一般儀式おじさんypが懐かしみながらアカデミアを過ごす 作:火壁
隼人の親父さんが帰った後、早速翔を呼んでデュエルを始める。
「ねえ戦真くん、やっぱり僕がアニキのタッグパートナーになるのは無理なんじゃ……相手が隼人くんのお父さんみたいに強かったら僕、勝てるとは思えないよ」
「それを勝てるようにするための特訓だろうが。まあ、デュエルに肉体強化なんて必要ないから、まだ付け焼き刃で何とかなるぞ」
第一、迷宮兄弟で気を付けるべきはあるかもしれない転生者の強化カード達。普通にやろうものなら手札事故なんて待ったなしのタッグ専用デッキだ。ルールはフィールド共有としても原作を見ての通り十代と翔の勝ちなので、そのもう一押しを教えていく。
それには、是非
「……つまり、その付け焼き刃を教える為に呼び出されたのね」
そう、天上院明日香と香苗美乃である。
「悪いな。今度何か奢るからよ。翔が」
「え!僕!?」
「当たり前だろうが。お前の為に協力してくれるって言うのにお返しの一つも無いのが普通か?人としてどうなんだよ」
「戦真くんが勝手に呼んだんじゃないか!!」
「あーそうそんな事言うんだ!ある程度力量ある奴の方が仮想敵として理想かなと思って協力願い出たんだけどなー!それだったら彼女らには悪いけど帰ってもらうしかないなー!!」
この恩知らずの台所ブラシが!貴様なんぞシラミにも劣るバカだ!!力を求めているはずなのにそれに代償が伴う事を知ればたたらを踏んで手放すなら、貴様に強くなる資格など無いわ!!
「ね、ねえ、別にお礼が欲しい訳じゃないから。翔くんがそこまで言うなら、私も勉強になるし」
「そうですよ。天道君の儀式の使い方も教わりたいですし、それをご褒美という事で」
「全く……翔に甘くしてもつけあがるだけだぞ」
それを証明するかのように翔は口元をニヤつかせてだらしない笑い声をあげている。お前だけ退学になるように動いてやろうか?
「あー分かったよ。事が終わり次第って事で、今はタッグデュエルのレクチャーと対策とさせてもらうぞ」
「タッグ相手は十代でしょう?彼はどこにいるの?」
「隼人のお祝いだーって言ってレッド寮でトメさんの飯食ってる。終わり次第くるとさ」
「なんというか……自由ですよね」
人、それを自分勝手という。まあ主人公だし何とかなるわけではあるが。その上で他の奴に気を配れは酷か。
「まあピンチをどう受け止めるかは人それぞれだ。先ずは翔!お前のメンタルと視野を広げる訓練を行う」
「メンタルと視野?」
小首を傾げる翔。時代柄というか、精神面でゴリ押す事はあっても不安定から安定させる考えは薄いよな。
「それを実践で示す。俺対それ以外だ。レギュレーションは俺が三人分のライフ合計で12000、フィールド墓地はプレイヤーで独立、一巡目は全員攻撃不可、俺からスタートして3人でターンを回し一巡。そちらの敗北条件は全員のライフが0になるか、デッキが無くなりドロー出来なくなるか、特殊条件を俺が達成するかだ」
「え!!本気ッスか!?」
「悪いとは言わないけど……流石に無謀じゃないかしら」
「3対1でも厳しいのに、こっちには明日香さんもいますからね」
「そのピンチこそ教えたい教材だ。さあ構えろ!」
「「「「デュエル!!」」」」
天道戦真VS丸藤翔&天上院明日香&香苗美乃
「先攻ドロー!俺は
音速を追う者を発動!レベル6のタリスマンドラを儀式の触媒とし、儀式召喚を行う!
風を求め、速きを求め、その想い……音の壁さえも超えろ!トランソニックバード!!」
トランソニックバード ☆4→6 闇
ATK0/DEF2400
「攻撃力0!?」
「でも、彼が使うと言うならそれを補うものがあるはず。油断は禁物よ」
「音速を追う者で召喚されたトランソニックバードは、触媒としたモンスターのレベル合計と同値となる。そして、1ターンに1度、手札の儀式魔法、エンド・オブ・ザ・ワールドを見せ、そのテキストに記された儀式モンスター、破滅の女神ルインを手札に加える。そして、見せたエンド・オブ・ザ・ワールドはデッキに加える。カードを2枚伏せてターンエンド」
儀式の素材を余らせつつ、ターンを回す。12000もある状況でGXの環境じゃあ一巡でやられる事は無い。手札も何枚か初動になり得ないものもあるだろう。凌ぎ切れる。
「ぼ、僕のターン、ドロー。よし、僕は手札を1枚捨てて、マジックカード死者への手向けを発動!トランソニックバードを破壊する!」
「ならトランソニックバードの効果発動!デッキのエンド・オブ・ザ・ワールドを墓地へ送り、その効果をコピーする」
「こ、コピー?」
「つまり、このターンに儀式召喚を行うって事だ!俺はレベル6となったトランソニックバードとキャンドールを触媒とする!」
「え?」
「どうしたんスか?美乃さん?」
「エンド・オブ・ザ・ワールドの儀式召喚はレベルを同じにしないといけないんです。でもこれではレベルは10。破滅の女神ルインの召喚にはオーバーです!」
「ところがどっこい、このデッキにはいるんだよ。レベル10の女神が!
破滅、終焉、そして創世。世界を見守る破滅の女神よ、今こそ輪廻の砂時計を動かせ。儀式召喚!!破滅の美神ルイン!!」
破滅の美神ルイン ☆10 光
ATK2900/DEF3000
「破滅の……美神……?」
「綺麗……」
「翔、まだお前のターンは続いてるぞ。対象が消滅したから死者への手向けは不発だ」
「あ、うん……僕はジャイロイドを守備表示で召喚。ターンエンド」
「次は私のターンね。ドロー!私はマジックカード融合を発動!手札のブレード・スケーターとエトワール・サイバーで融合!サイバー・ブレイダーを融合召喚!」
明日香のフィールドに彼女のフェイバリットカードが召喚される。効果が複数あるのに……今じゃ戦闘耐性しかないなんて……こっちは儀式素材やらかして連撃効果消滅してるけど。
「ここで更に装備カードがあれば良かったのだけれど、私はカードを1枚伏せてターンエンド」
「私のターンですね。ドローして、マンジュゴッドを召喚して効果を発動します。デッキから儀式魔法、奇跡の箱舟を手札に加えて発動!フィールドのマンジュゴッドと手札のシャインアビスを生贄に捧げ儀式召喚!天界王シナト!!」
単純火力にてルインを超えてくる。確かに、今のルイン相手には正しい対応だ。
「バックを警戒していればな。トラップ発動。奈落の落とし穴で天界王シナトを破壊し除外だ」
「えええ~~~~~~~!!!」
シナトも仏面を崩して驚愕の表情を曝け出し、奈落の底へ落ちていく。これで3枚のディスアドバンテージを稼ぐ。これで翔と美乃は3枚、明日香は4枚を消費している。後はバックがどうなるかだが……ここで少し蛇足に入ろう。(世界観解説タイム)
諸兄らはこの世界のカード事情をどこまで理解できているだろうか。まず前提として、パック販売はOCG次元と大きな差は無い。1パック5枚入りで150円。新弾が出る度に60~80種類が新規実装。そして、
要するに、1枚のカードを当てる為にはそれが初めて出た弾+今まで出たカードプール=クソ低確率という
故にデュエリストの多くはカード投入がピンばかりであり、結果として紙束やそれに近いデッキ未満の代物にしかならない。しかし、彼らにもそのデッキで戦う為の武器がある。それを支える運命力だ。
ドローで目当てのカードを引き当てる。ドロー加速のカードを引き込む。OCGや他カードゲームでは“右手が光る”という言い方をするが、彼らはほぼ毎回のデュエルで一度以上それを出来ている。羨ましすぎだろ右手へし折ってやろうか。
そんなところで、俺自身このデュエル、カードプールやタクティクスでは優勢をとれていると思うが、運命力はドベと考えている。実際翔は俺のモンスターを破壊するカードを引き込み、明日香は戦闘への準備、美乃に至ってはルインを殴り倒す手段を講じて来た。翔と美乃はデッキ内容を一度見せてもらっているが、両者共に全カードがピン投入だった。絶対無理とは言わないが、確率は低い事に変わりはない。それをそれぞれがピタリと引き込んでいる当たり翔は兎も角美乃もこの世界の住人なんだろう。粛声使えばよかった。
「うう……私はカードを2枚伏せてターンエンドです」
「その前に永続罠発動。リターン・オブ・ザ・ワールドの発動処理としてデッキから終焉の王デミスを除外する」
「え?自分のカードを自分から除外するんスか?」
「俺のターン。手札の女神ルインをコストにトレード・インを発動。カードを2枚ドローする。リターン・オブ・ザ・ワールドの2つ目の効果発動。このカードを墓地へ送り、2つの効果の内ひとつを発動できる。ひとつはこのカードで除外したモンスターを儀式召喚。もうひとつは除外したモンスターの回収だ。おれはひとつ目の効果を発動。つまり儀式召喚だ」
「儀式召喚を行うトラップ!?」
「そしてこの儀式召喚、豪華特典付きだ。それは、リリースの代用に墓地の儀式モンスターをデッキに戻せる!」
「それってつまり、またルインを召喚する準備が出来てるって事ッスか!?」
「やりたい放題じゃない……!」
「巡る輪廻、刻まれる時、灰燼さえ残さぬ世の終わり。創世を前に訪れる終焉の王が、今こそ裁きを下す!!儀式召喚!!終焉の王デミス!!!」
終焉の王デミス ☆8 闇
ATK2400/DEF2000
「新たな儀式モンスターが……」
「デミスの効果。ライフ2000をコストに、このカードを除く、全てのカードを破壊する!!」
「っ!トラップ発動!ホーリーライフバリアー!!手札を1枚捨てて、このターンのダメージを0にする!!」
「はっ!足掻け足掻け!!デミス!!!」
戦真LP12000→10000
滅びの王が、今青い炎でフィールドを焼き尽くす。唯一残っているのは
「なんで……なんでルインが残っているの!?」
「破滅の美神ルインはフィールドにいる限り、儀式モンスターは効果による破壊から守られる。変則とはいえタッグデュエルのルール上ホーリーライフバリアーはお前等全体に波及する。カードを1枚伏せてターンエンドだ」
翔のターンに入るが、意気消沈というように腕を垂れ下げている。こんなもんで絶望すんなよ。
「まだライフが1も削れてない状況で何一丁前に敗北悟ってんだ?3対1なんだぞ?」
「む、無理ッスよ……攻撃力2000以上のモンスターが2体な上に、1体は全部破壊して、効果でも破壊出来ないんスよ!?」
「その代わりにそっちは一人にオーバーキルしても2人は生き残るし手札も俺の三倍だぞ。そんな甘え抜いた台詞でタッグデュエルなんぞ出来ると思ってんのか?」
「翔くんその通りよ。まだターンを一巡しただけ。これから逆転を導くの」
「まだドローもしていないんだから、それを見てからでも遅くはないですよ。それにこのデュエルで進退が決まるものではないんですから、気楽に行ってください」
「……うぅ」
……テレビで見ていた時から思っていたが、翔のネガティブ思考の原因が理解しきれない。兄へのコンプレックスや同級生への連敗記録を打ち立てた程度で……精神が弱いとそうもなるか?逃げる先には何も無いというのに。
「翔……」
中途半端ですがここまで。ボスデュエル難しいって。