神人を嫌いにならないでくださいね。彼なりに頑張ってるので。
旅の準備を済ませ、神人とノアと小裁は守矢神社を後にした。しかし何故小裁がついてきているのだろうか。いや、正確にはついて来ているのではなく行く道が同じなだけだ。
「小裁、お前蓬莱の薬持ってるか?」
「何を言い出すかと思えば……あるわよ。それがどうしたの?」
「いや確認だ。やっぱり最後の蓬莱の薬はお前が持ってたんだな。」
「永琳が私に渡したの。なんの理由かわかんないけどね。」
そんなことを話しているとノアが右に誰か倒れているのを見つけた。三人が近寄っていくと既に死んでいる人間の死体だった。無惨にも食いちぎられているところを見ると妖怪に殺られたらしい。が、どうやらまだ新しい。殺った妖怪がまだ近くに居るかもしれない。そう思って見渡すと黒い塊が空から舞い降りてきた。その中から現れたのは紛れもない霊那だったのだ。
「霊……那だと。そんなバカな!」
「霊那?誰だそれは。私はルーミア、宵闇の妖怪よ。」
「嘘でしょ……なんで生きててしかも妖怪に?」
「生きているのは俺のせいだが、あの能力はどう見てもスキアーじゃないか!」
ルーミアはケタケタと笑う。そしてそのまま闇の塊を使い大剣を作り出す。すると彼女の赤い目が一層輝きを増した。危険を察知し、全員が伏せる。すると凄まじい闇の衝撃波が上を通っていった。
「……記憶なんかないってか。よくも俺の仲間に手を出したな。お前は俺が倒す!」
「倒す?寝言は寝てから言いなさい。宵闇の裁き!」
「ユグドラシル!……樹海神壁!」
無我夢中でユグドラシルの力を引き出す。本人はまだ寝ているが力だけを無理矢理引き出している。神人は今、次元最高神の権限を無意識で使っているのだ。樹海神壁は完璧に宵闇の裁きを防いだ。
「樹海神槍……ディガルグ!」
「うぐぅっ!あぁっ!」
ルーミアはいとも簡単に吹き飛ばされる。残り二人はじっと戦いを見ているだけだった。というよりも手が出せないのだ。今の神人の戦いに巻き込まれれば確実に死ぬ。不老不死の蓬莱人でも飛び込む気にはならない。
「凄い一方的になってるわね。」
「次元神って凄い……」
先程からルーミアが連続で木々に攻撃されている。その攻撃スピードは全く目視出来ない程だ。神人は低い声でルーミアを脅す。
「降参しろ!しなければ……わかるよな。」
「随分身勝手な奴ね!グハッ!貴方が蘇らせた癖に!ガッ!」
「……降参するのかしないのか答えろ。」
「嫌よ。私は負けてな『グシャッ!』……え?」
震えながらルーミアが右腕を見る。肩から先がひねり潰されている。赤い鮮血が吹き出して、「コロサレル」そう感じた彼女は悲鳴をあげ、狂ったように暴れだす。辺りを破壊しはじめたルーミアを神人は片手で掴み握力だけで気絶させ、倒れた彼女の右腕を再生しくっつけた。
「大人しくなったな。」
「大人しくなったな、じゃないわよ!こんな小さい子に何もそこまでやる必要あった!?」
「俺はお前らを殺そうとしたこいつを止めるためにやったんだよ。まだ殺さなかっただけマシだ。」
神人のその一言を聞いて小裁は彼が段々妖怪でも人間でも神でもないナニカになっている事を改めて自覚した。昔、自分の両親を殺した妖怪の記憶がまた蘇る。あの時の朧蒼のような奴になっていっているのではと彼女は警戒して居るのだ。
「さて、こいつは連れてくか。」
「ルーミアを?なんで?」
ノアが問いかける。神人はいつものような声色に戻っていた。
「こいつには制御が必要だ。さっき見たろこいつの能力。あれは相当やばいからな。」
「封印でもするの?そんな技術ないでしょ?」
「う……今から考える」
人間の死体を埋めて墓を作ってから神人達はその場を後にした。……もちろんルーミアはロープでぐるぐる巻にされて神人が担いで持っているのだが。