一般儀式おじさんypが懐かしみながらアカデミアを過ごす   作:火壁

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罪宝スネークアイスミス強すぎるゾ……


ネームドモブと言わせんな!

 前田熊蔵は元プロデュエリストである。

 

 『薩摩示現流』をデュエルに落とし込み、一撃必殺の下に相手を倒す。この世界でそんなワンターンキルを決めるのは至難の業だが、それを可能とし、一時とは言えプロの世界で戦った彼の実力は間違いなく上澄みに位置すると言っていい。そんな彼も稼業の為かプロを引退し、自身の息子にデュエルを辞めろと言う。

 

 思う事が無い訳も無いだろう。自分も通ったデュエルの道、息子も憧れを持ちその門とを開いた。喜ばない訳が無い。しかし、それを否定しなければならなかったのは、偏に息子にデュエルの才が無いと理解してしまったが故だろう。彼はデュエルを辞める事を伝えた。息子を愛していたから。息子は当然反発した。その無力感はひとしおだろう。そして

 

「それでは、前田熊蔵さん。貴方が勝てば、隼人君を退学させ連れ帰る。それでよろしいですかにゃ?」

 

「漢に二言は無かです」

 

「前田隼人君。君が勝てば、デュエルアカデミアに残る。それでいいですかにゃ?」

 

「はい、大丈夫です!」

 

 息子と幾度目かの衝突となる。これを彼はどう思うだろうか。

 

「隼人君、大丈夫ッスかね……」

 

「心配ねーって。戦真や翔とも特訓したし、デッキも強化してるんだ。戦真にみっちり教えてもらった戦い方をやるだけさ」

 

 戦い方、ね。それもこれもあいつのメンタル次第だ。戦う意志を無くせば終わり。油断できる相手でもないのは確定的に明らかだ。対策……というより対症療法に近い手段は入れてあるが、どこまで輝いてくれるか。

 

「で、なんでお宅がおるんでしょうか。天上院さんよぉ」

 

「あら、ちゃんと許可は取ったわよ?」

 

「私もいますよー」

 

 件の騒動以来(と言っても1日2日程度だが)顔を見ても会話していなかった天上院明日香。そして『明るいアカデミア生』こと香苗美乃だ。このデュエルはまず周知すらされていないはずだったんだが。

 

「昨日翔君が教えてくれたの。私も知ってる顔だし、応援にと思って」

 

「私は天道君が教えたというので、気になって来ました!」

 

 天上院はまだ分かるとして香苗ェ……

 

「それでは、お二人共存分に競い合ってください。始め!!」

 

「「デュエル!!!」」

 

 前田隼人

    VS

      前田熊蔵

 

「俺のターン、ドローなんだな。まずはモンスターを、裏守備でセット。カードを2枚伏せてターンエンドなんだなぁ」

 

 隼人はまず守備を固める。まずまずの手だ。除去があれば辛いのは分かりきっているため、判断としては間違っていない。

 

「静かな立ち上がり、といったところね」

 

「戦真くんが教えたにしては、なんか地味ッスね」

 

「しばくぞ」

 

 頑張ろうが何しようが、自分本来の性根は一晩で治る訳が無い。なので俺は隼人のコンセプトである『コアラ』のみでは難しいにしても、『ビートダウン』の戦い方を考えた。その下準備にこれは十分だ。

 

「ふんっ恐らくそれはリバースモンスター。攻撃表示にせんかったのは褒めてやる。だがその程度は小学生でも出来る!おいのターンドロー!おいは『酔いどれタイガー』を召喚!」

 

 酔いどれタイガー ☆4 地

 ATK1800/DEF600

 

 これは……アニオリの『酔いどれ』テーマ!

 

「酔いどれタイガーは、裏守備モンスターを攻撃し、それがリバースモンスターだった場合、その効果を無効にする!バトル!酔いどれタイガーで伏せモンスターを攻撃!!」

 

「リバースカードオープン!『月の書』で酔いどれタイガーを裏守備にするぞ」

 

「ほう……ブラフではないと思っちょったが、味な真似を。だが、おまんが考えたものではないな?」

 

「うっ……」

 

 図星を突かれた隼人が俺を見る。やめろよ、答え言ってるようなもんだろうが。

 

「ほう、オベリスクブルーに教えを乞うたと思っちょったが、ラーイエローとは……いや!教えるもんに立場など関係なか!おいはカードを3枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン!俺は『デス・コアラ』を反転召喚して効果発動。相手の手札1枚につき400のダメージを与える!」

 

「むおっ!」

 

 熊蔵

 LP4000→3400

 

「まだいくぞ!俺は『見習い魔女』を召喚!その効果で俺の闇属性モンスターの攻撃力を500アップする!バトル!見習い魔女で伏せ状態の酔いどれタイガーを攻撃!」

 

 未熟な魔女の魔法弾が、へべれけの虎を討つ。しかし、熊蔵さんには望むところだったようだ。

 

「甘いわ!リバースカードオープン!『リビングデッドの呼び声』発動!これで酔いどれタイガーを復活させる!」

 

「うっ!でもまだなんだな!バトルフェイズは終了し、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「まだか……ならばお前を見せてもらうぞ!おいのターン!『強欲な壺』発動。カードを2枚ドロー!カードを2枚伏せ、永続魔法『ちゃぶ台返し』発動!これでこのカード以外のおいのカードを全て破壊し、その枚数分相手のカードを破壊する!ぬおりゃああああ!!!」

 

 突如出て来たちゃぶ台を熊蔵さんがひっくり返し、隼人のカードも全て呑み込まれる。そして、彼のデュエルはこれだけじゃない。

 

「そして、伏せられていた2枚の『お銚子一本』と『風魔手裏剣』、『黒いペンダント(ブラック・ペンダント)』の効果を発動!お銚子一本で500ポイントのダメージ、風魔手裏剣で700のダメージ、黒いペンダントの500を合計して2300のダメージを与える!」

 

「う、ぐうぅぅぅ~~~~酒くせぇ……」

 

 隼人

 LP4000→3500→3000→2300→1700

 

「これでトドメじゃ!『死者蘇生』発動!酔いどれタイガーを復活!バトル!酔いどれタイガーでダイレクトアタック!!」

 

「これが通れば、隼人が負ける!」

 

「そんな!隼人くん!?」

 

「まだだって言ったんだなあ!!手札から『クリボー』を墓地へ送り、戦闘ダメージを一度0にするんだなあ!!」

 

 トドメを刺さんとする一振りが、嘗て王と共に戦ったモンスターに受け止められる。ワンキルをし損ねた熊蔵さんは思わず歯噛みした。

 

「クリボーとは、味な真似を……ターンエンドじゃ」

 

 隼人の手札は1枚。熊蔵さんは0だが、この世界で1800のラインは今からのドローで2枚になっても難しい。セットカードも打つ前に除去されてカウンターを潰されている。墓地へのアクセスかデッキを漁れたら良いが、見せ所だな。

 

「俺のターン!……これは」

 

 何か引いたな。でも表情に陰りがある。もしかしたら出来るかもというのなら……アレか。まあ言うまでも無く攻めるなら今しかないのは事実。なら

 

「決めろ!隼人!!」

 

「っ!……応!!俺は『未界域のジャッカロープ』の効果発動!」

 

「!?そ、そんカードは!!」

 

 そう、俺もびっくりした。元々隼人のデッキに俺のカードを使うつもりは無かった。熊蔵さんも知っているのだろうが、他の転生者が持ち込んだカードの何枚かがこの世界でカード化されている。あのジャッカロープはその一枚だ。ゲームバランスおかしいよな。隼人が買ったパックに入っていたのもびっくりだが。

 

「このカードを含めた俺の手札を、父ちゃんにランダムに選んでもらう。選んだカードは捨てて、それがこのカードじゃなかったら、未界域のジャッカロープは俺のフィールドに特殊召喚され、1枚ドローする。このカードでも、デッキから他の『未界域』モンスターを守備表示で特殊召喚できるぞ。さあ選べ父ちゃん!!」

 

「おいに心理戦をするとは百年早いわ!!右じゃ!!」

 

 恐れるものは無いと言ったように熊蔵さんは即断する。その解答は

 

「残念だけど違うんだな!このカードは『ビッグコアラ』!こいつを捨てて未界域のジャッカロープは特殊召喚され、1枚ドローするぞ!」

 

「何い!?」

 

「俺は表情に出やすいから、手を読まれるって言われて、顔に出さないのが無理なら逆の表情をしろって言われたんだ。そしてこのカードは『天使の施し』。発動して3枚ドローして2枚捨てるぞ。『吸血コアラ』を召喚!」

 

 吸血コアラ ☆4 地

 ATK1800/DEF1500

 

「新たなモンスターを出したか。だが!今のままでは酔いどれタイガーと相打ちにしかならん!どうする?」

 

「こうするんだなあ!墓地の『スキル・サクセサー』をゲームから除外して発動!」

 

「ぼ、墓地からトラップだって!?」

 

「隼人くんが、ここまで伸びるなんて!!」

 

「これで吸血コアラの攻撃力を800ポイントアップするんだなあ!バトル!吸血コアラで酔いどれタイガーを攻撃!【ブラッド・サック】!!」

 

 熊蔵

 LP3400→2600

 

「ぬううう!」

 

「吸血コアラの効果!このカードが戦闘で相手にダメージを与えた時、その数値だけライフを回復する。ターンエンド」

 

 隼人

 LP1700→2500

 

「すっげえすっげえ!!隼人があそこから巻き返してる!」

 

「隼人くん、ここから勝っちゃうんじゃないスか!?」

 

「お父さんのライフは残り2600、手札も無い!チャンスよ隼人君!」

 

 ……なんだろう、すっごいフラグ。

 

「ふっふっふ……隼人よ、お前が留年して、無理やりにでも連れて行かねばならんと思っちょったが、少しは良い顔つきになったな」

 

「……父ちゃん」

 

「だが、おいもデュエルには負けるつもりは無い!!ドロオオオオオオオオオオ!!!」

 

 熊蔵さんが気合を込めてカードを引く。ヤバいよアレ勝ちフラグじゃん……でも、この状況からの逆転って何……

 

「は!!」

 

「ん?どうしたんだ戦真?」

 

「マズい、もし引いたカードがあれなら……」

 

「おいは今引いたカード『天よりの宝札』を発動!互いに手札が6枚になるようにカードをドローする!」

 

「オーノーだズラッ!!!」

 

「せ、戦真?どうしたんだ?隼人だってドローしてるんだから次のターンに」

 

「次のターンなど無い!!!」

 

 まさか観客席からこの台詞言うとは思わなかったぜ!問題はバーン相手に()()()()()()()()()()()()()()!!この環境なら()()()()()は枠が余れば採用できる!

 

「おいはまず魔法『革命』を発動!相手の手札1枚につき200のダメージを与える!当然6枚故に1200のダメージ!!」

 

 隼人

 LP2500→1300

 

「ぐううううう!」

 

「まだまだ!おいは『逆ギレパンダ』を召喚!こいつは相手のモンスター1体につき500攻撃力を上げる!攻撃力は1800だ!」

 

「でも、まだ吸血コアラと同じなんだなあ!」

 

「そう、さっきとは逆の立場だ」

 

「え……っ!」

 

「おいは魔法『浅すぎた墓穴』を発動。互いに墓地からモンスターを裏守備表示で特殊召喚する。おいは酔いどれタイガーを特殊召喚!」

 

「お、俺はデス・コアラだ」

 

「これで逆ギレパンダは更に500アップで2300!」

 

「未界域のジャッカロープを上回った!」

 

「だがまだ隼人のライフは最低でも800は残る。隼人のターンにデス・コアラの効果と6枚の手札で攻めれば勝てる!」

 

 そういう事言うから逆転の目無くなるんだろうが!!」

 

「せ、戦真君?どうしたんですか?」

 

「ごめん……俺疲れてんのかも」

 

「一晩中特訓してましたものね。でも隼人君の勝ちを信じてあげないの?」

 

「この世には、台詞がトリガーとなって起こる事象があるんだ」

 

「「?」」

 

 説明するには難しいので言葉を濁す。そして、熊蔵さんも最後の動きを始めた。

 

「これがトドメの一枚!装備魔法『進化する人類』発動!吸血コアラに装備し、装備モンスターはおいのライフが相手より低ければ元々の攻撃力が2400になるが、高ければ1000になる」

 

「?今は俺のモンスターに装備されてるから2400って事か?」

 

「違う。ライフ参照は進化する人類のコントローラー主体だから熊蔵さんのライフが主になる。この場合高いから」

 

 吸血コアラ

 ATK1800→1000

 

「き、吸血コアラが……!」

 

「これで終わりじゃ!逆ギレパンダで吸血コアラを攻撃!」

 

「お、俺は……」

 

 隼人

 LP1300→0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『お前の友人に免じて許してやる。友達は大切にすべし』……父ちゃーーーーん!!!」

 

 結果として、隼人の退学は免れた。父親としては今の息子はここにいても真っ当になれると思えたんだろう。負けイベントじゃね?と思うところはあるが。

 

「背中押してくれたんだ。今度はお前が漢見せるとこだぜ?」

 

「ああ!俺、気張るよお!!」

 

 大粒の涙を流す目の先には、一艘静かに漕がれる船が、デュエルアカデミアから離れ小さくなっていった。

 

 

 

 

 ……次は翔。お前だぞ。




マスター・オブ・OZ出てねえ……まあ次出せばええか。
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