
お姉ちゃんは貧乳ロリ狐お姉ちゃんのくせに私を妊娠して、出産までしようとしてたんだって*13。
私よりもロリなのに無理してたから、もしお姉ちゃんがそのまま私を出産しようとしてたら……もしかしたら、お姉ちゃんはお産の時に生命力を使い果たしちゃって、死んじゃってたかもって*14。
その話を聞いた時、胸がギュッてしたの。
苦しくて、お腹もキュゥってなっちゃった。
私、お姉ちゃんやみんなとずっと一緒に居たかったから、そのために生まれ直したかった。
だから、お姉ちゃんは絶対にいないとダメなの*15。
……お姉ちゃんが居なかったら、生まれ直した意味なんてないの。
妹が生まれて早々、天涯孤独にしちゃうかもしれなかったなんて、本当に悪いお姉ちゃんなんだから!*16
……だからね、私を生まれ直させてくれたみんなは、私だけじゃなくてお姉ちゃんの命の恩人でもあるんだよ?*17
「私は、大抵のことは一人でも出来ました。万能ではありませんが、幾分か器用だったので」
「鼻につく言い方です」
「ですが、一人で様々なことを回せてしまったことは事実です。成功も失敗も、全てが私に帰する。それが私の治世でした」
「傲慢、ですね」
「ええ、我がことながら、そう思います。……だからこそ、それは当然の流れで、帰結だったのでしょう」
色々、全部に気が付いちゃったから、アロマさんをジッて見つめたの。二人のお話が落ち着いたら、私から伝えたいことがあったから。
……告白じゃないから安心してね、お姉ちゃん?*18
「私は、他者を見守ることをしませんでした。自分でやった方が早い、自分の方が上手くやれる。誰かに頼ることをせず、誰かを成長させられなかった」
「いずれ、破局する時が来ていたでしょう。ですが、あなたはまだ、瑕疵なく統治ができていたはずです」
「……さて、どうでしょうね?」
お話、長いね?
まるで、先生のおにんにんみたい*19。
それにケツちゃん、何だかずっと真面目さんなお顔になっちゃってる。アロマさんも、そんなケツちゃんばっかり見てる。
このままだと私、ぐるぐるって緊縛された挙句に近くで蕎麦打ち放置プレイをされちゃうって噂のAVくらい、話しかけてもらえなくなっちゃいそう*20。
うーん、それは困っちゃうね。
だったら、どうしたら良いかな?
うーんと、うーんとね……。
……分かんないけど、とりあえず会話に入り込んじゃえばいっか!
「ケツちゃん、さっきから顰めっ面さんだけど、痔になっちゃったの?*21」
「急に喋ったと思ったら、この女児は……っ。お尻と掛けた悪ふざけでしょうが、私はそんなものに屈しません!!*22」
「でも、ケツちゃんはケツちゃんだから、お尻が弱いタイプの女の子だと思うの*23」
「クッころなんて、私は絶対に言うはずのない言葉の極みなんです!!」
「"姫騎士ケツ姫ちゃんの大括約 クッ、アナルビーズなぞ詰め込んでさえいなければっ!"ってタイトルでどうかな?*24」
「許される要素を悉く放り投げて、なんでそんなに自信満々なのですかっ。第一、私がアナルビーズを愛用しているかのようなクソみたいなタイトル、許す訳がないでしょう!!」
「許してくれたら、挿入しても良いってこと?」
「一生許すことはないんです!!」
よし、NTRゲーの間男野郎みたいに、会話に割って入ることに成功したね!*25
後は気付かれないうちに、私も会話に挿入して3Pに持ち込まなきゃだよ!*26
「でもね、アロマさんを見て? ケツちゃんのこと、お尻の弱い女の子って目で見てるよ?」
「はぁ!?」
「……えっ、アロマさんとは、私のことですか?」
「そうだよ!」
全身アロマなアロマさん。良い匂いのするお姉様で、思いっきり息を吸ったら、何でかお股がムズムズするの!
……きっと、数多くの女の子を、そのお姉様フェロモンで屈服させてきちゃったんだよね*27。
でも、私には既にハナコちゃんってお姉様がいるから、絶対に負ける訳がないんだよ!
あっ、セイアお姉ちゃんはお姉ちゃん枠で、お姉様枠じゃないから無効だよ!*28
「これの言うことを、真に受けてはいけません! こちらの方まで、頭がおかしくされますよ!!」
「おかしいのは、お尻が弱すぎるケツちゃんの方だよ!*29」
「単なる弱いじゃなくて、弱"すぎる"なんて付加価値をつけたのは何故なんですかっ!」
「あにゃるがクソつよのケツちゃんは、解釈違いだからだよ!」
「締め殺されたいのですか!?」
「えっ……お尻で?」
「手に決まってるでしょう!!*30」
どうしてか、ケツちゃんは自分が姫騎士並にお尻が弱いことを認めようとせずに、私の抹殺を開始しちゃおうってしてたの。酷いね?*31
「ふふっ」
けどね、私がケツちゃんに一方的に首締め中田氏おせっせをされようとしていたところで、アロマさんが急に笑い始めたの。
今から残虐ファイトが始まろうとしてたのに……サドの人かな?*32
「っ、自分だけ安全圏にいて他人を笑うなんて!」
「いえっ、そんなつもりはっ。ただ、メブキさんと関わると、何でもテイストが変化してしまうのだと思ったら……ふふっ」
「身体中催淫発情アロマ塗れのくせに、何を他人事ヅラして笑っているのですか!」
「いえ、私はお尻が強いタイプなので大丈夫です」
「どこに大丈夫な要素がありましたか!? あと、私は弱くありません!!」
「……お尻がですか?」
「っ、全てです!!」
ケツちゃんは、何でかお姉ちゃんやコハルちゃんの如く、キレ散らかしちゃってた。
でも、アロマさんも楽しそうにケツちゃんの敏感なところ(えっちな意味じゃないよ!)をこちょこちょしてるから、仕方のない切れ痔だったのかもしれない*33。
……うん、でもいっか!
さっきまでの、何かお話しづらい空気は無くなったし!
「アロマさんアロマさん」
「どうしましたか、メブキさん」
だからね、頭が切れ痔になってのたうち回っているケツちゃんを尻目に(一流のジョークだよ!)、私はアロマさんに話しかけたの。
──伝えられなかったことを、伝えるために。
「あのね、その、ね……。ちょっと、聞きたいことがあって……」
「はい、何でも聞いてください」
アロマさんは、にっこり優しい笑顔を浮かべてくれてる。私が話しやすいように、お姉様力を発揮してくれてるんだって、分かっちゃう。
「アロマさんはお空の人で──私を助けてくれた、優しい人ですか?」
だから私も、思い切って聞くことができちゃってた。きっとそうなんだって、おんにゃのこの勘も囁いていたから。
「メブキさん」
すると、アロマさんは優しい笑顔に、あったかい気持ちをいっぱい乗せてくれて。
「──あの時、貴方が新しい誕生を迎えられたことを、心の底から祝福していました*34」
私の気持ちを見透かして、自分がそうだよって認めてくれたの!
「アロマさん!」
「はい」
だからね、ずっと言えてなかったことを、あの時助けてくれた優しい人に、ようやく伝えられる。
「──あの時、私を産まれさせてくれて、ありがとうございました!!」
いっぱいいっぱい、胸いっぱいの気持ちを込めて、伝えたかった言葉を口にできたの。
先生が言ってた優しい人に、やっと出逢えたから。
「私、毎日色んなことがあって、大変で、いっぱいで……。でも、嬉しくて楽しいです!!」
これまで胸に溜まって、ドクドクし損ねていた気持ちも合わせて、一生懸命に伝えていく。
「大好きなお姉ちゃんがいて、えっち本を共有できちゃうくらいの友達もいて、ガチ恋できちゃう先輩や恋敵野郎の爆乳はわはわシスターさん*35、部活やクラスのみんな……それに、先生も!」
転生する前はお兄ちゃんしかいなかったのに、今はみんながいてくれてる。寂しいなんて思う暇がなくて、エロゲーしかなかった私のお胸は、今はエロゲーとみんなでパンパンなの。
いっぱいの思い出が胸から溢れて、キラキラした明日への期待へと変っていく。
朝、起きれた度にホッとして。
夜、眠る度に怖くなる。
そんな日々は、もう遠い昔。
今の私は、素敵な毎日を送れちゃってるの!*36
「みんなと出逢えてから、朝起きれた時は嬉しくて、夜眠る時はワクワクで、1分1秒をちゃんと生きられてるんだって、毎日が幸せなんです!」
ずっと欲しかった青春を、手に入れることができました。
たくさんの友達ができて、尊敬できる人とも出逢えて、人生って楽しいって実感できています。
だから、もう一度伝えさせてください。
「私を助けてくれて──優しくしてくれて、ありがとうございました!!*37」
胸の中のありがとうって気持ちを、ドクドク中田氏するみたいに出しちゃった。今まで溜まっちゃってたから、仕方ないよね?
でも、ありがとうって気持ちを沢山ドクドク出来て……うん、なんか満足だよ!
「どういたしまして」
「うん!」
えへへ、やっとお礼言えてスッキリだよ。
アロマさんが、優しい人で良かったよ!
「……メブキさん」
「にゃ?」
そんな賢者モードの私に、アロマさんがピロトークするみたいに話しかけてきたの。お姉様が、妹に掛けるような声で。
「私の方も、メブキさんを見ていて励まされることが多々ありました。あなたは、この世界でしか観測できないイレギュラーな存在ですが……だからこそ、皆で幸せを掴み取った姿が尊かった」
凛としていて、その声を聞いてたら、背筋が勃起した先生のおにんにんみたく縦に真っ直ぐなっちゃう*38。
「全ての世界で一人だけの、幸福なあなた。私の方こそ、感謝させてください──幸福になってくれて、ありがとうございます、と」
……正直に言うとね、分かったのは並行世界に私はいないってことだけで、それが何でありがとうございますになるかは分かんない。
でも、アロマさんが"ありがとう"って言う時、とっても幸せそうな顔をしてくれたから。
「え、えへへ、どういたしましてなんだよ!」
素直に、そのお礼を受け取れちゃってた。
私が幸せなことで喜んでくれてるなら、こしょこしょしちゃうけどヤじゃなかったから。
「ニコニコしていますね、メブキさん」
「アロマさんも、ニコニコなんだよ!」
それから、なんか分かんないけど二人で笑い合ったの。
"世界が平和でありますように"ってね!
「ところで、思っていたよりもマトモな会話が始まってしまったせいで、自分が会話に入る隙をなくしてしまったかのような渋い顔をされているケイさん。もうそろそろ、話しても大丈夫ですよ?」
「嫌味ですかっ」
「? あのね、会話に入る時はね、お尻に挿入しちゃうようにニュルっと入ったら大丈夫なんだよ。ケツちゃん、得意だよね?*39」
「絶対にクソみたいなあだ名から、得意だどうだと言っているだけでしょう!」
「違った?」
「殺しますよ!!」
「……お尻でってこと?」
「私のこの手が見えないんですか!!」
ケツちゃんは、照れ隠しで定期的に殺害予告してくる、コハルちゃんと似てる女の子だった*40。
つまり、私と親友になれちゃうってこと!
「…………はぁ、諸々がバカバカしく思えて来ました」
「メブキさんには、肩の力を抜く才能があります」
「他のものも、無理やり剥ぎ取られていく気分なのですが……」
「ぬきぬきするのが上手って、褒め言葉なのかな?」
「ほら、直ぐにこれですっ」
ケツちゃんは、まるでコハルちゃんがペロロ様を見る時の目で私を見てた。
……半分くらいは、性的な視線ってことだね!
「ふふ、褒めていますよ」
「わーい!」
けどね、私のお尻をえっちな目で見るケツちゃんと違って、アロマさんはお姉様属のお姉様だから、私のことを素直に褒めてくれたの。
ツンデレは大好きだけど、身に染みちゃうのはお姉様の優しさなんだよね。
だからね、お姉ちゃんとコハルちゃんは、偶には甘々お姉様キャンペーンを実施してくれても良いんだよ?*41
「バカを乗せて、つけあがらせないでください!」
「明るいメブキさんの方が、見てて楽しいですよ」
「愉快犯ですかっ」
「愉快ではありますね」
「最悪ですっ」
ケツちゃんも漏れなくツンデレさんで、でもこれまで会った人の中で一番なツンデレさんだった。
お姉ちゃんがツンデレデレデレさんで、コハルちゃんはツンデレデレさん。それに対して、ケツちゃんはツンツンツンデレさんだったの*42。
寒暖差で、白目を剥いちゃう私が居ちゃうかもしれないね?
「……はぁ、もう良いです。あなたは好きでここに居て、そもそも私が何か言う理由すら無いことに、今更気が付きました」
「心配の気持ちは、ちゃんと受け取りました。ケイさん、あなたの優しさに感謝を」
「なっ、違います! 私はただ、あなたを懐柔してあの人の居場所を聞こうとしていただけです!!」
「そうでしたか。……メブキさん流に言うなら、ツンデレさんなんですね」
「違います!」
違わないよね?*43
「そうだよ。ケツちゃんはツンツンツンデレさんだから、デレデレしてくれないの」
「では、貴重なデレだったのですね」
「流石はアロマお姉様だね!」
「バカにしてっ!!」
ケツちゃんの頭の痔は、数秒進むごとに悪化してっちゃってたの。直ぐにプツンとなって、ツンツンが始まっちゃう。
怖いね? でも、そんなケツちゃんでも、友達だから見捨てたりなんかしないよ!
だから不安がらずに、安心して痔を発症してね!
「それで! あの人はどこに居るんですか!!」
そうして、痔の切れ味をアロマさんに振るいながら、ケツちゃんは一番大切なことを尋ねてくれたの。
そう、ここまで探してるけど、まだ見つかってないお兄ちゃんのことについて。
「私のお兄ちゃんなんですけど、どこにも居なくて……。多分、迷子のお兄ちゃんだと思うんですけど、アロマさんは見かけませんでしたか!」
ここまで、アロマさんが素敵なお姉様すぎたのと、ケツちゃんと会話し始めちゃったことから聞けなかったこと。
ここに居るはずのお兄ちゃんが、まだ見つかってない。
それにこの電車、何か……すごく長い。
アロマさんを見つけるまでに、20車両くらい移動した気がする。
もしかすると、1919車両くらいあるかもしれない電車さんだった*44。
だから、ちゃんとお兄ちゃんがどこに居るのかを把握して、逆方向に行っちゃわない様にしなきゃ、会えない気がしたの。
「会いたいのですね、お兄さんに」
「はい」
「でしたら──その人を強く思いながら、扉を開けることです」
「強く、思いながら……」
私のおうむさん返しに、アロマさんは頷いたの。
「ここは、普通の空間とは法則が違います。車両間ですら、あべこべになっている時すらあります」
「気持ちを強く持つと、あの人のいる車両へと繋がる法則がある、と?」
「ここには物理法則がありません。あるのは、想いと、気持ちと、愛だけです。だから、鍵になるのはその人に対する気持ちだけですよ」
鍵、とケツちゃんが小さく呟く。
胸にそっと手を添えて、何かを考えちゃってる。
……お兄ちゃんのこと、思い出してくれてるんだね。
「そう不安がらずとも、あなたなら大丈夫です。今のあなたは、ケイさんなのですから」
「……うるさいです」
けど、アロマさんに声を掛けられたケツちゃんのお顔は、ほんのり赤かったの。
ツンデレ属性の味がするね?
「……用は済みました、行きますよ」
「あっ、うん」
ただ、それを自覚しちゃったのか、ケツちゃんは足早に車両間にある扉の方へと歩き出しちゃったの。
だから、私も慌ててそれについて行って。
「アロマさん。色々たくさん、たっくさんありがとうございました!」
それだけ伝えて、ケツちゃんのお尻を追いかけたの。
最後に見えたアロマさんは、本当に優しい笑顔で、バイバイって手を振ってくれてたの!*45
扉を前にして、ケツちゃんがユラユラしている瞳で私を見つめたの。
「一緒に、手を添えてください」
「ふぇ?」
「……想いの強さで道が開かれるのなら、一人よりも二人で開けた方がいいでしょう」
そう言って、扉に掛けた手の上に、私の手を重ねてってお願いして来た。なんか、照れちゃう構図になっちゃうね?
「うん、一緒にお迎えしようね」
「はい、ようやくです。……目を閉じて、あの人を想ってください」
けど、照れる暇なんてないまま、ケツちゃんは催眠音声みたいな声で指示を始めたの。
その声に従って、ケツちゃんのおてての柔らかさを感じながら、ゆっくり目を閉じて。
お兄ちゃん、いつだって見守ってくれてたね。
前世でたくさんの迷惑をドクドクしちゃったけど、大切な妹だからってずっと大切にしてくれてたよね。
あの時の私は、お兄ちゃんとエロゲーだけが自分の世界だったの。
だから、いっぱい甘えちゃってた。
エロゲーだって、沢山おねだりしちゃった。
だからね、私……。
お返し、したいよ。
やっと、ずっと見ててもらわなくても大丈夫になったから。
お兄ちゃんに優しくしてもらった分だけ、優しくしてあげたい。
お兄ちゃんの役に立ちたいの。
今度は、私に助けさせて欲しいなって。
「1、2の」
ケツちゃんの合図に合わせて、私たちは手に力を入れて。
「──3!」
お兄ちゃんへと繋がる筈の扉を、二人でスライドしたの。
──そうして。
移動した車両の先に、二つの影があった。
一人は、アリスちゃんとおんなじ顔をしてる……つまりはケツちゃんとも一緒のお顔だったの!
「ケツちゃんが、二人……?」
呟いちゃったのと同時に、二人のケツちゃんはお互いに歩み寄ったの。
「久しぶりですね──私」
「ようやく迎えに来ましたか──私」
私って呼び掛け合いながら、二人のケツちゃんはお互いの両手を恋人繋ぎにしたの。
そしたらね、何か眩しい光が発生して。
思わず目を瞑っちゃってから、恐る恐る目を開けたら……。
「同期完了。……なるほど、こちらとそちらはそうなっていたのですね」
何でか、ケツちゃんが一人になっちゃってて、頷きながらブツブツ呟いてて。
そうして、クルッと反対方向に向き直ると、もう一人の方へぎゃおーってし始めちゃったの。
「あなたの妹教育は、一体どうなってるんですか!!!」
「突然理不尽な罵声を浴びせられた、こわ……」
「理不尽なのは、あなたの妹の終わっているセンスの方なんです!!!」
聞こえて来たのは、明らかに女の子の声。
けど、その声を聞いた瞬間、何かキュッて胸がなっちゃった。
──懐かしい気配がしたから。
誘われちゃってるみたいに、フラフラしながら女の子の方へと向かう。
「君、は──」
そうして、お互い目の前まで来て、目を見合わせちゃって確信する。
──この人が、そうなんだって。
軽く、息を吸う。
お話しするために、ウンと。
そうして、私は大声を出したの。
「私のお兄ちゃんが、猫耳貧乳ロリ美少女になっちゃってるよぉーーっ!!*46」
「再会した第一声がそれなのかよ……。相変わらずで安心したよ、メブガキがよっ」