ノアと神人の2人旅(ルーミアは簀巻きになってカレーで気絶してるからノーカン)。今は山道を進んでいた。たまに休憩しながら人が居る都を探し、進む。
「ふぅ……なかなか都って見つからねぇな。」
「私が空から探した方が早いんじゃ?」
「それはなんか嫌なんだよなー。まるでズルしてるみたいでよ。」
神人は実は飛べない。いや、力の量からして飛べない事などありえない。しかし彼は飛べない。朧蒼だった頃、妖力で飛ぶ癖が付いているからどうしても妖力で飛んでしまう。すると妖力弾の時の様に、妖力が纏まらず落ちてしまうのだ。
「それは私の能力に対する僻み?」
「ちげーよ。……ん?なんだこの匂い。」
漂って来たのは酸っぱいような匂い。嗅ぐと気分が悪くなる。ノアはまだ気がついていない。かなり遠くから匂いが来ているのだ。
「匂いなんてしないよ?」
「ノア。出来るだけ吸うな。毒だ。」
「えっ!?嘘!?……本当だ。でも犬を使って微かに感じれるような匂いを嗅げるなんて……」
「こんなに嗅覚が良いなんて今まで気がつかなかったぜ……てか吸うなって」
ノアが能力を使い犬の特徴を体に発現させても、ギリギリ気がつく程微かな匂いにも関わらず、神人は普通に感じ取れた。
「一体誰が……ノア、ここで待ってろ。ずっと毒まみれの空気を吸い続ける訳にはいかねぇからな。」
「わかった。じゃあ後で。」
神人が毒の匂いがする方へ行くと、1人の少女が岩に座っていた。彼女が吐く息から、それは出ていた。
「はぁ……うざってぇなぁ……あのクソ野郎次会ったらぶっ殺してやる。」
「おい、なにしてんだ?」
「んあ?なんだ、妖……怪か?まぁいいや。あたしに何のようだ。生憎、黒い服の奴に能力コピーされてイライラしてんだよ。」
「スキアーか!?どこに行った?」
「一週間前の話さ。あたしはこの岩に縛り付けられてこのザマ、黒服野郎はどっか行ったし、能力制御出来ないから毒が漏れ出して誰も来ない。暇で暇で死にそーだったよ。」
自嘲気味に少女は笑うと、岩から降りて近寄って来る。しかし一定距離まで進むと、少女は金属音のような音と共に岩側に弾かれる。神人の目には一瞬黒い鎖が見えた。スキアーの力で作られた物だろうというのがはっきりしている。
「今外してやるよ。」
「マジで!?やった!ありがとう!本当に助かるよ!あたしは
蟒蛇毒牙。蛇妖怪。能力は主に感覚を麻痺させる程度の能力。見た目は紫のショートヘアに、青いコートと、鱗模様のスカートを履いている。
「俺は妖神人だ。さて……じっとしてろよ。神威で鎖をたたっ斬る!」
「うわぉ……すっげぇ……ホントに斬っちまったよ。」
「……毒は抑えられるか?」
「ごめん無理☆」
「あのなぁ……これじゃなんのために助けたか……」
毒牙はニヤニヤしながら神人に能力を発動した。ちなみに毒牙はかなりの偏食で、普通妖怪が食べないだろうものを食べる。なんと彼女は妖怪を食べるのだ。
しかし、忘れて無いだろうか。次元神に能力は通用しない。正確には次元神力を纏ったものには能力が効かない。感覚を麻痺など、できるはずもない。
「……何やってんださっきから。」
「えっ……いや何も?」
「いや、バリバリ能力使ってるだろ。やめ……」
「バレちゃしょうがない!くたばりなぁ!」
神人に向かっていきなり毒を吹きかけてきた。神人は反射神経でかわす。至近距離にも関わらず、二発目、三発目と次々にかわす。
「チッ、そこそこ強いじゃねぇかよ。大人しく死にな!」
「おいおい……口が悪いぞ。その程度の攻撃じゃあたらねぇよ。」
「へぇ、じゃ、これは?
空に向かって毒液を吹き出し、その毒液が重力に従って落ちてくる。まさに毒液の雨。液に触れた神人の服が焼けるような音と共に一部溶けた。
「なっ……俺の服が溶けた!?」
「全身溶けて死んじまぇ!ぺっ!」
毒液をまた空にに向かって撃ちだした。いつまでも降り注ぐ毒液をどうにかしない限り戦いに集中出来ない。
「……そうだ、ユグドフォース!」
神人の髪が緑に変わり、服に草の模様が現れ背後に元から生えていた木々を飲み込むように巨大な樹海が現れた。ユグドラシルの巨大な『侵食と繁栄の次元神力』は周りにも影響するのだ。しかし、やはり右腕には次元神力による強化がない。
「さて、忌々しい毒の雨模様を綺麗さっぱり晴にしてやる!」
「そ、それがお前の能力か!?バケモンじゃねーか!」
「行くぜ……って右腕が重いな。ん?」
右腕から木が生えている。もう一度言おう右腕から木が生えている。偽物の右腕は本体と認められず、次元神力により悪影響を受けているようだ。
「痛だだだだ!右腕の中に根が入りこんできやがる!」
「ん?自爆か?チャーンス!死毒玉!」
あらゆる生物を死に至らしめる猛毒の玉。吐き出されたそれは神人に向かって飛んでいく。木々が防御をしようとしたが、あっという間に溶けてしまい、勢いを殺せない。
「待てよ?……いい事思いついた。やれるかどうかやってみるか!」
「なんだ、何をするつもりだ!?」
「俺の器の次元神力、信用するぞ!」
神人はなんと、猛毒の死毒玉を飲み込んだ。器の次元神力はすべてを受け容れる力。とはいえ無茶にも程がある。しかも、普通の使い方ではない。
「ハァハァ……おぇっ。まっず。」
「ば、馬鹿だ。自分から致死量の毒を飲みやがった……」
「ポイズンブレス!」
「……はい?」
紫色のブレスが、毒牙に放たれた。霧状になったそれは、神人の体の中で変化し性質が変わった彼女の毒そのもの。簡単に説明すると、体の中で器の次元神力を使って毒を受け止めた。いわばバケツに水を入れてひっくり返してぶっかけているようなものだ。
「うわぁぁぁ!服が溶けるし皮膚がチクチクする!」
「うっぷ……気分悪……二度とやらねぇやりたくねぇ……」
神人が顔を青くして吐きそうになっていると見るも無惨な格好になった毒牙が木の陰から涙声で叫んできた。
「えーん!どーしてくれんだよー!人前に出れないじゃんかー!」
「仕掛けたのお前だろーが……ほれ、俺の服でも引っ掛けとけ。今ユグドラシル使ったから能力使う程力は残ってねーんだよ。」
「へぇ……なら今なら!」
「お前を葬りさるくらいは出来る。」
「怖っ!?」
その後、能力の制御が出来るようになったため毒牙は神人と別れ帰って行った……フリをしてノアのところに戻った神人をつけていったのだった。
「あんたを必ず……私の物にしてやる」